第6回 作品発表会

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 今回の講習会は、回数も少ないこともあり、触知についてどれだけ受講者の皆様方に伝えられるのか心もとない状態で始めましたが、皆様の熱心さと協力とにより、かなり充実したものになったように思います。とくに、最終回を作品発表の回として設定したことで、その目標に向かってずうっと緊張感のようなものが持続していたように思います。そしてその成果が、この作品発表会の多彩で魅力的な作品群として結実しました。
 花火、多面体の断面、星座盤などはこれまでだれも作ってみたことのないような意欲的な触知資料です。また、メルヘンの世界から高級な幾何学の教材、さらには素晴らしい観察記録など、多岐に及ぶ個性的な作品たちに出合うことができました。
 初めてエーデルを使ったり触地図などを作ってみた方もおられましたが、各自一生懸命勉強し工夫したことがうかがえます。
 作品は全部で30点ほどになりますが、いちおう教科別に整理して紹介します。
 
 なお、*付きの文章は、各作品についての小原のコメントです。また、小原の作品にだけ名前を入れました。
 
《算数・数学系》
 
◆ 三角形・四角形の内角の合計は?
●材料
 化粧箱
 
●紹介
 三角形の三つの角の合計が180°であることを、三角形を三つの部分に分けて並べることで表した。
 四角形の四つの角の合計が360°であることを、四角形を四つの部分に分けて合わせることで表した。
 
* 内角の和が何度になるかが、証明ではなく、実感として分かる教材。どの角を合わせるかがもっと分かりやすいように、合わせる角に大点を打つなどするとなお良い。実際に教材として提供する時は、幾種類かの三角形や四角形について、このようなものを用意するのが望ましいと思う。
 
 
◆ 立体モデル(円錐 五角錐)
●材料
 厚紙
 
●紹介
  立体を半分に切ったものを作り、側面の三角形の高さと立体の高さが区別できるようにしました。
 
* 立体は、平面の図で表しているだけではなかなか理解が進まないので、このように実際に手を使って組み立てたり比べたりできると良い。
 
画像:原子モデルと立体モデル
 
 
◆ 正多面体の模型 ―― 断面が正多角形の場合 ――
●材料
 厚紙  両面テープ  磁石  金属板
 
●紹介
 正多面体をカッターなどで平らに切って、二つの同じ立体に分けます。断面が正多角形になる場合の模型を作りました。
 
(以下、点字資料の墨訳文)
 正多面体をカッターなどで平らに切り分け、同じ形の二つの立体を作ります。
 条件は、
 切断回数は1回
 切断面の形は正多角形。ただし、元の多面体の側面の形とは異なる
で、この条件を満たすものは次の6通りです。
 1.正4面体  断面 正方形
 2.正6面体  断面 正6角形
 3.正8面体  断面 正方形
 4.正8面体  断面 正6角形
 5.正12面体  断面 正10角形
 6.正20面体  断面 正10角形
 
 この6種類の模型を厚紙で作りました。
 全8ページの点字資料(製作に用いた展開図を含む)を添付しています。
 
*とても精巧で、また頑丈に作られていた。とくに、分けられた二つの立体が強力な磁石でくっ付けられてしっかり元の立体になるようにしてあるのが素晴らしい。立体を切断した時の断面の形は、切る方向によっても変化するので、見えない人たちにとって(たぶん見える人たちにも)なかなか想像しにくく、そういう点で教材として優れていると思う。
 
画像:6個の正多面体がケースに入っている
画像:6個の正多面体が切断された状態
 
 
◆ 飛び出す図形(四角柱・四角錐)
●材料
 ケント紙
 
●紹介
 二つ折りにした紙を開くと、四角柱・四角錐が飛び出す。
 紙を閉じると、立体が閉じて平面になる。
 
*立体の形を知るのにとても便利。その他の立体についても作ってほしい。
 
 
◆ 折りたたんで持ち運べる立体 (小原)
●材料
 適当な紙とセロテープ
 
●紹介
 解説:展開図だと、組み立てて立体にしても安定して固定した形にならず、触ってその立体の形を確かめるのには不向き。できるだけ多くの辺がつながった状態で立体を広げて折り畳んだようなものを作った(例として見せたのは三角柱。手元にはその他に三角錐、五角錐、家の形がある)。なお、立体にした時にできるだけ安定するように、適宜糊代のような部分を付けている。
 特徴:生徒はこれを使えば一人で立体を作り、形を確かめられる。授業の場だけでなく、例えば家などに持ち帰っていつでもどこでも立体にしてみて形を確かめられる。
 
