いきもの☆いろいろ

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 毎週日曜日朝(2019年4月からは土曜日朝)、NHKで5時半過ぎから「いきもの☆いろいろ」が放送されています。いろいろな植物、魚、昆虫、鳥などについて、各専門家の方とアナウンサーが対話形式で解説します。とくに、写真やときには実物資料を持ち込んで、それらを見たり触ったりしながら解説してくれるので、リアル感もあります。(魚類など水生生物は東海大学海洋学部 客員教授・西 源二郎、鳥類はバードカービング作家・鈴木 勉、昆虫は昆虫写真家・海野 和男、その他動植物は千葉県立中央博物館・尾崎 煙雄)
 だんだんとあちこちに出かけて植物などに触れる機会が減ってきたので、私にとっては居ながらにして楽しめるよい番組です。しばらく前からメモを取りまとめるようになりましたので、それを適宜アップして行きます。
 
●9月23日(日)「北海道の湿原に棲む鳥〜タンチョウ〜」
 タンチョウ(Grus japonensis; red-crowned crane)は、全長150cm以上になるものもあり、翼を広げると2mにもなる。
 タンチョウは、アイヌでは「サロルンカムイ」ないし「サルルンカムイ」(湿原の神)、日本語の丹頂は、頂が赤いという意味(牡丹の丹で、丹は赤・紅の意)。赤い部分は、羽がなくて皮膚が裸出している所で、その面積は興奮状態になると広がる。
 タンチョウは今は道東にだけ分布するが、以前には本州にまで広く見られ、神話や家紋などに取り入れられ、また将軍が丹頂狩りをしたという話もある。
 タンチョウの鳴き交わし:「クーカ」ないし「クーカッカ」と聞える。「クー」は雄、「カ」「カッカ」は雌の声で、ペアで聞える。(姿で雄と雌を区別するのはなかなか難しい。雄がわずかに大きい。)
急減し一時は絶滅したかと思われたが、1924年に釧路湿原で十数羽が再発見され保護が始まった。しかし当初はなかなか増えなかった。1952年の冬からは給餌が始められ、次第に増えて今は2千羽くらいになっている。冬は給餌場に集まっているが、夏はペアごとに湿原のあちこちに散って家族ごとに生活している。
 
●10月7日(日)「サメ類の繁殖」
 サメの雄は、腹鰭の先が変化して交尾器(左右1対)になっており、体内受精する。
 受精後は、卵生のものと胎生のものがある。卵生が4割、胎生が6割。
 胎生はさらに、卵黄依存型と母体依存型に別れる。卵黄依存型は、自分の卵黄だけで体内で成長する。
 母体依存型は、卵黄のほかに母体からなんらかのかたちで栄養をもらうもので、次の3つに別れる。子宮の中で卵黄で育ってある程度大きくなった後、母親の子宮内で出来てくる無精卵を栄養にする卵食タイプ、子宮中に出てくる特殊な栄養のある液を特殊な構造の皮膚や口で摂取する子宮ミルクタイプ、卵黄を栄養にした後卵を包んでいる膜が胎盤に変わり、その胎盤を通して母体から栄養をもらう胎盤タイプ。
 
 ナヌカザメの卵とネコザメの卵。ナヌカザメの卵は、長さ10cm、幅3cmくらいの細長い財布型で、両端に螺旋状の紐のようなのがある。全体に白っぽくて中が透けて見え、中にいくつもの金色の卵が見える(外側は卵殻)。紐を昆布などに巻き付けて岩などの突起物にくっついている。財布の中に金貨があるように見えるので、「人魚の財布」と呼ばれる。ネコザメの卵は、昆布のような黒色で、長さ20cm弱、太い所で10cmくらいの大きなねじないしドリル型。これ1個で1つの卵で、孵化するまで半年から1年かかるので、大きな石の間などにねじを入れるようにして安定させている。卵の形としては、ナヌカザメのような財布型が多い。
 
*『ほぼ命がけサメ図鑑』(沼口 麻子 著、2018年5月、講談社)を読みました。22種のサメについてのデータがあり、その内繁殖方法が不明なツラナガコビトザメ(ツノザメ目 ヨロイザメ科)とミッシェルエポレットシャーク(テンジクザメ目 テンジクザメ科)を除いた20種について以下に紹介します。
ホホジロザメ(ネズミザメ目 ネズミザメ科):胎生(母体依存型・卵食)。1度に2〜10尾を出産。
カグラザメ(カグラザメ目 カグラザメ科):胎生(卵黄依存型)。サメの中では多産で、雌の体内に最大108尾の胎子が確認された例がある。
サガミザメ(ツノザメ目 アイザメ科):胎生(卵黄依存型)。 1度に12尾を産んだ例がある。
ミツクリザメ(ネズミザメ目 ミツクリザメ科):胎生(母体依存型・卵食)と考えられているが、詳細は不明。
ラブカ(カグラザメ目 ラブカ科):胎生(卵黄依存型)。 1度に2〜12尾を出産。妊娠期間が非常に長く、3年半と言われている。
メガマウスザメ(ネズミザメ目 メガマウスザメ科):胎生(母体依存型・卵食)と考えられているが、詳細は不明。
ネコザメ(ネコザメ目 ネコザメ科):卵生。
カスザメ(カスザメ目 カスザメ科):胎生(卵黄依存型)
オオセ(テンジクザメ目 オオセ科):胎生(卵黄依存型)。 1度に20尾ほどを出産。
シロワニ(ネズミザメ目 オオワニザメ科)。胎生(母体依存型・卵食)。体内の子ザメは卵を食べるだけでなく子宮内で共生をし、その結果、2つある子宮の中でそれぞれ生き残った1尾ずつが生まれる。
ハチワレ(ネズミザメ目 オナガザメ科):胎生(母体依存型・卵食)。 1度に2〜4尾の子ザメを産む。
ジンベエザメ(テンジクザメ目 ジンベエザメ科):胎生(卵黄依存型)。体内から 1度に300尾もの胎子が発見されたことがあり、多産なサメとして知られる。
ダルマザメ(ツノザメ目 ヨロイザメ科):胎生(卵黄依存型)。 1度に6〜9尾を出産。
ウバザメ(ネズミザメ目 ウバザメ科):胎生(母体依存型・卵食)。 1度に6尾ほどを産む。
アブラツノザメ(ツノザメ目 ツノザメ科):胎生(卵黄依存型)。1度に 2〜12尾を出産。
ネズミザメ(ネズミザメ目 ネズミザメ科):胎生(母体依存型・卵食)。 1度に 2〜5尾を産む。
ホコサキ(メジロザメ目 メジロザメ科):胎生(母体依存型・胎盤)。 2年に1度、1〜2尾を産む。
ヨシキリザメ(メジロザメ目 メジロザメ科):胎生(母体依存型・胎盤)。ふつうは15〜30尾を産む。最大135尾の胎子を妊娠していた個体の記録がある。サメの中でも交尾がとくに激しいことで知られ、成熟した雌には体に雄に噛まれた歯形が付いていることが多い。
アカシュモクザメ(メジロザメ目 シュモクザメ科):胎生(母体依存型・胎盤)。 13〜32尾を産む。
ドチザメ(メジロザメ目 ドチザメ科):胎生(卵黄依存型)。 10〜24尾を産む。
 上のリストには、子宮ミルクタイプはありませんが、卵食タイプのホホジロザメは卵食を始める前に栄養源として子宮内ミルクを利用しているそうです。またイタチザメ(メジロザメ目 メジロザメ科)は卵黄依存型ですが、卵黄ばかりでなく子宮ミルクからも栄養を得ているそうです。
 
●10月14日(日)「ヤマブドウ」
 世界で一番生産量の多い果物はブドウ。食べるとともに、ワインの原料ともなる。果物として栽培される品種の多くは、ヨーロッパ原産のヨーロッパブドウがもとになっている。
 日本にはもともとはヨーロッパブドウはなく、日本の野生のブドウの代表はヤマブドウ。ヤマブドウは、北海道から本州、四国にかけて、やや寒い所(東京付近では千メートル以上の山地)に成育する。つる性の植物で林道付近の陽当たりのよい森で樹木に巻き付いている。ヤマブドウの実はとてもおいしい。最近はヤマブドウの実を使ったワインも作られている。ヤマブドウには雄と雌があり、雌の株にしか実は付かない。
 ヤマブドウは秋に赤くきれいに紅葉し、真っ赤なカーテンのように見える。葉は、付け根がハート型、先が少し3つに別れていて、5角形のような形。大きいものは直径30cmくらいのもある。枯れたヤマブドウの葉は、冬ごもりする生き物にとってよい住み家となっている。つるからぶら下がった枯れてしわしわになった葉や、地面に落ちて丸まった葉の中に、カミキリムシ、ゴミムシ、ハサミムシなどがよくいる。大きい葉がくるうっと丸まっていると、その中では雨風や寒さがしのぎやすい。くるうっと丸まった葉の中からコウモリが出てきたこともある。
 ヤマブドウの見られない低地にはエビヅルというブドウが分布する。葉や実はヤマブドウよりも小さいが、実はおいしい。古い日本語ではブドウのことをエビと言ったようで、ヤマブドウの別名にエビカズラがある。
 さらに野山のどこにでも見られるものに、ノブドウがある。ヤマブドウとエビヅルはブドウ族だが、ノブドウはノブドウ族。
ブドウ族の実は1本の軸から房状に多数付いているのにたいし、ノブドウ族の実は1個ずつ花火のように全体に広がって付き、房状になっていない。ヤマブドウとエビヅルの実は熟すと黒っぽくなるが、ノブドウの実は紫ないし青緑で、宝石のようにきれいなのもある。でも、食べるとまったくおいしくないし、実の中には昆虫が寄生していることが多い。
 
●10月21日(日)「ケラ」
 体長4cmくらい。胴体が太く、とくに胸が大きい。前足が大きくてシャベルのようになっており、モグラと同じように前足で土を彫りトンネルをつくる。体表には産毛のような細かい毛があって触りごこちがよい。
 湿った地が好きで、田んぼの近くにもいる。彫った穴に水が入ってくると外に出て、大きな前足を使って泳ぐ。また親になると飛んで移動もする(明りにも集まる)。コウロギに近い仲間で、雄・雌ともにジーと鳴く。地中、水中、空のどこでも活動できる。
 
