ベニヒワ(Redpoll)


グリーンランド(イルリサットにて) 2012年9月

 グリーンランドのイルリサットにいったとき、スズメくらいの大きさの鳥をよく見かけた。ベニヒワという鳥である。このベニヒワは小さな頭に小さな赤いスポットと、のどに黒いスポットをもつ小さくて愛らしい鳥である。主に夏季にスカンジナビア、シベリア、北アメリカで繁殖し、冬になるとやや南下して日本でも中部以北あたりにまれにやってくる。特異的に南半球のニュージーランドでもかなりの個体数がいるが、これは19世紀にヨーロッパ人が持ち込んでしまって繁殖してしまったのである。
 今回みかけたグリーンランドの生息域は中部から以南になり、北部グリーンランドではみることができない。従ってイルリサットのベニヒワはグリーンランドでも北限に位置するといってよいと思う。
 この鳥は、雑草の多い野原(weedy fields)や小さな木のある場所で活気のある採餌をしている。ベニヒワは主に小さな種子を食べるが、夏には蜘蛛や小さな昆虫なども食べるようである。

 グリーンランドのベニヒワはこの場所で繁殖している個体であるが、冬になるとアイスランドに渡る。ただし一部はさらにヨーロッパ大陸方面まで南下していく。アイスランドでは、5月から6月がベニヒワの繁殖シーズンであるから、雛を観察するにはその時期がよい。
 もともとテリトリーをもたない鳥(nonterritorial bird)であることもあり、繁殖期でもお互いに巣を近くに構えることもある(ちなみに巣はメスがつくる)。このような鳥であるため、特に冬になると数百という大集団で移動することもある。

 ベニヒワは−18〜−19℃くらいでも生きていることができる。寒さに強い理由として、アラスカの研究で身にまとう羽毛の量に関するものがある。それは、7月のときと比較して11月のベニヒワの羽毛量は約31%も増加していたのだ。しかし寒さに強いベニヒワでもやはり極北の寒さはけっこうこたえるようである。このため冬になると、雪にトンネルを掘るベニヒワもいる。これは日中よりも夜の寒気から身を守るためにトンネルをつくるのであるが、雪の下は約10cmほどの位置に、30cmほどの長さであるという。
 冬では、毎日およそ体重の42%の量の種子を食べる。そして変わった特徴として、ベニヒワは喉に種子をためこむことができる袋をもっている。2gほど貯めこむことができるらしい。もともとのベニヒワの体重が11〜20gであるから、体重に比べてかなりの量を貯めこむことができる。おそらく飛ぶのも重くて大変だろう。

 とても小さな鳥であるけれども、行動はアクティブである。足環の追跡から、いくつかのベニヒワはかなり広範囲に広がっていることが分かっている。まずシベリアでつけられた足環をもつベニヒワがアメリカのミシガンで見つかったり、アラスカのベニヒワが東アメリカで見つかっている。また驚くことに、ベルギーで足環をつけられたベニヒワが2年後に中国で発見されているのだ。

 僕はイルリサットでこの鳥をよく眺めていた。日本ではけっこう珍鳥の部類に入るし、もちろん僕は初見だったからほんとうにこの鳥を眺める時間が貴重だった。イルリサットで泊ったArctic Hotelの前に犬ぞりのハスキー犬がつながれているが、このあたりの岩場でよく元気に動き回っていた。目の前には氷山が満ち溢れ、横にはハスキー犬たちがいて、そして元気に動き回る愛らしいベニヒワ達。今から思い出しても、とても贅沢な時間だったなぁと思う。


グリーンランドのイルリサット。
氷山を遠くに眺めながら、犬ぞり用のハスキー犬とたわむれつつベニヒワが飛び交うのを眺める


ベニヒワの動画(Youtubeより。アメリカかな?) 胸が赤いのがオスですね。

ベニヒワについては下記のサイトを参照しています。英語サイトです。
「All about bird」よりベニヒワについての記述



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