日常あるいは平穏な日々(4)
洋君とミィちゃんと最近知り合ったヒロ君と肝試しをしたのにゃ。
とあるところにある洋館に幽霊が出るという噂で、
近所の猫の仲間も何匹か見たと言っていたにゃ。
しかも、中に入っていった猫のうち何匹かはそのまま帰ってこないという噂も。
幽霊を信じていない洋君は見間違いだといい、霊感のあるミィちゃんは本当にいると言い争って、
そこにヒロ君がやってきて、実際に行ってみればいいじゃないかということで洋館に来たのにゃ。
「ここからでもぉ、霊力を感じますのぉ」
裏口の扉の前に来たときに、ミィちゃんがそんなことを言ったにゃ。
私も多少霊を感じることができるので、左手がチクチクと痛むのにゃ。
「俺は何も感じないね」
洋君葉そう言って、疑わしそうにミィちゃんを見る。
ヒロ君はというと、なにやらカバンから取り出していた。
「それって何なのにゃ?」
「これは玉串です。うちの母が神社の宮司をしていて、借りてきました」
「その装束は?」
「これは狩衣と言って、正装である衣冠束帯が簡略化されたものだと思ってください。
男性神職の装束です」
ヒロ君の家って神社だったんだ。
「正式なお払いの仕方とは違うのですが、気分を盛り上げようかと思いまして」
「ま、なんでもいいから早く入ろうぜ」
洋君はそう言って、裏口の扉を開けたにゃ。
中に入ると、とても暗くて廊下が長く続いてたにゃ。
「この廊下はどこまで続くのでしょうかぁ」
10分以上も歩き続け、先が見えない状態にミィちゃんが不安そうに言ったにゃ。
「こういう時って、引き返しても無駄なのにゃ」
「これがよく言われる『廊下は続くよどこまでも』と言うものでしょうかぁ」
ということは、ここから出られないのにゃ?
バンッ!
そんなことを考えていたら、窓から突然大きな音が聞こえて来たにゃ。
みんなが窓を見ると、窓に血の色をした手形がついていたにゃ。
驚く私たちの目の前で、血の手形はどんどん増えていったにゃ。
ガシャーン!!
「みぎゃーっ!」
見る見るうちに窓いっぱいに増えたかと思うと、窓ガラスを割って手が伸びて来たにゃ。
驚いた私たちは、そのまま駆け出してしまったにゃ。
気がつくと、洋館の外にいたにゃ。
平を飛び越えてそのまま、明るいところを目指す私たち。
なんとか明るいところに来ると、全員安堵の溜息をついたにゃ。
「めちゃくちゃ怖かった」
幽霊なんか信じないと言っていた洋君がそんなことを言う。
「見ましたぁ? 洋館の2階の窓に怪しげな人影がありましたぁ」
「逃げるときにチラッと見たけど、血まみれだったのにゃ」
ミィちゃんの問いに、私はそう答える。
「僕ではまったく役に立たないので、母に言ってお払いしてもらったほうがいいと思います。
今は洋館の中だけですが、外に出たら大変です」
ヒロ君はそう言って、いつにない真剣な表情を見せる。
結局、私たちはそのまま帰り、翌日みんなに語ってきかけたにゃ。
後日ヒロ君に聞いたところ、なんとかお払いはできたと言っていたにゃ。
これで猫たちも安心して歩けるにゃ。
おわり
4周年記念ということで、記念小説擬似日常を描いてみたにゃ。
もちろん、この話はフィクションにゃ。
登場する人物、団体などは実在の人物、団体とは関係ないにゃ。
どうだったかにゃ?
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