8月13日から18日まで、茨木市立市民ギャラリーで、第3回目となる石創画タッチ展が開かれました。
「石創画」は江田挙寛(たかひろ)先生が研究・開発してきた石で絵を描く独自の手法です。(詳しくは
http://www.sekisoga.com/ を参照してください。)
先生は以前から石創画の教室もしているのですが、私も石創画の魅力にひかれて、昨年10月から教室に通い始めました。今回は生徒の作品も展示するということで、私の拙い作品も5点展示してもらいました。
会場の中央の2つのテーブルには、立体的に浮出していて、触っても十分鑑賞できる石創画が全部で30点くらい展示してあります。
入口に近いテーブルには4種類の先生の作品が展示されています。
一つは、「はじめまして」というシリーズ3点です。すずめが雪の上に足跡を残しながらこちらにやって来る絵です。背景は、京都の嵐山渡月橋の冬の風景のようです。2点にはすずめの手前に赤い木の実3粒が描かれ、もう1点にはすずめの向こうに雪をかぶったベンチが描かれています。すずめのポーズがそれぞれ異なっていて、とてもいい感じです。
次は、カルガモがたくさん描かれた作品2点です。1点は、「たまごのお池の中で」というタイトルで、大きな卵の池の中に大きな鴨1羽と小さな鴨10羽が並んでいます。小鴨たちは、よく触ってみるといろいろな方向を向いていることが分かります。もう1点は「アメリカから太平洋を泳いで日本の大阪へ」というたいとるで、同じように親鴨と小鴨がたぶん太平洋上に描かれています。
3番目は「長い道を歩いてきました」というシリーズで、「赤い靴」「青い靴」「白い靴」の3点です。いずれも、砂地に歩くルートに沿って靴が並んでいます。靴の方向から歩く方向が分かりますし、靴の大きさがだんだん小さくなっていくことから遠くまで歩いて行っていることも分かります。単純な構図で、触って鑑賞する人たちには好評だったようです。
4番目は、バラの花を描いたシリーズで、「情熱」(赤)、「恥ずかしがり屋の私は黄色いバラ」、「純白」の3点です。手触りもそれぞれ少しずつ違っていて、とくに「情熱」はとてもツルツルしていてちょっと冷たさを感じもするのですが、触ってよく分かる作品でした。
次のテーブルには、私のもふくめ教室の生徒の作品と、先生がタッチ展用に制作した「ナスカの地上絵」が展示されています。
私の作品は次の5点です。
「ひろがる」 カシワの葉3枚と貝の形3個を組み合せた形です。ほとんどの人はこれを見て「かぶら」と言います。私としては、葉が伸びやかにひろがっている様子を表しました。
「なんびきイルカ」 青い海に白いイルカが3びき連なって一つの輪になっています。見てはすぐ分かるのですが、触ってだけでは、頭と尾が連なっていて、3びきとはなかなか分かりにくいです。
「昼寝」 砂地にワニが横たわっています。尾の様子や胴の模様を私なりに表わしたつもりです。見ては分かりませんが、口もわずかに開いています。見た人たちはトカゲだとかワニだとか言っています。尾の感じは好評です。
「散歩」 水から上がって砂浜をカニがこちらにやって来ます。できるだけ動きが表現されるように工夫したつもりです。これはカワイイと好評のようです。
「銀河」 私の銀河系のイメージです。でもこれは、ほとんどの人には何なのかよくは分からないようです。背景はほとんど黒で所々に白い石がちらちらしています。中央にはブラックホールを示す穴があり、その回りは真赤なバルジを示すふくらんだ円形になっています。バルジからは両側に斜めにオレンジとブルーの腕が2本ずつ伸び、左右の腕から1本ずつ右巻きに長い渦巻き状の腕が出ています。渦巻は途中で枝分かれしています。腕の回りにはあちこちに星を示す半丸が付いています。
私以外の生徒の作品で浮出しになっているものとして次の3点があります。
「象形文字―魚」(Tさん) 象形文字の魚の形を浮出しで示した作品です。実際の魚の形がよく表わされていると思いました。文字の周りに鱗が刻られていることが、触ってもかすかに分かります。
「やさしさ」(Kさん) 大きな手(お母さんの手?)と小さな手(子どもの手?)が、それぞれ人差指を伸ばして互いに向い合っています。指や爪の細かい所までよく触って分かります。
「ヤドカリと海の仲間たち」(Cさん) 上が空、中央から左が海、中央の右側から下全体が砂浜になっています。空は水平線と雲、海にはまるっこい魚(熱帯魚?)が2尾、砂浜にはヒトデと巻貝とそこから出たばかりのヤドカリが描かれています。ヤドカリの上にはビーチパラソルが開いています。触っても、空、海、砂浜の境界がよく分かり、とても好ましく思いました。こんな作品をそのうち作ってみたいものです。
ナスカの地上絵として、猿、コンドル、クモ、ハチドリ、犬、テの6点が展示されています(その他にトカゲとペリカンがあるのですが、場所が足りなくて展示できなかったようです)。ナスカの地上絵は大きさは数十メートルから数百メートルもあってそのままでは把握しようもありませんが、数十センチの大きさで細い浮出しの線で描いています。猿の渦巻のように巻いた尾、大きな翼のコンドルなどが印象的でした。また、クモや犬は、一本線のいわば一筆書きで描かれています。「手」の片手はなぜか4本しか指がありませんでした。
奥の壁面には、先生がずっと以前に制作したいずれも浮出しの、持国天、武心(埴輪)、増長天が展示されています。
持国天と増長天はいずれも四天王の一つです(その他は広目天と多聞天)。ともに仏教の守護神で、持国天は東方を、増長天は南方を守るとされます。
持国天と増長天は、ともに縦70cmほど×横40cmくらいの大きさです。いずれも甲と冑のようなのを身に着け、持国天は右手を伸ばして塔のようななにか尖ったものを持ち、左手には短剣のようなのを持って腰の所に当てています。増長天は右手にとても長い剣をまっすぐ縦に持ち、左手は指を伸ばして腰に当てています。持国天と増長天の両肩には、竜の、口を開いて歯を向き出した恐ろしげな顔が描かれています。持国天はまっすぐ立っていますが、増長天は右膝を曲げて前に出し、左足は何かを踏みつけているかのように足先をピンと下に伸ばしています。
「武心」は、大きさは40cm四方くらいで、武人の埴輪を描いたものです。このような姿の埴輪があることは知りませんでした。近くには穏かな波が描かれ、その向こうに武人の埴輪が描かれています。埴輪は顔と胴部だけで、胴には鎧のようなのを着け、腰の当たりには短い刀のようなのが描かれています。
その他、回りの壁面には、能面や仏像や寺社をテーマとしたようなかなり大きいサイズノ平面の石創画が多数展示されています(一部生徒の平面作品も展示されています)。平面とはいっても、石を使っているせいでしょうか見る人にはかなり立体的に感じられるようです。こちらのほうが江田さんの本来の石創画の作品です。
今回初めて自分の作品を展示する機会を与えられました。私自身は作る過程が一番楽しくて、出来上がってしまうとたいして未連はなくなるのですが、それでも自分の作品がとくに一般の人たちからどんな風に見られるのかは少しは気になるところです。幸いにも、面白いとかかわいいとか、それなりに評価していただいたようで、今後もこのような展覧会にも出品できそうな作品を少しずつ制作してゆきたいと思います。
(2009年8月18日)