鳥の翼と尾の秘密

 鳥の翼といってもいろいろある。大雑把にわけて次の四種類がある。これはあくまで大雑把な分類になっており、特別な生息環境によってこれに当てはまらない形になるものも存在する。ただし翼の形からおおよその行動を推測することは可能である。まず翼の基本形状を眺める前に用語の説明からはじめる。

 アスペクト比(縦横比)・・・翼の長さと幅の関係を示し、翼の細長さを示している。一般的には次の公式に寄って求められている。アスペクト比=(翼幅)2/翼面積。一言で言えば「翼幅(両翼端までの距離)を翼弦長(前翼から後翼を結ぶ直線の長さ)の平均値で割った値」である。パソコンのモニターにもアスペクト比が使われるがそれの定義はここでは詳細は省略する。
 高速飛行に適した翼の形はこのアスペクト比が大きい値を示し、小回りの利く翼は幅広で短いのでアスペクト比は小さくなる。アスペクト比と翼の形の形状によって4つの翼の機能をもう少し詳しく説明する。その前に本ホームページの「空へ1」でも書いたことをもう一度書いておく。

 鳥というのは不思議な生き物である。鳥の羽は上側がカーブしていて、下側がへこんでいる。上側のカーブしたところでは空気が早く流れるために気圧が低くなるが、逆に下側では気圧がそれほど変わらないようになっている。この気圧の差が上昇するための揚力になる仕掛けだ。

 以下の説明で翼がもつこの揚力の重要性も踏まえて読んでほしい。特に、風切羽に切れ目があることでまた揚力がアップされていることを知って翼の形状の奥深さを理解してほしい。

@スズメのようなやや楕円形をした幅広の翼は翼面全体に荷重を分散する。この翼はアスペクト比が低く、また反りが高く高速飛行には適さないが、やぶの中や森の中などを飛ぶのに適している。ちなみに始祖鳥もこの形をしていた。

Aツバメやハヤブサ、シギ・チドリ類などの高速型は先端が尖って先細になっていて、翼が後退したような形をしている。この翼はアスペクト比が比較的大きく、反りが低い。また高速飛行に適するため森の中を飛ぶのには適さない。

Bアホウドリやアジサシのように細長く、風切羽に切れ目のないグライダー型の翼は、エンジンのないグライダーが何百キロも飛べる乗り物であるように上昇気流を捕まえては高度を上げ、次の上昇気流に乗って長時間、遠くに飛ぶのに適している。この翼はアスペクト比がかなり大きい値を示す。
 ところが、北極と南極でそれぞれの夏をすごすキョクアジサシをレーダー追跡した研究では次のように報告されている。まず上陸後に上昇し、その間は時速約35キロで飛んでいた。しかし上昇気流に乗って高度1000mに達した時点では、翼をAのツバメ・シギ・チドリのように翼を少し縮めて後退するような格好にして平均速度を約50キロにしている。すべてのこの種でそうなのかわからないけれども、上昇気流に乗るときにはグライダー型で高高度を稼ぎ、高速で移動するときはAに型にしながら臨機応変に飛んでいるのかもしれない。

Cワシやコウノトリの仲間などの翼は長いが、平行型で幅も広めの形をしていてアスペクト比は比較的小さい。しかし翼面荷重(翼の単位面積あたりにかかる体重の比率のこと)が小さいことと、切れ目の入った初列風切羽の一枚一枚に深い切れ目が入っており、その羽はまた適度な反りをもち、わずかではあるが揚力をもつ。従って深い切れ目をもつ初列風切羽が小さな翼の役割をもつことで全体として大きな揚力をもつ。これは帆翔するのに適している。

 翼面荷重という言葉を使ったが、上で説明したとおり翼の単位面積にかかる鳥の体重の比率を意味している。つまりこれが小さいほど鳥が飛ぶときに使うエネルギー効率がよいことになる。体重が重いほど翼にかかるエネルギーが大きくなるからできるだけ軽いほうがよい。そのため鳥の骨は建築学でいうトラス構造である。つまり骨の内部は三角形の構造で空洞がたくさんある。このため骨は非常に軽量にできている。他には効率のよい肺とそのまわりに空気を蓄えることが出来る気嚢(きのう)がある。気球ではガスを入れるおおきな袋も気嚢とよぶが、鳥も同じように空気をたくわえて飛ぶのを助ける役割を果たしているのだ。
 ※「空へ1」のコピペを含む

 翼のついでに尾も同様に揚力を得るために強力な役割を果たしている。しかも体が縦揺れをするのを防ぎ安定する役割もする。飛ぶときに体が揺れていてはエネルギーの消費が激しくなるから、できるだけ安定してエネルギー効率を少なくしていかなければならない。
 飛行機に乗って翼の見える席に乗ったことがある人は、着陸時に翼が面白く動くことを知っているだろう。すなわち着陸前には後端から少し長く下げ気味に出っ張って反りが増えるように移動している。こうすることによって低速になっても揚力が落ちないようにしているのだ。そしていざ着地するといきなりストッパーみたいな板が90度近く跳ね上がってくる。これは板の前は空気が圧縮されて密度が濃くなっているのに対し、反対側はやや真空状態となって密度を極端に小さくさせているのである。こうすると、密度が小さい部分へひっぱる力が働いて、ブレーキの役割になるのだ。これと似たことを実は鳥の尾もしている。ストッパーみたいな板はさすがに出ないけれども着地するときには広げた尾を下げ気味にして揚力を失わないようにしているのだ。
 これを書いているのは3月だが、もうすぐツバメがやってくる。僕は是非ツバメをじっくり観察してこうした高速飛行をする鳥の翼、尾の変化の妙を味わいたいと思っている。



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