●10月28日(日)「秋に渡ってくる鳥〜ガンの仲間〜」
 ガンはカモの仲間で、シベリアから越冬するために日本に来る。
ガンの大きさは、カモより大きく、ハクチョウより小さい。
 日本にやって来るガンの種類としては、マガン、カリガネ、ヒシクイ。マガンは数が一番多く、額は白くて英名はwhite-fronted gooseカリガネ(雁が音)は、マガンより一回り小さいく、形はよく似ている(英名は、lesser white-fronted goose)が、目の回りに黄色いリングがあるのが特徴。ヒシクイ(菱喰)の「ヒシ」は、水辺の植物のヒシで、名前はその実を食べることからつけられたマガンよりも大きい。。
 宮城県伊豆沼でマガンの何万という大群が飛立つ時の鳴き声。
 雁にまつわる言葉として、「雁行」がある。雁の飛び方を表していて、渡りの時、高い空をV字型の編隊を組んで飛ぶ。ガンのような翼の先が少しとがった長距離を飛ぶのに適した鳥は、羽ばたくと翼の先端から上向きの渦ができ、それを利用して後ろの鳥がくっついて飛び、さらに順に後ろの鳥が連なって、自然にV字型の編隊になる。V字の先端から両側に、順々に上向の気流が後に続く鳥を助けている。先頭の鳥は疲れてくるので、順に入れ替わって飛んでいる。
 地上に降りてくる時の様子を表したのが「落雁」。ふつう鳥は、降りる時は、徐徐に高度を下げて斜めに降りてくるが、ガンは、空から枯葉がひらひらと落ちてくるように舞い降りてくる。垂直に近く急降下するように。この姿を表わしたのが「落雁」。ガンは植物食で、草や田んぼの落穂などを食べている。
 ガンの数は、一時は5千羽くらいまで減ったが、最近急増し、2010年は10万羽くらい。温暖化のために、シベリアの繁殖地が子育てしやすくなり、日本には遅く来て早く去る(越冬期間が短い)ようになっているようだ。
 
●11月4日(日)「ウニ」
 ウニは、波打ち際から深海まで、世界中の海に約900種がいる。日本人はむかしからウニを食べていて、縄文時代の遺跡からもウニの殻が出てくる。私たちが食べているのはウニの生殖巣(卵巣と精巣)。世界のウニの消費量の約80%が日本で、大部分を日本人が食べている。
 ウニの生態:ウニのとげは、身を守るとともに、上から落ちてきた物のクッションになったり、海底を移動する時に使われることもある。ただ、とげだけでは海底に十分に固定できず、とげの間には髪の毛くらい細い管足がある。管足の先端には吸盤のようなのがあって、それで岩などにくっついている。
 とげを取ってしまったウニの殻の観察:カボチャのミニみたい。表面に凸凹があり、いぼのような所がとげの部分で、その間に小さな穴(管足?)があり、その凸凹が殻の中央から5つの方向に放射状に規則的に並んでいる。これは、ウニとヒトデなどが同じ仲間であることの証拠になる。ウニ、ヒトデ、ナマコは、棘皮動物という同じ仲間で、見た目はかなり違うが、5つの方向に放射状の構造になっている。ウニの殻の上面の中心に小さな穴があり、それは水を出し入れして呼吸する項であるとともに肛門にもなっている。殻をひっくり返して下面を見ると、中央に大きな穴があり、それが口。口には歯があって、その中はアリストテレスの提灯と呼ばれる(アリストテレスは動物もよく観察し、ウニの口器を観察してランタン、提灯)。アリストテレスの提灯の標本を観察:上は傘状になっていて、その先に小さな爪のようなのが5つ付いている(これが歯)。この5つの爪を中心に集めるようにして硬い物もかじる。ウニはふつうは植物食で海藻などを食べているが、お腹がすくと水槽のチューブやガラス面に入れているパテをかじったり、ときにはガラス面に傷を付けることもある。
 タッチングプールではしばしばウニがいる。ムラサキウニなどはとげが太くて触っても痛くない。とげの間にそっと指を入れて殻に触れていると、ゆっくり指の回りのとげが動いて指を包み込むようにする。これを「ウニと握手する」と言っていて、ウニが生きていることを実感できる。
 
●11月11日(日)「マツの黄葉」
 ヒメコマツの研究をしている。ヒメコマツは5本の葉が1組になっているゴヨウマツの仲間。ヒメコマツは庭木として植えられていることがあって、葉が急に黄色くなってしまったが、枯れるのでしょうか、という質問を受けることがある。これに対して、それは古い葉が落ちる前に黄葉しているだけで、心配することはありませんと応えている。
 松と言えば、いつも緑という印象を持つ。緑の葉の中には、緑の色素である葉緑素、あるいはクロロフィルがある。また、緑の葉の中には黄色の色素としてカルテノイドもある。葉の寿命が近づく、枯れていくと、クロロフィルは分解するが、カロテノイドは分解が遅くて、そのため緑が抜けて黄色が残り、黄葉になる。さらに、カロテノイドも分解されると茶色の葉になる。
 紅葉の仕組みはどうなのか?クロロフィルが分解する所までは黄葉の場合と一緒だが、その後真っ赤になるのは、アントシアニンという赤の色素が新しくできるから。
 松のような常緑樹でも、1枚1枚の葉には寿命がある。環境条件によっても違うが、アカマツの葉は2年未満、クロマツやヒメコマツはやや長くて2〜3年。松の木は毎年春に新芽が出る(枝先に芽があって、これが伸びて、新しい幹や枝になる)。伸びた新しい枝先には螺旋状に新しい葉が出る。これが1年生の葉。翌年にも新しい葉が出、前年の葉は2年生になる。さらに翌年も新しい葉が出て、3年生、2年生、1年生の葉が付いていて、その中で2年生や3年生の葉が寿命を迎えて黄葉する。モミジなどは木全体が紅葉するが、松などは一部の葉だけが黄葉している。枝先は1年生の葉は青々していて、下のほうの2年生や3年生の葉が黄色くなる。
 松以外の針葉樹も黄葉する。杉の葉の寿命は3〜4年、ヒノキの葉の寿命は4〜6年。枝の下、密生した葉の奥をよく見ると、例えば4年生の黄葉した葉が見られる。さらにモミの木は7年、ハイマツは10年と葉の寿命が長く、葉のごく一部だけが黄葉するだけなので、黄葉に気が付くことはほとんどない。
 松の木の葉の全部が急に茶色になるのは、マツガレ病、正式にはマツザイセンチュウ病。マツノザイセンチュウという1mm以下の虫が松の木の中に入ってその材の中で増殖して枯らしてしまうという病気。マツノザイセンチュウは北米原産で、20世紀後半に日本に来て、各地の松林を枯らしている。マツノザイセンチュウの運び役をするのがマツノマダラカミキリなどのカミキリムシ。[松枯れ病は単純に松食虫?かと思っていましたが、現在日本各地で問題になっている松の枯死は、カミキリムシに寄生するマツノザイセンチュウが原因なのですね。]
 
●11月18日(日)「フンコロガシ」
 フンコロガシは、日本にはいない。自分よりも大きいまん丸の玉(糞)を後ろ向きになって逆立ちするようにして後ろ足で転がしていく姿が有名。ファーブルが『昆虫記』の中で研究したスカラベ・サクレ(タマオシコガネやフンコロガシという和名が充てられて紹介され、有名になったが、その後にサクレはファーブルの誤同定であったことが判明し、和名もヒジリタマオシコガネへ改められている)は、体長2cm余。エジプトから地中海岸を中心に、朝鮮半島まで生息している。遊牧民と一緒になって広がったのではないか。フランスで何度も観察したが、新鮮な羊の糞を丸めて置いておくと、どこからかフンコロガシが飛んでくる(飛んで来なければ、そこにはフンコロガシはいないということ)。そしてそこでは糞を食べずに、糞を頭で切り取って(頭は切るのに適したスコップのような形をしている)、それを運んで行って地中に穴を掘って埋めてから食べる。糞を転がす前足はとても大きい。
 子どもを育てる時は、地中に穴を掘って特別に質の良い糞球を作る。繊維質の少ない糞を選び、それでも繊維が入っている時はそれを除いてきれいな糞球にし、さらにそれをねかしておいて発酵させて臭いもしないきれいな糞球にする。そして、洋ナシとそっくりの形にして、その上の窪みに卵を産む。卵からかえると幼虫は糞球の中の糞を食べて育つ。1シーズンに数個のこども用の糞球を作り、卵も数個しか産まない。昆虫の中ではとても産む卵の数が少なく、環境の変化に弱い。都市部ではまったく見られなくなったし、また羊の遊牧が減ったので激減している。糞虫はこのほかにもいろいろいて、本来は土の上の糞は糞虫が片づけてくれる(糞虫は糞の掃除屋さん)ので、コンクリートの道路は別として、ふつうの地の部分では糞をとくに片づけなくてよい。
*フンコロガシは日本にはいないが、動物の糞を食べる糞虫は160種くらい知られている。その内60種近くが鹿が多く生息する奈良公園にいて、鹿の糞を掃除している。2018年7月、ならまち糞虫館開館。2019年1月26日午後に、奈良町糞虫館を見学。フンコロガシの糞球に触る。直径3cmくらい、時間が経っているので完全に乾燥していて、とても軽くにおいもまったくない。糞球は直径5cmくらいのものもあるとか。奈良公園にいる糞虫は数mmくらい(シカの糞のひとかけは1〜1.5グラムくらい)だが、世界には10cmくらいもある糞虫がいる(例えばゾウの糞のひとかけは1kgくらい)。
 
●11月25日(日)「里に降りてくる鳥 〜ビンズイとアオジ〜」 (省略)
 
●12月2日(日)「ヒトデ」
 ヒトデは、世界では1500種くらい、日本では250種くらいいる。波打ち際だけでなく深海にも見られる。ウニ・ヒトデ・ナマコは、深海にもわりあい多く見られる。生命力が強く、1個体を2つや3つに切ってもそれぞれが1個体として再生する種類もいるようだ。
 5本の腕を持っているのが基本型だが、中には8本の腕を持つヤツデヒトデ、20本くらいの腕を持つニチリンヒトデもいる。足は、腕の裏側にある細くて軟かい管足で、2列に並んでいる。管足の先には吸盤があって、歩いたり、岩にくっついたり、呼吸をしたり、においなどを感じる感覚器にもなっている。(管足は、ウニの管足と同じような役割をしている。)
 口は、裏側(下側)の中央にある(ウニと同じ)。肛門は背中側(表=上側)にあって、下から食べて上から排泄する。ヒトデには、歯がない。肉食で、2枚貝や死んだ魚などを食べる。小さなものはそのまま口に入れて胃に送るが、大きなものは、胃を自分の体の外に出して、その胃で食べ物を包むようにして消化し摂取する。口より大きいものは、外に胃を出して身体の外で消化して食べる。
 餌は、目で見ているのではなく、においなどで感じているだろう。それぞれの腕の先端に眼点という光を感じる所があって、明るさを感知して動いている。
 ヒトデには前後左右はあるのだろうか?それはない。ウニやヒトデは、5放射相称になっている。哺乳類や昆虫など動いて餌を取る動物は、移動する進行方向が細くなっている(前後幅よりも左右幅が小さい)が、あまり動かずに餌を取っているイソギンチャクなどは(どの方向でもいいように)円い形をしている。移動しない植物もまるく広がっている(花も5弁のものが多い)。ヒトデやウニはあまり動かずに、いわば植物のような生き方をしている。ヒトデの星型の形は、その生活に適した形だと言える。
 ヒトデは水族館では触れられる動物の代表。オニヒトデは別として、その他のヒトデは刺されたり噛まれたりすることはない。ヒトデをひっくり返すと、ゆっくり身体を反らしながら(ヒトデのイナバウアーと言うとか)、10分から十数分かけて元に戻る。
 
