【草食動物3】

 トムソンガゼルはサファリでもっともよく見られる動物の一つだ。このトムソンガゼルはライオンに追いかけられたときに「ストッティング」と呼ばれる行動をすることがある。これはライオンに追いかけられている途中で立ち止まり、ライオンに向かってピョンピョンと飛び跳ねてみせるのだ。この不思議な跳躍運動を説明する試みがなされているが完全な回答がない。
 イスラエルの動物学者ザハヴィによるとこのストッティング行動を「ライオンの注意を自分にひきつけておいて、仲間を守るための利他的行動ではなく、捕食者ライオンに対する挑戦的行動」とみる。つまり元気な姿を印象づけることにより、他の仲間を追いかけたほうが捕まえやすいぞ、という行動として解釈する。他にもザハヴィは動物学的行動をすべてこのハンディキャップ原理と呼ばれる概念によって説明しようとするが僕には明確で感心する部分と、ちょっとついていけないところが混在しておりどこまでこの原理が信用できるのかよくわからない。
 まあ今のところ動物の行動を体系的に説明する理論などないのだ。だから生物を観察するのは面白い。自分なりの答えを模索して自分が生きる世界観に有利に解釈しても許されるくらいの奥深さをもっている。
 トムソンガゼルの赤ちゃんは無臭であるために、生後まもない赤ちゃんは母親から離れて草むらに隠れて身動きせずに育つ。生まれてすぐに親と行動するほかの動物とは異なるのだ。しかしジャッカルなどの敵が近くを通ると離れて草を食べている母親が猛烈にジャッカルに攻撃していく。短い角で追い掛け回しジャッカルを蹴散らすのである。あの短い角でも突進されると凶器になる。ジャッカルもたまったものではないだろう。
 また赤ちゃんのおしりを舐めておしっこやウンチをきれいにふき取ることもする。においをつけているとジャッカルのようなイヌ科の動物から狙われるからだ。無臭で赤ちゃんの時代を過ごすというアイデアは当然、この肉食動物がすみつき、そしてサバンナ特有の草むらがたくさんあることの環境から生じた進化だろう。


※トムソンガゼル(オス。わき腹の黒い帯が目印)


※トムソンガゼル(メス)


※トムソンガゼルの交尾

 トムソンガゼルもオスは角が立派だが、それにもまして立派な角をしているのがインパラのオスである。マサイマラNRでこのオス同士のインパラが喧嘩しているのを見たことがある。立派な角をぶつけあっていた。大人のオスはメスが数十頭というハーレムをつくるが、若いオスは彼らだけの集団を作っておりこうして角をぶつけあって力比べなどをしているのだ。ちなみにインパラのメスには角がない。
 インパラもサファリでよくみかける動物の一つである。この動物が逃げるととても立派な跳躍をして逃げていくが、唖然とするくらいに軽快なステップだ。芸術的と行ってもいい。本気を出すと一回のジャンプで10mほど飛ぶと書いてあった本もあった。


※インパラのオス同士の力比べ

 ちなみに今回はグランドガゼルの写真はないので区別する材料に欠けてしまったが、インパラとグランドガゼル、トムソンガゼルの区別がすぐにつくようになるともうその人はサファリ病に感染している段階だと思う。サファリを何日もしているとほとんどの人が予備知識なくてもこの区別がついてしまうようになってしまう。それ以外にも草食動物はたくさんいるが、とにかくこの三つの区別をつけることがサファリをする上で重要だと思う。
 トピというアンテロープもよく見かける動物の一つだ。トムソンガゼル、インパラとともにどこにでも見かけるアンテロープである。サファリをしているとライオンやチーターなどを探してばかりいるから、これらの群れがいても素通りしてしまうようになるので残念である。僕はひとつの群れでも一日中でも観察していたいと思っている。こうした素通り君たちのなかでとくにトピはその体色が美しくないことも含めて「あっ、トピがいる」だけで終わってしまい、「シママ(止まっての意味)」と言わないと満足に写真撮影をする機会さえ与えてくれない可愛そうな生き物だ。オスメスともに角があり、肩と脚にある黒い模様が目印となる。トピやインパラの赤ちゃんがトムソンガゼルのように無臭なのかは知らない。そしてトムソンガゼルのように赤ちゃんを側に置いて育てるのではなく、離れた草むらに置いて育てるのかは調べきれていない。この辺りも運がよければ観察したいところだ。


※トピ

 他にはあまり会うことができなかった動物たちの写真だけ載せておきます。下のハーテビーストは警戒心が強いし、あまり会う機会がなかった。もう少し近寄って撮影したいのだが・・・。
 ハーテビーストはオスメスともに角がある。それ以外にあまり生態がわからないので調べておきます。その代わりにケープアカハーテビーストについて書こう。南アフリカのケープ地方のサバンナにたくさんいたが人間の手によって絶滅させられた。姿は写真のハーテビーストとよく似ているが、体色が赤みを帯びた褐色をしている。生態としてはオス一頭を中心とするハーレムを形成していた。
 ヨーロッパから南アフリカに移民したボーア人がはじめは食料として、やがて家畜に対する伝染病をもっているものと勘違いして虐殺するにいたる。1883年には野生のケープアカハーテビーストは絶滅してしまっており、とある策の中で保護されていた55頭がいるだけであった。しかし保護していた一族が倒産して売り渡されたケープアカハーテビーストはすべて射殺されてしまった。1940年のことだった。


※ハーテビースト(真ん中)

 オオミミギツネは英語名でBat-eared foxというとおりコウモリの耳をしたキツネとなる。名前の通り大きな耳をしており小型で可愛い生き物だ。小動物や虫などを食べる肉食動物であり、地下に巣穴を作って暮らしている。


※オオミミギツネ


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