3月1日、神戸市立青少年科学館を見学しました。隕石が多数展示されていることが分かり、できればスタッフの方に詳しく説明してほしいと事前に連絡して行きました。
触れられたのは、隕石として最大のあの有名なホバ(Hoba)隕石。ホバ隕石は鉄隕石で、展示されていたのは、長さ50〜60cm、幅・高さとも30cm余くらいの大きさで、377kgあるそうです。あちこちに、径が5cmから10cm弱くらいの楕円ないし円形のくぼみがあります(一部はレグマグリプトと呼ばれるへこみかもと思いました)。 1920年、ナミビアで発見されました。当初は 66トンくらいあったらしいですが、研究用に切り出されたり乱暴に壊されて持ち出されたりして、今は 60トンくらいになっているそうです。縦横とも2.7m、厚さ0.9mの平たい形で、今も現地にあるそうです。鉄ニッケル合金にはニッケルが16%含まれ、アタキサイトに属します(化学的分類では IVB)。
神戸隕石の地元ということなのでしょう、神戸隕石そのものはありませんでしたが、隕石が当たって穴があいたスレート?の屋根が展示されていました。穴は手のひらより少し小さいくらいの大きさだとか。
その他、20個ほどのいろいろな隕石が展示されていました。表示は、名前と、場所、落下あるいは発見年、重さだけで、それをスタッフの方に読んでもらってメモしました。以下、そのメモを手がかりに調べた内容を書きます。名前はカタカナで書かれていて、一部調べのつかないものもありました。
ハイパーシン・コンドライト 721g、アメリカ・テキサス。ハイパーシン・コンドライトは、普通コンドライトの L コンドライト(金属鉄が少ない)のことです。年はメモされていませんが、おそらく1955年にテキサス州の Hale Countyで見つかったエドモンソン(Edmonson (a))隕石だと思います。(ハイパーシン・コンドライトとして、福井県立恐竜博物館にも所蔵されていました。)重さは12kgで、L6だそうです。エドモンソン隕石と呼ばれているものには1981年に見つかった Edmonson (b) もあって、こちらは ブロンザイト・コンドライトで h4だそうです。
アンホテライト・コンドライト 600g、メキシコ。アンホテライト・コンドライトは、普通コンドライトの LL コンドライト(鉄もその他の金属も少ない)のことです。調べてみましたが、具体的にはよく分かりませんでした。
●落下が目撃された隕石たち
シホテアリン 98g、ロシア、1947年。シホテアリン(Sikhote Alin)隕石は、1947年2月12日午前10時30分頃、ロシアのウラジオストック北部、シホテアリンに、隕石雨となって落下した鉄隕石です。強烈な光と落雷のような音とともに、約2平方キロメートルの範囲に多数の隕石が落下、120ものクレーター(最大のものは直径26m、深さ6m)ができたと言います。上空には煙が発生し、数時間消えなかったそうです。総回収量は約 70トン、最大のものは 2トン近くありました。なんとも恐ろしいような光景です。(シホテアリン隕石は、粗粒オクタヘドライトで、IIAB)
ザグ 4.8g、モロッコ、1998年。ザグ(ZAG)隕石は、1998年8月4日から5日にかけて、モロッコのザグの近くの山に落下した隕石。地元の人々が約175kgの隕石を回収しました。h3〜6の普通コンドライトで、中から水を含んだ岩塩が見つかっていて、珍しい隕石のようです。
ガオ 48g、ブルキナファソ、1960年。これは、ガオ・ギニー(Gao-Guenie)隕石で、1960年3月5日午後5時頃、ブルキナファソのガオ・ギニーに落下。3回の衝撃音の後、数千の隕石が70平方キロメートルの範囲に落下したそうです。普通コンドライトで、H5。
アレンデ 4g、メキシコ、1969年。これは、アエンデ(Allende)隕石のこと。有名な炭素質隕石(CV3)で、1969年2月8日午前1時ころ、メキシコのチワワ州のアエンデ村付近の10×50kmほどの広範囲に数千個の隕石雨となって落下、総重量は5トンくらい、その内3トンくらいが回収され、よく研究もされているようです。この隕石の内部には、白っぽい不定形のCAI(Ca-Al rich inclusion)と呼ばれる包有物が見られ、この CAI から太陽系最古の年代45.67億年前が測定されています。また、CAI からは モアッサン石という微小な炭化珪素が見つかっていて、これは超新星爆発の際に吹き飛ばされた粒子由来のものだとのこと、太陽系形成以前の情報まで含まれているというわけです。
ランガラ 7g、インド、1937年。これについてはよく分かりませんでした。
ホルブルック 5.8g、アメリカ・アリゾナ州、1912年。展示されていたのは、小石のようなものが8粒(1粒は1gもないことになる)で、隕石の表面はふつう黒っぽいものが多いですが、これは白い部分も多く、白黒の模様のように見える所もあるとか。調べてみると、ホルブルック(Holbrook)隕石は、1912年7月19日午後7時過ぎ、アリゾナ州ナバホ郡のホルブルック村周辺で巨大な火球とともに1万個以上が隕石雨となって落下。最大のものは6.6kgだそうですが、ほとんどのものは数gから1gにも満たないものだとのこと(総回収量は 220kgほど)。普通コンドライトで、 L/LL4〜7。