●12月9日(日)「センダン」
 センダンは、高さ7、8メートルくらいの樹木で、やや暖かい海岸近くに育つ(関東では人里や公園などに植栽されている)。「栴檀は二葉より香し(かんばし)」ということわざがあるが、この栴檀はセンダンではなくビャクダン(白檀)のこと。白檀(サンダルウッド)はインド原産の香木。このことわざの意味は、白檀は二葉のころから良い香りを放つが、それと同じように、将来大物になる人は幼いころからその才能の片鱗を示すというたとえ。中国ではセンダンにもビャクダンにも栴檀という字が当てられていて、それが日本に入って来てビャクダンも栴檀と書かれたのだろう。
 センダンは、センダン科の樹木で、ヒマラヤ、中国、朝鮮南部から日本という広い生息範囲を持つ。熱帯から亜熱帯にかけての樹木で、日本では南西諸島から九州、四国にかけて自生している。東海から伊豆半島、関東南部にかけても見られるが、どこまでが自生なのかはよく分からない。
 センダンは落葉樹で、この時期は葉を落している。そして、葉を落したこの時期はセンダンがとくに目立つ。それは実で、1個の実は長さ1.5cmほどの俵型で、熟すと黄色っぽくなる。各実には数センチの柄が付いていて、それが数十個集まって枝に房状に付いていて、目立つ。雄雌あって、実がつくのは雌だけ。花は目立たないが、5月ころ咲く。外側が紫、内側が白の小さい花がたくさん咲くが、葉が茂っているので、あまり目立たない。
 冬に実が目立つと、鳥たちの好物になって、ヒヨドリやムクドリなどが群になってセンダンの実を食べているのをよく見かける。
 センダンの実は人にも役に立つ。むかしは、センダンの実を風呂に入れて入浴した(身体が暖まって風邪をひかない)。またセンダンにはいくつか薬効があるようで、実を揉んで中の果肉をしもやけに付けた。また、樹皮を煮てその液を飲むとお中の中の虫が下り、虫下し用に使われたりした。このように身近に役立ったりするので、千葉県でも植栽されたのではないか。
 注意してほしいことは、センダンの実は鳥は好んで食べるが、人や家畜には毒なので食べてはいけない。
 
●12月16日(日)「マダガスカルの昆虫」
 先月マダガスカルに行ってきた。マダガスカルは特殊な所で、その動植物の8割くらいはマダガスカルにしかいない。
 マダガスカルは、赤道より南、アフリカの東のインド洋上の島国で、アフリカ大陸との距離は400kmしかない。それでもアフリカと一度もつながったことはなく、インドなどとのつながりも見られる。
 とにかく独自の多彩な生物が多い。インドとつながっていたのは8800万年前までで、日本の1.5倍ほどもある大きな島が1億年も他の大陸とつながりがないというのは、珍しいことだ。
 捕食者である肉食の動物は少なく、フォッサが最大。フォッサは外形がネコによく似た、マダガスカルマングース科の動物で、体長は70〜80cm、長も同じくらい長い。(トラやヒョウなどはおらず、あまりきびしい生存競争はなく、古いものが生き残ったのではないか。)
 オナシアゲハという蝶を見たかった。オナシアゲハはアジア(とくに熱帯)に広く分布し、またアフリカにはアフリカオナシアゲハもいる。アゲハ蝶にはふつう翅に尾状突起があるが、オナシアゲハにはこの尾状突起がない。ところがマダガスカルには、尾状突起のあるオナシアゲハが3種もいる。
 昆虫で生存競争がはげしくないことを示すような例はないのか?アフリカには広くオスジロアゲハがいる。名の通り、雄だけが白くて、雌は他のいろいろな毒蝶に擬態して鳥などに食べられないようにしている。ところがマダガスカルのオスジロアゲハは、雌も白くて技態していない。たぶん鳥などの捕食圧力が少なくて、技態せずもとのままなのではないだろうか。
 また、マダガスカルにも、いろいろな植物を食べるゾウムシと呼ばれる各種の甲虫がいるが、コケの生えたゾウムシを見た。たぶん、1本の樹にじいっと長い間動かずにいるのでコケが生えたのではないか。
 マダガスカルは、動物にとって安全なので、古い形質のままを留めていたり、のんびり生きているような気がする。日本からマダガスカルへは24時間くらいもかかるが、なぜここにこんな昆虫や動物がいるのか、むかしの地誌なども考えて観察するのにはとても良い場所だ。
 
●12月23日(日)「日本にいる小さな鳥たち」
 世界で一番小さい鳥は、ハチドリの仲間のマメハチドリで、全長5cm、くちばしが長い鳥でそのくちばしお取って立った姿勢では3.5から4cm。
 日本で一番小さい鳥は、全長(くちばしから尾までの長さ)10cmないし10.5cmの、ミソサザイ、キクイタダキ、ヤブサメ。
 ミソサザイは、全体に赤茶けて黒い斑点があり、地味。住んでいる所は、深い山の沢や渓流で、大きな水音に負けないくらい甲高く透き通ったような響く声で鳴く(鳴き声が放送される。ミソサザイの聞きなしは「ピピスクスケスチルチルピョロピョロピリピリリリ・・ルリリル」)。ミソサザイはさえずる時に尾を上げて、かわいい。
 アイヌでは、ミソサザイは勇敢な鳥として崇められていた。 熊があらわれた時、オオワシやタンチョウは尻込みしてしまったが、ミソサザイは勇敢にも熊の耳の中に飛び込んで行き、それを見たオオワシやタンチョウが加勢して熊を退治したという言い伝えがある。一寸法師の鬼退治みたい。
 キクイタダキ(菊戴)の名は、頭の上の真ん中に黄色い菊の細長い花が乗っているように見えるところから。英名でも gold crest(黄金の冠)あるいは kinglet(小さな王様)、学名は Regulus regulus(little king の意)。ヨーロッパでは小さな鳥の王様と呼ばれていて、ルクセンブルクでは国鳥になっている。頭の上の黄色部が王冠のように見えるからだろう。
 キクイタダキが住んでいるのは亜高山帯の針葉樹林で、ミソサザイも同じだが、渡りをするのではなく、標高の高い所から冬には低い所に移動する漂鳥。冬になると里でも見られるが、やはり針葉樹の林で見られることが多い。1円玉7枚=7グラムが、キクイタダキの重さ。
 ヤブサメは、見た目はウグイスそっくり。尾が抜けたように短く(これで10.5cmにおさまっている)、全体にころんとした感じ。ヤブサメの声は、変った特徴がある。(ヤブサメの鳴き声)鳥の声とはぜんぜん違って、虫のよう。シ シ シ シ と、だいぶ周波数の高い声で鳴く(他の鳥と比べて2、3倍も高い8〜10kHzくらい)。
 キクイタダキは標高の高い所で繁殖するのであまり見ることはないだろうが、ミソサザイやヤブサメは意外と近くで見られる。ミソサザイの大きな声、ヤブサメの虫のような声も聞いてほしい。
 
●12月30日(日)「コトヒキ」
 コトヒキはスズキ目シマイサキ科に属する沿岸の魚、わりあい浅い所にいる魚。関東から南、西太平洋からインド洋まで広く分布。南の魚なので、中部日本では体長は20cmほどだが、沖縄などでは40〜50cmくらいのものも見られる。南のほうでは、刺身にしたり塩焼きにしたりして食べている。
 この魚の一番の特徴は鳴くこと。(ここでその声が放送される。「ク グ グー グー ブウ ブウー」といったような声。)鳴く魚としてはホウボウもいる。ホウボウはうきぶくろに振動する筋肉があってそれで音を出しているが、コトヒキはうきぶくろの外に発音筋があってそれを振動させてうきぶくろで共鳴させて音を出している。これがコトヒキの名の由来になっていて、その鳴き声が琴の低音に似ているということらしい。
 なぜ鳴くのか?たぶん繁殖期に雄と雌が伝えあったり、外敵を威嚇する時に鳴いているようだ。意識して鳴いているので、それなりの役割があるはず。詳しい研究はされていない。
 この魚は肉食で、海底のゴカイなどや小魚やエビやカニなどを食べている。ちょっと変っているのは、他の魚の鱗を少しふくらんだ口でかじって食べる。鱗そのものには栄養はないが、それにくっついてくる表皮や肉片に栄養がある。
 背の上に頭から尾にかけて、弓なりの線があるのが特徴。また、幼魚は汽水域(海水と淡水が混じり合っている区域)や淡水域にいる。10数センチに育つまでは、河口から川でも見られる。淡水のほうが大きな魚が少なくリスクが少ないのだろう。コトヒキだけでなくスズキやボラなども幼魚の時は淡水域にも入る。
 
