ある日のうさ日記・53
ぴょん、ぴょん、ぴょん、びぃ、よーん!
ぜぇはぁ。でもでも、えいえいえい!
……トドカナイでしぃ。びえぇええぇぇーん!
くっしゅん。えぐえぐ。……ひっく……。
あ……、こんにちは……、うさでし……。
お久しぶり、でし。なのにうさ、泣いててゴメンなしゃい。
でも、でもでもね……。びえぇええぇぇーん!
「あー、腹減った。うさぎぃ、今日の昼メシな……、あれ?」
ガチャ、っとドアが開いて、ハンサムしゃんがやって来まちぃた。お部屋の片隅でなき噎ぶうさを、ひょいって、片手で持ち上げて
「おいおい、なんだどーした、具合悪いのかよ」
う、うぅん。ちがうの。ちょうどよかったでし、ハンサムしゃーん!
その、そのドアに張ってある、写真を剥がしてくだしゃーい!
「ん?あぁ、これか。……ははっ、あははははっ」
うえーん、笑わないでよぉー、ひどいでしぃー!
ここは、マレェシアにある、ハンサムしゃんのチィムの根拠地デシ。自然がいっぱいな、市街地から離れたメーカー工場に隣接ちていまし。自社専用の走行コースなんかあって、恵まれたトコロでしの。周囲はゆるやかーな丘になってて、畑や果樹園がありまし。
チームの敷地内にも、バナナにマンゴー、ココ椰子やマンゴスチンの木が植えてあって、どんどん熟れていきましの。ちっと昼間は暑いけど、ヤシ酒飲んでお昼寝ちていればへっちゃら!うさにとっては、とてもよいトコロでし。プールもあるし、エアコン完備だし。
で、で、でも、しょんな楽園にも、ぱぱらっちしゃんが居たみたい〜。
うさのはずかちぃお写真が、ドアに貼り付けてあるの。うえーん!
「えー、これはでも、アレだろ?お前のためにだろ?」
う、しょんな風には、うさうさ思えましぇん。
こんな、こんな、おマタひらいた、お口もひらいた、はずかちぃお写真を、貼った悪人しゃんはダレでしかー!
「いやいや、でもほら、ちゃんと書いてあるぜ。『箱・籠・その他の取り扱い要注意。うさぎが中に居る事があります』って」
た、たちかに、うさうさはよく、キッチンの箱の中で、お昼寝をちていまちた。
箱は日本の、文太パパが送ってくりた箱で、甘い豆乳の匂いがちて、シアワシな気持ちになりたから。
うさ入りの箱を間違えて棄てないように、という目的、なのかもしりましぇん。
でも、こんな激写のお写真は、ひどいでしー!
「あー、ニッポンの豆腐くいてぇなぁー」
うさをダッコちたまま、ハンサムしゃんが言いまちた。
「作ってやってもいいぜ。秋のCMに出るって約束するならな」
奥で、そりを聞きつけたのは、トレードマークのバンダナおつむに巻いて、エプロン着けてお昼のご用意をちていた京ちゃんでし。現在、チームと提携ちている日本の企業から出向中。お仕事はにぃにぃ率いるセカンドチームのマネージメントと、うさのボディーガードと、ごはんのお手伝い、でし。
「……」
ハンサムしゃんは答えましぇん。が、拒絶もいたしましぇんのでし。ここではちっと立場の弱いハンサムしゃん。セカンドチームのメンバーじゃないのに毎日、ゴハンを食べに来てるから。
ハンサムしゃんは、前シーズンのチャンピオン・レーサーでし。ピカピカの一軍のVIP、何処に行っても人様にチヤホヤさりまし。が、ここでは和食のランチを食べたくて、セカンドチームの食堂に、そーっと現れるのでし。
「トーフなんか、作れんのかよ」
「藤原の親父さんが大豆とニガリ、山ほど送ってくれたからな」
「……」
「ミスター・ハイネルも招いて、明日の昼飯は冷奴にするか、うさ」
はぁーい!さぁーんせーい!
文太パパは、たくさんの大豆とにがりと、高野豆腐を送ってくりまちた。
送り状には、「うさぎさんとミスター・ハイネルによろしくな」って書いてあったの。
パパ、ミスター・ハイネルの大ファンだったんだって〜。
ま・年代からしゅるとパパがブイブイ言わせていた頃、ハイネルしゃまは切れ味鋭い新進の花形レーサーでし。年末にたまたま、みんなで藤原しゃまのお家に立ち寄ったとき、パパ珍しく、あがれあがれって、大騒ぎだったの。
お茶の間でお茶をいただいてたら、文太パパが出してきた車やレースの雑誌のお表紙に、若かりし頃のハイネルしゃまのお写真がたくさん載ってまちた。今でもビイツ美形のハイネルしゃまでしが、十代の頃は美少年とおりこして美少女じみてまちた。
ハイネルしゃまは、ちっと照れておらりまちぃたが、慣れっこなのでちょう。緊張の文太パパと握手ちて、幾つかの雑誌にサインを、ちてくりまちた。
「恥かしかったですよ、あれ」
あ、藤原しゃま、お帰りなしゃーい!
うさはハンサムしゃんのオテテから、ぴょんと飛び降りて、ダイニングの一番奥から二番目の椅子をひきひき。
ここはセカンドチームのダイニングで、藤原しゃまはセカンドチームのレーサーでし。だから藤原しゃまは、チーム監督のにぃにぃの次に偉いのでし!
「うちの親父があんなにミーハーだったなんて、知りませんでした」
ぶつくさ言いつつ、うさを撫でてくりて藤原しゃまがお席につきまちた。京ちゃんがバンバンジーの大皿を食卓に置きまし。ハンサムしゃんは黙って、自分で下座の椅子を引いて座りまし。
ゴマ味噌味の冷たいバンバンジーに、新ジャガとつくねの煮っ転がし、にゅうめん入りのおすましにブリの照り焼き、が、本日のランチ・メニューでぇし♪煮っ転がしはうさが作ったの。えへへー♪
「親孝行したじゃねぇか、藤原。親父さん喜んでただろ」
「はぁ、まぁ、初めて言われましたけどね。おめぇも出世したもんだなぁ、って」
「俺の叔父貴もそういえば、写真を撮って送れって言ってた。俺らにとっちゃ大先輩のカリスマだが、あれくらいの年代にとっちゃアイドルなんだろう」
「遅れたかな、すまない」
あ、にぃにぃの登場でし!お帰りなしゃい、でしー!
にぃにぃ、にぃにぃ〜。ゴハンの前に、うさお願いがありましのー!
「ん?なんだい、うさ」
は、剥がちて、あの写真、はがしてくだしゃーい!
「あぁこれか。可愛く撮れているだろう?」
う、きゅ……?
「箱や籠の中に入って眠るのはうさぎの本能だからね。うさうさがしたいのは仕方がないんだ。だから周囲が気を使ってあげなきゃな。それにしても可愛い寝顔だ」
きゅ、ぴ……。きゅ、うん……。
「うちのうさうさは可愛いなぁ」
お、写真、撮ってくりたの、にぃにぃなんでしか?
「そうだよ」
……しょ、しょうでしか。しょ、しょ、しょうでし、ね。しょのとーり、でし!
うさの可愛いお写真、貼って注意書きちてくりてありがとう、でし!
「さて、いただくか。あぁ啓介、ゴハンのお代わりはなしだぞ」
うさはにぃにぃのお膝の上に座りまし。ちょこん。
京ちゃんがみんなにごはんをよそってくりて、今日もシアワシな、ランチをいただきまーし!
ある日のうさ日記・南国の食卓