六甲山の上美術館、ようやくオープン

上に戻る


 
 11月15日、「六甲山の上美術館 さわるミュージアム」が正式にオープンしました。
 9月6日にオープニングセレモニー&内覧会が行われましたが、いろいろ手続きが滞ったようで、9月下旬というオープン予定が1ヶ月半ほどずれ込んでしまいました(その間も、希望があれば見学を受け入れ、300人以上の方々が訪れたようです)。
 六甲山の上美術館は、神戸市の宝石業矢野茂樹・貴美子夫妻が中心となって活動してきた一般社団法人「カグヤ」が開設したものです。私が矢野さんご夫妻と初めてお会いしたのは、今から3年余前で、神戸のお店にうかがい、多くの瑪瑙のカメオ作品に触り、感動したことを覚えています。2010年8月には、日本ライトハウス情報文化センターで「手で実感する美術展」を開催、その後、常設の触る美術館開設を目指して、場所の確保や協力者を求めて全国各地を奔走しましたが、結局六甲山上の企業の保養所を買い取って改装し、神戸市からの支援も得てようやくオープンにまでこぎ着けました。
 場所は六甲山上の人工スキー場のすぐ近くで、近郊にはオルゴール・ミュージアムや高山植物園などもあります。アクセスは、阪神御影駅、JR六甲道駅あるいは阪急六甲駅から、神戸市バス16系統で六甲ケーブル下駅まで行き、そこで六甲ケーブルで六甲ケーブル山上駅に行き、さらにそこから六甲山上バスに乗り換え、カンツリーハウスで下車、そこから歩いて7、8分の所です(冬は人工スキー場で降りると、歩いて2分くらいで着きます(なお、途中には急な下り坂があり、また未舗装の部分もあります)。阪急六甲駅からだと約1時間余かかります(タクシーを使うと30分くらいですが、料金はたぶん5千円くらいになると思います)。
 開館時間は午前10時〜午後5時で、木曜日が休館です。入館料は、大人1,000円、小学生以下500円です。
 問合せは、電話 078−894−2400、FAX 078-894-2411、住所 神戸市灘区六甲山町北六甲4512-808 です。
 
 以下、現在展示されている作品を作家別に紹介します。(2014年5月11日、2015年3月22日にも同館を訪れ作品を鑑賞しましたので、いくつか追加しました。なお、一部、不正確な点、勘違いなどもあるかと思います。ご容赦ください。)
 