●2019年1月6日(日)「ツバキ」
 この時期に花をさかせる木、ツバキ。ツバキにはいろんな園芸品種があるが、野生のツバキについて話す。
 野生のツバキは「ヤブツバキ」。ヤブツバキは、地域にもよるが、早い所では11月から咲き始め、遅い所では5月まで咲いている。開花時期が半年もあって長い。もちろん1つの花がずっと咲いているのではなく、次々と咲いては散りを繰り返しており、つぼみがたくさんある。
 目立つ花を咲かせるのは、花粉をだれかに運んでもらいたいためで、多くは蝶や蜂など虫が運んでいる。ツバキは虫の少ない時期に咲いているが、ツバキは花粉を鳥に運んでもらっている。メジロなどの小鳥。
 ツバキの花のつくりは、花粉を鳥が運びやすいようになっている。花びらは5枚あり、雌しべを取り込むようにたくさんの雄蕊があるが、たくさんの雄蕊は根元でくっついて筒形になっている(ちょうど茶筅のような形)。蜜は雌しべの根元付近にあり、鳥は筒形の雄しべの中に顔を入れて蜜を取らなければならず、顔は黄色の花粉だらけになる。そして花粉を付けたまま別の花に顔を入れるので、雄しべから雌しべへ、花から花へと花粉を運ぶことになる。
 ヤブツバキは本州から南西諸島に分布し、北限は青森県の夏泊半島。
 ツバキと言えばその葉がテカテカしているという印象を持つ方が多い。ツバキの葉はワックスを塗ったような光沢があり、それはクチクラ(cuticula, cuticle)層が発達して光沢がある。このような葉を持つものを照葉樹と言う。照葉樹には、ツバキのほかに、シイ、カシ、モチノキ、クスノキの仲間などがある。これらの照葉樹が多くふくまれる森林を照葉樹林と言い、かなり広く分布する。西はヒマラヤの中腹から中国南部、南は東南アジアの山地、さらに日本もふくめ東アジアの温帯に分布している。アジアの東の端、温暖で湿潤な地域に広く分布し、日本はその北限になっている。ヤブツバキは照葉樹林の中でも代表的な種で、しかも北限まで分布する種。
 日本の日本海側は冬は豪雪で知られるが、そこにもヤブツバキの仲間のフユツバキが分布している。フユツバキにはいくつか特徴がある。1つは背丈が低いこと(せいぜい2mくらい)、たぶん背丈を低くして雪に埋もれることで寒さをしのいでいる。冬の間は雪に埋もれているので、花は4月になって咲く。フユツバキの花には鳥はあまり来なくて、おそらく花粉は虫が運んでいるだろう。ヤブツバキの雄しべは筒形になっていたが、フユツバキの雄しべは筒形になっておらず虫が入り込みやすくなっている。ツバキは暖かい照葉樹林の代表だが、日本のヤブツバキは日本の冬にも適応している。
 
● 1月13日(日)「モルフォチョウ」
 モルフォチョウは世界で一番美しいと言われている蝶。(写真を見ながら)この色はモルフォブルーとも言われ、ぴかぴか光る青色(金属的な青)。この色は、他の蝶にはない。翅全部がこの青で、飛んでいる姿はなんともきれい。
 この青色は、色素の色ではない、すなわち本当の色ではない。青く見えているのは、光が翅の鱗粉の中で乱反射したり干渉したりなどして青く見えている。
 以前、この蝶の標本の翅のアップの写真を撮ろうと思って強いストロボをたいたら、鼠色になってしまった。それは、ストロボの熱で多層膜構造になっている鱗粉の粒子が溶けてもとの灰色になったから。この蝶の青は構造色と言って、例えば色のないもの、CDやDVDを斜めにして光を当てたり、シャボン玉が虹色に見えたりするのと、同じ原理。
 青く見えるのは翅の表の面だけで、裏はじみな茶色。だから翅を閉じてとまっている時は目立たず、飛んでいる時だけぴかぴか青く見える。
 この写真は、南米の一番北、フレンチギアナで撮ったもの。そこではモルフォチョウをたくさん見ることができた。撮影はとても難しい。この蝶は(他の蝶も同じだが)大きな翅を1秒間に10回から15回くらいはばたかせ、そのたびにぴかぴか青く光るが、この蝶は胴体が小さく、胴に比べてとくに翅が大きいので上下動が激しく、ピントがとても合わせにくい。そして、飛んでいる時は上下動が激しいので、たぶん捕食者なかせ、鳥なかせではないだろうか。
 翅の一部が黒く見えるモルフォチョウもいて、これは林の中を飛んでいる。全体が青く見えるのは、森の外の明るい所を飛んでいる。
 ユーゲニアモルフォチョウは、朝5時から6時ころ、まだ日の出前の月明かりの中で飛んでいる。暗い月明かりの中でも青く光っている。ただし、その青は、月明かりに合わせてだろう、やや薄い青。
 この青の美しい色にはどんな理由が考えられるだろうか?雄同士がコミュニケーションしている色ではないか。1ぴきの雄が飛ぶと、同じ所に数ひきの雄が飛んできて、くるくると回ってその場所を取り合って、勝った1ぴきが雌を呼んでいるようだ。
 南米にはいく種類ものモルフォチョウがいて、中には町の裏山で見られるような種類もあるので、ぜひ見てほしい。
 
● 1月20日(日)「日本にいる大きな鳥たち」
 日本で一番大きな鳥は?高さ(地上から頭までの高さ、立っている時の高さ)ではタンチョウ、全長(くちばしから尾羽までの長さ)ではハクチョウ、翼を広げた大きさ(翼の端から端までの長さ)では猛禽のオオワシ(翼を広げると、2.5m)、重さではハクチョウ(12kg)(ハクチョウは 2冠)。
 オオワシについて:翼を広げると2.5m、飛んでいる所を見た感じは、畳がふわあっと浮いてすうっと横にスライドしている感じ。オオワシなど大型の鳥は、小鳥のように羽をばたばたはばたかせずに、フワッ フワッと飛ぶ。(オオワシの鳴き声:複数がグワクワグワクワといった甲高い声で鳴き交わしている)。姿も美しく、全身黒っぽいが、くちばしと足が黄色くて、額、肩、尾が純白。
 よく似た鳥にオジロワシがいて大きさもほぼ同じだが、よく見ると、オジロワシは年齢とともに白い部分が増えるとか、オオワシは肩が白いとか違いがある。遠くから見ると、オオワシの広げた翼の後ろのほうがまるくふくらんでおり、また白い尾羽がとがっている。
 オオワシは、サハリンもふくめ極東ロシアで繁殖し、厳冬期に1700羽から1800羽くらい北海道にやって来る。本州でも、琵琶湖や諏訪湖で単体で見られることがある。主に魚食で、ときには飛んでいるカモメや小型の哺乳類を襲って食べることもある。今問題になっているのは、鉛注毒で、北海道でハンターが射ったシカなどをオオワシが食べて鉛注毒になっているという報告がある。銃弾には鉛が多く使われていて、射たれたシカなどが放置されたままだと、それをオオワシなどが食べて、鉛注毒になってしまい、今も数羽だが、鉛注毒で死亡したオオワシが運ばれてくる。現在は、北海道では鉛弾の使用が禁止され所有も禁止されている。鉛注毒による死亡がなくなることを願っている。
 
● 1月27日(日)「トラフグ」 (省略)

● 2月3日(日)「オニシバリ」
 千葉の野山を歩いていて、春だなあと感じさせる植物の1つが、オニシバリの花。オニシバリはジンチョウゲ科に属する低木で、落葉樹林の林床によく成育している。九州から四国、福島以繊の本州に分布している。
 ジンチョウゲは中国原産の植物で、日本には園芸植物としてもたらされ普及した。ジンチョウゲに近縁の種も日本にも数種自生していて、その1つがオニシバリ。
 オニシバリは、高さはせいぜい 1mくらいで、2月から4月に花をさかせる。千葉県では早い所だと立春のころには花をさかせる
 花はジンチョウゲに似ていて、萼が4つに別れていて、正面から見ると4枚の花びらが星型に見える。ジンチョウゲは、外側が薄紫、内側が白い花だが、オニシバリは全体が緑がかった薄い黄色、クリーム色と言ってもよい。花によっては緑色とも言えるものもあって個体差はあるが、ジンチョウゲとは花の色が異なっていて、クリーム色系の色。香りは、ジンチョウゲほどではないが、鼻を近づけるとよい匂がふわあっとする。
 「オニシバリ」の名の意味は、鬼を縛るほど丈夫、という意味。これはこの植物の特徴をよく表わしていて、オニシバリの樹皮の繊維はとても強くて、枝を実際にいくら強く引っ張ってもちぎることはできなかった。ジンチョウゲの仲間には繊維が丈夫なものが多く、ミツマタやガンピは和紙の原料として知られている。和紙の原料になるほど強くて長い繊維を持っているということで、樹皮の強い繊維がジンチョウゲ科の共通の特徴かも知れない。
 オニシバリによく似た植物にナニワズがある。ナニワズは、オニシバリの成育地の北、北陸から東北の日本海側、北海道に分布。ナニワズも落葉樹林の林床に成育するが、高さは50cmほどと低く、花は黄色、花の咲く時期は4月から5月と遅く、雪解けを待って咲く。
 オニシバリとナニワズには、「ナツボウズ」という共通の別名がある。夏に丸坊主になるという意味。どういうことかというと、オニシバリもナニワズも、冬に緑の葉を付けていて、夏には葉が落ちてしまう、坊主になってしまうということ。このような植物の性質を、「冬緑性」という(彼岸花も冬緑性)。落葉樹は冬には葉が落ちるので、落葉樹林の林床は冬には明るく、これらの植物はその光を利用しているのではないか。「ナツボウズ」という表現は、このような植物の特徴をよく表わしている。
*ヒガンバナは秋のお彼岸のころ咲くが、花の時期には葉がまったくない。花が咲き終わると、ヒガンバナはいったん地上から姿を消す。晩秋、何もなくなった地面からにょきにょきニラの葉のような細長い葉が伸びてくる。ヒガンバナは秋から春にかけて葉を繁らせ、夏には枯れる。そしてお彼岸のころ、忽然と燃えるような花が現れる。

●2月10日(日)「ラフレシア」
 ラフレシアが主にあるのは、インドネシアとマレーシアの間の熱帯雨林のジャングルの中。
 今回は、マレーシアのサラワク州(ボルネオ島)のクチン(猫という意味)という町に行った。花は直径1mくらい、真赤な大きな花びら5枚で、花びらは分厚くてランドセルの皮くらいあるかな?
 ラフレシアの花は強烈なにおいがあるとされるが、そんなに強いにおいではない。熟したような、ちょっとくさいにおい。ラフレシアは、このにおいで集まるハエに受粉してもらう。ラフレシアの花期はとても短くて、咲いてから4日目くらいが限界で、今回は花期に遅れてしまって、赤い花は見れず、真っ黒くなっていた。(その後、40年くらい前に初めて冒険のようにラフレシアの花の観察に行った時と、現在のラフレシア情報が豊富な状況での見学の仕方の違いや注意点などについて話があった。)

●2月17日(日)「日本にいる最大級の鳥」
 日本にいる最大級の鳥はハクチョウで、日本にはオオハクチョウとコハクチョウの2種がいる。(以下略)

