琵琶などにふれる――浜松市楽器博物館

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 8月5日、十和田市の実家に帰省する途中、浜松市楽器博物館を見学しました。以前から見えない人たちがその発展に寄与した琵琶や三味線に興味を持っていましたが、あまり触ったことがなかったので、琵琶などに触れて解説もしてほしいとお願いし、今回の見学になりました。
 午前10時半ころ楽器博物館に到着、早速アジアの展示室で、琵琶、ピパ、ウード、リュートに触れました。
 琵琶は、長さ1mほどもあるかなり大きなものでした。全体にすべすべしていて、下のほうは厚さ5cm余の中が空洞の楕円形(先のほうが細くなっていて、ふつう洋ナシ形と表現されている)の胴になっていて、胴の上のほうの両脇にはきれいな三日月形の凸線があり、さらにそのすぐ上にはなにか草?のような模様が浮き出しています。胴からはまっすぐ棹が伸び5本の絃と5個のしっかりした柱(フレット)があります。さらに棹の先は直角に曲がって20cmくらい後ろに伸び、その左右に太い糸巻き(絃を巻いている棒)が5個あります。後で触った他の琵琶もだいたいの形はこれと同じですが、他の琵琶が4絃4柱であったのにたいし、この琵琶は5絃5柱でちょっと変っていると思いました。調べてみると、正倉院には遣唐使が持ち帰った琵琶が5つ保存されており、これらのうち4つが4絃で、1つが5絃でかつ胴から棹がまっすぐ伸びている形だとのことで、私が触った琵琶は後者の型の琵琶だと思います(この型はインド起源だということです。その他はペルシア起源)。
 ピパ(漢字では琵琶と書く)は、おおよその形は琵琶に似ていますが、絃が4本で、フレットがなんと30個ほどもありました(胴の前面の中央には共鳴用の穴があり、フレットはその辺りまで連なっていますが、そこでは細いほうの絃の所にだけフレットが刻まれている)。棹の先端はほぼ直角に曲がり、その両側には絃の数と同じだけ小さな板のようなペグ(糸巻き)が並んでいます。バチではなく、5指に爪をつけて演奏するそうです。YouTubeでピパの演奏を聞いてみると、とても華やかな感じの音色で、きれいなトレモロのような音が続いていました。
 ウードは、触ってびっくりでした。胴の背面がふっくらとふくらんでいて、私はついお尻のふくらみを連想してしまいました。これは確かに洋ナシを縦半分に切った時の形そっくりです。よく触ってみると、このきれいなふくらみにもかすかに多くのゆるやかな角のようなのがあって、多数の細い木の板を組み合わせて作っていることが分かります。絃は11本で、一番太い絃1本を除いて、その他の10本は、2本が1組にまとめられてそれが5本になっています。棹は短く、胴からかなり曲がって付いています。フレットのようなのはないようです。ウードのバチにも触りました。材質はよく分かりませんが、長さ10cmほどのとても弾力に富む薄い板のようなものでした(やわらかい音が出るような気がします)。
 リュートは、形はウードにかなりよく似ていて、胴は洋ナシを縦半分に割ったような形です。ただし、ウードよりも曲面が角張っていて、いくつもの薄い板を並べて立体を作っていることが触ってよく分かります。絃は15本で、2本が1組になったのが7本、単独のものが1本でした。高さの低いフレットのようなのが11個?ありました。以前は、絃に羊の腸が使われていたとか。
 これら4つの撥弦楽器は、ササン朝ペルシアのバルバットという楽器(ただし現存はしていないそうです)にさかのぼるらしいです。それが、西に向っては、7世紀以降イスラム世界に伝わってウードとなり、さらに9世紀以降ヨーロッパに伝わってリュートになっていきました。いっぽう、東に向っては、中国や日本に伝えられますが、中国ではどんどん改良が進み古型は残っておらず、日本の琵琶のほうが古い形をとどめているとのことです。
 