画像:折りたたんだ三角柱と五角錐
画像:組み立てた三角柱と五角錐
 
 
◆ 折り紙で作った多面体
●材料
 紙
 
●紹介
 この作品の長所:
  @ 材料が安価である。
  A 多面体を分解することによって収納時にコンパクトになる。
  B 展開図を容易に示すことができる。
 
 この作品の短所:
  八面体より大の多面体の組み立てが難しい。時間が少々かかる。
 
*立体を知るための簡易なセットとして優れている。面の数が多くなるとふわふわした感じで壊れそうなので、もっと頑丈な立体になるように工夫したほうが良い。
 
 
◆ 立体パズル
●材料
 木
 
●紹介
 3×3×3 の立方体と長方形を作ることができる。
 たこ・鯨・タツノオトシゴ等をイメージした木片を組み立てて、立方体と長方形を作る。
 それぞれのピースがきれいに磨かれている。
 
*シンプルなパズルで楽しめそう。木の表面がよく処理されていて、手触りも良い。細い窪んだ線で描かれた動物の形は、かなり注意しないとたどれない。(幅の狭い窪んだ線は触ってたどるのが難しい。)
 
 
◆ ワイヤーに張る面の形遊び
●材料
 ワイヤー数本  アメリカンフラワーの製作に使う樹脂(ディップ液)
 
●紹介
 「ワイヤーは1本だけ使い、閉じる箇所は1箇所だけまたは無し」というルールで形を作り、どんな膜面ができるか実際に触れるように樹脂を使って調べる。
 閉じる箇所が1箇所ということは、どんなに捩れても一つながりの膜面が出来るものと思われる。
 ・今回は、自分が頭の中で想像できない物を作ってみた。講習を受けて、触ってわかってもらうと言う作業は、自分の想像以上に細かいことまで気を配らなければいい作品が出来ないことを実感した。
 
* メビウスの帯のような曲面も出来ていて、どんな曲線からどんな曲面が生まれるのか、とても面白いと思った。高度な幾何学・数学の教材になるかも知れない。
 
画像:ワイヤーに張る面の形遊び
 
 
◆ ミウラ折り
 
●材料
 点字用紙
 
●紹介
 ミウラ折りという折り方を、この講習会で知った裏点を使ってその展開図を作ってみた。
 
* 平行四辺形が波打つように並んでいて、まずその線に沿って折り畳んでみる。その対角になっている両端を引っ張るとスムーズに1枚の紙に広がり、押すともとの折り畳んだ状態に戻る。ミウラ折りを初めて体験できた。エーデルの裏線をうまく使えていた。
 
 
《社会系》
 
◆ 国旗カード(35カ国 国名と首都を答えよう)
●材料
 厚紙 色画用紙
 
●紹介
 「小6・中2を対象の物を」と考え、カードゲームを作製した。
 表面に、色画用紙を使って国旗を作成した。
 裏面には、国名と首都を書いた。
 
*点字も作りもしっかりしていて良かった。ゲーム的に学べる教材として優れていると思う。
 
 
◆ 地球儀
●材料
 旧くて今は使われなくなった地球儀(直径30cm)  厚みのある壁紙(10種類くらい)  ボンド(瞬間接着剤では微妙な直しができない)  赤道用テープ
 
●紹介
 地球儀に、国別に手触りの違う厚みのある壁紙等を貼りつけ、陸地と海との境、国の違いがわかるようにした。(グリーンランドはデンマーク領なので、同じ紙を貼った。)晴眼者が見る場合もあるので、紙の色にもこだわりました。
 以下の工夫をした。
 ・アメリカの五大湖を切り抜いてある(これは触ってもわからないかもしれない)。
 ・赤道は実際には存在しないが、赤道を触ることで地軸の傾きが実感できるのではないかと思いテープを貼った。
 平面の地図ではわからない面積の比較もできるのではないだろうか。
 
*海と陸の違いがすぐ分かり、それらの広さの違いも分かりやすい。国ごとに手触りを変えていることは丁寧に触れば分かるが、国境線はたどり難い。今後、地形バージョンなどの地球儀にも挑戦してほしい。
 