●桑山賀行(1948年生まれ。木彫家。40年以上日展で活躍、奨励賞、特選、西望賞、内閣総理大臣賞などを複数回受賞。日展監事、日本彫刻会運営委員)
「たそがれて」
 高さ2m近くある大きな木彫。見た目や石のような感じだそうだ。正面に人形遣いの大きな顔、その左肩の上あたりに人形の小さな顔。人形遣いが左手のひらに人形を乗せるようにし、左肩で支えるようにしている。人形遣いの右手はまっすぐ下に伸びている。
「海の万人」
 木製。オコゼをモデルにしたらしい。顔は、口が上を向き、口の回りにはぶつぶつの突起がある。目もぎょろんと大きく、やや上向き。体はずんぐりとして、背鰭が立ち、その他の鰭も大きくひろがっている。全体はなんかこわそう、すごーいといった感じ。
「花化粧」
 これはハナミノカサゴという、各鰭がとても大きな魚をモデルにしているとのこと。体は上の「海の番人」よりも小さいが、背鰭や胸鰭がいくつにも別れて大きくひろがっていて、とてもダイナミックな感じ。このダイナミックな鰭を触って、私はまるで鳥のように飛ぶこともできるかと思ったほど。鰭の開き方が花が開いたようにも見えるので「花化粧」という名前らしい。
「砂丘 U」
 木製。手前に向ってゆるく傾斜した砂浜が広がり、その面をよく触ってみると、水の流れた跡のようなのも感じられる。なにか木の杭のようなのがいくつもあって、その先端にはカラスが数羽とまっている。右奥には女の子が膝をかかえてしゃがんでおり、こちらを見ている。
「砂丘 T」
 上の作品の前と後ろを逆にしたようなもの。上が海の方から見ているのにたいし、こちらは浜の後ろから海の方を見ている。女の子は左手前にこれまた膝をかかえて右を向いて座っている。カラスが数羽木の杭のようなのにとまり、右端の1羽は女の子と見つめ合っているようだ。
「三歳のころ」
 ブロンズ。高さ1メートル弱。桑山先生の息子さんが3歳の時の全身像。
「我は海の子」
 高さ20cm余の木製の3角柱の上に、高さ20cm余のブロンズの少年の像が立っている。少年は、両手を広げ、手を握り締め、上半身をやや前傾にして、これから海に飛び込もうとしているようだ。なにか緊張感を感じさせる作品のように思った。
「幕間」
 木彫。文楽の人形。頭の髪飾り?や簪、幾重にも重ねて着ている服の様子などが触ってよく分かる。これも石のように見えるとか。
「不動明王」
 木彫。微かに楠の匂がする。たぶん制作してまだそんなに時間が経っていないのだろう。高さは全体で60cm弱。ごつごつした岩(この岩の感触が私には好ましい)の上に立っている不動明王。光背は燃え上がるような火炎。右手に剣を上に向けて持ち、左手には羂索(綱の一端に重り=独鈷を、他端に鐶=環を付けたもので、仏菩薩の衆生を救い取る働きを象徴するもの)を持っている。髪は逆立っている。右目はかっと見開いて天を見据え、右上顎の牙は下を向いている。また、左目は半眼で地を見据え、左下顎の牙は上を向いている。(この不動明王を斜め右側から見ると、半眼のためなのでしょう、なにかやさしく見えるとか。)
「蓮華」
 木彫。高さは全体で50cm弱くらい。回りの蓮の花が垂れている蓮台の上の座像。両手を合せて胸の前で上に向け、背を丸めるようにやや前向きの姿勢。
「我家のソクラテス」
 木彫。実物大のラブラドール犬。右側を下にして横たわっている。前脚は左脚を上にして交差させて、顔は前を向いている。大きな耳が垂れている。2012年8月、桑山家の一員だったリタイア犬・アイリスが、突然亡くなったそうです。アイリスを何時までも覚えていたいと、制作したとのことです。
 
●清水公照(1911〜1999年。東大寺別当、華厳宗管長となり、大仏殿昭和大修理を行なう)
「天上天下」
 ブロンズ製の小さな仏像。直径7〜8cmくらいの蓮華の花の皿のようなものの上に、高さ10cmほどの上半身の像がある。腕が太く、右手人差指で上、左手人差指で斜め右下を指している。両の耳が大きくて前に突き出している。
 
●小林陸一郎(1938年生まれ。彫刻家。行動美術協会会員)
「イタリアの少女」
 木製。幅50cm、高さ1m弱ほどもある大きな女の頭像。若いころの作品で、エレナさんという方をモデルにしたとか。鼻が高く、目は彫刻刀でちょっと削り取ったように窪んだ形で表現されている。頬がとくにつるつるで気持ち良い(つい撫でたくなりそう)。
「遊」
 木製。全体は、2つの円が縦に直覚に交差しているような感じ。2つの円の下のほうは、それぞれ女の胸から脚までを表しているようにも感じられる(お尻の辺で体をぎゅっとねじっているようだ)。手触りは全体につるつるで、心地よい。
「無意味の存在 1」
 木製(桜材)。玄関に立っている。高さ120cmくらい。上のほうがややずんぐりしていて、下のほうが細くなっている。
「無意味の存在 2」「無意味の存在 3」」無意味の存在 4」
 いずれも木製で、和室にあり、畳の上に置いてある。2は、正方形を立てたような形の左に、畳面にそってしゅうっと細く2段に伸びた突部がある。3は、全体は腰を折って顔を地に伏せているような印象を受ける(私はこれは「絶望の形」だと思った)。4は、長さ120cmくらいの独特の曲面を持った平たい板状のもの。
「風」
 高さ2m、幅30cm、厚さ5cmくらいのうねうねと波打ったような木製の板が立っている。触るとゆらゆらと揺れ、風を連想させる。またゆっくりと回転させることもできる。表面の起伏や模様が触って心地好い。
「煙」
 高さ30cmくらいのまな板のような木製の板が立っています。その上縁から、斜め上に向って20cmくらい、うねうねと、ちょうど直径4〜5cm、厚さ2〜3cmのお団子のようなのをいくつも連ねるように、続いています。煙がモクモク出ているというのは、こんな感じなのかなと思いました。
「対話」
 横50cm、縦30cm、厚さ3cmくらいの赤御影石の上に、ずんぐりした感じの、大理石のオブジェが2個向い合うように置かれている。大理石の面には、あちこち、化石が入っていたような小さな穴がたくさんある(大理石の色は白ではなく、ややベージュがかっているとか。)大理石の2つのオブジェは、お互いに、頭のように突出した部分を、相手の窪んだ部分にぴったり合わせるような配置で置かれていて、頭を寄せ合って親密にお話ししている感じがする。
 