● 2月24日(日)「ナマコ」
 日本ではナマコは食用として知られている。中国料理では乾燥ナマコが使われる。
 海底をゆっくり這いまわっていて、素早い動きはできない。海岸線近くから深海まで栖んでいる。ウニやヒトデと同じく、棘皮動物。世界では1500種、日本では200種くらい知られている。
 ウニは縄文時代から食べられていたが、証拠はないがたぶんナマコも同じころからあるいはそれ以前から食べられていたのではないか(ナマコにはとげや殻がないので、遺物・記録としては残らない)。
 ナマコは、海底にたまっている有機物(魚の糞とか死骸とか降り積もってくるいろいろな有機物)を食べている。ナマコは体が細長くて、前のほうが口、後ろが肛門になっていて、口の回りの触手で集めて食べたり、海底の泥をまるごと食べて栄養分を摂取し残りを糞として肛門から出す。る。
 ウニやヒトデは、口が下面、肛門が上面にあったが、ナマコはそれを横にして長くしたような感じ。ウニやヒトデは5放射構造になっているが、ナマコも同じ構造をしていて、垂直に輪切りにすると5放射になっていることが分かる。
 殻や骨のない肉のかたまりのようなナマコは、どうやって身を守っているのか。肉のかたまりのように見えるが、表面は分厚いコラーゲンの皮膚になっていて、触るとタイヤのように硬くなる。さらにもっと触っていると、急に軟らかくなってどろどろに溶けたスライムのようになる種もある。このようにして、攻撃されると岩の間に入り込んだり、一部だけを食べられたり、硬くなって食べられにくくしたりしている(硬さを変えることで身を守っている)。さらに積極的な防御の方法もあって、一部の種類、熱帯にすんでいる種では、キュビエ器官というのがあって、攻撃されると、肛門?から白いべとべとした糸のようなのを、自分の体の2倍くらいの距離までパッと吐いて、それで相手の体を絡めて動けないようにする。サンゴ礁で潜っていてナマコを触ってやられたことがあるが、べとべとしたものを取るのに苦労した。
 よく食べるマナマコにはキュビエ器官はないが、その代わりに、内臓を吐き出して、それを食べさせて相手を満足させて身を守っている。食べられた内臓は、肛門のほうからは前に向って、口のほうからは後ろに向って消化管が再生していって、 1月ほどで前後がつながってもとに戻り、さらにその回りの器官も次第に再生して2、3月でほぼもとの体に戻るらしい。すごい生命力、ユニークな生存戦略だと言える。
 ナマコは水温が低い時が活動期で(そろそろ繁殖期)で、水温が高くなると岩の間や砂中に隠れて夏眠して体重も減(夏の冬眠のようなもの)、水温が下がってくればまた活動する。

● 3月3日(日)「サカキとヒサカキ」 (省略)
 
● 3月10日(日)「ハサミムシ」
 ハサミムシはわりと身近にいて、落ち葉の下とか、庭で草を積んでおくとその下などにもいる。腹の先端、お尻の所に大きなはさみがあり、開いたり閉じたり動く。はさみは何に使うのか?けんかというより外敵を威嚇するのではないか。獲物を捕る時にはさみを使うというのは見たことがない。ハサミムシは雑食で何でも食べる。
 今の季節は、ハサミムシ、とくにコブハサミムシの観察にいちばん適している。河原の上流のほうでごろごろした石のある所で石を持ち上げると、石の下で、コブハサミムシのお母さんが卵を守っているところが見られる。2月末ころから3月末にかけて、卵から幼虫が生まれてくる。(写真を見ながら)石をひっくり返すと、その下に窪みができていて、そこに卵が入っていてそれに寄り添うようにお母さんがいる。黄色い卵が山のようになっていて(100個くらいあるかな)、その横にお母さんがいる。お母さんハサミムシは、卵を産んで孵化するまで1ヶ月以上かかるが、その間ずうっと何も食べずに寄り添っていて卵を守ることに専念する。石を持ち上げて土がぽろぽろ卵の上に落ちたりすると、おおあわてで卵の上の土をどけたり卵を並べ替えてきれいになめて、数時間後にはなにごともなかったかのようにきれいなもとの状態にしている。
 他の虫が来た時にどうするかは見たことがなかったが、ハサミムシを飼っていて卵を守っている時に上からアリを落としてみたら、お母さんはあわててアリをはさみではさんで外に放り出した。それで、はさみはそういう防御のためとか敵を追い払うのに使うのかなと思った。
 1ヶ月ないしそれ以上飲まず食わずで卵を守った後に、ガラス細工のように透明できれいな小さな赤ちゃんがたくさん生まれてくる。生まれたての時はちょっとハサミムシの形とは違うが、次の日には黒くなってハサミムシの形になっている。卵がかえった後もお母さんはそのままこどもの所にいて、2日ほどすると、こどもがお母さんの背に上りはじめかじったりする。お母さんは翅を持ち上げその下のやわらかい所をこどもが食いついたりする。そうして、お母さんは子どもに食べられてしまう。お母さんは食べられることを分かっているのか、みずから自分の身を差し出す。卵を産む前から1ヶ月以下何も食べていないので体力がなくなり死んでしまうので、死んでしまう体を無駄にしないシステムがこのハサミムシではできている。[卵を守り続けるのは多くのハサミムシ類がしているが、卵がかえった後に自分の体をこどもの食料にしているのはコブハサミムシだけのようだ。]
 外で観察を続けるのは難しいので、石の下から卵とお母さんを連れてきて、プラスチックの箱に土を入れて窪みを作りそこに卵とお母さんをおいて、その上に石を置き、時々石をひっくり返して様子を観察してみると良い。
 
● 3月17日(日)「山の渓流で見られる野鳥」
 今朝取り上げるのは、カワガラスとキセキレイ。
 カワガラスは渓流でわりとふつうに見られる鳥。渓流のごろごろした石の上をぴょんぴょん飛んだり水に潜ったりする。ずんぐりむっくりのじみな姿のわりには、意外ときれいな声で鳴く(鳴き声を聞く:烏とはまったく違うキュルキュルというようなとてもきれいな声)。
 カワガラスは、同じスズメ目ではあるがカラスの仲間ではない。色が黒っぽい焦げ茶色なので、そこからカラスという名が付けられた。大きさは22cmほどでツグミやヒヨドリと同じくらいだが、体形が違う。カワガラスは今が繁殖期。小鳥の多くは虫が出てくる初夏が繁殖期のことが多いが、カワガラスは早いものでは1月ころから繁殖行動に入って、今がピーク。これは、カワガラスが住んでいる渓流という場に関係していて、渓流にはカワゲラやカゲロウ、トビゲラなどの水生昆虫がいて、この時期川底にそれらの幼虫が大量に発生し、それに合わせて繁殖期になっている。
 日本で見られるセキレイの仲間は、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイの3種で、これらは環境によって棲み分けている。キセキレイは、渓流、川の上流から中流域にかけて、セグロセキレイは(キセキレイとかぶることもあるが)川の中流域、ハクセキレイは下流域ないし水辺から離れて市街地でも見られることがある。外見では色で見分けられて、キセキレイはお腹の部分がきれいな黄色。セグロセキレイとハクセキレイはとくに夏になると見分けにくいが、頬を見ると、セグロセキレイは黒、ハクセキレイは白(セグロセキレイは頬だけでなく顔全体が黒)。セグロセキレイは日本にだけ棲み、渡りをすることもない。
 キセキレイは全長20cmくらい、セキレイの仲間ではやや小さい。セキレイは全長の半分近くが尾で、キセキレイも細身で尾が長い。英語ではキセキレイは gray wagtail(wagtail は尾を振る鳥の意で、セキレイ)で、背の灰色からこのように名付けられ、背が黄色のツメナガセキレイ(yellow wagtail)と区別される。和名と英名がこのように異なっている。
 最後に、チイ チイというような、キセキレイの繊細できれいな鳴き声。
 
● 3月24日(日)「アカエイ」
 エイは世界に450種くらい。全体に平べったい形で、大きく広がった胸鰭と体が一体となって、どこまでが鰭なのかどこからが体なのか分からなくなっている。鰭をひらひら波打たせるようにして泳いでいる。種類によっては、マンタの仲間のようにはばたくようにして泳ぐものもいる。アカエイの仲間は波打たせるようにして泳ぐ。
 アカエイは日本でもっともふつうに見られるエイで、この季節、春から夏にかけて産卵期を迎える。北海道から日本各地、東南アジアの大陸の縁辺に棲息する。体長は1mくらいで、後ろに長いむちのような尾鰭があって、これもふくめると2mくらいになる。浅海に棲み、ふつうは砂地にうずもれている。肉食性で、貝やエビやカニ、小さな魚を食べている。
 エイの体は、鱗がなくて、すべすべしている。体の裏側は、全体は白っぽいが赤ないし黄色の縁取りになっていて、アカエイという名はここから来ているらしい(エイの仲間は、全体に黒っぽいものが多い)。
 むちのように長い尾は何の役割をしているのか?尾の途中に数cmから10cmくらいの、1本から3本のとげがあって、外敵が来るとこれで刺す。とげは、のこぎりの歯のように、かえしになっていて、いったん刺さるとなかなか取れにくく、また強い毒も持っている。水族館で、エイの水槽を長靴をはいて掃除している時に、長靴を貫いてかかとを深く刺された人もいて、とても丈夫なとげのようだ。浅い海でアカエイがいることが分かっている時は、足を激しくバシャバシャさせながら歩いたほうが、アカエイが逃げていくので安全なようだ。
 産卵について。サメ・エイの仲間は、卵を産むタイプと子どもを産むタイプがあり、アカエイは子どもを産むタイプ(胎生)。胎生には、卵黄だけを食べて胎内で成長するタイプ、別の卵を栄養にするタイプ、子宮から出てくるミルクを栄養にするタイプ、胎盤を栄養にするタイプがあるが、アカエイは子宮ミルクタイプ。親魚の中でかえった稚魚は口でそのミルクを摂取する。
 サメ・エイの仲間は、魚の形をしているのがサメ、平べったい形のがエイと言っていいが、その中間の形のものもいて、ノコギリエイは、エイでありながらサメのような恰好をしている。ノコギリエイは、体が細長くてサメのような形をしているが、鰓の位置が違う。サメは体の横に鰓があるが、エイは体の裏側、お腹の側に鰓がある。アカエイもノコギリエイも体の下側に左右に5つずつ鰓がある。ノコギリざめは体の横に、ノコギリエイは体の下に鰓がついていて区別できる。
 アカエイの体の裏側を見ていると顔のようにも見えてくる。目のように見えるのは鼻の穴。口は裏側にあり、目は表側にある。大きな胸鰭を波打たせるようにして泳ぐが、とても器用で、前に進むだけでなく、回転したり後ろ向きに泳ぐこともできる。
 
