8月9日、台風11号に伴う雨の中、阪神百貨店梅田本店で8月6日から12日まで開催されていた「高野山1200年至宝展」に行ってきました。(来年が高野山開創1200年ということで、そのプレイベントの一つのようです。)
この展覧会にぜひ行こうと思ったのは、そのチラシに、3D技術で復元した陶製の空海(弘法大師)の像に手で触れられる、とあったからです。空海については以前に数冊本を読んだこともあり、また本展覧会では、これまた最新のデジタル技術で制作当初の鮮やかな彩色を再現したという両界曼荼羅(血曼荼羅)も展示されるということで、楽しみにして出かけました。
展覧会は、全体としては、空海関連のいろいろな絵図や巻物、掛け軸、書、仏像類や宝具、さらに曼荼羅など、空海と高野山について多面的に紹介されていてよかったです。会場内はお香のにおいと声明が流れていて、それらしい雰囲気も感じさせます。また、一緒に行った人に各展示の解説文も読んでもらいましたが、例えば、弘法大師行状図絵の各場面の解説や、不動明王や愛染明王(頭の上に獅子が乗っていて、六臂)などの仏像の解説など、とても具体的に姿や動きが書かれていて、見えない私にもよく分かりました。とくに空海の行状図は、その誕生から入定まで、各図の解説文を読んでもらうと、いろいろな不思議な現象もふくめ、空海の生涯がざあっと頭の中に思い浮かぶようでした。
しかし、お目当ての空海の像は、確かに少しは触れられましたが、「膝だけに触れてください」ということで、私のように空海の像はいったいどんなものだろうと思って触るという人に応えるものではありませんでした。もちろん、膝に触れることでいわば弘法大師と結縁するという意味では、一般の人たちにはとても魅力だとは思いますが。ちなみに、昨年10月に行った平等院の「鳳凰堂修理特別展『ほとけにふれる−結縁のしるし−』」では、雲中供養菩薩像の模刻品の全体に触れることができました。
まず、弘法大師像として有名な「萬日大師像」(高さ83.5cm)の木像が展示されていて、その近くに、大きさも形もまったく同じ陶製の復元品があり、こちらに触れることができます。高さ60cmくらいの台の上に乗っていて、幅は80cmくらいもあり、両膝が広がった状態で座っている像です。一番下は、衣のふわあとした感じの曲面が続いています。その上は両膝で、衣の襞がゆるやかな曲線が幾本も横に走っています。さらに上の方に手を伸ばすと、両手にも触れることができました。左手は数珠を持って左膝の上に乗せています。右手は、肘を曲げ胸の前でぎゅっとねじって親指が左側になるような状態で五鈷杵(中央は棒のようになっていて、その両側に2つずつ輪のようなのが付いている)を握っています。胸から肩、さらに顔にはまったく触れることはできませんでしたが、首をやや左に傾けているということで、これが萬日大師像の特徴のようです。
また、空海の像とともに、もう一つ今回の展覧会で私があこがれていたのは両界曼荼羅です。この両界曼荼羅は、入唐した空海が、密教の世界・大日如来の解く心理の奥義は言葉で説明するのは難しく視覚的に表現したほうが理解しやすいということで、空海の師・恵果阿闍梨(746〜805年)が絵師に描かせたものを806年に日本に持ち帰ったものの一つの写本で、平清盛が自分の頭の血を胎蔵界曼荼羅の大日如来の宝冠部分の絵の具に混ぜて1156年に奉納したと伝えられるものだそうです。金剛界・胎蔵界とも、縦4.2m、横3.9mもある大きなもので、それぞれ幾つかの区画に分かれ細かく仏が無数に描かれているようです。そのうち、両界曼荼羅の全体を点図にしてもらって私なりにはっきりしたイメージをとらえられればと思っています。
展覧会を一巡した後、販売コーナーにも寄ってみましたが、ここで思いがけなくも良い品に触ることができました。
まず、高野山にある多宝塔のとても精巧な杉製の模型です。縦横とも30cm余、高さ50cmくらいの大きさです。屋根は2層になっていて、それぞれ寄棟風で丁寧に桧皮葺の感じが再現されています。下のほうの屋根の下の建物は四角形なのにたいして、上のほうの屋根の下の建物は円い形になっています。下の四角い建物には会談が付いていて、その先に扉があり、その扉を開けて中に入れるようになっています。上のほうの屋根の上には、8弁の花があり、その上に直径3cmくらいの九輪が積み重なり、さらにその上に宝珠が乗っています。全体は組立式になっていて、中に物を入れたりもできるそうです。(ちなみに、お値段は91万円?とか。)また、松製の撫で地蔵が2点ありました。高さ50〜60cmほど、手を合わせ、目はやや上を向き、頬はふっくらした感じで、なかなか好ましかったです。
そして、触った感じはあまり好ましいとは言えませんが、金属製の弘法大師像がありました。全体の大きさは、幅8cm、奥行5cm、高さ10cmほどで、大きな椅子の座面に結跏趺坐?で座っている像です。像の姿は、顔が正面を向いているほかは先の「萬日大師像」とほぼ同じ(左手に数珠、右手に五鈷杵を持っている)で、左膝の前には水瓶(すいびょう)があり、また、椅子の前の下のほうの桟のような所には沓(くつ)が1足ぬいだ状態で置かれています。空海の像を触って知るにはだいぶ小さくて分かりにくいですが、値段は2千円余と手ごろでしたし、高野山展の記念にということで、買って帰りました。
今回の高野山展では、一番の目的の空海の像には十分に触ることはできませんでしたが、代わりに小さな金属製の像をゲットできましたし、また空海の行状図絵の解説を読んでもらったり、ネットでいろいろ空海のことを調べたりして(とくに、
エンサイクロメディア空海 は参考になった)、空海についてあれこれ思いをめぐらせる機会になりました。
(2014年8月12日)