●重岡建治(1936年生まれ。彫刻家。1971年イタリアに留学、エミリオ・グレコに師事)
「家族」
 ブロンズ製。四角い箱のような物の上に、手前に子供、向って左に母、右に父と思われる3人が、内側を向いて腕を組むようにつながっている。母の髪は外側になびいている。父の胸から腹部にかけて、溝のような線があった。
「絆」
 木製。子どもとお母さんが向かい合って、上の「家族」のようにつながっている。お母さんと子どもの顔は幅が薄くて、目・鼻・口が突き出た線上にある。(私は、お母さんを初め、なんか魚の形を連想しながら触った。)
「抱擁」
 木製。大まかな形は、50cm×30cm×20cmくらいの四角柱。男女が抱擁しているところを表しているとのことだが、よくは分からない。上面にはちょうど対角線状に盛り上がった線があり、私は、男女の境界なのかもと思った。また側面の一方には肩と腕の形が、反対側の面には心臓と腕の形が、実際の凸型とは反対の凹型で示されている。
「夢を呼ぶ」
 長さ50cm余の大きな魚の上に、子どもが、魚の背の形に沿って膝を曲げて座っている。子どもは、両手でホルンを持っている。全体の曲線が美しく感じられる。
 
●高橋りく(富山美術学院院長。色の明度を粒子の粗さの違いで、色相を香りの違いで表現する「マリス」という絵画手法の普及活動をしている。)
 色の濃淡を、10段階くらいに、粒子の大きさの違い(白が一番小さくて、ほとんどつるつるの感じ。黒は大きな粒がごつごつした感じ。)で表している。
「CHANGE THE WORLD」
 高さ2mほど、幅1mほど。モナリザの全身の姿。前で重ねた両手から白杖がまっすぐ下に伸びている。背中には天使の羽。足首までの黒衣姿でサンダルを履いている。モナリザの頭部の遙か後ろに原発建屋が見える。福島原発事故と、そこからの復活を暗示しているかも知れない。(触って理解するのはかなり難しい。説明してもらえば、杖や羽など一部分かる所もある。)
「ライオンには保護色」
 縞馬の胴体あたりの縞模様が示されている。触った感じはさらあっとした感じとざらっとした感じの帯がほぼ縦方向に交互にある。
「すてきなジュディ 1」
 縞馬の後ろ足の縞模様。手前にある足をつま先だけ地面につけている。
「すてきなジュディ 2」
 これも、縞馬の後ろ足の模様。手前の足は蹄全体が地面についている。
「わからないってなに?」
 横方向に平行にいろいろな色合いの帯(触ってもよく分かる)が走っており、その真ん中あたりに、大きな5弁の花が左右に2つ並んで描かれている。花はつるつるしていて白く、右側の花の中央には、点字で「Don't think. Feel.」と書かれている。
「国旗(ブータン)」
 中央に大きく白い竜が描かれ、鱗のような細かい線も触って少し分かる。4本の足それぞれで球を持っている。
「国旗(コソボ)」
 青地に、上に白い星が6つ横に並び、その下にコソボの地図が金色で描かれている。(ちなみに、6つの星は、アルバニア系・セルビア系・トルコ系・ボスニア系・ロマ系・ゴラ系の6民族を表しているとか)
「不思議の国のアリス」
 5弁の花がたくさん描かれているようですが、触ってはあまりよく分かりませんでした。
 
●與倉豪指導によるイレブンガールズ
「パラダイス ワールド」
 高さ2mほど、横幅10m近くもある大きな作品。2013年8月、本美術館で、與倉豪先生の指導のもと、様々の分野の11人の若手画家が共同して描いた作品。
 春・夏・秋・冬の4季の移り変わりが描かれている。私が少し触って分かるかなと思ったのは、向い合った丹頂鶴2羽、虹、アジサイ、雪の結晶、紅葉など。
 
