2年ぶりの土曜会展

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 10月21日午後から24日まで、「第30回 手で触れて見る彫刻展〜緕R賀行と土曜会」が藤沢市の藤沢市民会館 第1展示集会ホールで開催されました。出展者は20人余、100点以上も展示されていました。私も6点出品させてもらいました。木彫ばかりでなく、石膏像や陶の作品、篆刻などもあり、例年のように多彩な展覧会でした。
 私は23日から24日に藤沢に行きました。久しぶりに緕R先生や土曜会の皆さんにお会いすることができ、また先生の作品や皆さんの作品にも久しぶりに触れることができました。来場者も多く、私も自分の作品について説明などしました。また、見えない人たちもかなり来られていて、中には小学生や中学生もおられ、私の作品については手を取って説明しました。
 
私が出展したのは、以下の6点です。
 「木=人」 枝葉を広げた木と3人の人が、一体になったようなイメージです。(写真はこちら
 「ふたり」 ふたりが仲よく手を重ね合ってベンチに座っています。(写真はこちら
 「土器」 木で、土器の雰囲気が出せないかと思って作ってみました。いちおう火焔土器のイメージを参考にしました。(写真はこちら
 「すけすけのヒョウタン U」 中まですけすけに見えるヒョウタンです。(写真はこちら
 「住み家 U」 木の中に、人ばかりでなく、鳥や虫などいろいろなものが住んでいるイメージで彫ってみました。(写真はこちら
 「住み家」 建物と住んでいるものたちが一体になっているイメージで彫りました。縦・横・高さとも 23cmの立方体を材料にして、6つの面と8つの頂点に住んでいるものたちの体の一部を彫り、また6面の平らな部分には格子模様を彫りました。見る方向によって、まったく違うものに見えると思います。(写真はこちら
 
 緕R先生の作品は、4点展示されていました。中でも「夏の朝に」は、すごいなあの一言です。 幅40〜50cmほどの、服をばさっと置いたような感じのもの(これはGパンを脱ぎ捨てたものだということで、よく触ってみるとベルト釣りや大きなボタンまであった)の上に、長さ10cmくらいの、背中が割れた蝉の抜け殻があります。脱ぎ捨てたGパンも蝉の幼虫も抜け殻ですが、そこから生まれ出るものも暗示されていて、はかなさとともにいのちも感じさせられます。
 「鐘の鳴る丘」が2点ありました。1点は、草原の手前のほうに男の子が右手に棒を持ってこちら向きに立っており、そこから丘へと道が伸びていて、その丘の上には3軒とんがり屋根の家があり、その真中の家は塔のように高くなっています。もう1点は、丘へと続く道の両側が生垣になっていて、向って右側の生垣の手前先端に鳩がとまっており、丘の上には5軒くらいとんがり屋根の家が並んでいます。
 「道」は、遺跡のような風景の手前に女の子が向こう向きに立っています。女の子の前には奥へとステンレス板の道が続き、さらに急な階段に向っています。両側には高い煉瓦のような壁になっていますが、その壁は途中で大きく途切れていて、さらにずうっと遠くまで続いていることを強調しているようです。一番向こうは高い建物になっていて、入口や窓のような四角の穴がいくつかあります。
 
