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   ビートルズ随想記(10)

 

「レット・イット・ビー・ネイキッド」を聞く

 

 表題の「レット・イット・ビー・ネイキッド」が遂に発売された。「レット・イット・ビー」の音源としてはいわゆる「正規盤」のほか、「ゲット・バック(海賊盤)」「アンソロジー」「映画/レット・イット・ビー」等々があり、いずれも微妙に異なるテイクがファンを魅了している。そこへ今回の「〜ネイキッド」が追い討ちをかけたわけだが、今回特筆すべきことはビートルズ(特にポール)が本来あるべき姿、即ちイチ押しテイクとしてこのアルバムをリリースしたことにあろう。

 ジャケット写真は右上にあるようなモノクロの反転写真である。どのような意図でこうなったのかは現時点では情報がなく、詳細不明である。参考までにその下に反転の反転写真、つまり普通の写真を掲載しておく。ジョージだけがなぜか本来のカットと異なるが、これも何か意図があるのだろうか?? どなたかご存知であれば教えて頂きたい。以下は今回の曲目の紹介である。

 1.Get Back

 正規盤や映画では終わりに出てくるナンバーだが、いきなり登場。ポールのヴォーカルが耳のすぐ近くに聞こえてきて、まるですぐそばで歌っているようである。エンディングについていた「Thanks、Mo.」以下の会話はカットされている。これはほかの曲も同様で、演奏のみをクローズアップする今回のアルバムコンセプトのようである。

 2.Dig A Pony

 この曲もヴォーカル(ジョン)がオン気味となっている。フェイドアウトは演奏後の会話をカットする意図からか、やや早いような気がする。そして次の「For You Blue」へ…。

 3.For You Blue

 前の曲と間隔がほとんどなく、ジョージが「早く俺の番にしてくれよ。」とでも言いたげな雰囲気である。

 4.The Long And Winding Road

 ある意味で今回の目玉はこの曲であろう。ポールが正規盤「レット・イット・ビー」のテイクを激しく嫌っていたことは周知の事実で、ポール自身も今回のテイクをぜひファンのみんなに聞いて欲しいという気持ちでいっぱいであったと思う。仰々しいオーケストラとコーラスが削除されることは事前にわかっていたが、実は管理人自身は「アンソロジー3」のテイクがリマスタリングされるものと思っていた。 ところが今回のテイクは映画「レット・イット・ビー」からのテイクであり、自らの不明を恥じるばかり…。 もっともこのテイク、海賊盤「In A Play Anyway」で1984年にゲットしており、ポールがピアノ中心のシンプルなアレンジを望んでいたことを具体的に知った懐かしいテイクでもある。間奏はビリー・プレストンのオルガンが入り、映画の海賊盤ビデオを何度も見た者にとっては感慨深いが、映画(又はアンソロジー)を見たことのないファンには盛り上がりに欠けるように感じるかも知れない。このあたりはファンの議論を待ちたい。

 5.Two Of Us

 「I Dig A Pigmy By〜」で始まるジョンのモノローグがお馴染みであったが、遂にカット。この曲がオープニングでないことには正直言って違和感があるな…、まぁそのうち慣れるだろうけどね。フェイドアウトのジョンの口笛が早めにカットされてしまうのが少々惜しい。

 6.I’ve Got A Feeling

 存命しているポールの曲であるせいか、ジョンとのヴォーカルの掛け合い部分やビリー・プレストンのオルガンに思い切った変更が加えられている。つまりポールはこうしたかったのだ、と言うことなのだろう。エンディングの「Oh〜Myself」以下はやはりカット。

 7.One After 909

 ジョンとポールのヴォーカルがここでもオンになっている。正規盤では聞かれないアドリブの掛け合いも挿入されている。

 8.Don’t Let Me Down

 いきなりジョンとポールの掛け合いで始まるテイクで、いわゆる「ルーフトップセッション」からのテイク。シングルやアルバム「ヘイ・ジュード」とは明らかに印象が異なる。この曲は明らかに一連のセッションで取り上げられており、正規盤に編入されてもおかしくない曲であった。今回晴れてアルバム「レット・イット・ビー」の曲となった。

 9.I Me Mine

 ジョージの曲。映画「レット・イット・ビー」のテイクと言うよりは正規盤のテイクだが、よく聞いてみるとアレンジがシンプルになっている。これも脱フィル・スペクターの趣旨なのだろう。ただジョージが生きていれば、より本人の意向が反映されたアレンジになったろうに、ああ、惜しまれる。

 10.Across The Universe

 この曲は市販されたテイクだけでも既に「正規盤」「レアリティーズ」「アンソロジー2」とあり、それぞれに個性があるためファンの好みも分かれるところである。サイト管理人自身はこの曲がインド滞在時(1968年)に生まれたこともあり「アンソロジー2」のテイクが好きである。さて今回のテイクはジョンのギターを中心としたシンプルなアレンジである。(正規盤のコーラスはカット) エンディングのリフレインでジョンのヴォーカルにエコーがかかるのはヨーコの意向か、故人の意向か…。

 11.Let It Be

 日本ではこの曲の人気が高いとのことで、今回のCDも当初は全世界同時発売のはずが日本だけ3日早く発売にこぎつけた、と言ういわくつき(?)の曲である。以前にも触れたが、1976年に管理人が初めて入手(カセットテープに録音)したビートルズの曲である。その時はシングルのテイクであった。思えばこの曲も古くからシングルとアルバムとのテイク違いは知られており、さらに「映画」「アンソロジー」「海賊盤」がテイク違いに拍車をかけていた。 そして今回---、済んだピアノの前奏に続いてポールが聞き手のすぐ前で歌うような編集がなされている。ああ、ポールはこうしたかったのだな、少なくとも2003年の今では。なお関心事であった間奏のジョージのリードギターは映画のテイクであった。そしてコーラスは今までのどのテイクにもなかった適度なシンプルさを感じさせてくれる。まさにこのテイクこそが最新版「ポールの主張」と言って良いのだろう。

 

  さて、今回のCDは2枚組みで、2枚目は「Fly On The Wall」と題した20分程度のメンバーの会話と即興集である。CD1枚にたったの20分と言うなかれ、ファン垂涎のソースや謎解きが凝縮されており、ファンの間で様々な解釈が生まれること請け合いである。この点については稿を改めてとりあげてみたい。