画像:地球儀と星座盤
 
 
◆ 河内長野市観光案内図
●材料
 布  糸  ビーズ
 
●紹介
 河内長野市のPR誌『かわちながの春夏秋冬』を点訳した後、ここに掲載されている観光地図を作ってみた。
 初めての試みだったが、地図と呼べるものかどうかわからない。難しい点もいっぱいあったが、その都度自分なりに考えて、ようやく仕上げることが出来た。作り終えて、手芸用ビーズで表面がカットしてあるので、指にひっかかるように思う。
 地図の中に何を盛り込むかで悩んだ。
 ビーズはボンドで貼った。
 
*初めて触地図を作られたとのことだが、よく出来ていると思う。製作者自身も触ってしっかり確認してみているのが良い。
 
 
◆ 日本の新幹線網
●材料
 日本地図(点字用紙4枚つなぎ)  糸  ゴム糸  ビーズ
 
●紹介
 在来の新幹線と将来建設予定の整備新幹線を合わせた新幹線網。
 従来新幹線はゴム糸
 整備新幹線は糸(3本編)
 駅はビーズ
で表し、4枚つなぎの日本地図(エーデルで作成)に貼り付けた。
 
*日本地図上に新幹線だけが示されていて、とても分かりやすかった。一つの資料に多種類の多くの情報を盛り込んでたくさんの事を理解させようとするよりも、情報をできるだけ少なくし一つの事をしっかり分かってもらえるようなものが触知教材として優れていると思わせられる良い例である。
 
 
◆ 京都市内を中心とした路線図
●材料
 キルト綿  ひも  ボタン
 
●紹介
 京都市を中心とし、その隣接する市・町の路線図です。10路線を紐などで表し、140余の駅をボタンで表しました。
 ・10種類の紐の違いがわかってもらえるか、不安です。駅の間隔が短い所に駅名を入れるのが難しく、入れ方に迷いました。
 ・JR・新幹線・地下鉄・私鉄など、思いのほかたくさんの鉄道が乗り入れていて、駅名などを入れるのが大変でした。たくさんの駅の位置関係を理解するのは難しく、それを触ってわかるようにするのはもっと難しいと思いました。
 
* 各路線を表す10種の紐の違いは触って十分に区別できた。ただ、下が柔らかい綿のような布だったので、一部の紐が目立ちにくくなっていた。また、10種も路線があるので、各路線の両端にその路線名を点字でも入れたほうが良かった。
 一部の駅名は、略称として数字が使われていたが、頭文字を取った略称のほうが望ましい(数字だと必ず凡例に戻らなければならないが、頭文字の略称だとそれから駅名を想像できることもある)。
 
画像:京都市内を中心とした路線図
 
 
◆ ヨーロッパの地図
●材料
 画用紙  カーボン紙  絵の具  たこ紐  トレーシングペーパー
 
●紹介
 ヨーロッパ36カ国を画用紙に写し取る。海岸線はたこ紐を張る。そして、別に各国の形を切り取ったものを用意し、パズルのようにして遊べるようにした。
 
* ヨーロッパの多くの国々の形をそれぞれ確かめられるのが良い。それぞれの国の向きはなかなか分かりにくいので、例えば各国の上(北)に大点を打ってみてもよかったかも知れない。海岸線は、もっと細い糸を使っても十分に触って分かるし、そのほうが複雑な海岸線も表しやすい。
 
画像:ヨーロッパの地図
 
 
◆ 庄や触知図
●材料
 硬めの布  フェルト  刺繍糸  ビーズ  接着つきフェルト
 
●紹介
 情文の利用者に紹介したい、店内図と店外の配置図
 材料の使い方は下記の通り。
 硬めの布  台紙
 フェルト  机
 刺繍糸  机
 ビーズ  現在地
 接着つきフェルト  点字入りの箇所
 
*全体にバランスの取れた触地図だと思う。建物内の地図は、たんに部屋や物の配置が分かるだけでなく、通路や障害物も分かるようにしたほうが良い。このような地図があれば、自分が建物内のどこにいるのか、また移動する時も方向が分かり、安心感がある。
 
画像:庄や触知図
 
 
《理科系》
 
◆ 星座盤
●材料
 発泡スチロール板  ビーズ  製図用テープ  スナップ  ガラス用目隠しシート(天の川)  各種接着剤  ネイル用ビーズ各種
 
●紹介
 3層に分かれていて、各星座が立体的に表された中の円盤はスムーズに開転できるようになっている。まず、全星座が描かれているこの円盤を触ると良い。(天の川の部分は薄いシートが張ってある)。
 外側で月と日を合わせると、その時に見える星空が分かるようになっている。
 
