善兵衛ランド――今後に期待する天文施設――

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 12月23日、貝塚市にある善兵衛ランドに行ってきました。善兵衛ランドは、江戸時代の望遠鏡製作者で貝塚出身の岩橋善兵衛(1756〜1811年)を記念して1992年に貝塚市立として開館した施設です。善兵衛の資料を展示・紹介するだけでなく、口径60cmのニュートン・カセグレン式反射望遠鏡 を備えた天体観測ドームがあり、公開天文台として市民にひろく利用されているようです。
 私がこの施設に行ってみようかなと思ったのは、善兵衛ランドのホームページ(http://www.city.kaizuka.lg.jp/zenbe/)を読んでみると、この施設では手作りの観測器具などを作っていて、もしかしてその中に触っても理解できるものもあるのではと思ったからです。
 最寄の総持寺駅より天下茶屋へ、そこで南海電車に乗換え貝塚へ、そこから水間鉄道で水間観音に行き、そこからタクシーを使いました。本当は善兵衛ランドの最寄の駅から歩いて行きたかったのですが、善兵衛ランドに電話してたずねてみると、1人で来るのはちょっと無理だろう、タクシーを使ったほうが良いと言われ、私も安全のこともあるし、交通費は高くつきますが、やむなくタクシーを利用しました。市街から少し離れた所になると、無人駅も多いし、通りにも人がとても少なく、また私も次第にいろいろな感覚の力が落ちてきているし、1人歩きは難しくなってきたように感じてしまいます。
 昼前に着き、あいにく館長さんはおられませんでしたが、Yさんという方が丁寧にいろいろ説明などしてくれました。そして、ちょっと驚いたのですが、
触って分かる直径60cmほどの星座早見盤(北の空と南の空の2種)、および
立体コピー図版の『四季の主な星座と星座絵図』がありました。
 どちらもこの施設の開館当初に製作されたもののようで、本当に古くて(20年くらい経っていることになります)、星座早見盤は表面の紙は一部はげかかっていたり点字がかなり読みにくかったり、とくに北の空の早見盤のほうはなかなか回転しなくて使いにくかったです。また立体コピー図版のほうも、全体にざらざらっぽくて触りにくかったですし、一部線や点が薄くなったり取れているような所もありました。でも、どちらも内容はとても優れたもので、とにかくこれはぜひ更新して、こういう教材があることを宣伝して多くの人たちに使えるようにしてほしいと希望を伝えました。立体コピー図版のほうは許可を得て借り出し、職場の立体コピー器でどの程度きれいに作り直すことができるか試してみようと思っています。
 北の空の早見盤では、私が知っている星座の形と逆さになっていて、ちょっと最初は理解するのに時間はかかりましたが、全体がかなり大きいので各星座もわかりやすかったです。南の空の早見盤では、つる座やほうおう座など、あまり聞くことのない星座がたくさんありました。
 立体コピー図版では、冬・秋・夏・春の四季の星座がそれぞれA4の見開きで示されており、左ページに各季節の星座の星と星間の線、右ページにそれらの星座の実際の形が描かれています。そして最後のページには、黄道12宮が示されています。
 
 その他、手作りしたといういろいろな物にも触りました。まず日時計。これは私がイメージしているようなのとはまったく違って、直角三角形の厚紙が垂直に立っていて、後ろの垂直面と下の水平面にできるその影で時刻が分かるようです(この直角三角形ですが、前を向いているほうの角度は30度余になっていて、たぶんその地の緯度と同じ角度になっていると思います。そのほうが計算しやすいはずですので。また、季節で細かく補正するようになっていて、こういう簡単な装置でも分単位で時刻を知ることができるそうです)。また、太陽と月、および星の高度と方位が分かる高度方位計もありました(高度の刻まれた4分の1円の厚紙が垂直に立っていて、その左面に太陽と月を、右面に星を観る四角の棒のようなのが付いている。またこれ全体が水平の盤上を回転できるようになっていて、方位も分かる)。
 月の形や月齢などを知ることのできる月齢早見盤や、さらに太陽と月の位置関係などまで知ることができる紙製の装置もありました。月齢早見盤は構造が簡単そうなので、点図にして見えない人でも使えるようにできるかもしれません(これから試してみるつもりです)。
 ふつうの星座早見盤のほかにも、空き缶を利用して作った円筒型星座早見盤がありました。茶筒のような円筒が回るようになっていて、その前面の上から真ん中あたりにかけてちょうど双曲線のような形のつるつるした所があり、そこから円筒に描かれた星が見えているようです。
 また、太陽と地球の大きさを比べる模型(太陽は直径40cmくらい、地球は3mmくらい)がありました。太陽はけっこうしっかりした球体で、和紙を何枚も貼り付けて作ったとのことです。さらに、大きさが 2億分の1、距離が2千億分の1のミニ太陽系の模型も手作りしてあるとのことですが、天井に展示してあって直接触ることはできませんでした。
 これまた手作りで、紙製の小さなすばる望遠鏡と電波望遠鏡の簡単な模型もありました。すばる望遠鏡は、円筒の下に反射鏡があり、その円筒が下のほうの軸を中心に回転するようになっています。また電波望遠鏡は、下にお椀を逆さにしたようなパラボラがあり、これも回転するようになっています。
 
 この施設のメインの展示である岩橋善兵衛の作ったいろいろな望遠鏡などにはほとんど触れられませんでしたが、1つだけ、竹筒で作った望遠鏡は触ってみることができました。直径5cmくらい、長さ60〜70cmくらいの筒で、対物レンズは1つで、倍率はたぶん10倍くらいかなということでした。これは筒の長さを変えられませんが、善兵衛が作った多くの望遠鏡は、4段あるいは3段になっていて長さの変えられる「一閑張望遠鏡」というものだそうです(和紙を張り重ねて糊付けし、さらにその上に漆を塗って頑丈にした筒を使ったもので、飛来一閑という江戸前期の漆工が考案したところからこのように呼ばれるそうです)。ガリレオの望遠鏡よりは倍率が高いものもあって、ガリレオ衛星ばかりでなく土星の輪も観測できたらしいです。
 
 最後に2階の天体観測ドームに行きました。その日はとてもよい日和でほかにも見学者が次々と訪れ、望遠鏡をのぞいているようでした。私は一部望遠鏡を触りながら説明してもらいました。口径60cmのニュートン・カセグレン式反射望遠鏡というものだそうです。 ニュートン式は、凹面鏡で集めた光を平面鏡で真横に引き出して筒の横から観るタイプなのにたいし、カセグレン式は、凹面鏡で集めた光を凸面鏡(双曲面)で引きのばし、凹面鏡の後ろ側で観るので、筒の長さに比べて焦点距離を2倍近くまで長くできる(倍率が大きくなる)そうです。
 
 善兵衛ランドは、岩橋善兵衛の紹介をするだけでなく、いろいろな観測器具を手作りし、さらにそれを製作するワークショップなどもしていて、私はそういうところが良いと思いました。手作り品のなかには、実際に触れて理解できる物もありますし、またそれを参考にして見えない人たちもそれなりに使える器具を作ってみることもできます。私も協力してもらって、いくつか見えない人たちにも使えそうなないし理解できる器具を作ってみたいと思っています。また施設の側にも、見えない人たちも使える装置や器具を用意してもらうよう、これからも要望しようと思っています。
 
(2013年12月29日)