うさうさ日記・9

 

 

 ばっくおぅらいーい、オーラァーイ。

 うふふふふ。今日はうさうさの全快祝い。

 京ちゃんのお車で、清二しゃんちに、遊びに来まちたよー。

 皆しゃまにごシンパイ、おかけちまちたが、お風邪はナンとか、治りまちた。

 カワイイうさうさの、ケナゲな闘病日記は、凪しゃんが発行する、「うさうさ日記」にて。

 こういうやり方、ヨクないとうさは思いまし。

 でも、凪しゃんが、「トキオでご本が売れないと、九州に帰って来れない」って、

 泣くから、勘弁してあげまし。貧乏にかなうモノはないのでし。

 愛さえ、おビンボウには、負けてしまうんでし。

 ま・そりはそりとして。

 清二しゃんちは、大規模近郊農家〜。

おパパサマは、農協の理事でし。

みなしゃま、農協を知っていましか?

農業協同組合だから、職員はともかく、理事は組合員のなかの有力者が、選ばれまし。

ま、カイシャで言えば、重役しゃんでしね〜。お給料、けっこうイイんでしよ〜。

よって、組合の欠損・職員の汚職による損失は、理事が補填のギムを負うんでしの〜。

某・住専問題で、農林水産省がイノチを掛けて、農協・漁協を免責にしたのは、

そんなこと、したら理事しゃんたちに個人賠償責任が生じて、

ナンニン、首をつるか分からない上に、地域指導者を失って、

ニッポンの第一産業がメタメタになるから、でし。

ふぅ。タメになるうさ日記でしねぇ〜。

「おぅ、京一、よく来たな!うさぎぃ、待ってたぜぇ〜!」

 お、清二しゃんのお出迎え。

 ご多忙な父上に代わって、この農場をキリモリしてる、働き者しゃんでし。

 一定以上の規模と戦略があれば、農業はオイシイ商売でし。利益率がイッパンキギョウとは、桁が違いましからね〜。お花や果物が主体の園芸農家は、資材費がかかるから資本力が必要でしが、セーフ・ガードにもめげず、がっぽがっぽ、でしぃ〜。

 お車のドアが開くなり、うさは地面を、とことことこ。

「お、抱っこされるか?」

 ううん、ヤでし。うさはメンクイなんでし。うさは一目散に、農場へ突撃ぃ〜。

「転ぶなよ。パートのオバさんたちに言えば、朝掘り野菜の、折れたのくれるからな」

 はいぃいいぃぃいー。

 

 折れたニンジン、大根のはっぱ。レタスの外葉に、キャベツの根っこ。そして広ぉい農場の、あっちこっちのたんぽぽしゃんを食べて、うさ、シアワセ〜。

 あ、京ちゃんだ。京ちゃーん。

「……また立てねぇのか」

 う、うさ、立てましよ。立て、うう、ぅううぅぅー。

 ポンポンが重い、重いでしぃ。

 京ちゃんのお膝に行きたいのに。京ちゃん、京ちゃん抱っこ、だっこちてぇ〜。

「はいはい」

 蜜柑のコンテナをひっくり返した椅子でご休憩。天気が良くてぽかぽか。春が来たみたい。

 むむ、資材小屋、といってもコンクリィトの、倉庫ってゆった方がいい、二階が事務所になってる建物から清二しゃんが、お盆を持ってこっちに来まちた。お盆の上には、お茶と、お菓子ぃ。

