ある日のうさ日記・うさうさのすぽぉつ
がぶ飲み、ちたいときぃー!
ひっく、うぇ、っく……。びぇ……。
うさは、うさはカナシイ、でしぃのぉ……。
うさは今、お海の上に、いまし。おっきいお船にのんのちて、とっても愉しい……、筈でちた。
なのに、ナンで悲しいのでしかって?……そりは、ネ……。
ひっく、え……、っく……。
にぃにぃが、にぃにぃが奥の、お部屋から、おっきちて来て、くれないから、でしの。
うぇーん。もう、二日もお顔を、見てましぇん。
ハンサムしゃんはね、時々、出て来まし。るぅむさぁびすの、ワゴンを取りに。うさ、あんまり放っておかりたから拗ねて、ソファーのちたに、隠れていまちたの。
……そちたら。
ハンサムしゃんは、うさを捜してもくりましぇんでちた。
ワゴンの中から、フルゥツの籠を床に置いて、パンとミルクも横に置いてくりて……、そりだけ。
うさは……、うさは、うさうさは……。
ううん。うさだけじゃ、ないでし。
イキモノは、タベモノだけじゃ、生きていけないんでしぃの、よーッ!
ひっく、ひっく……。
いくら新婚しゃん、だかりゃってアンマリでし。別に、うさ、フタリのまぐまぐを、邪魔するつもりは、ありましぇん。
……デモネ。
朝になったら、お部屋に入れてくりても、いいでしぃ……。
お船は神戸に到着いたちまちた。けど、うさはタノシミにちていたうろこのお家も、神戸のワッフルも……。
だって、フタリがおっき、ちて来ないかりゃ……。
そうちて今夜、お船は博多に着いてまし。ベイサイドの観覧車がキレイでし。うさ、ありに乗ってみたい、でし。中州の夜景も、福岡ドームも見えまし。ああ……、ナミダで霞んで、見えましの。
うぇえぇぇぇーん。
うさうさが、ガラス張りのリビングで泣いていたら、トントン、って。
来たのは、ワゴンを押したるぅむさぁびすの、オシト。
うさ、がちゃっと、ドアを開けまちた。
ご苦労しゃま。はい、こり、チップでし。
るぅむさぁびるのシトは最初、うさにびっくり、ちてまちた。でももう、慣れっコ、になって、にっこり笑って、
「うさぎさん、はい」
って、床に、オーツ麦のくらっかぁと、野菜スティックと、パンを置いて、くれまちた。そりから暫く、うさをなでなで、ちて出て行きまちたの。
しょう……。うさは、こんなにカワイイでしぃのに。
なーんで、にぃにぃ、なでなで、ちてくれないでしか?
ワゴンが届いたから、にぃにぃ、出てきてくりるかなー、って。
うさ、ワゴンの手前で丸まって、いい子に、待ってまし。
でもでも、出てきてくりましぇん。……もぅ、もう……。
うさは、ぐれてやりまし!
がぶのぉみ、ちたい、時ぃ♪
歌いながら、冷蔵庫へ、よっこいしょ。んしょ、って開けて、ナカから、ワインのハーフボトルを取り出しまし。前脚で挟んで、んしょ。
すぽん、って抜けたコルク。とくとく、って、お床にこぼれるワイン。んくんく、うさがお口で受け止めてのみのみ。くん、んく。
……ふぅ。
きっと、こり、いいワインでしよね。しゃとー・ど・うぃるしぇ、って書いてありまし。うさ、フランス語も読めるんでしぃのよ。だーって、うさうさたちには、バベルの呪いはかかってないでしの。
ああでも、ちとりで、飲んでも、オイチク、ないでしの。
……うさ、サミシィでし。しくしく。
だりか、一緒に、のみのみちてくりないかな……?
