欲望・5
素肌が外気に晒される恐怖に、王妃は怯んで頭を左右に振ったが。
「……」
冷たく見下ろす幼馴染の目線に気づくなり、抵抗しかけた腕の動きを止める。麗しくふっくら熟れた水蜜桃はトップの飾りを寒さにみるみる膨らませながら、王妃が身動きするたぬびに美味しそうに揺れた。
「なにアイコンタクトしてんの」
そっちを見てもいないのに新王は、二人の間に流れた電波を正確に読み取った。
「……立会いなら、毛布を掛けて欲しいな」
「そんな甘えたこといえる身分?」
願いを却下され王妃はうつむく。そういえば自分は人質で、何をされても拒否権はないのだった。
「あなたにそいつが、ちょっとでも反応したら有罪」
「……?」
「うちの王妃の名誉を貶めたってことで斬首」
「アルフォンス君、それなに。本当に分からない説明して」
「男の嫉妬に理屈なんか通じません」
「君がわたしに、何の嫉妬だって?」
「兄さんの代わりにね、復讐」
「だから、なに……、ちょっと……、ま……ッ」
ぎゅ、っと、胸の果実を容赦なく揉まれて、王妃の抗議は途中で途切れてしまう。性感よりも疼痛に震えて、ぎゅっと目を閉じる。
「あなた『たち』にね、復讐。そいつのこと殺したらあなた悲しいんでしょ?」
「……痛い……。やめて……」
「兄さんの怪我の痛みは、これどころじゃないと思うよ」
「いた……」
細めた目が潤んで、涙の膜が張りそれが零れて、ようやく若い男は女の柔らかな胸を開放した。最初に痛みを与えて泣かせるのは趣味だが、それで脅して従順にする実効性もあった。形が歪むほど無慈悲に掴まれた胸には指の跡が残って、声を抑えながら泣く女の震えと合わさり、男心をそそる。
「お美しいのが、不幸のもとですねぇ」
猫が獲物をなぶるような声で、若い男は肩を竦め胸を抱いて丸くなるーろうとする女の、手首をとり無造作にシーツに貼り付ける。額に散った黒髪ごしに、怯えながら男を見返す女の、濡れた瞳はそのままの風情だ。
美しいのが不幸のもと。
形のいい乳房が充実して脹らみが、きゅっとつまっていく。
「……ぁ」
ちゅ、っと、誘われて、若い男はトップに口をつけた。
「……、ん……、んぁ……、ん……ッ」
さっきまでとは違う、濡れた柔らかな舌先に嬲られて声が漏れる。涙にぼやけた視界の中、幼馴染が自分を見ているのが分かった。けれどもう、表情はよく見えない。
「……、めて、イヤ……、噛まないで……。言うことをきくから、……、いやぁ……ッ」
わざと歯を当て脅された後で、無慈悲に挟まれ、思い切り引っ張られた。
「……い、ゃあ……」
トップは左右とも興奮に充血して桑の実を潰したような色。なかでも濡れた左側はまるで宝石のように透明に尖る。泣きながら寛恕を乞う女の両手を押さえつけた若い男は、肩を揺らしてそむけようとする動きが気に入らなかったらしい。
「……、ぁッ」
女の左手が自由になる。が、自身を庇う前に、若い男の固い指先がぷるんと見事に盛り上がる乳房を打った。
「いた……」
「なに思い上がってるの。言うこときいてくださいなんて、僕は言った覚えはないよ」
「痛い、イタ……。やめて……、ぁ……ッ」
「あなたはにぃさんに甘やかされ過ぎてる。いい加減理解して。僕はにぃさんと違うよ」
この女の愛情を切なく乞うていた兄とは。
「だから何もかもヘタだし。これでよく人妻やってこれたね」
「ごめ……、んなさ……」
「ったく、僕より幾つの年上だよあなた。まぁ、あれだ。敏感なマゾはいじってる方が面白いから、仕込みはまではなかなか、手が回らなくもあるけど」
女が目を閉じ本格的に泣き出したところで、若い男はようやく手を止める。
「ほら。じゃあ、昨日の復習からしようか」
胸をぶつのを止めた右手の、人差し指と中指を伸ばして、男は女の口元に差し出した。女はそっと目をあけ、おずおずと口を開き、男の固い指先を唇に含む。
「そぅそぅ、いーカンジ。クチの中もつるつるむにむにで、下の粘膜とよく似てるねぇ」
セックスの相手としての価値を、貶めたり持ち上げたり、若い男は、女を言葉でもいいように嬲っていく。女は口を塞がれて反論の手段も気力もなく、昨夜の閨で教えられたとおり、男の指を含んで吸い、舌を絡めて舐め、懸命に尽くした。
「覚えは悪くない」
左手も離して、若い男は乱れた女の髪を手櫛で梳いてやる。
「素材もまぁ、まぁまぁ、なかなかだし」
左手で、きゅんと凝った胸をまた弄る。女は怯えて泣きそうな顔をしたが、懲りたらしくて、拒みはしなかった。左右の張り具合を確かめるように触れた後で、左手はそのまま、胸の中央に置かれる。
「どうするんだった?」
怖い声音で囁かれる。女は震えながら、そっと自身の手を動かし、ぎこちない動きで左右の胸を掴んで、ぎゅっと中央に寄せた。
「あぁ……、悪くは、ない」
手首を女の、豊かなふくらみに挟まれて、若い男は満足そうに目を細め右手を唇から引き抜く。はぁ、っと苦しそうに喘ぐ呼吸をろくに継がないうちに、唇を塞がれて女は、再び涙目。
「ん……、ん、んン……ッ」
嫌味なほど巧みに、若さを思えば信じられないほど女を扱いなれた新王は、くちづけの角度を何度も変えて、そのたびに女の性感を煽っていく。
「はぁ……、は……」
「ほら、手がお留守になってるよ。力いれて。それとも僕にやって欲しい?」
柔らかな胸を乱暴に揉みしだかれる苦痛を思い出して、女は本当に怖かったらしい。きゅ、っと自分の胸の脹らみを自身で寄せて、男の腕を挟み、一生懸命に自分で蠢かせる。
「はは……。素直だね。悪くない……」
見下ろしながら、若い男も、さすがに満足そう。
「甘そうで美味しそうだ。色艶も形も量も文句ない。こればっかりはさぁ、どの女にもさせるってわけにはいかないし……、アバラ当たると痛いしね……」
もちろん、果実の厚みが足りなくてアバラが当たると痛いのは、男の頑丈そうな手首ではない別のもの。
「そう思うだろう?……直答を、許す」
問いかけられたのはカラダで覚えたてのに奉仕を、ぎこちなくしている女ではなかった。
「なに、せっかくここまでサービスしてるのに反応なしか。命が惜しくて竦みあがってるの?」
「俺にそのテの挑発は無意味です、閣下」
「きみ、フノーなんじゃないの?」
揶揄したつもりの軽口を。
「そうです」
あっさり肯定され、若い男の、皮肉な笑みが深くなる。