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    ビートルズ随想記(37)

“Help!”のヴォーカルに思う

 

 

  

   今から50年前の1965年4月13日はビートルズが「Help !」をアビーロードスタジオで収録した日である。この曲は明るくコメディ調な映画のタイトル曲である一方で、実はジョン自身が当時苦悩する心を切々と綴った歌詞が後に話題になったことでも知られている。 

   自分がこの曲のレコードを購入したのは1978(昭和53)年で、ほぼ前後してシングルとLPを入手している。この時に両方を聴き比べて「おやっ?」と思ったのは歌詞が別テイクで歌い方もシングルではジョンのリードヴォーカルがラフな感じ、ポールとジョージで始まるコーラス「When〜」もクリアに聴こえて「あぁシングルとLPはテイク違いなんだな」と思った。後に詳細な曲目解説を書籍で読み、これはモノラル(当時のシングル)とステレオ(LP)の差異なんだと知ったものである。


映画「Help!」のオープニングで歌うビートルズの4人
   

 

    ではなぜこのような差異が生じたのか?自分は近年刊行の「ザ・ビートルズ全曲バイブル」(日経BP社)に記載の有力説に接し、思わずおぉ〜と唸ってしまった。その概要は以下の通り。

    この曲のステレオヴァージョンにはタンバリンの音が入っているが、これはヴォーカルのパートと同じトラックに録音されていた。ところが映画冒頭の演奏シーンにはタンバリンを叩く演奏者がいない。この映像をそのままプロモ用にTV局に配布すれば当時イギリスにあった「疑似演奏禁止」コードに抵触する可能性が高かったためタンバリン抜きのヴォーカルを録り直し、シングルではこちらのテイクを採ったというわけである。疑似演奏が蔓延する現代の音楽シーンからは「おやまぁ」と思う程の事情だが、説得力ある推論であり今回取り上げた次第である。


LP「レアリティーズVol.2]裏ジャケットの曲目解説(英文)