●出口修(1946年生まれ。画家。神戸を中心に活動)
「核の冬」)
 縦横とも1m余の、発泡スチロールを素材とした立体的な絵。背景の白い部分はするうっとした感じだが、それ以外の部分はぎざぎざ・とげとげした感じでなかなか触りにくい(その部分は、赤茶色っぽい土のような風に見えるとか。中心部に、爆心地と思われる高い盛り上がりがあって、その回りに同心円状にいくつも溝のようなのがある。その外側にも道なのか川なのか分からないが、溝のようなのがあちこちにある。
 
●浅賀正治(1953年生まれ。石彫家。太平洋美術会会員)
「無題」
 御影石の彫刻が3点あります。いずれも、1辺が20cm前後の立方体のような形。それぞれ、側面は御影石のざらざらした感じですが、上につるうっとした突起が数個あって、一部は犬や猫の肉球のようにも見えるそうです。
 
●江田挙寛(石創画家)
 次の3点は、有名な作家の作品の石創画による翻案です。
「青V (ミロ)」
 (抽象的で、形をはっきりと思い出せません。)
「母性 (ミロ)」
 対角線が2本中央で交差して引かれ、その線の各終点に次のような形が描かれている。右下には中心角が120度くらいの扇形、その対角線上の左上には人の頭にメデューサのような髪が数本ゆらゆらしている形。左下には半円、その対角線上の右上には大きな円およびその中心に小さな円が描かれている。
「ブルーヌード (マチス)」
 左ひざを立て、右足はひざを折り曲げて外側に開き、足首を左足の踵あたりに置いている。左腕は下ろし、右腕は前へ下げた頭の上に上げている。女性は青でシルエットのように描かれている。(触って理解するのは、私には難しかった。)
 
「高松塚古墳壁画復原」
 幅2mくらい、奥行き4mくらいの、石室に似せた小さな部屋に、実際の石室での配置に合わせて展示している。
 入って左側(西壁)には手前から奥に向って、男子群像、白虎(その上に月輪)、女子群像の3枚、奥の北壁には玄武、右側(東壁)には奥から手前に向って、女子群像、青龍(その上に日輪)、男子群像の3枚(この3枚はレリーフで、触ってよく分かる)。入口(南側)の朱雀と天井の星宿図は、別の位置に展示されている。
 (高松塚古墳壁画について詳しくは、「点字の考案者ルイ・ブライユ生誕200年記念・・・点天展・・・」報告を参照)
 *この石創画は、2015年3月ころに撤収され、現在はこの小さな部屋は光のまったく入らない「ブラックルーム」として活用されている。
 
●吉田英智(兵庫県小野市生まれ。現在80歳過ぎか?)
 次の2点は、2015年3月8日までBBプラザ美術館(神戸市灘区)で開かれていた「震災から20年 震災 記憶 美術」展に展示されていた作品で、3月末に吉田氏が六甲山の上美術館に寄贈したものです。いずれも、1995年の神戸で経験した阪神淡路大震災の記憶を作品にしたものだとのことです。
「1995・1・17神戸」
 1995年制作。アルミ製。40cm四方くらいの台の上に、高さ70cm、幅20〜30cm、厚さ10cmくらいの壁が立っています。壁はコンクリートが剥き出しになったようなざらざら・ぎざぎざしたような手触りです。上のほうはがたがたに崩れ、また全体に少し歪んで前のほうにやや傾いているようです。壁の下には、数人ずつ2組の人々が、互いに支えあうように身を寄せ合いながら立ちいろいろな方向を見ているようです。(なかでも、子供が成人の腰のあたりにしがみ付くようにしているのが印象的でした。)
 
「ビルと人間」
 1995年制作。ブロンズ製。台の上に、縦・横・高さとも50cmくらいの、少しゆがんだような大きな箱のようなのが置かれています。箱の下のほうは一部大きくえぐられるように崩れ、中からなにかが流れ出しているような感じになっています。大きな箱の下や周りには、10人近く人々がいろいろな姿で立っています。
 
●Aray Dommer
 瑪瑙のカメオ。ガラスケースに入っていて、希望すれば中から出してもらって触ることができます。私が触った作品を以下に紹介します(大部分は「手で実感する美術展」でも触ったもの)。説明してもらわないとなかなか細かい所までは分かりませんが、手触りはとても良いですし、また作品を通して古代ギギリシアやキリスト教世界の逸話などを実感できます。
 
