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    ビートルズ随想記(34)

ヤァ!ヤァ!ヤァ!の思い出

 

 

  

   今年(2014年)は1964年に有ったビートルズのイベントが50周年に当たることもあり、様々な企画がファンを楽しませている。その中でも映画「A Hard Day's Night (邦題/ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!)」公開50周年ということで8月にブルーレイディスク仕様で再発売された点は特筆される。今回この作品はデジタルリストアされており、ファンは当時よりも良いクォリティを容易に入手できるわけだ。 

   上記の“容易に〜”という表現は「販売店で容易に買える」という意味だが、かつてブルーレイはおろかビデオやDVDも無かった時代、ファンは“動くビートルズ”をTVオンエアや映画上映の僅かなチャンスで掴むしかなかった。今回はその思い出を綴ってみよう。

映画には随所に演奏シーンが挿入されていた
   

 

    自分が初めてこの映画を観たのは1986(昭和61)年の7月で、場所は横浜伊勢佐木町の「横浜オデオン座」であった。当時学生だった自分は情報誌「ぴあ」をチェックしては“動くビートルズ”探しに明け暮れていたが、そんな折に当該ロードショウがある旨を知り、夏休みのアルバイト先が横浜関内だったことも幸いして仕事後に早速「横浜オデオン座」へ駆け付けたのであった。

   この映画が1964年に初めて日本で上映された時は女の子の悲鳴が凄かったとか興奮の余りスクリーンを切り取るファンまでいたとか、その伝説には事欠かない。しかしその22年後に自分が訪れた時には(まぁ当然だが)観客は至って静か、館内も混んでおらず普通の映画鑑賞であった。


映画の主演はリンゴ、当時は意外に思われたらしい。
  

 

    この時の印象を思い起こすと、ドキュメンタリー的な映画と言うこともあってストーリーが有るようで無いようで当時は内容が良くわからなかった。字幕も展開が早くて読み切れない。そしてその字幕についても驚いた点があり、一般的な画面下に横書きで示されるものではなく画面右に縦書きで示されるのである。しかも活字体と言うよりは手書き調の字体で、未検証ながら1964年当時のフィルムだったのではなかろうか?

   ストーリーがわからなかった分、逆に個々の演奏シーンはとても楽しめた。特に「アンド・アイ・ラヴ・ハー」を歌うポールがバックライトに映し出されるシーンは印象的で、当時の女の子が絶叫したのはこんなシーンだったのかな、とスクリーンを見て思ったりした。    


「アンド・アイ・ラヴ・ハー」を切々と歌うポール

 

   

    なお映画館ではパンフレットも販売されていたので買ったが、なんとこのパンフレットは1964年上映時のものを完全復刻したもので、表紙・裏表紙はもちろん中身の文章も当時のものであった。解散後にファンになった者にとって現在進行形の資料はまさに「史料」であり、これは望外の収穫!と当時感激したのが懐かしく思い出される。

   その後「横浜オデオン座」は観客減のため2000(平成12)年に閉館したそうである。当の自分も東京在住となって伊勢佐木町や関内近辺をふらりと散策する機会が減ってしまったが、ビートルズファンとして当時足繁く通ったレコード店や古書店と共に「横浜オデオン座」でこの映画を観たことは今なお脳裏に鮮やかであり、永く思い出となることであろう。    


いかにもモノクロに着色した雰囲気の裏表紙写真