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ヘルプ(四人はアイドル)

(album)
 

 

   

   ビートルズのアルバムは現在では英国オリジナル盤を中心とした体系的なラインナップが確立されているが、LPレコードの時代・昭和50年代までは各国の編集盤もかなり乱発されていた。もちろんその当時でも英国オリジナル盤を買っておけば曲目収集や音楽性鑑賞の点では間違いなかったのだが、編集盤のなかには面白い個性を持ったアルバムもあった。今回紹介する米国編集盤「ヘルプ(四人はアイドル)」もそんな一枚である。

   この時代のアルバムなら通常は英国オリジナル盤「4人はアイドル」を収集するのが普通で、映画「Help!」収録の7曲と「イエスタディ」など同時期のレコーディング7曲の計14曲を聴ける。一方で米国編集盤「ヘルプ(四人はアイドル)」は映画「Help!」収録の7曲と同名映画収録のインストゥルメンタル5曲の計12曲である。つまりビートルズの演奏はたったの7曲のみで、ビートルズファンの常識で考えるなら買い損のアルバムであり、長らく自分もそう思っていた。

   ところが平成になり動画メディアがビデオ〜LD〜DVDと普及するにつれビートルズの動画コンテンツも容易に入手・鑑賞できるようになり、映画「Help!」も気が向いたときに自由に観られるような時代となった。すると面白いもので各シーンに流れるインストゥルメンタルBGMについても「あぁあのシーンの曲だな」と馴染めるようになり、それが今回購入した動機にもなったわけである。

   このアルバムは近年では「CAPITOL ALBUMS VOL.2」でCDとしてもリリースされているが、見開きジャケットを含め写真の大きさではこのLPの良さにはかなわない。またライナーノーツの文章にも特色があり、サントラ盤でありながら映画「Help!」を主題とした内容には殆ど触れず、「ビートルズ初期のイギリス社会」「ビートルズ初期の音楽背景」と言ったいわゆる“ビートルズ論”が展開されている。これには正直驚いたが、これは文章の内容が英国オリジナル盤「4人はアイドル」と似てしまうことを敢えて避けたためかも知れない。

   収録曲についてはオープニングの「Help!」の冒頭にジェームズ・ボンドのテーマ風イントロが付いているほか、各曲ともエコーが深めなのがCAPITOL盤らしい特色である。またインストゥルメンタル曲もインド音楽風のアレンジが多用されており、その後の彼らの音楽性を予見するかのような内容で興味深い。特に「A Hard Day's Night」「Can't Buy Me Love」「I Should Have Known Better」といった各曲のインド音楽風アレンジはぜひ聴いてみたい。(付記すると“その後の彼ら”という点では映画で4人がバハマへ逃走する際に付け髭で変装する姿が69年頃の彼らとそっくりで驚かされた点も忘れられない。)

   概して言えば米国編集盤(CAPITOL盤)英国オリジナル盤に比べ曲数が少なく、その収録曲もアルバムコンセプトを無視した継ぎはぎ的内容である等のデメリットが往々にして指摘されるものの、今回紹介した米国編集盤「ヘルプ(四人はアイドル)」は少なくとも同名映画のサントラ盤に徹している点ではアルバムコンセプトが明確であり、インストゥルメンタルナンバーについても映画のシーンを回想すれば楽しく聞ける。そんなわけでこのアルバムは米国編集盤でありながら個性的なアルバムであり、今の時代に再評価したい1枚だと思われる。

   

   購入日: 平成24年2月19日 
   購入店: 「レコファン」渋谷BEAM店
   購入価格:1980円


米国国旗帯のジャケット表、なぜか“四”が漢数字

見開きジャケット内の写真 

ジャケット裏、キャピトルLPの紹介がある

ライナーノーツには写真が多く掲載されている