 次に、土曜会の皆さんの作品で、とくに印象に残っているものを紹介します。
 Yさんのバードカービングは繊細で素晴らしかったです。「アカショウビン」は、木の枝にとまっているアカショウビンが、50cmくらい下の地上のカエルを狙っているところです。カエルは5cm弱で、4本の足を地面に伸ばしています。アカショウビンは、全長30cmくらいだったでしょうか、10cm近くもある太いくちばしを斜め下に向け、翼は、急降下するためなのでしょうか、付け根付近では45度くらいで斜め上に広がり、それからほぼ水平に広がっています。翼は、とても細かく羽の様子が再現されており、見た目も本物と見紛うとのことです。「ツグミ」は、全長20数cmほどで木にとまっていますが、その下にあった枯れ葉が圧巻でした。全体は厚さ5mm、直径20cm弱の薄い円盤状ですが、1mmくらいの厚さの微妙に湾曲した10数枚の枯れ葉が重なり広がっていることが極めてリアルに表現されています。「キジバト」は、全長40cm弱で、自然木の上にとまっています。大きな胸が前に出、尾羽が長く伸びていました。
 Tさんの作品は、日本の童謡に歌われた物語をテーマみしたもので面白かったです。「竜宮城へ向かう浦島太郎」は、助けた大きな亀に浦島が乗り、左は膝の上に置き、右手に長い釣り竿を持ち、腰辺には魚籠があります。「乙姫様の琵琶演奏」は、竜宮城で浦島がゆったりと椅子に腰掛け、(タイやヒラメではなく)8本足のタコが団扇と酒瓶を持って踊り、乙姫様は椅子に座って、左手で琵琶の棹を持ち、右手で弾いています(琵琶もよくつくられているようで、棹の先端から直覚に曲がって2本の糸巻き?もありました)。「あしがら山のきんたろう」は、きんたろうが大きな熊にまたがり、右手に長いまさかり(刃は柄と平行についていた)を持っています。「熊と相撲のけいこ」は、熊が前脚を上げて立ち、それと対面してきんたろうが脚を広げて踏ん張り両掌を前に向けています。「桃から生まれた桃太郎」は、まな板の上に2つに割れかけた桃が乗り、その割れかけた桃の間から桃太郎が両手を上げて立ち上がっており、これを見たおじいさんとおばあさんが驚いた様子で座り込んでいます。「鬼退治」は、桃太郎を真中に、その右に猿、左に犬、桃太郎の右肩に雉がとまり、ともに鬼が島の方向を向いています。「鬼の大将もう悪いことはしません」は、桃太郎、猿、犬、雉(木の枝にとまっている)の前に鬼が平伏し、桃太郎が黍団子を差し出して猿と犬が食べています。
 Hさんの「龍燈鬼」と「天燈鬼」もちょっとすごいなあという感じでした。ともに高さは30cm余。龍燈鬼は、上半身に蛇が巻き付き、右肩あたりでその蛇が頭をもたげ、またお腹の前あたりで右手で蛇の尾を掴み、その右手首を左手で握っているようです。頭の上には大きな6角形の燈籠が載っており、さらにその上に広い6角形の屋根板が乗っています。天燈鬼は、右腕を斜め右上に伸ばして手をぎゅっと握り、左肩に6角形の燈籠を載せ、それを肘を曲げて外側に開くようにした左手で支えています。頭の上には数本角が飛び出ています。これらは、興福寺に安置されている木像だとのことです。
 その他、Iさんの「うさぎの森」(うさぎ2匹と、大きな枯れ葉1枚、どんぐり3個)、Oさんのいろいろな面(猿面、火伏面:口に水をためているのだろうか口の両側がふくれている、べし見面:口を強く結んでいる)や陶でつくった様々なポーズの猫たち、Mさんの「菩薩舞う」(笛を吹いている人、太鼓を打っている人、その笛・太古に合わせて舞う菩薩)、「風神雷神図屏風」、「孫 みごと舞う」(バレエを思わせるようなポーズで躍動感がある)など、印象に残るものが多かったです。また、Kさんの四天王や吉祥天などをはじめ、多くの仏像も展示されていました。
 
 今回の展覧会はコロナがおさまって直後の開催でちょっと心配していましたが、会期中の3日半で600人以上の来場者があったそうです。私も自分の作品について20、30人くらいに説明したでしょうか、その中には見える子供たちや見えない子供たちもおられて、真剣に見たり触ったりしていました。多くの人たちに見て触ってもらえることはうれしいことですし、とくに子供たちのすがたは頼もしいです。毎回このような機会を与えてくださっている緕R先生に心より感謝しています。
 
(2021年10月30日)