*時間をかけて丁寧に触れば、一般の星座盤とほぼ同じようなことが分かって素晴らしい。これだけ正確な触知用星座盤は初めてだと思う。
 
画像:地球儀と星座盤
 
 
◆ しし座(石創画) (小原)
●材料    
 石膏、顔料。
 
●紹介
 星座を石創画で試してみた。獅子の形、14個の星(明るさによって星の直径を変えている)、星を結ぶ線を、2mmと1mmの高さで示した。
 
画像:しし座
 
 
◆ 北極星を巡る五つの星座(北斗七星、カシオペア座など)
●材料
 ビーズ  刺繍糸  不織布  タックペーパー
 
●紹介
 タックペーパーを不織布に縫い付けて、はがれないようにした。
 ビーズで星を、刺繍糸で星と星を結ぶ星座のラインを表した。
 
*北極星もその他の星も分かりやすかった。北斗七星の形もよく分かった。その他の星座は、星を示すビーズの高さが高過ぎてその間の線(刺繍糸)が触れにくくなり、その輪郭をたどるのが少し難しかった。
 
 
◆ 落花生を育てよう
●材料
 解説文を手打ちした点字用紙  折り紙  シール
 
●紹介
 数年前に家庭菜園で落花生を作ったところ、畑仲間が落花生の葉・花・実のなり方をはじめて見たと、大変驚いていました。そこで今日の課題にしてみようと思いました。
 折り紙やシールを何枚か重ねて厚みを出しました。また、材質を変えたりしました。が、触図としてどうなのか、心配です。
 
* 成長して実を結ぶまでが本当によく理解できて、素晴らしい作品だ。手作りの図もとても良くて、図だけでも成長の様子はだいたい理解できた。製作者のすぐれた観察力の賜物だとも思った。
 
 
◆ イチゴの立体作品
●材料
 紙粘土  布  ワイヤー プラスチックの植木鉢  油粘土  人工芝
 
●紹介
 イチゴの実を触ることはあっても、鉢に植わっている状態で、葉(三枚葉)・茎・花に触る機会はないだろうと思ったのが作製の動機。これを作製するについては、イチゴについて相当調べた。
 イチゴ  紙粘土で作り、色づけする。
 花  布を細かく切り、色づけする。
 茎  ワイヤーに布を巻き、花とくっつける。
 葉  色づけした布を2枚重ね、布を巻いたワイヤーをはさむ。葉脈がわかるようにコテでスジをつけた(はっきりしなかったので失敗です)。3枚葉になっているのはわかっていただけると思う。
 土  油粘土の上に人工芝を敷く。
 オランダイチゴの簡単な説明と図を点訳した。
 
*葉も実も実物そっくり。完成度が高い。触知教材を作るためにも、また説明するためにも、背景知識が大切だということがよく分かる例。
 
画像:イチゴ
 
 
◆ 活断層模型
●材料
 発泡スチロール板  両面テープ  点字用紙
 
●紹介
 発泡スチロール板を重ねた断層模型を用いて、4つの活断層(生断層・逆断層・右横ずれ断層・左横ずれ断層)を作ってみた。
 断層の名前を上部に貼った。
 矢印はズレの方向。
 必要と思われる説明を添えた。
 参考は、堺市発行の「防災ガイドブック」p1〜2
 
*断層模型はシンプルで分かりやすかった。模式的に示してよい模型などは、細かい形にはあまりこだわらず、基本的な仕組みなどがしっかり分かるようにすると良い。
 
 
◆ 関西鉄道「磨墨」形蒸気機関車模型
●材料
 真ちゅう
 
●紹介
 明治中・後期の一般的蒸気機関車の模型。縮尺1/25.4。
 ・かなり頑丈に作ってあるので、触っていただいても大丈夫です。
 ・点訳以外にも、見えない方々に模型等でいろいろなことを知っていただくことができることを知り、そのようなことにもお手伝いできれば嬉しいと思っております。とりあえず、シリコンによる型取りに挑戦したいと考えています。
 
* 模型用のキットで作るのではなくすべて手作りで、外形ばかりでなく駆動装置まで正確に復元しているという、素晴らしい作品。機械等の動きは触ってはなかなか理解しにくいので、外側の枠はできるだけなくして、駆動部分を十分に触ってその動き方を観察できるような模型も作ってほしい。また、シリコンによる型取りの成果も期待している。
 
