国立民族学博物館のビーズ体験&「陽気な墓」

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 5月1日、国立民族学博物館で開催中の特別展「ビーズ――つなぐ・かざる・みせる」に合せて民博のボランティアの方々が企画した視覚障がい者向けプログラム「ビーズをつないで世界を知ろう!」に参加しました。
 午後1時に特別展会場に到着、まず特別展をざっと言葉で説明してもらいながら回りました。穴を開けられそうなものは何でもビーズになり、それをいろいろつなげて、飾りにしてしまう、そういうことを数万年前から人々が行なってきたらしいことが分かります。
 それから、ビーズをつなぐ体験です。こげ茶の小さな丸いビーズと、オレンジやピンクやグリーンなどいろいろな色の大きなビーズ、それに宝貝をビニル製?の紐に通します。宝貝を中央にして、その両側に小さなビーズと大きなビーズを、色を教えてもらいながら計10個ほど通し、最後に紐を結びます(しっかりと、ほどけないように結ぶのが難しくて、ボランティアの方にしてもらいました)。けっこうきれいに出来上がったようで、家に持ち帰ったらかわいい!と言って飾ってくれました。
 その後は、長さ2cmくらいの宝貝に小さなドリルを使って穴を開ける体験です。台上にある窪みの所に宝貝を、開いた口のほうを上にしておき、その中央に合わせてドリルの先を下ろし、貝を左手指で押えながら、最初はゆっくり、ドリルを右手で回します。ドリルの先がしっかり貝に食い込みはじめてからは、力を入れて回します。貝殻が分厚かったのでしょうか、穴が貫通するまでかなり時間がかかりました。たぶん10分近くドリルを回していたと思います。貫通すると手ごたえが変って、ドリルを反対に回しながら貝をはずしました。うまく中央に小さな穴が開いていました。
 この穴を開けた宝貝と、ビーズのいろいろな材料の中からジュズダマを選び、またつなぐ材料からてぐすを選び、小さなビーズの輪を作りました。
 体験の後は、いろいろなビーズを使った品物に触りました。ヒョウタンの上にビーズをたくさんくっつけて、振るとマラカスのような良い音が出るものもあり、ビーズは飾るだけではないのだ、ということが分かりました。ビーズの材料は、ガラスやプラスチックだけでなく、ダチョウの卵の殻、木の実、植物の種、骨、貝、石、木、竹、陶器、紙(とがった細長い紙を巻いて固めたようなもの)、など何でもありという感じでした。中には、カナブン、スズメバチの頭など、ちょっと考えられないようなビーズもあるそうです。作品としては、容器とその蓋の全面が小さなビーズで覆われているもの、ワイヤーに小さなビーズを付けて昆虫(蠅?のような感じ)やオウムの形にしたもの、ビーズ付きの細い紐を4つ編みにしてねじったような太い紐、女性の上着で胸の回りや下に下がったビーズの飾り、いろいろな形をしたなにかの実?を連ねたすだれなど、とても気に入ったものもありました。
 
 ビーズ体験の後は、常設のヨーロッパと西アジアの展示を少し案内してもらいました。
 ヨーロッパの展示では、まずパンの模型。イタリアやドイツのパンに触りました(ライムギパンは懐しかったなあ!)。
 次に、ルーマニアの北西部のマラムレシュ地方のサプンツァ村の「陽気な墓」。これはとてもよかったです。キリスト教の世界にこんなものが、という感じでした。高さ2mくらいある木製の墓標(上部は屋根のような形になっていた)で、板の表面に浮彫りの絵が描かれまた幾何学的な線や文字?のようなのが彫られています。3つの墓標に触りました。それぞれに、おばあさんが椅子に座って糸を紡いでいる様子、2人が両側に向い合って椅子に座り、その間に酒瓶が置かれていて、たぶん酒が好きで友人と酒を酌み交わしている様子、立っている司祭の前に跪いて手を前に出して祈っている女性(信仰深かったのでしょうか)が描かれていました。着色もされていて明るい雰囲気のようです。サプンツァ村の墓地には、このような生前のその人ならではのエピソードを描いた墓標が林立していて、今は観光ツアーも行われているとか。このような墓標は、この村のある職人が半世紀ほど前に制作しはじめ、今は2代目の方が作っているとか。亡くなった人は、記憶の中に生きています。墓地に行って、各人の生前の様子を彷彿させる絵と出会い、その人と会えるような感じがするようで、死者をしのびつながるとても良い方法だと思いました。
 ギリシャ正教の大主教祭服と司祭服にも触りました。大主教の祭服は、あちこちに飾りや房(この房は触ってとてもここちよかった)、鈴が付き、また頭には冠のようなのがあり、とにかく豪華です。胸には十字架のほかに、マリアが描かれたつるつるの円盤(周りには小さな丸い珠のようなのが並んでいる)が下がっています。これに比べて、司祭服はとても質素で、全体にワンピースのような感じで、胸の簡素な十字架以外、とくに飾りのようなものはないようです。偶像崇拝を禁止しているにもかかわらず、見た目でこんなにも差をつけているのですから、やはり人間はどこでもそんなに変わらないのかなあ?などと思ってしまいました。
 西アジアの展示では、とくに楽器の展示に興味がありました。カーヌーンとナーイに触りました。これら2つは、ウードとともに、アラブ世界の伝統音楽で重要な楽器のようです(私は最近琵琶や三味線に興味があって、ウードは琵琶のルーツと考えられているとか聞いていたので、できればこれにも触ってみたかったです)。カーヌーンは、3本1組の弦が30本近くも平たい箱(右下と右上は直角、左下は60度くらい、左上は120度くらいの台形)の上に張られています。左端にはずらあっと斜めに糸巻き?のような棒が並んでいます。右側には駒はありますが、フレットのようなものはなく、薄い爪のようなので弾くようです。共鳴するような広い空間はなさそうでしたので、たぶんぽろぽろぽろといったようなやわらかい音が出るように思いました。ナーイは、直径2cmほど、長さ50cmくらいから30数cmくらいのものまで数本並べて展示してありました。触った感じはちょっと竹のようにも思いましたが、葦だそうです。5、6個くらい穴が空いていました。その他、エジプトのカイロで人気だというベリーダンスのなんとも豪華な衣装にも触りました。
 
 今回のビーズの展示と体験はとても楽しかったですし、また常設の展示では、陽気な墓やベリーダンスなど、新しい文化、もしかすると伝統になるかも知れないような息吹にもふれられてよかったです。
 
(2017年5月3日)