● 3月31日(日)「ミツマタ」
 ミツマタは和紙の原料として有名。教科書に出てくる「コウゾ・ミツマタ」として名前は知っているが、実物は見たことがないという人が多い。実は私たちは毎日ミツマタの繊維に触れている。紙幣の原料はミツマタで、私たちはふだんミツマタの繊維に触れている。もちろん手漉き和紙にも使われている。
 ミツマタは中国原産の、落葉性の低木。古くに日本にもたらされて、日本各地に野生化している。和紙の原料としての産地は、中国・九州地方に多い。高さはせいぜい2メートルくらいで、枝がすべて3つに別れる(名の由来もここから)。分類としてはジンチョウゲ科に属し、オニシバリと同じ仲間。オニシバリは鬼を縛るほど強いが、それは樹皮の繊維が長くて強いからで、同様にジンチョウゲ科のミツマタも樹皮の繊維が丈夫で、それが和紙の原料として使われる。
 今の時期はミツマタの花のころ。冬に落葉し、3月から4月にかけて葉が出る前にかわいい花が咲く。4cmくらいの球状だが、小さな花の集まりで、ひとつひとつの花は、長さ1.5cmくらい、筒形で、内側が鮮やかな黄色、外側が光沢のある白で、それが30本ほど集まってボール状になっていて、全体として黄色く見える。中には、花の内側が赤で、全体に赤く見える赤花種もある。
 ミツマタの花にはいろいろな虫が訪れる。筒形で蜜は奥にあるので、口が長い虫、蝶の種類やビロードツリアブという口の長い虫がやってくる(成虫は春にだけあらわれ、いろいろな花から吸蜜する)。また、コハナバチ(ミツバチの半分くらいの大きさ)など、口が長くなくて花の奥に入れるほど小さくない虫は、花の入口でうろうろして花粉を集めている。さらに、これらミツマタの花にやってくる虫たちをクモが花にとまって待ち構えていることもある。ミツマタの花を見ていると、春が来たなあと感じる。
 
* 4月からは放送時間が毎週土曜日5時台になりました。
● 4月6日(土)「シデムシ」
 暖かい地方では、今ごろからシデムシが地面を歩き回っている。これは、森の掃除屋さん。
 モグラやネズミなど小さな動物は、死んでも死体が地面に落ちているのを見つけることはあまりない。モグラはよくけんかして穴から追い出されて地上に出てきてもとに戻れないと、すぐに死んでしまう。朝に地上に出てきて午後に死ぬと、夜のうちにシデムシが死体を見つけて地面に埋めてしまい、翌朝には死体は見つけられなくなっている。
 それは、何のためにするのか?子育てのため。モグラの死骸がシデムシの子どもの餌になる。
 (写真を見ながら)モグラの死体がある。長さ20cmくらい。その脇に小さな甲虫が見える。これはモンシデムシの仲間で、黒色のベースに赤いオレンジの紋が入っていてわりあいきれいに見える。大きさは2cmくらい(モグラの10分の1ほどの長さ)。シデムシは夜行性で夜に活動するので、昼のうちにモグラの死骸をシデムシよりも先に確保して、シデムシが来るのを待って写真に撮った。
 (写真にはないが)モグラの下にもう1匹シデムシがいる。モグラの所でシデムシの雄と雌が出会い、ペアで協力して、モグラの下を掘り横を掘って次第に沈めていって土に埋めてゆく(すごい仕事量。次の朝には埋まっていた)。夜行性なので、視力は使わず、死んだものの臭いにやってくるらしい。シデ虫は「死出虫」と書く。
 モグラを土の中に埋めた後、毛や皮をはがして肉だけにしてしまう。卵はモグラを埋めた土の中に産む。卵から幼虫がかえると、お母さんがチイチイと音を立てて呼び、幼虫がお母さんの回りに集まってきて口を出し、まるで鳥のように、お母さんが幼虫にモグラの肉の餌を直接与える。基本は雌が子育てするが、雌がいなくなると雄が子育てするという話もある。今回の観察では、雄は途中で出て行ってしまったが、雌が死んでしまった後雄が引き継いだという研究もある。ファーブルもシデムシの研究をした。
 今回の観察では、1ヶ月弱、幼虫が蛹になるまで雌が寄り添って餌を与えていた。昆虫はふつう多くの卵を産む(ときには数千個)、このような子育てをする虫では卵の数は少なく、今回は20個以下だったように思う。
 人間の家族にいちばん近いような昆虫に思えるが、けっこう合理的で、餌のモグラが小さくて餌が足りなさそうな時は、チイチイと音を出して呼んだ時にすぐにこなかった子どもを食べて、共倒れにならないように調整している。これが、脈々と命をつなげてきた虫なりの方法なのだろう。
 
● 4月13日「ホオジロの仲間」 (略)
 
●4月20日「ヒラメ」
 ヒラメは、今は、食べごろを過ぎて産卵期。千島列島から南シナ海まで太平洋から日本海に広く分布。産卵期も場所によって違い、九州ではすでに始まっており、北海道ではこれから7月ころまで。高級魚だが、生息域は広く身近。
 前回のアカエイは、同じように海の底にいるが、上から押しつけたように平たく、これにたいし、ヒラメやカレイは体を横に倒して平たくなっている。その体の表側が左か右かということで、左ヒラメに右カレイという言葉がある。
 カレイもヒラメも表になっているほうが黒く、下になっているほうが白い。表を上にして置いて、目の後ろにエラがあり、エラの切れ目が手前になっているとき、左を向いていればヒラメ、右を向いていればカレイ。(ヒラメの仲間にも○○ガレイというのもあるので注意。)
 ヒラメは、横になった体全体をしならせるようにして泳ぐ。背鰭と腹鰭を波打たせるようにして泳ぐ。胸鰭は、底にぴんと伸ばしてヨットのキールのように、泳ぎを安定させている。
 ヒラメの仲間は、世界で85種くらい、日本で10種くらい。カレイ目ヒラメ科で、その中に○○ガレイというのもいてややこしい。種類はカレイのほうがずっと多い。
 生まれてしばらくは、ふつうの魚と同様、体を縦にして、左右に目がある状態で泳いでいる。 1月くらいするころから、目が移動しはじめる。右目が1週間ほどかけて背中側に動いて行って、背中に来た時に、右側には目がなくなるので、左側を上にして海底に着底する。それまでは波に浮かんでいて透明だったが、海底に着くと回りの色に合わせて表面が茶ないし色になってくる。
 高級魚なので、全国で栽培漁業が行われていて、全国で年間2千万匹くらい放流されている。放流された生は、裏側に黒い部分が残ることが多く、体表の色を調べることで、天然か放流魚かが分かり、全国平均では1割くらい、瀬戸内海では2割以上が放流魚。このような栽培漁業もあって、ヒラメは以前よりは身近な魚になっている。
 水族館でヒラメを観察する時は、ヒラメは体全体を波打たせて泳いでいること(アカエイは、体のへりの鰭だけを波打せている)や、砂地で飼育している時は目だけが出ていることなどを見てほしい。
 
● 4月27日「タケ」
 タケノコは竹の若い稈(かん:竹・稲・麦・黍などイネ科植物の茎に見られるような、節と節の間が中空の茎)。いわば竹の幹のような部分。タケノコを縦に割ってみると、中は中空になっていて、ほぼ等間隔に節がある。このタケノコを上にぐんぐん伸ばして何十倍にもすると、竹の稈になる。春に地上に顔を出して、2ヶ月くらいでぐんぐん伸びて10mくらいまでも伸びる。もっとも盛んな時期は、1日に1mも伸びることがあるという。
 竹の稈にある節は、タケノコの時にすでに出来ていて、その数は増えずに竹の稈になる(竹の節の数はタケノコの時に決まっている)。さらに、竹林に行くと何本も竹が見られるが、地下ではそれが全部づながっている。地下茎(地下を横に伸びている茎)で 1まとまりの竹林の竹がすべてつながっていることもある。私たちに見えているのは地上にある稈だが、竹という植物の本体はむしろ地下にある地下茎で、そこから地上には光合成をするための葉を持った稈が伸びているし、地下には水や養分を吸う根を出しており、これらすべては地下茎から出ている。私たちが見ている竹は、竹の地下茎から伸びた枝?みたいなものだと思ってもよい。
 そして、地下茎があるからこそ、あんなにタケノコがぐんぐん早く成長できる。(地下茎には栄養が蓄えられていて、それを利用できるから。)
 世界には、主に熱帯を中心に千種ほどの竹があり、日本など温帯にも分布している。分類学的にはイネ科の中のタケ類の仲間。日本にもたくさんの竹の種類があるが、日本の代表的な竹は、モウソウチク、マダケ、ハチクの3種。
 竹の花が60年に1度咲くというのは、おおよそ正しい。モウソウチクについては2例だけ観察例があって、2例とも、種を蒔いてから67年目に花が咲き種ができ枯れた。その1例は、東京大学千葉演習林のもので、1930年に種を蒔いて、1997年に開花して種ができ枯れたという結果が出ている。そしてこの実験は今も続いていて、今は2世代目の竹が青々と茂っている(次に花が咲くのは、67年後だとすると2064年)。この実験は、300年続けることになっている。(竹の研究はたいへん!)
 マダケとハチクについては正確には分かっていないが、120年に1度くらい咲くだろうと言われている。しかも、日本ではマダケもハチクも、それぞれほぼ同じ時期に一斉に開花するらしい。マダケは、1960年代に日本で一斉に(5、6年くらいの幅はあるが)開花して話題になった。120年周期が正しいとすると、次は2080年代。
 竹はイネ科なので、その花もイネやムギと似ている。小さな花が集まって穂のようになる。糸のようなおしべが外側に垂れるので、それを見て花が咲いていると分かるだろう。モウソウチクの花は、今年も日本のどこかで咲いているかもしれない。また、ハチクは120年周期と考えられているが、前回は明治時代の終わりころに咲いたという記録があるので、そろそろ咲く時期。実は、一昨年くらいから全国でちらほら咲いているという情報がある。今年は運がよければハチクの花を見られるかもしれない。
 
● 5月4日「ツノトンボ」
 ツノトンボは、トンボの仲間ではなく、ウスバカゲロウの仲間。ただし、雄はカゲロウよりもトンボによく似ている。
 (キバネツノトンボの写真を見ながら)日本には3種類ほどツノトンボがいるが、その中でいちばん美しいのがキバネヅノトンボ。ぱっと見た目はトンボのよう。トンボよりも美しく、はねには黄色の帯のようなのがある。頭から2本の長い触角が伸びている(それでツノトンボと言う)。その長さは胴体と同じくらいも長く、その先端は蝶と同じように丸くふくらんでいる(たぶんここににおいなどの感覚器官が集まっているのだろう)。
 トンボとの違いとしては、この長い触角のほか、幼虫が水中ではなく地面にいること、成虫は休む時にはねを屋根型に閉じる(蛾のように)。また、頭にはたくさん毛があって、前から見るとかわいいと言う人が多い。
 ウスバカゲロウはきゃしゃだが、ツノトンボ、とくにキバネツノトンボは昼にびゅんびゅん飛び回って空中で虫を捕えて食べ、その点はトンボと同じ。
 ツノトンボは、生まれた時からパワフル。ウスバカゲロウは、幼虫の時は地面にすり鉢を彫ってその中に隠れて落ちてくる虫を捕えて食べるが、ツノトンボの幼虫は地面を歩き回って虫を捕える。(写真を見ながら)キバネツノトンボの幼虫が小さなコオロギをつかまえている(見た目はウスバカゲロウの幼虫のアリジゴクと似ているが、それよりやや大きい)。
 成虫になるまでに、正確なことは分からないが、2年くらいかかるのでは。肉食の幼虫は成長が早いが、ツノトンボは虫をつかまえるのがたいへんで成長が遅いかも。成虫が見られるのは、5月初めから6月中ごろくらいまでで、短い。その他の時期は幼虫だけ。主に休耕地に見られる。休耕地は毎年耕さずに数年は放っておくので幼虫が2年から3年かかって成長できる。今は都市部ではほとんど見られなくなっている。休耕地があるというのは、ツノトンボにとってはとても良い環境。
 