画像:機関車の模型
 
 
◆ 原子モデル(メタン、エタン、メタノール、メチレン、ベンゼン)
●材料
 発泡スチロール  アルミホイル  毛糸  釣り糸  爪楊枝
 
●紹介
 発泡スチロールの球を使って、原子モデルを作りました。
 炭素、水素、酸素の手触りを変えるのに苦労しました(毛糸などを使う)。
 発泡スチロール同士をつなげる時に、間に爪楊枝を入れて補強しました。
 
* 炭素・酸素・水素の原子を、大きさだけでなく手触りの違いでもしっかり区別できるようにしたところが良い。
 
画像:原子モデルと立体モデル
 
 
《レリーフ》
 
◆ 平安貴族の女性(レリーフ)
●材料
 樹脂粘土
 
●紹介
 絵画展によく出掛けるのですが、時々、視覚障がい者の方が音声案内テープを聞きながら鑑賞されているのに出合います。そんな時、何かその絵に関する触れるものがあれば、さらに良く分かると思うのです。
 思いとは随分違いますが、先日点訳し終わった歴史書の中の平安貴族の女性を作ってみました。
 どの絵も少し斜め向きのもので、正面からの顔をつくるのに苦労しました。特に「カギ鼻」というのがどんな感じなのか分かりませんでした。
 
* 目、鼻、口元などはよく表現されていたように思う。髪の毛のラインは(材料の性質上難しいのかも知れないが)もっとクリアなほうが触って分かりやすい。正面向きのほか、同じ物をいろいろな角度から見たレリーフを作ると、教材として面白いと思う。
 
画像:平安貴族の女性
 
 
◆ 渡月橋の風景
 
●材料
 ホオノキ
 
●紹介
 川下側から見た渡月橋の風景。
 橋の欄干・橋桁・橋脚が細部にわたって彫られている。右手前下から斜め左上に向かって、松の幹・枝・松葉が彫られている。左上(橋向こう)に民家が点在し、その向こうに嵐山が彫られ、奥行きが感じられる。
 ・第1回目の講習会で、見えない人たちには理解し難いものの一つとして風景があったので、木彫で浮彫りの作品はどうなのかと思って持参してみた。
 
* 一番手前の川の流れから、橋、松、嵐山と、遠くへ移っていくのが分かるような気がする。とくに橋桁や橋脚まで細かく描かれていて、触ってもかなりよく分かった。民家などは触ってはほとんど分からなかった。
 
画像:渡月橋の風景
 
 
◆ サメ(石創画) (小原)
●材料    
 石膏、顔料。
 
●紹介
 サメのできるだけ生き生きした姿を表してみたかった。すこし斜めから見た状態で、向こう側の胸鰭の縁も触って分かるようにしてみた。
 
画像:サメ
 
 
◆ 蓮の花 (小原)
●材料
 蓮の花の木型  石膏
 
●紹介
 子どものころ触ったいろいろな形の和菓子を思い出し、和菓子を作るための木型を手にいれて、それに石膏を流し込んで形を作ってみた。それなりにちゃんとした形になったので、手元にある鶴と松、鯉についても試みるつもりだ。
 
画像:蓮の花
画像:蓮の花の木型
 
 
《絵本・迷路など》
 
◆ 絵本『どうなってるの こうなってるの』
●材料
 点字用紙
 
●紹介
 初めてエーデルの操作法をごく簡単に学んだ。初めてのエーデルで絵本の点訳に挑戦。
 物の表面とその中(断面)を表した絵本を使用した。
 
*エーデルの図はきれいに描けていた。初心者でも、画像を取り込んで下絵として使えばかなりよく描ける。
 
 
◆ 虹色の魚
●材料
 うちわ  色紙  糸  クレパス  ビーズ
 
●紹介
 童話『虹色の魚』の主人公をテーマにして、うちわに魚を描いた作品。
 
*細かくよく作られていたようだ。魚の形は十分に分かった。
 
 
◆ 迷路
●材料
 紙  フェルト  ひも  タックペーパー
 
●紹介
 迷路の図案集から5種類(うさぎ・かさ・かに・円・長方形)を選び、いろいろな材料とエーデルを使って作成。
 図ごとに、異なる材料で迷路を表すなどの工夫をした。
 
