カタクリに触る!

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 4月30日、5月15日〜6月29日に開催される木彫作品展「小原二三夫 作品展 祈りのイメージ」に出品する作品4点を持って、六甲山の上美術館に行きました。これで、私の作品11点は用意できました。今回は太田博さんが友情出展として3点を展示してくれることになっていて、来館される方々にも大いに楽しんでもらえるのではと思っています。
 六甲山の上美術館を1時前に出て、六甲高山植物園と六甲山自然保護センターに立ち寄りました。そして、高山植物園ではなんと、カタクリに触ることができました。また、自然保護センターでも、ヤマドリなどの剥製に触りました。
 カタクリは、知り合いが昨年葛城山に見に行って、その感想を聞いて、私もぜひ触ってみたいと思っていました。そして、六甲高山植物園にも生育していることを知り、できればじっくり触ってみたいと思っていました。でも、気が付いたときには、カタクリの見ごろはとうに過ぎ(3月下旬から4月半ばだったそうです)、今年はもう無理だなあと思っていました。それでも、その他の花もいろいろ咲いているだろうと、高山植物園に行ってみました。
 受付で、今ヒマラヤの青いケシが1輪だけ咲いていると聞いて、まずガラス温室に向かいました。
青いケシは、咲いているのは確かに1輪だけということで、近くにある青いケシにそっと触れてみましたが、どれもづぼみでした。でも、同じ地域にあるという黄色いケシは開いていて、そっと触ってみると、なんともきれいな形なのでしょう!直径3cmくらいのまん丸いカップのような形(深めのパラボラアンテナのような形とも言えそう)で、表面のつるうっとした感触もいいです。
 そこへ、聞き覚えのある声、昨年数回案内と解説をしていただいたスタッフの方が数十人のグループを案内してやってきました。私たちもそのグループの後ろに付いてその方の解説を聞くことにしました。間もなく案内は終了、彼女も私のことを覚えてくれていて、私ができればカタクリに触ってみたいと思っていたのだが、と話すと、今は種には触れますよと言って、カタクリが群生している所まで案内してくださいました。そしたら、彼女もびっくり、1輪だけカタクリがまだ開いていたのです!
 高さ15cmほどの細い茎の先がきゅっと下向きに曲がり、そこに細い細い花びらが数枚広がっていることが分かります。数えてもらうと、6枚だそうです。なんともか弱そうで、わずかにかするくらいにそっと触れるだけです。中心には、斜め下に向って細い糸のようなのが2cm以上は伸びています。たぶん雌しべなのでしょう、その回りにはなにかふわふわとしたようなのがあるようで、それは雄しべなのかもしれません(調べてみると、花が開きかけの時は、雌しべは短くて、6本の雄しべの中に隠れていますが、十分に開くと雌しべがぐんと伸びてくるようです。自家受粉を避ける意味合いもあるのでしょう)。茎の根元からは、両側に、長さ10cm弱の細長い葉が1枚ずつ地面に沿うように広がっています。軟かくてとても湿ったような感じです。すでに枯れている葉っぱもたくさんありました。これ以外の、ずらあっと並んでいるカタクリは、もうどれも花は終わって種を付けていました。ぷくうっと大きく膨らんで、3つにくびれているものもありました。カタクリは、花を付けるまでには、7,8年はかかるとのこと、こういうのを可憐というのでしょうか、その姿にそっと触れられたことに感動です。シクラメンもそうですが、うつむき加減に咲く花には魅かれてしまいます。
 その後も、ゆっくり園内を散策しました。シャクナゲは開きかけていて、横に大きく広がった多くの枝先に、高さ5cmほどの花が付いています。花の先はいくつかに分かれかけていました。花のすぐ下からは、長さ10cmくらいの細長い硬い葉が10枚くらいも垂れ下がるように伸びています。エンコウソウ(猿猴草)という花にも初めて触りました。黄色の小さな花で、2輪ずつあります。名前の由来は、茎の先から伸びている花柄の様子が手長猿を思わせるからだとか。クリンソウ(九輪草)にも触りました。ふわふわっとした感じの小さな花がたくさん群れるように咲いています。名前の由来は、段になって輪生する花の様子が、仏塔の上にある九輪に似ているからだとか。段のようにはなってはいましたが、九輪とまでは言えなさそうです。
 
 2時過ぎに植物園を出て、バスで自然保護スンターのある記念台へ。数年前に、自然保護センターで剥製を展示しているということを聞いたことがあって、そのことについて尋ねてみると、今も展示していて、見えない人は特別に触って良いということでした。
 イタチ、テン、ノウサギ、リス、アナグマ、イノシシ、ウリボウ(瓜坊。イノシシの子。体形や毛色がマクワウリに似ていることからそう呼ばれるとか)、ヤマドリの8種類が展示されていました。中でもいちばん良かったのは、ヤマドリです。2点展示されていて、1つは木にとまっていて羽を閉じかげんにしている所、翼幅が25cmくらい、尾羽の先までの長さが50cm弱くらいだったと思います。そしてもう1つは、ちょうど木に降り立ったところなのでしょうか、頭を下に向け、脚は水平から30度くらいの角度で枝にしっかりつかまり、両翼を30cm余に広げ、尾羽も1m近くも上にぴんと伸ばしています。とても力あふれる、緊張感のある姿でした。また、リスは尻尾をふくめても20cm弱の大きさでしたが、両前足で松ぼっくりをはさんでいて、とてもかわいらしい感じです(これはよく見られるリスの姿だとか)。そして、その下には、松ぼっくりを食べ終わった後に残った中央の細い軸のようなのが置かれていました。イノシシのお尻の下にも、ぼそぼそした感じの排泄物が置かれていて、それぞれの動物の生活も少し感じ取れるような展示になっていました。
 キベリハムシという、ちょっと変わった昆虫の模型もありました。模型の大きさは3cm弱ですが、実際の大きさはずっと小さくて、1cm余くらいだとか。頭部は小さく(目ははっきり分かった)、後ろの翅の部分が大きく丸い感じです。この虫は、兵庫県の主に六甲山系に100年ほど前から住むようになった外来種だそうです。翅の縁が黄色で、葉を食べる虫なので「キベリハムシ」と言われるそうです。日本には不思議なことに、雌しかいないそうです。それなのに絶滅せずに繁殖しているのは、単為生殖という変わった殖え方によるとのことです。(単為生殖とは、本来は雌雄の両個体があって有性生殖を行う生物が、一方の個体のみで子ができる生殖方法。多くの場合は、雌の卵が雄の精子なしに分裂増殖して新しい個体ができる。ハムシの仲間だけでなく、アリマキは夏は単為生殖をし、秋には有性生殖をするそうです。また、単為生殖は自然に起こるだけでなく、人為的に刺激を加えるといろいろな動物に認められることがあるとのことです。)
 
 カタクリに触ることができたことをはじめ、いろいろな体験・発見のあった1日でした。
 
(2016年5月5日)