11月21日から24日まで、藤沢市の市民会館 第1展示集会ホールで、私が毎年出展させてもらっている彫刻展「第34回手で触れて見る彫刻展~桒山賀行と土曜会」が開催されました。私はこれまでは、1泊2日で藤沢の会場に行くことが多かったですが、今回は初めて準備も含め4泊5日で全日参加しました。
初日から思っていたより来展者が多く、4日間合わせて600人以上になったと思います。以前からこの展示会を楽しみにして来られる高齢の方々ばかりでなく、親子連れや若い人たちのグループも来られ、じっくり和やかに楽しんでおられる様子でした。視覚障害の方も、ボランティアとグループで来られたり、中には福岡から単独で来られた方もいました。また、目の見えない3歳前後のお子さんや小学生も来られていて、手を取って一緒に触りながら、お母さんたちとも歓談したりしました。
桒山先生の作品は、「海の番人 Ⅲ」と「深海の怪」の2点でした。いずれも以前に触ったことのあるものですが、「海の番人」は新しいバージョンで、背鰭の前のほうが細い棒が立ち並んでいるような感じになっているところなど、以前のものと違っていました。「深海の怪」は、水深4000mくらいの深海に生息するという、アンコウ目に属する体長7cmほどのラシオグナサス・サッコストマという小さな珍しい魚がモデルで、それが長さ60~70cmほどにまで拡大されていて、その怪異さがなおさら目立つように思いました。上顎が大きく開いて、口の中の鋭い歯、鋭いとげが並んだような背鰭、なにかよく分かりませんが体に沿って伸びる細い棒のようなものなど、印象に残っています。
以下、土曜会の皆さんの作品で、印象に残っているものを紹介します。
まず毎年多く出展される仏像関係では、Kさんの十二神将が印象に残っています。十二神将は、「除病安楽」など薬師如来の12の大願を護持する守護神。それら12の神将すべてを、持っている武器などふくめとても正確にあらわし、またそれぞれの頭の上にはそれに対応する十二支が乗っていました。以下に、本展覧会のKさんの解説文に載っていた、十二神将とそれに配当された方角と十二子を示します(十二神将の姿勢については、
触れる仏像展に詳しい説明があります)。
毘羯羅(びから)大将 北 子
招杜羅(しょうとら)大将 北東やや北 丑
真達羅(しんたら)大将 北東やや東 寅
摩虎羅(まこら)大将 東 卯
波夷羅(はいら)大将 南東やや東 辰
因達羅(いんたら)大将 南東やや南 巳
珊底羅(さんちら)大将 南 午
頞儞羅(あにら)大将 南西やや南 未
安底羅(あんちら)大将 南西やや西 申
迷企羅(めきら)大将 西 酉
伐折羅(ばさら)大将 北西やや西 戌
宮毘羅(くびら)大将 北西やや北 亥
Kさんはその他、大黒様や恵比須様も展示していました。またKさんの「横綱土俵入り」は、私にとってはまったく初めての造形だったので、印象に残っています。両脚を大きく広げて中腰の姿勢、左手は斜め下に伸ばして広げた手のひらで前下向きにぐっと押す感じ、右手は肘を横に広げて肩の高さまで上げ手首をぎゅっと内側に曲げて巻き込むような形、さらにまわしとともに、開いた両脚の前面にひらひらの飾りのようなのがついた化粧まわしが垂れ広がっています。そして、肩や腕、胸の筋肉ももりもり、大野里の横綱昇進を祝って彫ったとのことです。
もう1点仏像で印象に残っているのは、Hさんの白衣観音。椅子?のようなのに座り、顔はほぼ正面を向いていますが、両脚はそろえて左斜め前に下ろしていて、少し体をねじっているような感じ。右手は前に突き、左手で巻物(経巻?)を持って腿の上に乗せています。そろえた両脚から右に向って衣が凹曲面をなしてなだらかに広がり、右端のほうでは細い襞の曲線が数本並んでいて、とてもきれいでした。
人物では、Oさんの「座る踊り姫」や「装う」が印象に残っています。これらは木彫ではなく軽量石塑粘土(石粉粉粘土の1種のよう)だとのこと、触り心ごこちはちょっと陶っぽかったです。「座る踊り姫」は、椅子に腰かけ、右足を椅子の上に乗せてその膝の上に両手を当て、顔は真っすぐ前を向いています。椅子の背には衣装がかかっており、踊りが一段落してちょっと休んでいる場面のようです。「装う」は、台に腰かけ、右脚を上にして脚を組み、その組んだ脚の上に左手をおき、右手は台の後ろのほうに突いています。スカート?のようなのがひらひらと広がり、スカーフのようなのが下がっているようです。Mさんの「今だ!!」は、バスケットボールのシュートの瞬間をあらわしたもの。ボールを両手にはさんだ人が籠の前で伸び上がるようにし、そのシュートを遮ろうと両手を広げている人も立っています。 Iさんは、お孫さんの3歳から成人するまでの成長過程を作品にしていて、とくに最後の「春の光」はよかったです(椅子に座り顔を真上に向けていて、春の陽をいっぱいに浴びてなにか幸せそう)。
