【第30回篠山ABCマラソン 天気 晴れ 2010年3月7日(日)】

フル 公認コース

 「なんだこの寒さ!」。自宅である愛知県から兵庫県丹波市につき、セルフガソリンを入れるために車を降りた瞬間そう思った。冬のような寒さを感じながら給油し、今晩宿泊するグリーンホテル松風の近くのスーパー「サトウ」で食料を調達し、ホテルにチェックインした。昔、仕事で柏原市(いまは丹波市)にきていたとき、ほとんど常宿としていたホテルだ。もうあれから8年の歳月がたつ。風景は何も変わらない。ただ仕事をとおして、いまでもこの人々の温かさははっきりと覚えている。いままでいろんな地方で仕事をした中で、一番好きな街だ。それはいまでも一位であり続けている。前回の完走記でもかいたが、ここで走ることが楽しみである。そして去年の初フルにおけるみじめな走りを払しょくするために意気揚々と乗り込んできた。
 ただしスタミナをつける練習で、足にいろいろと痛みを抱えての出場であることと、仕事が多忙でほとんど休日しか走れていないことが不安材料であった。過去2回の歩きを交えたフルマラソン経験を分析し、大会1、2週間前の平日がまったく走れないとどうもフルマラソンが完走できていないと考えていた。従って夜11時に早く寝て、朝5時15分起床、そして10kmの早朝ジョギングなどを2週間前に何回か強行した。いまも書いたように、過去2回のフルマラソン大会では徒歩を交えてしまっている。これを癖にしないように今回は記録よりもとにかく無様でも走り続けて完走することを主題とした。
 夜食事を食べに行き、ホテルで明日の準備をする。携帯でこの地方の天気予報をみていると、なんと深夜から明日の朝にかけて雪マークである。「ふざけんなっ」と思う。マラソンを走る以前に、そもそも車が走らないじゃないか。僕のタイヤはノーマルタイヤだし、チェーンもない。雪が降るほど冷え込んでいるわけではないので、なんとか雨ですみそうだと勝手に妄想しながらビールを飲んで早めに寝る。

 駐車場争奪戦に勝つために5時半に目覚める。雪ではなく、冷たい雨が降っていたので本日のマラソンはとりあえず開催できそうだ。6時45分ごろ篠山城跡に一番近い大型の駐車場にいくが、すでに満車である。篠山城跡から少しだけはなれた竹林のあたりの駐車場へ。ここも満車になりつつあったが、ラス前でようやくゲット。ここから大会会場までは近いのでラッキーだった。時間がありすぎるので、受付でいったん会場にいったほかは車で音楽を聴きながら時間をつぶす。
 10時頃に着替えをすませて、ポンチョをきて会場に向かう。寒い。はっきりいって上下ともウインドブレーカーをきて走りたいくらい寒い。僕はBのゲートから出発する。各ゲートは10時30分に閉じてしまう。それ以降は最後尾のEブロックからの出発となる。13,000人も出ているマンモス大会なので、最後尾になるとスタートまで実に十数分もかかってしまうのだ。それなので、早めに整列するが今度は待ち時間の寒さとの戦いである。