 うさにも、うさにもーッ。

「……なんだよ、喰うのか?」

 食べる、食べし、食べるなら、食べるとき、ちょうだい〜ッ。

「いいのか、京一?」

「まぁ、今日は床払いだしな。ちょっとだけなら」

「そうか、ほら」

 うわぁい、お菓子だーッ。

 ムム、薄茶色に、ピーナツが入ってまし。

 ぽりぽり食べれば、薄茶色は、黒砂糖の風味〜。

 ……オイシイ。

 ねぇ、これ、オイシイでしよ、清二しゃん。

「お袋が福岡から買って来たんだ。防塁跡って名の、干菓子だよ」

 オヒガシって、米粉とサトウのアジしかしないんじゃ、ないんでしね。

 ちゃんとオイシイおヒガシも、あるんでしねぇ〜。

「空港やデパートじゃ売ってないらしいがな」

 オイシイ、でしぃ〜。

 ふと見ると、甘いもの、あんまりスキじゃない京ちゃんも、食べてまし。

 茶碗で薄茶を、ズズズズズ。……うさはのは、りんごじぅす、でちた。

 リンゴジゥスもダイスキでしけど、ねぇ。

 うさも、お茶が飲みたいでしぃ〜。

「我儘だな。ほら」

 あ、アツイ。あつすぎ。お口、火傷しちゃうぅぅうぅぅ〜。

「我儘だな」

「京一、俺、今、どっかの誰かを思い出したぜ」

「ほら」

 京ちゃんが、手のひらにお茶をこぼしてくれて。

 ぺろぺろ、そりを、うさうさは舐め舐め。うーん、オイチイ〜。

「美味いか。良かったな」

「なぁ、床払いって、病気だったのか?」

「ちょっとな」

 ……ア。

 ふっと、イマ、京ちゃんが笑いまちた。

 清二しゃん、京ちゃんの笑顔にびっくり。

 でも、ううぅ、うさは、フクザツ〜。

 きっと今、京ちゃんはあのこと、思い出したんでしぃ〜。

 ……うさうさは。

 ……全快のことをトコバライ、って言うの、ちりましぇんでした。

 だから、だからね。カンビョウちてくりた京ちゃんがキョウデトコバライだな、って言った時、

 うさ……、カンチガイ、したんでし。

京ちゃんなら、イイかなって。

ヤサシクしてくたしゃいね、って言ったら……、京ちゃん。

日頃のはぁどぼいるどはウソウソ?って、いうほど笑ってまちた。

あんまり笑われたから、うさ、哀しくなって、拗ねて。

そんなうさのご機嫌を治すために、今日は清二しゃんちに、来ることになったんでし。

……まぁ、いいや。

おうす、とっても美味しかったでし。

美味しかったけど、ヤッパリ、オクチのなかが、ちょっと苦いでしね。

うーん、やっぱりニガイでし。

ニガイィイイィィィィイイーッ。

「え、だ、大丈夫か?待ってろ、水、汲んできてやる」

「止せ。必要ない」

 言いながら、京ちゃんがオヒガシの小袋を、ビリッて開けてくりまちた。

「口が苦いから甘いものをもう一つ、って言いたいんだ、こいつは」

 てへへ。バリてしまし。

 うぅーん、でも、シアワセぇ。

 空気はオイシイし、農園は、広いし。パートの近所のオバサンたちは優しいでし。

 清二しゃんは、うさの家来ですし。

 む。そんなコト、言ってるうちにうさうさは、発見!

 イチゴが棄ててある!

 うさ、イチゴ、ダイスキでしのに。

 京ちゃんのお膝から、ころん。

 ぽて、ぽて。ぽて、ぽて。

「あぁ、それか?変形果だ。蜂が受粉しそこねた花は、そんな形になるんだ」

 確かに、ちょっと、ヘンな形のイチゴしゃんでし。

 でも、オイシイでしよ。はぐ、はぐ。

 加工用、とかで売ればいいのに〜。

 結構いっぱい、棄ててありまし。バケツ二杯分くらい?

「ムダになってるわけじゃねぇぜ。鳥やら、裏山の狸やら、食いに来てる。朝には、殆どなくなってるからな」

 勿体無い〜。

「そう言うなようさぎ。ここはもともと、野原だったんだぜ?」

 しょうなの?こんな広い野原なら、しゃじょ、おっきいあざみしゃんが林立、していたでしねぇ〜。

「住んでた狸や野鼠を追い出して、うちの十七代前のが農地にしたんだ。せめて要らない分くらいは、な」

 ……清二しゃん。

 イイシトでし。

 オカオはワルイけど。

「まぁそれに、ここに変形果置いてりゃ、網こえてハウスの中を荒らしたりは、しねぇし。鳥はつつきまわして穴あけるけど、狸なんかは、多分両手で、持って食うんだろうな。朝、イチゴのヘタだけちょこんって、地面に行儀よく伏せてある」

 じゃ、うさうさも、ヘタは伏せておきまし。ぱふ。

「お、うさぎも行儀がいいじゃねぇかよ」

 てへへ。

「うさぎ、うち気に入ったか?」

 うん。とっても、ダァイスキ。

「いっそ、うちのうさぎにならねぇか?ナンでもカンでも、喰い放題だぜ」

 ……エ?

 うちの、って、清二しゃんちの?

 ……えぇッ?

 ……タシカニ。

 お空は高くて、ヒバリしゃんが舞って。

 お空気もお水も、お野菜もお菓子もおいしいでし、けど。

 ……でも……。

「な、そうしろよ。京一、うさぎ、置いていけよ。その方がうさぎもシアワセだって」

 ……う、さ……。

 うさは、うさはぁ……。

「そりゃムリだ」

「なんでだ?うさぎにも絶対、そっちがいいぜ」

「こいつはアザミが好物なんだ」

「アザミぐれぇ、その辺にいくらでも生えるぜ」

「隅田川の川原で獲れたアザミじゃねぇと、ダメなのさ」

「アザミにチガイはねぇだろうがよ」

「あるらしい」

「あぁ?」

「ハゼの鱗だらけの川原から、飼い主がとってきたアザミじゃねぇと、ダメなんだ。……なぁ?」

 ……京、ちゃん。

 きょー、ちゃああぁぁあぁぁああーん。

「それに、身動きできなくなるほど、喰うんだぜ、こいつは」

 とん、とお背中をつつかれて。

 ばったり、倒れたうさうさ。

 お、起き上がれましぇん、じたばた。

「猫や狐に食われちまう」

「……それもそうか」

 じた、ばた。

 

 清二しゃんに、キレイなイチゴの御土産をもらって、うさうさは、久しぶりににぃにぃのお家へ。

 うさのこと、忘れてないでしかね?

「う、うさぎ、うさぎぃぃいいいぃぃーッ」

 あ、ハンサムしゃんだ。ただいま。にぃにぃは?

「新チームのスタッフと打ち合わせがあって出かけた。うさぎぃ、よく元気で帰って来てくれたなぁー」

 きゃうきゃう、ハンサムしゃあん。

 しょ、しゅんなに、ぎゅうってダキシメルと苦しいでし。きゃうー。

「シンパイしたんだぜぇ、アニキも、俺もさぁ」

「帰る。涼介には、ちゃんと床払いしてからつれて来たと、言っておけ」

「なんだぁ、スドー」

 おろ、ハンサムしゃん、低い声。

「てめぇ、まだアニキんこと諦めてねぇのかよ」

「どうしてそんな話になる」

「オトコイリって、今言ったじゃねーかッ!」

「……」

「どーなんだ、ハッキリしやがれッ!」

 ……ハンサムしゃん。

 やしぇいてきに、吼える姿も、はむさむ、でしけど。

「……」

 ましゃか……、うさ並?

 

 

 

ある日ある時・うさうさ、疑いを抱く。