● 5月11日「アオバズクとコノハズク」
 アオバズクという名は、木々が茂る青葉のこの時期にやって来るということから。冬の間は日本にいなくて、この時期に日本に来て繁殖・子育てをする。
 アオバズクもコノハズクもフクロウの仲間。フクロウとミミズクの違いについて、フクロウは耳がなくミミズクは耳があるという言われ方をすることがあるが、アオバずくには耳がない。今耳と言ったが、これは耳のように見えるだけで、耳ではなくて羽角という飾り羽。
 アオバズクの大きさは30cm弱くらいで、カラスより少し小さいくらい。フクロウのなかでは、中型。大きな黄色の目が特徴で、全身は焦げ茶色で、お腹は白いが焦げ茶色の斑点がある。(鳴き声を聴く)「ほ ほ ほ ほ」というような、やや高いすんだ声。大型のフクロウだともう少し低音になる。
 (コノハズクの鳴き声)水の流れとともに、 3拍子の鳴き声。「ブッポーソー」と聞きなされている声。コノハズクは日本のフクロウでいちばん小さくて、全長20cmくらい(ツグミやヒヨドリと同じくらい)。コノハズクは、その名のように体に枯葉のような模様があり迷彩服のように森の中に溶け込んでいる。
 アオバズクもコノハズクも、フクロウの仲間は夜行性。闇夜でも見えるように目に特徴がある。眼球の形が楕円形で、より多く光を取り込めるようになっており、さらに、網膜の視細胞の中の杆体細胞が人間の100倍近くもあると言われていて、人の100倍くらいの感度で光を認識し細かく物を識別できる。(杆体細胞は光を感知し、錘体細胞は色を識別する。)
 コノハズクは深い山の中にしかいなくて、実際に会うのは難しい。アオバズクは身近なフクロウだったが、今はとても少なくなっている(カブトムシなど昆虫を食べるので、その食べ物が減っているためかもしれない。カブトムシの頭や角など食べ残しの様子から、それを食べたアオバズクが推測できる)。
 
●5月18日 「アメフラシ」
 大きさ20〜30cmもある黒いかたまりで、巨大なナメクジのようなもの(大きなものは、40cmにもなるという)。アメフラシは軟体動物に属し、その中のサザエなど巻き貝と同じ腹足類(お腹のところで這って歩く)の仲間。ただ巻き貝は殻を背負っているが、アメフラシにはこれはない。だから、カタツムリに対するナメクジのような関係、海にいるナメクジのようなものになる。
 (写真を見ながら)全身、黒ないし焦げ茶色であちこちに白い斑点がある。大きさはふつう20〜30cm、中には40cmにもなるものがいるという。本州から九州までの浅い海で、潮だまりなどで見かける。
 「アメフラシ」という名の由来について:アメフラシをいじめると紫色のしるを出す。そのしるが出るのが、雨雲が広がるように見えるのでこの名になったという説がある。このしるの中に、敵をいやがらせる物質が入っていて、エビやカニなどに襲われた時にこの紫色のしるを出して敵をいやがらせて身を守っているようだ。
 (写真を見ながら)2本の角のようなのがあり、それが触角。触角のある所が頭で、頭の下のほうに口があり、ノリのような軟かい海藻を食べている。貝の仲間のサザエやアワビはコンブなどのかたい海藻の表面を削るようにして食べるが、アメフラシは軟かい海藻を口から吸い込むようにして取り込み、口の奥にあるやすりのような歯舌で砕いて食べる。
 ちょうど今ころが繁殖期で、卵を産んで親は夏には死ぬ。子どもは海の中で漂うプランクトン生活をし、その後海底に着く。人の目につくようになるのは春先で、小さいものが海藻を食べて急激に大きくなり(数ヶ月でみるみる成長する)、卵を産んで夏にはいなくなる。
 孵化して間ない幼生は、ほとんど透明で色はないが、海底で生活するようになると黒くなって回りから目立たなくなる。
 卵はウミゾウメンと呼ばれる(細長い素麺をかたまりにしたような感じ)。(写真を見ながら)瓶に入っていて、鮮やかなオレンジ色で、インスタントラーメンのかたまりが水に入っているような感じ。よく見ると、1mmくらいの細い麺の中に小さなつぶつぶがいっぱい入っている。このつぶつぶは卵が詰まっているカプセルで、このカプセルの中に小さな卵がたくさん入っている。片手に入るくらいのひとかたまりのウミゾウメンの中には、数万個の卵が入っている。(カエルの場合も紐状のものの中にたくさん卵が見られるが、ウミゾウメンの場合は、さらにそのつぶつぶの中に卵がある)。(素麺だと麺が互いに離れるが、ウミゾウメンはお互にくっついてひとかたまりになっている。)
 アメフラシは、1つの個体の中に、雄と雌の生殖器を持っている。頭のほうに雄の生殖器が、背中のほうに雌の生殖器がある。交尾する時は、頭を前の個体の背にくっつけ、背に後ろの個体の頭が乗るというかたちで、複数の個体が「連鎖交尾」する。(複数個体が連なっている時、1つの個体の前のほうは雄のはたらき、後ろのほうが雌のはたらきをしている。)今の時期、水族館や海辺で、連鎖交尾やウミゾウメンが見られるかもしれない。
 
● 5月25日「キイチゴ」
 キイチゴはノイチゴとも言う。ケーキなどに乗っているイチゴとは別の仲間。フルーツとしてのイチゴはオランダイチゴで、ヨーロッパで産み出されたもので、草の仲間。キイチゴは、これとは違う木の仲間で、北半球の温帯に広く分布し、世界では数百種、日本でも40種類くらい分布。代表的なものは、モミジイチゴ、バライチゴ、クサイチゴ、クマイチゴ、エビカライチゴ、ニガイチゴ、フユイチゴ、リュウキュウイチゴ、エゾイチゴ等々。
 リュウキュウイチゴは沖縄(九州の南端にも一部)。エゾイチゴは、北海道を中心に、本州や四国の高い山、さらにユーラシアの温帯地域に広く分布しし、ヨーロッパではラズベリーと呼ばれる。
 キイチゴは、高さ数十cmからせいぜい1mくらいの低木で、おいしく食べられる実をつける。イチゴの実は野生動物の大好物で、クマ、サル、タヌキ、テン、さらに、ムクドリ、シジュウカラ、メジロなど鳥もよく来る。
 実のなる時期は種類によって幅があり、今ごろはモミジイチゴ、夏から秋にかけて熟する種類もあり、冬にはフユイチゴ。実の色も、多くの種は赤くなるが、モミジイチゴやカジイチゴは黄色くなり、クロイチゴは、熟すと真っ黒になる。花は多くは白で、花びらは5枚。桜や梅に似た感じ。
 食べているイチゴとキイチゴの実はまったく異なるできかたのもの。オランダイチゴの実は、花の土台の部分(花托。上に雄蕊や雌しべなどがある)が大きくなったもの。イチゴのつぶつぶは、それぞれ1個の果実。キイチゴは、花托の部分は膨らなくて、雌しべの部分が膨らんだもの。キイチゴの花托にはたくさん雌しべができて、それぞれが膨らんでたくさん(数十個から百個くらい)の果実になり、それが集まって1つの実のように見えている。
 赤い実をつけるヘビイチゴは草の仲間で、毒ではないが食べても味がなくおいしくない。

●6月1日「ビクトリアトリバネアゲハ」
 (略)
 
●6月8日「ゴイサギとササゴイ」
 今回紹介するゴイサギとササゴイは、長い首と長い足のふつうの白いサギたちとは異なり、全体に(首がないような)ずんぐりむっくりの姿。(写真を見ながら)細長い楕円形で、足も短い。お腹は白いが、背のほうはなんとも言えない青緑色でとてもきれいで、頭には白いリボンが流れているようなきれいな冠羽もある。これは成鳥の姿で、幼鳥は全身茶色で白い斑点があり、見た目はまったく違う(星のように白い斑点がちりばめられているのでホシゴイ(星五位)とも呼ばれる)。幼鳥は全体にくすんだ感じで、これからきれいな成鳥の姿は想像しにくい(成鳥の美しい羽色になるのに3年くらいかかる)。目の色は、成鳥は赤色で特徴的だが、幼鳥は黄色。また足の色はともに黄色だが、成長は繁殖期になると足先がピンクになる。
 ゴイサギの成長の全長は60cmほどだが、見た目はカラスくらいの大きさ(ふつうは首をすぼめているので、その時の大きさ)。本当は、ふつうの白いサギと同様に首は長くて、首を伸ばすと胴体(首をすぼめている時)の倍くらいの長さになる。ふつうの白いサギもゴイサギも首の骨は16個あるいは17個で同じ(ふつうの白いサギのほうが、首の骨1個の長さはほんの少し長いようだ)。[ゴイサギは、ふつうは首の骨をS字状に折り曲げていて、魚の餌を取る時などにその首を伸ばす。]
 ゴイサギは主に夜に活動し、英語では black-crowned night heron。五位鷺の名前については、次のような逸話がある。 醍醐天皇(在位897〜930年)が神泉苑(平安京の御所の中の庭園)に行った時、池にサギがいるのを見つけ、部下に命じてその鳥を捕らえようとしたが、簡単には捕らえられなかった。それで部下がサギに「これは勅命である」と言ったところ、サギはおとなしく捕まったとのこと。この様子を見ていた天皇は感心して、そのサギに五位を与えた。
 ササゴイ(笹五位)は色はゴイサギと同じような群青ないし緑で、羽が笹を重ねたような感じで、それが笹五位の由来。大きさはゴイサギよりだいぶ小さくて、鳩くらいの大きさ(首を伸ばすとその倍くらいになる)。ゴイサギの仲間は餌を待ち伏せして取る鳥で、首をぐっと伸ばして魚やエビなど水生の餌を取る。ササゴイは、変った餌の取り方、釣りをする。ササゴイは、木の枝や葉や羽などを水辺に投げ、それによってきた魚を捕らえる(すべてのササゴイがするわけではない)。
 [熊本の水前寺公園にいるササゴイは、パンや麩、クモ、カゲロウ、ミミズなどを水面に投げ入れ、それを食べようと近づいてくる魚を捕まえる。この投げ餌釣りのほか、木の葉や羽毛を使ったフライフィッシングもする。ミミズなどはそのままでササゴイの餌になるが、それで魚を釣った方が食べ応えがあることを知っているのかも。釣りをするササゴイは水前寺公園だけではなく、日本各地、さらにアメリカのフロリダ、シンガポール、南アフリカでも観察されている。]
 