 10時40分登録の部がスタート。そして10時50分にわれわれ未登録の部がスタートした。今回ほどスタートを待ちくたびれた大会もないだろう。とにかく寒くてはやく走りだしたかった。最初から無理せず流れに従って走る。けっして飛ばすまい、と何度もつぶやく。歩行者道路をつかって我先へと急ぐ人たちがたくさんいる。去年の自分が同じことをしていたが、今回は「他人は他人、自分は自分」といいくるめる。こんなに寒い中沿道の人たちが出てきてくれて応援してくれている。言葉ではいえないけど、「ありがたいなぁ」と思いながら走り続ける。
 雨もあがっていて、やはり走ると暑いのか着ていたポンチョを早々と脱いで、係員に手渡す人をけっこうみた。僕は暑がりだがそれでも脱がない。後に書くがポンチョをこの段階で脱いだ人は後半かなりたいへんだっただろう。
 6.8kmの関門をクリアし、しばらくいくと右に大きくカーブするところがある。去年もそうだったが、このあたりで親子さんがチョコレートや飴を箱に入れて立っている人が多くなる。「飴どうぞー」、「チョコレートどうぞー」そして「頑張ってください!」。
 10km地点を49分48秒で通過。いつもならこのタイムで「遅っ」と思うが、今日はさらにペースを落としたほうがいいかもしれないと考える。13kmほどになり舞鶴若狭自動車道に沿うように走るころ強風に悩まされる。みな前のランナーを風よけにして走るようにしている。雨も降りだしてきている。天候は最悪だ。
 18km地点になると篠山城跡の北を通過する。大会会場から1.5キロほどの場所だ。おそらく当日応援に来たランナーの家族、友人たちがここまで歩いてきて応援しているのだろうが沿道は賑やかである。そして高校生のブラスバンドも運動会用のテントで雨をよけながら一生懸命に演奏している。爆風スランプのランナーだ。
 途中で沿道の人が差し出してくれる飴をほおばりながら走り続ける。20km地点を1時間38分51秒。従ってこの10kmは49分3秒できたことになる。キロ5分をきっている。もう少しペースを落とそうと思った。このあたりで有森裕子さんがくるランナーとハイタッチしている。僕もハイタッチするが、寒いのに大変だろうと思った。有森さんは声がかれるんじゃないかと思うほど大きな声で「ファイトー」と絶叫している。
 ハーフは1時間44分27秒で通過した。このペースなら3時間30分をきれることになるが、ペースアップするのは余力があるかどうかにもよるが残り7kmほどでしかしないと決めていた。しし汁がふるまわれている24km過ぎを通過し、そこを少し過ぎた簡易トイレでピットインした。あまりの寒さで尿意を催していた。マラソン大会で小便に立ち寄るのははじめてだ。途中では道端で立ちションをする男性ランナーはいっぱいいるが、僕はどうしてもそれはできなかった。並んでいる小便待ちのあいだも軽く足を動かし続ける。そうしないと次に走り始めることが困難になる場合があるからだ。トイレはとてもきたなく、汚物がつまってあふれかえっていた。トイレロスがおよそ2分から2分30秒はあった。トイレを終えて走り始めてみると、足はすんなりと動き始めたので「よしっ、いける」と思った。
 さてこのコースは20km過ぎから適度なアップダウンがでてくる。なかにはキツイなと思える登りもあるが、逆に登った分下らせてくれるところは楽ちんである。どこか20km過ぎの雑木林でウグイスがまだ下手くそな鳴き声で春を伝えているのがきこえた。またところどころ私設エイドがあるが、バナナを一本丸ごと皮つきで渡している人や、オレンジを皮つきで輪切りにして渡してくれる人は、気持ちはありがたいのであるが後々の処理を考えるとどうなのかな、と思う。つまりランナーたちはそれらを食べた後、平気で皮を道路に捨てているからだ。そういう光景を何度も見るにつけ、我々ランナーのモラル向上が問われているような気がする。
 25km手前で左折すると対向車線には、折り返し地点を通過して戻ってきたランナーたちが通過する。さすがに速い。それらの光景をみていると力がわき出てくる。その折り返してくるランナーたちを眺めながら30km地点を通過する。この10kmは52分22秒である。あれっ、と思った。アップダウンが続いたとはいえ、これは足にきているタイムではないですか。案の定、30.6km地点を通過して少しペースアップを試みてみたがペースをあげるのがきつかった。もうこの時点で3時間30分はきれないだろうな、と悟ってしまった。折り返し後、小学生の野球のウェアをきた30人ほどの集団が、チョコや飴などを手にしてランナーたちに声をかけていた。寒いのにご苦労さん、と心でつぶやく。僕以外にも言葉は出さないが感謝しているランナーたちがほとんどだろう。とくに苦しくなる30キロ過ぎでのこの声援はとても嬉しい。

 気温は4度、小雨がふっていて防水キャップから水滴がしたたりおちている。ポンチョを脱がなくてよかったと思いながら、残り10kmを迎える。足の状態は重いが、いままで歩いてきた大会のようなどうしようもない重さではない。これは最後まで走りきれるとこの時点で確信した。しかしあと7kmほどは苦しかった。歩きたい衝動との戦い。僕はいくつかの光景を思い出していた。まず先週、会社仲間Nさんと一緒に走った読売犬山ハーフマラソンの光景を思い出した。一緒に走っていたが、彼は残り3kmで失速し、キロ6分30秒近くまで落ちながらそれでも頑張って走り続けた姿だった。そして青島太平洋マラソンで残り3kmを走ったノッチの姿だった。とても苦しそうだったが、それでも気合いで走りとおしていた。そして最後は、沖縄にダイビングにいったときの光景だった。慶良間にダイビングをしにいって、その帰りボートで那覇に向けて走っているときのこと。一羽のツバメがボートに並走するようにして同じように沖縄本島にむけて飛び続けていた。ボートで一時間ほどである。ツバメはゆっくりと飛んでいたのでややボートよりも遅い。1時間以上は海上を飛び続けることだろう。途中で飛ぶのをやめたら死ぬだけだ。僕が走る時、そのツバメのことをよく思い出す。

 ゴールしたとき、控えめに小さくガッツポーズをとった。記録は3時間35分40秒。タイムは遅いが僕にとってはキチンと走りきれたことで次につながる走りができたことが嬉しかった。靴につけているチップがうまくとれない。手がかじかんでいて、思うようにとれないのだ。他のランナーは中学生にとってもらっているが、僕はどうしてもお願いできなかった。自分の始末は自分でしたいのだ。
 女子中学生がミネラルウォーターを手渡してくれる。しかしやはり手がかじかんでいて、満足に握ることもできない。そのまま無料のしし汁をいただき体を温めるが、急激に寒さが襲ってくる。走り終わった後で、汗が蒸発するときに体温を奪っていくからだ。体の芯から熱を奪われるような寒さでガタガタ震えながら車にかけ込む。車のエンジンをつけ、暖房をきかせながら着替えをする。体は冷え切っていたが、心は温かかった。私設エイドの多さといい、この大会はすばらしい。とくに場所は忘れたが、黒豆茶の私設エイドが忘れられなかった。黒豆茶とてもおいしいかったです!


【時間】
グロスタイム: 3時間38分25秒
ネットタイム: 3時間35分40秒


マラソン          ホーム