「海の神ネプチューン」(直径16cm)
 瑪瑙のカメオで、ほぼ円形の板状です。
 一番左に、海の神ネプチューン(ポセイドン)の象徴である三叉の鉾が真っ直ぐ上向きに立っています。その右にネプチューンが描かれています。ひげが生えた顔の男性ですが、脚は魚の尾ひれの形になっています。ネプチューンと三叉の鉾の下には、小さな波が細かく描かれています。
 ネプチューンの右には、彼の恋人であるメドゥーサが描かれています(メドゥーサは少女の頃はアテナが嫉妬するほどきれいで、ネプチューンもその美しさに魅せられ、アテナの神殿で彼女を抱いたとか)。メドゥーサは三叉の鉾の所まで左手を伸ばし(その腕の大部分はネプチューンに隠れています)、岩の上に座っている状態です。ネプチューンは魚を手で抱えるように持ち、右足を踏み出してその魚をメドゥーサに捧げているようです。
 画面の右下には白鳥が描かれています。羽を大きく広げ、長い首を上に伸ばし、右を向いています。白鳥の羽の筋は触ってとてもきれいです。
 
「バッカス」(直径16cm)
 瑪瑙のカメオで、お椀状に窪んだ形になっています。
 酒の神バッカスが葡萄の収穫のお祝いを楽しんでいる様子を描いたものだとのことです。
 中央にバッカスが立ち、その両側に女性が描かれています。バッカスは左手に大きな酒盃を掲げるように持ち、右手は画面左側の女性を後ろから抱えるように伸ばして女性の腰当たりを手で支えています。
 左側の女性はほぼ正面を向き、左手を伸ばして葡萄を取ろうとしています。
 右側の女性は上半身を起こし、足を曲げて座っています。後ろ向きで、左手を上のほうに伸ばし小さな酒盃を持っています。彼女は画面の縁ぎりぎりに描かれているので、窮屈そうな印象を受けました。
 画面の縁に沿って円を描くように、葡萄の木のツタや葉や葡萄が描かれています。
 
「パリスの裁き」(19×13.5cm)
 瑪瑙のカメオで、板状です。ペレウス王の結婚式に自分だけが招待されなかったことを恨んだ不和の女神エリスが、宴席に黄金のりんごを投げいれ、そのりんごに「最も美しい女性に」と記されていたため、3人の女神が美を競い合うことになり、ゼウスがトロイアの若い王子パリスにその審判をさせた、その模様を描いたものだとのことです。(この時のいざこざがやがてはトロイア戦争に発展していくようです!)
 この作品は、全体としてとてもバランスが良くて、私には好ましく感じました。
 中央には 3人女神が並んでいます。そして、右端にパリス、左端に王が配されています。画面上部には、木の葉が多数茂っています。
 右側に位置するパリスは、座って左の女神たちを見ています。彼の後ろには柱が立ち、柱の上は木の葉に続いています。
  3(人の女神のうち真ん中の女神は、両腕を上に伸ばしてすっくと立っています。両手先は頭の上で組んでいるようになっているかもしれませんが、木の葉に隠れてよく分かりません(両腕の輪郭が菱形になっていて、形として美しく思います)。正面やや右下を見ているようです。
 右側の女神は、石の上に膝を曲げて座り、左の方を見ています。
 左側の女神は、右側を向き、髪を束ね、髪は腰まで伸びています(髪の毛を示す何本もの曲線の流れがとてもきれいです)。両腕をクロスし、自分の乳首を隠すようにしています。左腕に布をかけ下半身は布に覆われています。
 画面左端にも柱があり、王の像があります(触ってはかなり分かりにくいです)。
 *同じタイトルで、やや小さめのお椀状の作品もあります。この作品では、パリスが画面左側に位置し、右側に3人の女神が並んでいます。一番右側の女神は後ろ向きで、お尻の曲面が触ってとてもここちよいです。
 