お船の中からは、だいぶんのヒトが降りてまちた。艦橋近くにありゅこのお部屋かりゃは、甲板がよく見下ろせましぃの。だぁかりゃ、お船には、もう、あんまり、シトが残ってないでしが。
もちかちたら、だりか、いりゅかも。
うさと遊んでくりる、シトが。
探しに行きまし。……とて、とて。
うさ、サミシイの、ヤでしぃ、の……。
「ダメ。あんたは寝てろって」
「……たいした熱じゃない」
「あんたが悪化してもうさぎに移ってもタイヘンじゃん。寝てな」
「……ごめんな、啓介」
「ん?ナニか」
「せっかく旅行なのに、こんな……」
「疲れてたんだよ、あんた。気にしないで、ゆっくり、オヤスミ」
そばについててやるから安心して。
そう、言われて抱き締められて、目を、閉じる。
風邪……、という訳ではない。
病気か、といわれると、特に痛かったり粘膜が腫れたりはなくって、ただ、身体がだろくて起き上がれない。微熱が、続く。
食欲は、ある。冷えた果物がとびきり美味しく感じられて、そればかり食べてる。
昼間から抱き合って、散々に鳴き交わして抱き合った翌日。きゅう、とベッドに倒れこんだ俺を弟は……、いや……。
この男は大事にしてくれた。とても優しく守ってくれている。それが嬉しくって、なんだかますます、起き上がる気力がなくなる。……俺は、自分の病名に気づいていた。
寂しがり病、だ。
昔、むかし。まだ、この男が俺の『男』ではなく、俺が男の『オンナ』でもなかった、頃。
ふだん丈夫なこの子は時々、熱を出した。俺が塾や部活で忙しく、構ってやれない日が続くと、決まって。
家政婦さんたちはそれを『寂しがり病』と呼んでいた。俺がそばに半日も、ついててやればケロッと治ったから。
寂しくって、熱を出す。
そそはよくある、ことだ。子供や女の子には。
……俺は、どっちでもない。
でも熱を、出してしまう。
そばに居てほしくて、ずっと……。
この旅行が終われば、別れが来る。
欧州でアジアで南米で、転戦を繰り返すようになる、俺たち。
このたびを終えたら、暫くは会えない。
泣きたいくらい、それが切なくて、寂しい。
考えただけで、ほら……。
「熱、なんか、上がってるな……」
体温なんか、いくらでも乱れていく。
……おかしな、話だ。
二年、あえなかった事もあるのに。
何ヶ月も会わないのなんかいつもの、ことなのに。
どうしてこんなに、今度だけ、特別に苦しい。
お前と引き剥がされる、ことが……?
目を閉じて俺は、抱き締めてくれる腕に身体を預けていた。が、途中で耐え切れず、背中に腕をまわしてしがみ付く。
……スキ。
好きだよ、啓介、お前を。
離れたくない。ずっとこうやってそばに居たい。お前を感じていたい。……あぁ。
ホントにケッコン、出来たらよかったのに。
お前のそばに、ずっと居られたのに。
優しく誠実に、俺を抱いてくれていた男が。
「なぁ、アニキ。……違ったら、ゴメンな」
そっと俺の頬にキスを繰り返しながら、囁く。
「もしかして、あんた……、寂しい、の……」
……あぁ。
そろそろ、バレルと、思っていたよ……。
お前は聡い。気づかれるって、思ってた。
だからさっき、ムリして起きようとしたけど。
阻まれて崩れた、時に俺の、完敗は決まっていた。
旅に出て、日常から逃れて環境を変えてみて。
自覚したのは、依存症。お前が居なきゃもぅ、生きていけない自分自身。
「……、あの、さ……」
負けを認めて大人しく、俺はしていた。スキにしていいよ、そう思いながら。俺はお前の、ものだ。
「あんたが止めろってったら、俺、今すぐレーサー、辞めて引退するよ?」
そうしてずっと隣に居ると、囁くいとおしい、男。
「はい、」
それは、俺に、言えって、いっているのか?
「はい、どーぞ?」
……馬鹿にしやがって。
優しく、しやがって。
何時の間に、こんな洒落た、真似ができるようになった、……お前。
俺を……、うれし泣き、ざせるなん、て……。
「言って。俺に離れないで、って。ほら」
「……啓介」
「ん?」
「稼いで、おけよ」
「……」
「若いうちに。歳、とったら、」
「あんたが使ってくれる?」
「……あぁ……」
「うん。沢山、稼いで腕、磨いとくな」
ぎゅう、っと抱き締められて。
耐え切れず、自分からキスをした。
身体を揺らして誘う。間違えずに、男はのってくる。
抱き合って、愛し合って、揺れあって、……失墜。
「……新婚旅行、来て良かったよ……」
前半抜きだ、と。
何度繰り返したか分からないコメントを、言う体力もなくして。
「あんたがこんな、可愛くなるなんて思わなかった……」
俺だって思ってなかったさ。
自分がこんなに、正直になる、なんて。
「……スキ」
囁かれる言葉の波に埋もれて、溺れて幸福に、眠る。
不自然に篭っていた熱が身体から、静かに引いていくのを感じながら。
「居たか、そっち」
「何処にも居ねぇよ……、食われちまったかも……」
船内で従業員が連絡を取り合う時のための無線を借りて。
「落ち着け。いいか、船腹と上から捜していく。船の進行方向から船尾にかけてだ。いいな!」
「……アニキ、見つからなかったら、どしよ……」
「そんな事を考えてる暇があったら、捜せッ」
乱暴に言い捨てて通信を切る。不安になっている啓介に優しくするのは逆効果だと知っているから。ガツンと怒鳴って気合を入れて、それから。
「うさぎ……」
悪かった。自分の寂しさに溺れていた。
途中で何度か気にはなったけれど、うさぎに風邪をひかせるのがトラウマになっている啓介は寝室に連れてきてくれなくて。
啓介自身は、微熱を出してくたりとなった、俺にかかりきりで。
……寂しかったのか?
