6月8日、清里にある彫刻ギャラリー GAKOUに行きました。今年は『グループ「蒼土」の仲間たち』という展覧会。グループ蒼土は、1993年に桒山賀行、上野弘道、柴田良貴、中村宏の4人が、すべての作品に触ることができる彫刻展開催を意図して、10年間を活動の期限として結成したグループだとのことです。蒼土としての活動は2005年の第15回で終わりましたが、桒山賀行先生は今日まで手で触って鑑賞する彫刻展を続けていますし、全国を巡回する日展でも一部の彫刻については触って鑑賞できる機会がつくられています。
まず、桒山先生の作品たちです。
「たそがれの中で」:これは昨年の日展出品作品だとのこと。高さ2m余、幅も2m近く、奥行1mくらいはある大きな作品。木の皮の部分も使ってつくられた長さ2m近くのベンチがあり、ベンチの前の向って右側に男性が立ち、ベンチの左側に女性が座っています。男性は、タートルネックを着け、大きな襟付きのコートを着込み、両手をコートのポケットに入れています。女性は、両膝の間を広げた姿勢でベンチに座り(その姿から男と思う人も)、手を腿あたりにゆったりとおき、顔(女性らしく思った)は真っすぐ前を向き、髪を後ろで結えています。向って左橋に、傘付きの裸電球の街灯が立っています。昭和の街角のなにかあたたかさを思わせる風景のように感じました。
「過ぎし日」:これも大きな作品。令和4年度 日本芸術院賞受賞作品です。詳しくは
桒山賀行先生の日本芸術院賞受賞記念展覧会
「父の忘れ物」:高さ160cmくらいだったでしょうか、幅50cm弱ほどのハンガーに、着物(浴衣のようなもの?)がかかっています。浴衣の下のほうは、裂ていました。この吊り下げられた浴衣の後ろには、背景のように障子があります。
「少女」:トルソで、頸から上と前腕がありません。高さ1mくらい、腰くらいまでの服をまとい立っています。とてもかわいい感じがしました。
「窓 私」:大きく丸窓?のように切り取られた窓の前に、両膝を両腕で抱くようにかかえ、両肩の上に髪をまとめた、しっかりした顔立ちの女性がしゃがんでいます。
「街角で」:これも高さ2mくらいある大きな作品。大きな建物の前に男が寄りかかるように立ち、建物の向って右橋に裸電球の街灯、建物の向って左側は外開きの窓が開いて窓の上には枯れかけたひまわりの入った花瓶が乗っています。建物の前の男は、ズボンのポケットに両手を突っ込み、シャツは外側にはみ出し、太い足に靴を履いています。
「演者」:2012年制作で、一連の演者シリーズの最後の作品だとのこと。人形遣いが膝の間に人形を両手でかかえるようにして抱いています。
「陽」:直径60cmほどの円盤状の太陽が中央で切断され、上下の反円盤になった太陽の間の空間に、水平に樹木がたくさん並びその奥には建物らしきものがあります。
「鳥の道」:高さ180?cmくらい、幅も1m以上ある、こちらに向けて口を大きくぽっかりと開けた洞窟のようなのがあります。洞窟の内側には烏のような鳥が10羽くらいいます。洞窟の口の中央には向こう向きに女の子が立ち、そこから奥へと道が続き、その先は洞窟の奥の壁をトンネルのように貫通しています。そして、洞窟の向かって右奥にはなんと実物の鳥の巣があります。幅10cm余、長さ20cmくらいで、細い木の枝のようなのや枯草のようなものを積み重ねて、中央が少し窪んだやわらかなベッドのようなものでした。洞窟の奥のトンネルのような穴から鳥(ジョウビタキ?)が出入りして、卵を産み、子育てし、巣立ったとのことです。
「風景 海」:この作品は、以前触ったことがあるかも知れません(少なくともよく似ていた)。高さ3m近くもある大きな作品です。船が難破し次第に朽ちて残骸になっていく風景のようです。一番奥には、船首から、幅広の船底、船尾へと連なった曲面がほぼ垂直に立っています(船首や船尾の曲線はとてもよい)。その前には、舷側や甲板などがばらばらに散らばっています。船底の内側に朽ちかけた十数段の階段があるのが印象的でした。
続いて、柴田良貴(1952年大阪生まれ)の作品に触れました。柴田先生は、東京教育大学大学院を終了後、日展などで活躍、長く筑波大学の教授で、筑波大学附属盲学校でも美術教諭をされていた方です。展示されていたのは、石膏とブロンズの2点でした。
「諦観」は石膏の作品。高さ70cmくらいあったでしょうか、腰かけている姿で、女性でしょうか。顔を上げて真っすぐ前を向き、両手はゆったりと腿の上に置き、右手はかるく握り、左手は親指の先をかるく握った中指に当てています。手首や足首が細いのが特徴のようです。
もう1点のブロンズの像は、タイトルをメモし忘れました。高さ60cmくらいあったでしょうか、細身の立った姿勢の人物像ですが、どのようにしてつくったのか分かりませんが、像の表面のほぼ全体にわたって、まるで内部から流れ出してしまったかのようにごく薄い板のようなのがとげとげしく飛び出しています。(型に、細い亀裂のようなのが多数あったのでしょうか?このような作品も、私には好みです。)
次は、中村宏(1933~2022年。栃木県足利市生まれ)の作品です。中村氏は東京教育大学で彫塑を専攻、日展などで活躍、内閣総理大臣賞受賞、長く横浜国立大学の教授、また視覚障害者の触れる鑑賞にも尽力した方です。樹脂(FRP)の作品2点が展示されていました。
「立つ女と犬」は、高さ40cmくらい、タイトル通り、立っている女性の左脚の近くに、犬がしっかりと立っています。
「馬」は、高さ20cm余、長さ30cmくらいで、後ろの右脚を地に付け、その他の3本の脚は宙を舞っていて、飛ぶように走っている感じ。たてがみは後ろになびき、尾は根元から上下にゆるやかに広がって10cmくらい長く後ろに伸びています。(木彫では、1本足で地に固定するのは難しそう。)
最後に、上野弘道(1942~2007年。千葉県東金市生まれ)の作品です。上野氏も東京教育大学教育学部美術学科を卒業後、日展などで活躍、初め筑波大学、その後長く千葉大学で教えていた方です。ブロンズの作品が数点ありました(たぶん遺作なのでしょう、タイトルが仮題になっているものが多かったです)。
「母と子」は、女性が台に腰かけ、その左横の台上に立っている子供を抱き締めるようにして顔をくっつけています。
「座る女」:実際にはなかなか難しそうなポーズでした。左膝を強く曲げて左下腿部を宙に浮かした状態で左手で持ち、右脚はしゃがむような姿勢で膝をぐっと曲げ右手を股あたりにおき、上半身を右側に大きく倒して顔が地に付いています。
「ポーズする女」:両脚を広げて前に伸ばして地べたに座り、右手を突いて身体を右側に倒しています。(他にもブロンズ作品が1、2点ありましたが、はっきりとは覚えていません。)
(2025年6月23日)