 次に、日本の展示室で、各種の琵琶や三味線に触りました。平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶に触りましたが、いずれも絃が4本、柱(フレット)が4個でした。平家琵琶は、長さ70〜80cmくらい、胴の前面の板が前にせり出すようにちょっとふくらんでいて、絃との間がごく狭くなっています(また柱もかなり低いです)。絃を強く弾くと絃が胴の板などに触れてビイーンというようなさわりを出すのかもと思いました。バチは、先の幅が15cmくらいあり薄かったです。薩摩琵琶は豪華で立派という感じを受けました。平家琵琶よりちょっと大きめの感じで、とくに棹の先端のぐうっと曲がった部分が大きく、また4つの柱は高さ2cm以上もあるしっかりしたものでした。さらにバチは扇形に先が大きく広がり幅30cm以上もあります。筑前琵琶は、薩摩琵琶よりだいぶ小ぶりの感じで、胴の前面には桐が使われていて薩摩琵琶よりだいぶやわらかい音が出るそうです。バチは幅10cmくらいで厚めでした。
 三味線としては、極細棹(柳川三味線)、細棹、中棹、太棹、それに津軽三味線に触りました。いずれの三味線も、中が空洞の四角い箱のような形の胴に棹が付いていて、絃は3本、柱(フレット)はありません。胴の表面には猫の皮(柳川三味線では子猫の皮、津軽三味線では犬の皮)が張られています。また、津軽三味線を除いて、棹の先のほうの糸巻きの手前辺りに横にゆるやかな窪みがあり、一の糸が他の二の糸や三の糸に比べて深く入り込んでいて、棹に触れそうになっています(これでさわりの音が出るのでしょう)。津軽三味線では、棹の先の糸巻きの手前辺りに、一の糸の部分の下にだけ細い横の凸線が浮き出していて、これがさわりを出すようになっているようです。また、棹は紅木(こうき。インド・ミャンマーに産するマメ科の小高木)という珍しい木で作られているとか。棹をよく触ってみると、木のつなぎ目のようなわずかなひっかかりがありました。棹はふつう3つの紅木の木をつないで作っているそうです。(胴の側面の部分も4枚の木を組合せて作られており、三味線の部品の数はけっこう多そうです。)
 柳川三味線は他の三味線に比べてちょっときゃしゃな感じで、棹の幅も2.5cmくらいでしょうか、一番細いです。調べてみると、柳川三味線は、17世紀に京都で活躍した柳川検校(?〜1680年)にまでさかのぼり、各種の三味線の中ではもっとも古型をとどめているようです。細棹、中棹、太棹と少しずつ棹が太くなり、太棹では棹の幅が4cmくらいだったように思います(津軽三味線の棹は太棹とほぼ同じ幅)。細棹は長唄で、中棹は地歌で、太棹は義太夫でよく用いられるとか。各三味線とバチとの関係はよく覚えていませんが、大きく広がったバチの先端に3角形の象牙を用いているものもありました。津軽三味線のバチは小さめで、たぶん鼈甲を用いていたように思います。
 
 その後、11時からギャラリートークがあるということで、それに参加しました。ギャラリートークは毎日数回10分間ずつ展示品の解説をするというもので、私が参加したギャラリートークは、ピアノについての簡単な解説と演奏でした。現在のピアノは88鍵(7オクターブ)が普通ですが、今回演奏するのは54鍵(4オクターブ)でピアノの基本型といえるものです、という説明があり、演奏が始まりました。その演奏を聞いて私はすぐ、ピアノというよりチェンバロに音は似ているなあと思いました。そしたら次にチェンバロの演奏が始まりました。チェンバロそのものも演奏者も良かったのでしょう、やさしいチェンバロの音でとてもここちよかったです。始めに演奏したのは、1700年ころイタリア・フィレンツェのクリストフォリ(Bartolomeo Cristofori: 1655〜1730年)が製作したグラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(gravicembalo col piano e forte: 小さな音から大きな音まで出せるチェンバロの意)だそうです。(Wikipediaによると、私が聞いたのは、クリストフォリが1720年製作、ニューヨーク・メトロポリタン美術館所蔵のものを元にして、1995年に河合楽器が製作したレプリカらしいです。)チェンバロとこの初期のピアノの違いについて、チェンバロは弦をプレクトラムという爪で弾くのにたいし、ピアノは金属製の弦をハンマーで叩いており、チェンバロでは指に加える力の強弱が音量にほとんど反映されないのにたいして、ピアノでは指の力の強弱がそのまま音の強弱になるということを、実演しながら説明してもらいました。このチェンバロっぽい音の初期のピアノは、打鍵から消音までの複雑な機構などは現在のピアノとほとんど変わらないそうです。ただ、このピアノは頑丈な箱のようなものの中にしっかりと収められていないようなので、今のピアノとはだいぶ違う音色になっているのではないでしょうか。
 ギャラリートークの後は、無料のイヤホンガイドでいろいろな楽器の解説と音を楽しみました。たぶん50種くらい聞いてあまりよくは覚えていませんが、韓国のテーグム(テグムとも)がとくに印象に残っています。テーグムは大きな横笛ですが、途中の孔に葦の皮が付いていて、高い音の時にはこの葦の皮がクラリネットかなにかの音のようなピーーという音を出します。深い笛の音と高いピーという音の組合せはなんとも独特の音の世界のように感じました。
 
 今回は1時間くらいの見学でしたが、事前に連絡して希望を伝えると興味のある楽器について可能ならば触れながら解説してもらえるとのことですので、ぜひもう1度ゆっくりと訪れたいと思っています。また体験ルームでもいろいろな楽器の演奏が楽しめるとのことですので、次回はそれも体験したいと思っています。
(2017年8月15日)