*いろいろな材料・種類の迷路があって面白かった。点図の迷路が、他の種類の迷路に比べて意外と分かりやすくたどりやすかった(私たちの慣れもあるかも知れない)。紙を重ねて迷路を作る場合は、紙表面の手触りがはっきりと異なる物を使うほうがよい。
 
 
◆ 迷路
●材料
 レース糸  もこもこペン(絵の具)  ビーズ(1.8mm 2mm)  下地布(綿)
 
●紹介
 蜘蛛の巣の外側に4匹の蜘蛛、蜘蛛の巣の中央に蝶を描いた作品。
 蜘蛛の網が迷路をあらわしている。この迷路をたどって蝶を捕らえるのはどの蜘蛛か?
 蜘蛛の巣にレース糸を、点字にビーズを用いている。
 
*蜘蛛の網をたどるのはかなり難しい。蝶は分かりやすかった。全体はきれいに仕上がっているように思う。
 
 
◆ 貼り絵
●材料
  コウノトリ ―― 塩化ビニルの切り抜きに羽をつけ、口ばしと尾はストロー
  赤ちゃん ―― キューピー人形
  木 ―― 塩化ビニル
  その他 ―― フエルト・綿など
 
●紹介
 コウノトリが赤ちゃんを運んでくるというヨーロッパの伝説を題材に、布地や羽根、キューピー人形などを用いて一枚の絵にまとめた。
 キューピー人形は100年程前にアメリカで商標登録された人形で、背中に羽根が生えていて、天使のイメージがある。
 
* なんともメルヘンチックな絵でした。説明してもらえれば十分に分かる。材料はすべて百均でそろえたとのこと、百均活用の例としても優れていると思った。
 
画像:貼り絵
 
 
《国語その他》
 
◆ かな文字のおこり
●材料
 厚紙  コルクテープ  ガムテープ
 
●紹介
 1枚目  ひらがなのおこり(あ〜お)
      もとの漢字からひらがなになるまで、段階的に並んでいる。
 2枚目  カタカナのおこり(ア〜オ)
      もとの漢字の一部分をとってカタカナになっている。
 
*文字の形はよく分かった。切って張ってある 1ミリの厚さの発泡スチロール紙は、切り口が鋭角で指に引っかかる感じがする。張る紙は、もっともっと薄くても、台紙と手触りがはっきり違う物を使えば問題ない。
 
 
◆ 花火
●材料
 黒い厚紙  イラスト用ペン(商品名:ファッション ファブリック ペイント、バニーコルアート チューリップ、サクラ デコレーション エスピエ)
 
●紹介
 黒い厚紙にイラスト用ペンを用いて、打ち上げ花火(菊・しだれ柳・やしの木)、線香花火を描いた作品。
 夜空をイメージした黒い紙の上に描かれているので、色がハッキリと鮮やかに浮かび上がり、視覚的にも美しい。
 ・ナイヤガラの滝、虹なども同じような手法で仕上げたい。
 
*花火という、触ることのまったくできないものに注目した点が良い。ペンで描いた線や点がくっきり盛り上がっていて触って分かりやすかった。
 
画像:花火
 
◆ 線香花火の一生
●材料
 プラスチックのパーツ(火薬・火玉・火花)  竹串(線香花火の柄)  絹糸(弱い火花)  セロテープ
 
●紹介
 線香花火の変化する様を、次の段階ごと(各段階に名前がついている)に作製。
@ 火がつけられる前の状態
A 第1段階 牡丹
B 第2段階 松葉
C 第3段階 柳
D 第4段階 散り菊
E 火玉が落ちて、柄だけが残った状態
 上記の内の @〜D の図をエーデルで作成し、資料として添付。
 
*花火の変化する様に注目した点が良い。一般に、動いている様子や変化の様子は、そのまま触っただけではとても分かり難いので、このようにいくつかの段階に分けて順番に触れるようにするのがよい。
 
 
◆ YM式ホーム地図と三番街立体図
●材料
 使用済みラガールカード
 
●紹介
 ホーム地図: 電車を降りてからどの位置に階段・エスカレータ・エレベータがあるかを、各駅別に、1枚のラガールカードに点字の略記号を駆使してコンパクトに表示。
 三番街立体図: 阪急梅田駅の三番街から地上へ出るには左から7つ目のエスカレータに乗るしかありません。それをすぐに見つけるには…?三番街の歩行用地図を点字の略記号で表示。
 
*いつもながらYMさん(全盲)の工夫には感心!点字も記号として様々な使い方があることがよく分かる。
 
 
(2010年12月5日)