トップページへ     The Beatles Forever へ     ビートルズ随想記へ

 

 

     ビートルズ随想記(57)

「Hot As Sun」から50周年?
 

 

     

   「今さらこのテーマを扱うの??」とベテランのファンからお叱りを受けるかもしれない今回のテーマ、それは1969年春に行われたとされる「Hot As Sun」セッションで、今や幻のセッション(実在しなかったセッション)としてファンの間では“都市伝説”となっているハナシである。

    念のため簡単に触れると、1969年1月の「Get Back」セッションと7〜8月の「Abbey Road」セッションとの間にレコーディングされた11曲がアルバム「Hot As Sun」としてリリースされるはずであった。なぜリリースが頓挫(元々音源が無いのだから当然だが)したかは省略するが、その顛末には創作とは言えストーリー性が有り、それを後年のポールが映画「ヤァ!ブロードストリートのヒントにしたとも言われている。

    なお近年では同タイトルのブートCDをよく見かけるが、これらはいずれも時代的に近接するGet Backセッション等の音源を収めたものなので間違えないようにしたい。


2018年に入手したブートCDのジャケ写真
   

  

    なお自分がこの話を知ったのは昭和60年秋刊行の「ビートルズ海賊盤事典」からで、未発表音源は有るものだと当時は驚いたものである。もっとも昭和50〜60年代にはこのセッションが実在すると信じられていたフシがあり、同時期の「アンソロジー・ビートルズ」(シンコー・ミュージック/昭和59年刊行)等にもその記事が確認できる。

   ところが平成になって「ザ・ビートルズ・レコーディング・セッション」が刊行されるとこのハナシは崩壊する。同誌はビートルズのレコーデングを年月日順に記録した一級品の資料であり、そこに「Hot As Sun」セッションを裏付ける記述は無い。逆に2月には「I Want You」「Something」等のアルバム「Abbey Road」セッションが早くも始まっていたことがわかる。

   結局このようハナシが出回ったのもビートルズが“汲めども尽きぬ音楽の泉”のような存在だったからであろう。不存在の「史実」がハッキリした点は良いとしても、未知の音源への期待が消滅して「なんだ、ガッカリ…」というのが当時のファン心理だったと言えよう。

 


同じくブートの別ジャケ写真、雰囲気は出ている