「アダムとイブ」(23×22×8.5cm)
 瑪瑙のカメオで、大きな深いお椀状になっています。
 旧約聖書の『創世記』のアダムとイブの物語を表したもので、蛇がイブに近づき、神から食べてはいけないと言われた善悪の知識の木の実を食べるよう促され、イブ自身がその実を食べた後、アダムにも木の実を勧めている様子を描いたものです。
 右側にイブ、左側にアダムが立ち、その 2人の間、奥のほうに太い木が画面の下から上までいっぱいに描かれています。木の上の方は枝葉が広がり、さらに画面の上縁に沿うように蛇が描かれています(一部木の枝葉で隠れています)。
 イブは左手を高く上げ、手の先が枝に付いた 2個のりんごに触れています。その枝には蛇の頭が伸びてきています(蛇のうねった体には細かい線のようなのが多数彫られ、鱗を表しているようです)。
 イブは右手にりんごを持ち、木の前で、アダムの左手にりんごを渡そうとしているようです。アダムは、右脚で立ち、左脚はなにか岩のようなのを乗り越えるように膝を曲げて大きく前に踏み出し、左を向いてイブのほうを見ているようです(アダムの顎にはひげのような縦の細かい線が感じ取れます)。
 アダムの脚などは太く、また凹凸も大きく描かれているので、逞しさを感じます。
 
「ラピテース族と戦うケンタウルス」(17.5×14×3cm)
 瑪瑙のカメオで、ごく浅いお椀状です。
 左にラピテース族の人物、右に半人半馬のケンタウルスが描かれています。
 ラピテース族は左脚を真っ直ぐ伸ばして立ち、右脚は膝を折って岩の上に乗せているようです。顔はほぼ正面を向いています。
 ケンタウルスは左(ラピテースのほう)を向き、両手で分厚そうな大きな盾を持っています。顔にはひげが生えているようです。体と両脚は馬になっています。首当たりにライオンの生革を巻きつけているようです(ライオンの頭と尾がほぼ同じ所にあって、ライオンの体は折り曲げられているようです。)
 ケンタウルスとラピテース族の戦いは、ギリシア神話の中でもよく知られた話のようです。
 
「聖セバスティアヌス」(16.6×7cm)
 瑪瑙のカメオで、縦長の板状です。
 聖セバスティアヌスは、 3世紀末のキリスト教の殉教者で、これはその処刑の場面を描いたものです。
 画面上下いっぱいに木が描かれ、その木の前にセバスティアヌスが正面を向いて立ち、それぞれの腕の辺を綱で木に縛り付けられています。セバスティアヌスの体の右側に 4本矢が突き刺さっています。一番上の矢は右肩から刺さって左胸下に矢先が出て、貫通しています。さらに、腰当たりに 2本、膝上当たりに 1本矢が突き刺さっています。表情までは触って分かりませんが、こんな痛みの中でもしっかりと真っ直ぐ立っていることが印象的です。
 
「サマリアの女」(12.8×4.6cm)
 瑪瑙のカメオで、縦長の板状です。
 アルフォンス・ミュシャの「サマリアの女」というポスターをカメオにしたものだそうです。「サマリアの女」は、聖書(ヨハネの福音書第4章:ユダヤからガリラヤに向かう途中、井戸のそばに座るイエスにサマリアの女・フォティナが水を与え、さらに彼女がサマリア人を改宗させる)に題材を得た演劇で、その一場面を描いているようです。
 中央に、サマリアの女・フォティナが立っています。長い髪が腰あたりまで伸び、また衣も触って少し触って分かります。頭部の背後には光臨のような円が描かれていて、その周りには細かな模様のようなのがあります(実際はヘブライ文字のようです)。
 サマリアの女は、肩のあたりで水瓶を持っていて、その中に身体を丸めたような小さな人物が描かれているようです(イエスかも知れませんが、よくは分かりません)。
 
●Herbelt Klein
 水晶などの宝石彫刻。小さい物が多いですが、とても精巧・精密です。
「茸の上のかえる」
 蛙が茸の上に伸び上がるように足をかけています。蛙と茸の上面はつるつるしていますが、茸の裏面は本当の茸の裏面を思わせるような手触りでした。
「亀」
長さ4〜5cmくらいの小さな亀ですが、お腹の文様や足の裏まで精巧に彫られていました。
「馬」
 ラピスラズリの台の上に、水晶製の馬(競走馬らしいです)の頭部が乗っています。顔の前の部分は18金のマスクになっており(手触りは水晶とは違ってやわらかさがある)、その縁には小さなつぶつぶが連なっています(これはダイアモンドだそうです)。頭の上から後ろにかけては毛並み(鬣?)の曲線が触ってとてもきれいに感じます。
 
(2013年12月1日、2014年5月12日、2015年3月26日)更新