動物や魚たちをモチーフにした作品もいろいろありました。sさんの「リスたち」は、自然のままの1mほどの木の枝に、20cm弱ほどのリスが3匹乗っています。同じくsさんの「ハリネズミの散歩」は、少し大きなお母さんハリネズミの後に、小さめの子ハリネズミが3匹続いています(ハリネズミは、ずんぐりした体形で、体表にそんなに鋭くない多数突起が並んでいた)。
Kaさんは、狼をモチーフにした作品を2点。「森の家族」は、森で暮らす狼の家族だとのこと、立ったり寝そべったり空に向って吠えたり、いろいろな姿の狼たちです。「桜花」は、桜を見上げている日本狼だということです。狼にたいするなにか愛情のようなのが感じられます。同じくKaさんの「平和のブローチ」は、イルカ、アルパカ、ゾウ、ハト、シロクマを、それぞれ5cmほどのブローチにしたもの、これらの動物は平和のシンボルとされるとか。
Oさんは、シーラカンス、ムツゴロウ、ダンゴウオ、クロアンコウを展示していて、まるで水族館みたいと思いました。ムツゴロウは、大きな目が真上を向き、背鰭と尾鰭が切れ目なくつながって真っすぐ上に立ち、胸鰭は大きく斜め下に伸びていて、今にも飛び跳ねそうな感じ。ダンゴウオ(これは陶製)は、体の表面に多数ぼこぼこした突起があり、全体として丸っぽくなっています(ここから団子魚なのでしょう)。クロアンコウは、口を大きく開け、下顎にも上顎にも三角形の先の鋭い歯がずらっと並び、上面には、背鰭なのでしょう長い棒や短い棒のようなのが多数並び、横には小さな翼のようなのもあって、なんかすごい感じ。桒山先生の「深海の怪」を連想するような造形です(クロアンコウも深海魚)。
レリーフでもいくつか印象に残っています。KTさんの「空を駆ける」は、手足を広げた2人の女性が重ねて描かれていて、2人の片手は上のほうでつながれていますが、その他はばらばらな感じ。解説文によれば、これはピカソの絵画作品「駆けっこ」を再現してみたものとなっていますが、2012年に日本点字図書館から発行された触図版の画集『ふれる世界の名画集』に掲載されていたピカソの「海辺を走る2人の女」とほぼ同じ構図だと思いました。Mさんの「チューリップ ― 思いやり」は、心にしみる作品でした。9本のチューリップが並んで描かれ、左橋のチューリップには紋白蝶がとまっています。重度障害のグループホームに飾るために制作したとのことで、チューリップは9人の入居者を、左端の紋白蝶はしばしば泊まっていくというショートステイの方をあらわしているとのこと。そして、重度障害の方が書いた「いつも いっしょに いよう」という文字も見えるとか。
その他にも、丸太の一部の表面に3種の異なる能面を彫ったものとか、仏像彫刻などの基本だという地紋彫りの花菱、角花菱、紗綾形(崩した卍を連続させた模様)など、多彩な作品が並んでいました。
私が展示したのは、次の4点です。
●泡宇宙
泡宇宙は、宇宙の大きな構造についての1つのモデルです。宇宙は、泡立った石鹸のように、無数の泡が幾重にも連なったような構造で、それぞれの泡の内部は巨大な空洞で、回りの膜面に銀河団などが分布するというイメージです。これまでの作品をつくった時の残りの多くの材料を集め組み合わせてつくってみました。銀河や星々だけでなく、動物や植物などあらゆるモチーフを組み込むようにと考えながらつくりました。見る角度によって如何様にも見えるようです。
側面からの写真
別の方向で側面からの写真
中の空洞が分かりやすい写真
底からアップの写真
●山の音
山の上の雲間から笛の音が聞こえます。右側では、積乱雲が盛り上がり、その下のほうでは雷の太鼓が鳴っています。左後ろには虹が見えています。私の想像上の風景です。
(写真はまだです)
●鷲の戦士
アステカの遺跡から発見された鷲の戦士像の模型を参考につくってみました。人が鷲の着ぐるみを着たような姿です。(模型では、手に武器は持っていません。)
(写真はまだです。
●花トロフィー Ⅱ
高々と、カップのような形のチューリップを掲げています。昨年の土曜会のある方の作品も参考にしました。
写真はこちら
(2025年12月2日)