●6月15日「ネンブツダイ」
 スズキ目、スズキ亜目、テンジクダイ科に属するタイで、テンジクダイ科は世界中で270種、日本でその1/3くらいの90種近が棲息する。大きさは10cmくらいで、大きくなっても15cm弱。本州全域とその南、朝鮮半島から南シナ海にかけて分布し、沿岸の主に岩場、砂地でも石がごろごろしている所にいる。
 (写真を見ながら)ぱっと見、金魚みたい。細長い姿で、お腹のあたりがぷっくりしていて、少しピンクがかった朱色。目元から背にかけて黒い線がある。見た目が金魚に似ているので、海金魚と呼ばれることがある。小さな魚なので、群をつくり、ときには何千びきも群れている。夜行性で、昼は岩の間あるいはホンダワラなど1m以上ある海藻の根元に隠れていて、夜になると岸や表面に出てくる。今の時期は繁殖期でもあり、昼でも表面に出てくることがある。
 ネンブツダイは、小さいのでほとんど食用にはされない。磯で夕方に釣りをしていると、群れているネンブツダイが次々と餌に食いついてしまって狙っているもっと大きな魚が釣れず、外道として釣り仲間には嫌われている。(食べてみると、手間はかかるが白身で味は悪くないという。)
 ネンブツダイ(念仏鯛)の名前は、この魚の子育てと関係がある。ネンブツダイは5月から9月が繁殖期で、今がピーク。まず雌が何匹かの雄にちょっかいを出し、30分ほどで相手を決める。相手を決めると2匹で群から離れて海底の岩の陰などに隠れる。4、5日すると雄が雌に求愛行動をする。その間に雄は口を開いたり閉じたりする。これは準備で、ペアになってから1週間ほどで雌のお腹が膨れてきて、雌は口で雌のお腹に触れて刺激する。そして雄雌がV字型にお腹の辺で交差するようにして産卵と放精をする。雌の産む卵は塊になっていて、雄は雌の後ろに回ってその卵塊を開いた口の中に入れて放精した精子とともに受精させる。そして孵化するまで1週間くらい口の中に入れておくが、口を閉じたままだと水が入ってこないので、口を開け閉めしてつねに水が循環するようにする。雄はこのように口をもぐもぐさせて卵塊を育てているが、その姿が念仏を称えているように見えるからこの名前になった。約1週間、口に卵塊をいっぱい入れてもぐもぐし続けているので、その間は雄は餌をまったく取れない。雌は産卵後しばらくするとその場を離れてしまい、雄だけが卵を育てる(究極の育メン)。雄は、ペアになってから1週間、産卵してから1週間、計約2週間の繁殖行動を、繁殖期に何度か繰り返す。このシーズン、水族館で雄のネンブツダイが卵を口に入れてもぐもぐしている姿を見られるかもしれない。[口の中で卵を孵化するまで育てる、あるいは口の中で仔魚を育てるやり方を、マウスブルーダー(mouthbrooder: 口内保育)と言い、両生類や魚類に見られる。]
 
●6月22日「モリアオガエル」
 モリアオガエルは、木の枝に泡状の卵を産むということで有名。モリアオガエルは、日本の本州と佐渡島だけに棲んでいる。どちらかというと、太平洋岸よりも日本海岸のほうに多く分布する。
 大きさは、雌が大きくて、雌は8cmくらい、雄は6cmくらい。アオガエルという名の通り、背は緑色。個体差・地域差があって、緑一色ではなく、不規則に斑模様のあるものもある。
 モリアオガエルの「森」は、森に棲んでいることから。蛙というと水辺で生活するものだと思われがちだが、そうでもなくて、モリアオガエルは、卵の時期とオタマジャクシの時期以外は水辺では暮らさない。水辺から離れて1匹ずつ木に上って、クモや虫など食べて孤独に暮らしている。モリアオガエルの指の先には吸盤が付いていて、それで木にくっつき上るのが得意(モリアオガエルを捕えて手に乗せると、その吸盤で腕などにピタッとしがみつくように上られる時の感触がここちよい)。
 卵は、池や沼などの水面の上に張出している木の枝の上に産む(卵から孵化したオタマジャクシがそのまま落ちるとちょうど水面になっているような場所)。
 まず1匹の雌が1個の卵の塊を産む。そうすると雄がやってきて雌の背の上に抱きついて放精し受精する(カエルは体外受精)。この時、1匹だけではなく5匹以上の雄が1匹の雌の背にしがみついて受精することもある。産みたての卵はきれいなメレンゲ(卵白に砂糖を加え泡立てたもの)状で、泡におおわれている。1個の卵は白いつぶつぶの数mmくらいの大きさで、泡に包まれた1つの卵塊の中に数百個の卵が入っている。[1つの卵塊は大きいものでは直径10cmくらいもあり、その中に500個ほどの卵が入っている。]
 泡の原料は、雌が卵とともに排出する粘液で、それを雌にしがみついている何匹もの雄が後ろ足でかき混ぜ泡立て、メレンゲ状にする。この泡で、乾燥からも外敵からも卵を守ってくれる。
 卵は1〜2週間くらいで孵化してオタマジャクシになり、オタマジャクシはその都度ポタッ、ポタッと水面に落ちる(泡状の卵塊の表面は乾燥してかさかさになっているが、オタマジャクシは酵素を出してかさかさになった卵塊を溶かして下に落ちてゆく)。こうして水面に落ちてくるオタマジャクシを待っている敵もいて、例えばイモリなどがパク、パクと食べてゆく。生き残ったオタマジャクシはカエルニ成長すると、上陸して水辺を離れ森に行く。小カエルが大きくなって繁殖することができるようになるまで数年かかるが、その間は池に戻ることはなくずうっと森で生活する。
 日本には、モリアオガエルをふくめアオガエルが5種類いる。アマミアオガエル、オキナワアオガエル、ヤエヤマアオガエルはそれぞれその地方に棲息。そしてモリアオガエルのほかにシュレーゲルアオガエルがいて、本州では両種がともに見られる地域もあって、見分けるのが難しいこともある。(ここで両種の鳴き声を聞く。)モリアオガエルは、「コ コ コ カッカッカ」というようなすんだとぎれとぎれの声、シュレーゲルアオガエルは「コロコロロロ」というようなカジカのようなきれいな高めの声。カエルで鳴くのは雄だけで、鳴き声は雄から雌へのラブコール。
 
●6月29日「蝶を呼ぶ庭づくり」 (略)
●7月6日「ハシビロコウ」
 (ハシビロコウのバードカービング=全長は10cm余と小さい、実際はコウノトリの仲間で全長140cmもある)を見ながら、全体にグレーで、羽は黒に近い濃い色。くちばしがっ太く、英名の shoebill または shoebillwhaleheaded stork は、くちばしが靴(アルプスの少女ハイジが履いていた木靴)のような形をしていることから[whaleheaded は頭も大きいことから。漢字では、嘴広鸛]。(くちばしは象牙色をベースにちょっと赤味がかった部分もある。)見た目は、強面に見える。実際に接してみるととてもかわいい。
 この鳥の一番の特徴は、動かないこと。実際に見られる姿は、立ちすくんでじいっと動かないでいる姿が多い。これは、餌の捕り方に関係している。ハシビロコウの原産はアフリカ中央部の湿地帯で、水辺で魚や蛙などの水生動物を餌にしている。その中でもとくに肺魚を好んで食べる。(肺魚は肺で呼吸するので)肺魚が出す空気の泡が水面にプクプクと出てくるのをじいっと待っていて、それを頼りにそれをめがけてがばっと俊敏に餌を捕える。ほとんどの時間は、待ち伏せして動かないでいる。
 この鳥は指が長くて、2本の脚の指が交差して重なっていることがある。見ていると、前に出ようとして、下になっているほうの脚を出そうとして、その上に重なっている別の脚の指のために出られないでいることがあり、何度か試みてようやく上に重なっているほうの脚を出して前に踏み出していることがある。伊豆シャボテン公園で飼育しているハシビロコウを観察するために何度も通ったが、ハシビロコウはよく覚えていて、こちらがお辞儀をするとハシビロコウも返してくれ、さらに、「ビル」(このハシビロコウの名前)と声をかけると、コウノトリの仲間に特徴的なクラッタリング(くちばしを上に向けて、上下のくちばしを合わせてカ カ カと音を出す)をしてくれたこともある。
 
●7月13日「ウミヘビ」
 ウミヘビには、魚類に属するグループと爬虫類に属するグループの2グループがある。
 (写真を見ながら)魚のウミヘビには、鰓があり、また背には背鰭もある(腹側にも鰭がある)。魚のウミヘビは、細長くて、ウナギの仲間。
 爬虫類のウミヘビは、ヘビ亜目のコブラ科の仲間で毒を持つ。コブラ科のウミヘビ亜科に属し、日本にはウミヘビ亜科が9種いる。写真は2枚ともエラブウミヘビで、1枚は黒と白の縞模様、もう1枚は黒と茶の縞模様。黒白の縞模様は若く、年を取ってくると褐色ないし黄色になってくる。地元ではエラブウナギとも呼ばれ、1.5mくらいの長さまで大きくなり、南西諸島からフィリピン、オーストラリア、インド洋にまで分布。
 爬虫類のウミヘビは肺呼吸で、水面に出てきて呼吸する(短いと30分に1度、長いと1時間から2時間に1度呼吸するために海底から水面に出てくる)。陸のヘビよりもウミヘビは肺がだいぶ大きいようだ。ウミヘビはサンゴ礁のあるような所に住んでいて、夜行性で夜になるとサンゴ礁の間にいる小さなたくさんの魚を餌にしようとして海に適応していったのではないか。毒が強くて、ハブの80倍、コブラの10倍も毒性が強いという。噛まれても血清がないため、死ぬこともあるという。ただし、ウミヘビは寝込んでいる小さな魚を餌にしているので、陸のヘビのように敏捷でなく攻撃的でもない。無謀なことをしないかぎり、噛まれたりすることはない。沖縄や奄美では、古くからこのエラブウミヘビを燻製のようにして食べていて、今でも郷土食として出されることがある。