ヌエボ・メルクリオ 35g、メキシコ、1978年。ヌエヴォ・メルクリオ(Nuevo Mercurio)隕石は、1978年12月15日、メキシコ中央部のサカテカス(銀鉱山やサカテカス大聖堂などで有名で、世界文化遺産に登録されている)に落下。普通コンドライトで、H5。
●落下から時間が経って発見されたもの
オデッサ。オデッサ隕石は有名な鉄隕石。明石市立天文科学館と大阪市立科学館に展示されていて、触ったことがあります。オデッサ隕石は、1922年にアメリカ・テキサス州のオデッサ近くのクレーター(オデッサ・クレーター: 直径 170mくらい、6万年前くらいにできたらしい)の周辺で見つかり、その後数千個回収されているようです(いちばん大きなのは140kgくらい)。粗粒オクタヘドライトで、 IAB。
キャニオン・ディアブロ。これも有名な鉄隕石で、大阪市立科学館にも展示されていました。 キャニオン・ディアブロ隕石は、1891年にアメリカ・アリゾナ州のバリンジャー・クレーター(直径 1200m)のすぐ近くで発見され、総回収量は30トン超。この隕石も、粗粒オクタヘドライトで、 IAB。
ラランデ、4g、メキシコ?調べてもよく分からなかった。
ビラ、47g、1983年、メキシコ調べてもよく分からなかった。
バカムエルタ。ヴァカ・ムエルタ(Vaca Muerta)隕石は、1861年にチリ北部のアタカマ砂漠で発見された石鉄隕石です。総回収量は 4トン以上にもなるとのこと。鉄ニッケル合金に橄欖石・輝石・長石など珪酸塩鉱物が混じったつくりになっていて、メソシデライトに属します。
ポタ、8g、アメリカ・ネブラスカ州、1941年。調べてもよく分かりませんでした。
ウェルマン、8g、アメリカ・テキサス州、1940年。これもよく分かりませんでした。
ボックスホール、13g、オーストラリア、1937年。オーストラリアのノーザン・テリトリー州で、1937年、ボックスホール(Boxhole)クレーター(直径180mくらい)の周辺で発見された鉄隕石。中粒オクタヘドライトで、IIIAB。全部で500kgくらい回収されているようです。表面は金属鉄が酸化されて赤っぽく?見えるようです。(この近くでは、1931年にも、連なって並ぶ13のクレーター(ヘンバリー・クレーター群 Henbury craters と呼ばれる)が見つかり、その周辺や内部から多くの鉄隕石が見つかっている。)
ホゴトン 8g、アメリカ・カンザス州、1927年。よく分かりませんでした。
ナンタン、中国。展示されていたものは、ごつごつしていて、マツボックリみたいだと言っていました。これが鉄隕石だと確認されたのは、1958年。オクタヘドライトで、IIICD。中国 広西壮族自治区 南丹に、1516年に落下したらしい(明時代のこの地方の古文書の中に、「1516年6月、星の一群が北西の方角より蛇や竜のように波打ちながら降ってきた。」という記載があるとか)。そのまま放置されていたが、1950年代後半の大躍進政策に伴う製鋼運動の高まりから製鉄材料として集められたものの、ニッケルが多く含まれていて融点が高く製鉄はうまくゆかなかったようです。全部で10トン近く集められ、その一部は国立科学博物館や蒲郡市生命の海科学館に展示されています。表面は鉄さびに薄くおおわれていますが、蒲郡の標本ではよく観察するとウィドマンシュテッテン・パターンという縞模様が見えるそうです。
アリステ 8g、メキシコ、1896年。調べてみると、「アリステ」は「アリスペ」の聞き間違いのようです(発見地と発見年が一致することから判断)。アリステ(Arispe)は、1896年にメキシコで発見された鉄隕石(粗粒オクタヘドライトで IC)で、総回収量は700kg弱のようです。(ICグループの鉄隕石は11個しか確認されておらず、珍しい。)展示されていたものは、ごつごつした感じだとか。
実際に触れられた隕石は 1個だけでしたが、今回もいろいろな隕石についての情報を集めることができました。隕石の旅は、まだまだ続きます。
その他、実際に触れたり体感したものを2、3紹介します。
第2展示室には、パラボラを使った声の通信?の展示がありました。直径2m弱、深さ40cmくらいのゆるいパラボラ(放物面)があり、そこから7、8mほど離れた所にパラボラに対して45度の角度で音の鏡となる壁面があり、さらにそこから7、8m離れた所に音の鏡に対して45度(最初のパラボラとは直角)の角度で同じ大きさのパラボラがおかれています。それぞれのパラボラの中心に1人ずつ立ち、一方の人が声を出すと音波はパラボラで平行になって鏡に達し、鏡から平行に進んだ音波はもう一方のパラボラに達して中心に集められ、もう一方の人にまるで隣りにいる人が話しているように聞こえます。パラボラの性質や音の反射のことが分かるよい展示だと思いました。
第5展示室には、人の消化管の中に入ってみるという人体トンネルがありました(中は狭い通路になっていて、通路の両側に口から食道・胃・腸などの様子が詳しく説明されているが、触られるものはなかった)が、その入口の手前に人の内臓を組み立てる立体模型がありました。肺、心臓、胃、小腸、大腸、肝臓、腎臓、膀胱など臓器がばらばらに置かれていて、それを組み立ててゆくものです。やってみましたが、肺と心臓は正しくあてはめることはできましたが、その他はうまくゆきませんでした。なんとなく各内臓の位置は知っているようでも、実際のところはよく分かっていないのですね。難しかったです。
(2019年3月14日)