土曜会展に出展

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 10月12日から15日まで、藤沢市民会館で、桒山賀行先生が主宰する土曜会の展覧会「第32回手で触れて見る彫刻展」が開催され、私は以下の4点を展示しました。また、14日には午後1時半から桒山先生と一緒にギャラリートークをさせていただきました。
 
●走馬灯 (2023年3月) (幅38cm、奥行21cm、高さ37cm)
 若いころ、崖から途中まで落ちた時に、走馬灯のように生まれ故郷の風景が流れ行くようなイメージが浮かびました。上下の2つの部分を組み合わせていて、上の部分は山々と、崖の途中の棚のような所に立っている私、下の部分は田畑や小屋と、道に落ちた杖です(この杖が落ちた音で、自分がどんな所にいるか気付きました)。
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●ビキニ Ⅰ (2023年1月) (幅25cm、奥行17cm、高さ42cm)
 1954年3月1日のビキニ環礁付近での水爆(ブラボー)実験からのイメージです。サンゴ礁にできた大きなクレーター、そこから上昇する巨大なきのこ雲、さらに遠くへと広がる放射線です。3つの部分を木の棒で組合せてつくっています。(制作のきっかけは、5年余前に第五福竜丸の乗組員だった大石又七さんにお会いしお話をうかがったことです。)
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●棺 Ⅱ (2022年5月) (直径14cm、高さ19cm)
 円筒形の棺(蓋は連続する山並みのイメージ)の中に、合掌した人が入っています。即身成仏など夢想しながらつくっていました。
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●ポーズ Ⅳ (2022年11月) (幅9cm、奥行15cm、高さ30cm)
 左脚で立ち、左手でコーヒーカップを持ち、右手で後ろに伸ばした右脚を持っています。以前はこんなポーズをしばしばしていました。
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 桒山先生の作品は、「夏」「椅子=鳩」「道」の3点が展示されていました。「夏」は、浴衣姿の女性2人が前後に少しずれて立ち、それぞれ袖の端を持った両手を広げています(蝶が舞うようなイメージのようです)。「椅子=鳩」は、鉄の椅子に女の子が座り、その肩に鳩がとまっています。「道」は、森に続く道が遠近法的に示されています。
 
 ギャラリートークでは、「ビキニ Ⅰ」などについて少し説明し、また私がどのように頭の中で作品をイメージし、それを実際に木の材料であらわしているのかなどお話しましたが、なかなかうまく話せませんでした。先生は、作家自身が思っていることの6割か7割も表現できたら十分ではないか、あとはそれぞれ作品を観る人たちがそれぞれに感じ取ってくれればよいのではないかなどと話されていました。
 ギャラリートークの最後のほうで、ちょっと驚きの場面がありました。参加者のある女性が、以前私が展示していた「ふたり」(ふたりが仲よく手を重ね合ってベンチに座っています。 写真はこちら)を触ってとても感動し、それを「ふたり」という詩にしてなにかの詩集に発表したとのこと。そしてその詩を朗々と詠んでくださいました。「ふたり」という木彫作品は、斜めになっている端材を何に使おうかと思ってつくった作品で、私としては特別思いを込めたとかいうことはまったくなく、そのようなものでも予想もしないような感動を与えることができたということにびっくりでした。その方は以前から絵を描いていたそうですが、視力が衰えてきて最近は抽象画のようになってきたとのこと、でも絵の先生はこちらのほうが良いと言ってくださるとか。桒山先生がおっしゃるように、作品はいったんできると、作家を離れてそれをみた各人によってそれなりの作品になるということを実感しました。
 
 今回も、土曜会のメンバー20人くらいの、おそらく80点くらいの力作が並んでいました。これまで同様各種の仏像たちも並んでいましたが、家族や身の回りのちょっとしたものから社会的なものまで、とても変化に富んだ展示でした。面白そうなのをいくつか紹介します。
 Iさんの「ぼくの夢」は、男の子が犬を乗せた車を押しています(犬と一緒に旅に出るらしい)。Oさんはおなじみの猫の作品とともに、トランジスタラジオとポケットラジオの極めて精巧な木彫作品を展示していました。ボリュームやダイヤルが回り、スイッチが動き、乾電池を取り外したりイヤホンをジャックに差し入れできます。Sさんの「カバの楽園」は、水面を思わせる鏡のようなつるつるの面上に、頭だけのカバが数匹置かれています(1匹は脚が分かるくらい水面から身体を出していた)。熱い陽を避け、水の中でゆっくりくつろいでいるのかも。Tさんの「どじょうすくい踊り 島根県安来」は、どじょうすくいってこんな風にするのかと様子が分かって、私には面白かったです。
 競走馬を得意とするTさんは、私のまったく知らないソダシ(白毛の牝馬だとか)やイクイノックスを展示していましたが、その他、地球温暖化の影響をあらわした「北極 氷が消える!! シロクマも!」(いくつもの氷片がばらばらと置かれ、その1つにシロクマ、別の1つにアザラシが乗っている)や、ウクライナなど平和に関する作品も展示していました。Yさんの「栗の実 B」は、それぞれの栗の実が手触りもふくめて本物そっくり(表面は漆塗りだそうです)、栗のイガの中には3個栗の実がきれいに並んでいてそのままではびくともしませんが、真中の1個を回転させるようにすると次々はずれてきます!面白いですね。Mさんのお孫さんが走ったり飛び跳ねたりする様子をあらわした作品もよかったです。
 新入会員も数名おられて、その方たちの作品もありました。Hさんは人物像を数点展示していましたが、なにか西洋のブロンズの人物像を連想してしまうような、これまでの土曜会の作品展では触ったことがないなあと思うものでした。ただその中の1点「風」は、他の作品とは異なり、ノミ跡がしっかりきれいに残ったシンプルな形で、髪や衣が風になびいていることがよく分かる作品でした。
 その他多くの仏像たちにも触れましたし、大いに楽しませていただきました。
 
(2023年10月19日)