誰にも言えなかったこと

流産して、いろいろなことを考えた。

最初、もう赤ちゃんがだめかもしれないと聞かされた時は
、 『この子じゃなきゃだめだ。この子がだめなら、もう子供はつくれない』と思った。
そして、たくさんの人たちから励まされ、
『赤ちゃんはきっといつか帰ってきてくれる。それまでのお別れだ。』と思えるようになった。

そしたらまた別の悲しみがおそってきた・・・
『何でこんな目に遭わなくちゃならないの?』

私には、誰にも言えなかったことがある。

私は正直なところ、子供が苦手なほうだ。
どう接してよいかわからないし、子供連れお客さんが来て、
子供が『ギャー!』なんて騒ぐとしかめっ面をするタイプなのだ。
昔は『もし結婚しても子供はいなくてもいいかもしれない』と思ったことさえある。

そんな私が変わったのが、とてもお世話になった先輩に子供が産まれてから。
無条件でかわいかった。泣いても騒いでも嫌な気持ちにならなかった。
『自分にも子供が出来たら、もっとかわいいんだろうな。すてきな気持ちになれるんだろうな。』
なんて考えた。

そして将来だんなさまになる“彼”に出会った。
結婚前、二人でたくさん話し、
『この人の子供がほしい。この人と家族をつくりたい。』と思うようになった。
彼も子供を、家族を望んでいた。

避妊をしていないのに、なかなか子供は出来なかった。
私には、双角子宮という奇形があり、妊娠しにくいんじゃないかと気になっていた。
そうして通い始めた不妊外来。
原因は私にありそうだった。

あせった・・・。
もしこのまま出来なかったら・・・
彼の夢を叶えて上げられなかったら・・・
孫を楽しみにしている義父母に申し訳ない・・・
もしずっと出来なくて、周りに「赤ちゃん、まだ?どうして?」なんて言われるのは嫌だ・・・

この頃の私は、“純粋な気持ち”じゃなくて、周りのために、
自分が傷つきたくないが為に、子供が欲しかったんだろうか。

そうして妊娠。うれしかった。やはりうれしかった。
家族ができる。 義父母も喜んでくれるだろう。
これで、周りに何も言われなくてすむ・・・

でも、8週で流産してしまった・・・
突然、私の中から命が消えた・・・
たとえようのない悲しみ、身を引きちぎられるような辛さだった。
実父に、泣いて電話をかけた。
父は、おまえのせいじゃないよという意味で
『神様が決めることだから、しかたがない。』と言った。

でも、私には、『じゃあ、私は神様に選ばれなかったの?母親になる資格も無いからなの?』
という風にしか考えることが出来なかった。

私が子供嫌いだからなの?
周りのため、自分のエゴで子供を望んでいたような人間だから、
神様がこの子を連れて行ってしまったんだ。
神様に心の中を見透かされた気がした。
私のせいだ・・・

自分を責めて、神様を恨んだ・・・

でも、この悲しみの中で、赤ちゃんをなくしてようやく気がついた。
忘れていた一番大切なことを・・・
本当に短い間だったけど、ちょっとしか一緒にいられなかったけど
私は、心からこの子を愛していたんだなぁ、と。
他人のために子供を産もうとしていたわけじゃないんだって。

もっともっと愛してあげたかったな。
産んであげたかった。パパとママの顔を見せてあげたかったよ。

だから、もし、もう一度会える時がきたら、たくさん愛してあげよう。
いつかその時が来る日まで・・・