【槍ヶ岳と大キレット越え〜南岳から大キレット越え往復、南岳新道経由新穂高へ】

2007年8月12日  南岳より


 南岳まできてしまった。計画ではここから南岳新道をくだる予定である。しかしまだ8時5分頃で時間はたっぷりとあり、せめて大キレットを越えてからまたUターンして戻ってきてから下ろうと考え直した。そこで水分を取り直して大キレットへの道を進む。ここから先は危険であることが書かれている有名な看板があるが、文章はすでに知っているので気にならない。
 南岳南壁(獅子鼻)から一気に180mの下りではじまる。正直、「おいおい、最初からこれかよ」と思った。最初からけっこう大変だなぁと思う。槍の穂先の登下降よりも、もう少しレベルが上かな。最後のほうに用意されている2箇所ある鉄梯子を下り降りるとようやく基部につく。ここで少し休憩。


南岳南壁からみる大キレットへのルート


南岳南壁(ここを下ってくる)


南岳南壁(獅子鼻)


基部からみる長谷川ピークと飛騨泣き


 前面に長谷川ピークが見えているがそこまではのんびりしたルートのようだ。そのまま歩きとおして長谷川ピークへと50m登る。ピークまでの登りは問題なし。ピークから飛騨泣き方面の下りが難所である。前日の8月11日にはここから約100m滑落して登山者が死亡したばかりだ。確かに高度感があり落ちたら死亡すると思う。ここは文章よりも写真によって紹介しよう。


長谷川ピーク(このあたりはまだそれほど)


長谷川ピークのあたりから南岳を撮る


長谷川ピーク(馬の背と呼ばれる難所部分)


長谷川ピーク(先行者はちょっと危険な渡り方をしているなぁ。)


長谷川ピーク(最初は左側−信州側にルートをとる)
※左側に足場がちゃんとある。クサリ場の最後で右−飛騨側にシフトする)


長谷川ピーク(前の先行者を撮っているときに後ろにいる後続者も撮る)


長谷川ピーク(先行者のいるあたりからクライムダウンする)


長谷川ピークを振り返る(こうしてみると滑落したら死亡することがわかる)

 長谷川ピークを終えるとA沢のコルと呼ばれる休憩に適した場所に出る。ここからスラブ帯の登りがあるがはっきりいって今回のルートで一番嫌な場所だった。特に復路で使った下降路はすべりやすさと落石の心配で疲れた。この時期は先行者、後続者ともに賑やかであるが、とくにこの部分は注意していても落石が発生しやすく、僕が登っているときにも上のほうから大きな声で「ラク」とたびたび声がかかる。一度、僕の5m先を5cmくらいの大きさの石がコンコンと岩壁にぶつかりながら通り過ぎていった。
(おいおい、勘弁してくれよ。あれに当たったら大変なことになるぞ)
と思うが、自分でも落石を起さないように登るので精一杯である。とにかく先行者との位置取りに注意しながら登る。ここを上りきると一枚岩をクサリを使って登る場所に変わる。特に難しい場所とは思えない。実はこの難所を通過してから後で人に聞いて有名な難所中の難所「飛騨泣き」だとわかったが、そのときまで僕は飛騨泣きまだかなぁと思いながら通過していた。


飛騨泣きのはじまり


クサリを使って先行者が登っている

 ここを上りきってしばらく岩場を越えていくとクサリ場がある稜線の場所に出る。ここは足場がしっかりしており、事故が多かったため数年前に作られた足場がありはっきりいって難しくない。とはいうものの、足場はすっぱりと100mほと切れ落ちているのでそれなりに慎重に進む必要がある。実はこの稜線を渡ってもまだ飛騨泣きだとはわからずにいた。この稜線を越えると岩場に「展望台」と書かれた場所に出る。北穂高山荘がすぐ目の前に見える場所だ。ここで休憩していた先行者の夫婦に「飛騨泣きはまだ先ですか?」と聞いてみた。するといま超えてきた部分が飛騨泣きだと教えてもらった。
 少し拍子抜けした。ガイド本やHPだとあまりにも危険な場所の様相で書かれていてまさかあの場所がそのような名高い難所だとは思えなかったのだ。ここで今日の来るべきポイントに来てしまったので、引き返すことにする。先ほどの夫婦に「いまから戻って南岳山荘から槍平までおりて、その日のうちに新穂高までいくつもりです」といったら「えーーっ」と言われた。確かに後から考えれば滅茶苦茶なことを言っていたと思う。まあ、これは後で書こう。
 とにかくここで引き返すことにした。先ほど撮れなかった飛騨泣きの写真を撮りながら進んだ。