『……、ミスター高橋、お探しのペットが見つかりました!』
無線から連絡が入ってほっとした俺は、
『船腹の厨房に……』
居場所を聞いて、気が遠く、なった。
ちぃず、ワイン、くらっかぁ。
とってもよく、あいましの。んく、くん。
「乗組員用のテーブルワインだから、そんなに美味しくはないでしょう」
ううん。しょんなこと、ないでし。
うさ、誰かと一緒にごはん、食べるの二日ぶり、でし。
うさを拾ってくりてありがとうね、るぅむさぁびすのボーイしゃん。
「おなかイッパイになった?じゃあ、お部屋に帰のましょうか」
ううん。もちっと、ここに居らちて。
あのね、うさね、ヒトリでお留守番、しゅるのは平気なの。寂ちくても我慢、できるの。
でも、にぃにぃが、居るのに相手、ちてくりないのは悲しくて、泣きたいの……。
だから、もちっと。いいでしょ、ね?
「もちろんいいけど、シンパイしていないかな?」
ボーイしゃんの語尾に重なって、
「うさぎぃ!」
おっきいハンサムしゃんの、お声。
うさうさは、びくぅん!
「うさぎ、お前、勝手にふらふらしやがってッ!俺とアニキがどんだけシンパイ……ッ」
うぇ……、うぇえぇぇぇーッ!
「うさ、……、おい……ッ、うさぎーッ!」
うぇ、ひっく……、うぇえぇぇーん!
「ちょ、待てって、うさぎ。おいッ」
びぇええぇぇーん。あわぁーん!
「ごめ、ちょ、……、うさぎ。怒鳴って悪かった、って、おい……、待て。なんで逃げるんだよッ!」
うぇーん、しょんなの、うさにも分かり、ましぇーん!
ハンサムしゃんがキライになったんじゃないでし。
すきすき、でしの。
怒鳴られて怖いんでも、びっくりちたんでも、ありましぇん。
しょんなーの、慣れっこ、でしから。
でもでも、うさはハンサムしゃんのお足元をすりめけて、お船のお台所の床からお廊下に、ばびゅーん!
「逃げるな、うさ……、うさぎっ」
うさも、逃げたくないんでしぃー!
でもでも、なんか、なんででしか……?
うわぁーん。しゅなおに、ハンサムしゃんの、お腕に入れましぇーん!
「待ちやがれッ!」
うぇーん!
ばたばた、お廊下をかける、うさうさ。
どたばた、追いかけてくるハンサムしゃん。
うさは階段を駆け上がり、まし、とてててて。
……しょこへ。
「……うさぎ」
やしゃしい、キレイなお声の、にぃにぃ〜!
あぁ、でも、ドチテ?うさ、しゅなおに、なれましぇーん!
階段の、今度は下に向けて、どたばたーッ!
「うさぎ」
にぃにぃは、追いかけてきては、くりましぇんでちた。
代わりに、手摺から身体を乗り出して。
にぃにぃ……、飛び降りるつもり、でしぃ、の?
あ、危ない、危ないでしよ、ヤメテーッ。
うさうさは、方向転換。も一度、とててて、うさは階段を駆け上がり、まし。
でもにぃにぃは、止まりましぇんでちた、の。
ふわ、って、手摺から体を乗り出して。
白鳥みたいに、降りて来てくりまちた。うさの、前に。
そうちて、うさを抱き上げて。
「……寂しかった。うさぎに会いたかったよ……」
うさの、お耳に囁きましぃ、の。
……エ?
「風邪ひいて、寝込んでいたんだ。うさぎに移すといけないから、うさぎに会えなくて、とっても寂しかったよ……」
……え、……、にぃにぃ。
しょう、だ、……った、の?
しょうゆう、ワケだった、んでしぃ、の……。
え……、へ。えへへ。てへへへへ。
うびゅ、うぴーん!なぁーんだ、しょうだった、んでしかぁ〜!
一言いって、くりりば良かったのにぃ。
そちたら、ハンサムしゃんと追いかけっこ、しなくて良かったのに。
きしししし。
にぃにぃ、うさに会いたかったでしか?
「あぁ、とても」
うさのやらかい毛皮にお顔を、押し付けるみたいにして、にぃにぃ、言ってくりまちた。
うさもー!
抱っこしゃれて、ちぅちぅ、ちあううさとにぃにぃに、ハンサムしゃんが追いついて。
「まぁ、いっか……。マルク収まってるし……」
つぶやき、まちた。
ある日ある時・うさうさ、丸め込まれる。