引き返し地点で北穂高山荘を写真に撮る


飛騨泣きの核心部分(数年前に増設された人工の足場があり危険度は減少している)


足を入れて下を撮ってみた(高度差は約100mほどかな。落ちたら死ぬはず)


飛騨側(ペンキマークがみえる)

 最初にきた飛騨泣き導入部分の一枚岩をクサリを使って下降する。ここから落石の危険があるスラブ帯を一気に下降していくが、ここの下降は飛騨泣きや長谷川ピークよりも難しかった。全体としてこの大キレット越えのルートは北穂高→南岳の方向にとるほうが難しさを感じる。この落石のあるスラブ帯は下降路にとるとしんどい。初心者は南岳→北穂高のルートを選択したほうがよいと思う。下降している途中、韓国の20人以上いる団体が登ってきてマナーが悪い。こちらは道をあけてひたすら通り過ぎるのを待っているのに、誰一人挨拶しない。中華思想のように自分たちが世界の中心とでもいわんかのように周りの迷惑かえりみず登っている。別の場所でも韓国人登山者のマナーの悪さを言っていた人もいたから、たぶん僕だけがそう思っているわけではないはずだ。
 長谷川ピークは馬の背を上りに取るほうが楽だ。つまり、北穂高→南岳方面にとるほうが登りやすい。よくHPでこの方向にくる人たちが、長谷川ピークはそれほど怖さを感じなかったと書く理由として、その前に飛騨泣きを経験しているからだと書いていることが多いが、往復した経験では下りより簡単なためだと気づいた。
 長谷川のピークを越え、南岳南壁(獅子鼻)を越え、南岳山荘に着いたのが13時20分。さすがに疲れがでてきた。ここでビールを買ってきて飲んだ。おいしかった。
 南岳新道は1000mを一気に下っていく道だ。実際、2700m付近から急激な下りになって、疲れていた足にトドメを刺された。2時間かけて槍平に着いたころには、足の疲労は限界に達しているかと思われた。さすがに槍平小屋に泊まって翌日帰ろうかと悩んだくらいだ。しかし、あとはほとんど平坦な道を10数キロ歩くだけだと思い直して、15時45分頃に出発した。新穂高に着くころには日没になっているかもしれないと思ったが、とにかく白出小屋まででれば林道になるのでヘッドライトを点けながら帰れると見込んで出発した。
 足が棒のようになりながら、そして足の裏にマメをたくさんつくって痛みに耐えながら早歩きで17時すぎに白出小屋についた。ここで二人の登山者が休憩していた。驚いたことに日帰りで新穂高から奥穂高岳へ登って下山してきたという。僕と同じように足が棒のようになって足裏にマメをいっぱいつくっていた。スノーブリッジのところは通過できたんですか?と聞いてみたら、重太郎橋のところが超巨大な雪渓があったということだ。そこを強引に通過して登ってきたらしい。彼らの表現ではタンカーよりでかかったということだ。あれじゃあ、秋になっても融けないよと言っていた。これじゃあ、今年はこのルートで穂高岳へ登るのはやめようと思った。
 3人でゆっくりと新穂高へ向かう。3人とも足が痛くて歩くのが困難な状態だった。新穂高に着いたのは7時くらいで暗くなりかけていた。そしてここから車で高山市内を通って帰路についた。高山では観光客で賑わっていた。
 4時間かかって家に着いたが、今までの登山の中では一番辛い登山になった。帰ってから爆睡状態に陥った。そして翌日は強烈な筋肉痛でまともに歩けなかった。無謀な登山だったかもしれないと反省しきりである。

最後に南岳から下山しているときの展望を何点が載せます。



南岳山荘のテント場付近より滝谷を眺める


南岳新道より中岳とかろうじて見えている槍の穂先にお別れ


2700m地点にある看板



なだらかな山容の南岳



中岳


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