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(4)どの様な治療法があるか


治療効果を比較する為の良好な自然経過データ(なにも治療を行わなかった腫瘍のデータ)が無い為にどの治療方法が真にBestであるかとの疑問は未解決である。
現実的な治療方法は正確な診断、患者の視機能と精神状態と全身状態に基づいて決定されるべきである。
正確な診断を行うには数度の診察を必要とし、ただ1度の受診では診断を確立し、治療方法の決断をすることは出来ない。
インフォームドコンセントで経過観察または治療を考慮するとき、患者はその利点と欠点について十分に説明を受け、治療方法の決定に積極的に参加しなければならない。
 
@光凝固術(photocoagulation)
視神経や黄斑部からはなれて位置する小さな悪性黒色腫(直径10mm以下,厚さ3mm以下)に対して有効な治療法である。
キセノンやレーザによる光凝固術が眼腫瘍に施行される。
最も適用があるのは、網膜や脈絡膜の良性の血管性腫瘍である。
眼内腫瘍に対する光凝固には

(T)腫瘍の表面を直接凝固する方法
(U)腫瘍の周囲を凝固して栄養血管を閉塞する方法

がある。
良性に対しては両者を併用すれば相乗効果がある。
しかし、脈絡膜悪性黒色腫に対する表面凝固はブルッフ(
Bruch)膜破壊による腫瘍の内向性発育を加速させる危険が高いので、腫瘍周囲を光凝固し、腫瘍の発育が阻止された時に、中心に向かって光凝固を追加していく方法が得策であろう。
 
A光線力学的療法(photodynamic therapy)
光線力学的療法の作用機序は、血管閉塞、熱凝固、一重項の殺細胞作用。
 
B放射線療法(radiation therapy)
悪性黒色腫の治療方法として眼球摘出にかわるものとしてますます注目されてきている。
放射線療法は高エネルギーのエックス線、電子線、放射性同位元素により、
がん細胞を破壊したり損傷を与えて増殖不能にすることを目的とする。
放射線のこういった働きをイオン化と言い、分子を解離させるプロセスによって原子から電子を奪い、生きた細胞を損傷させる反応を引き起こす。
損傷させられた細胞は増殖能力をそこない、やがて細胞を死に至らしめる。
健康な細胞(組織)は放射線を受けても、通常は恒久的な損傷をほとんど受けることなく回復するが、後述の副作用が現れる場合がある。
 
(T)局所照射
アイソトープを強膜に縫い付け、腫瘍全体に少なくとも80〜100Gy照射(1〜2週間)することにより、腫瘍を瘢痕化させる。
腫瘍に照射されても、周囲の正常な眼組織に対しては過度の照射は行われない。
種々の方法が行われているが、コバルト60(
60C),ヨード125125I),ルテニウム106(106Ru),イリジウム192が最も一般的に用いられている。
以前はコバルト60が多く使用されていいたが、視神経・網膜などへの視力障害が生じやすい為、最近ではヨード125,ルテニウム106を使われる事が多い。
 
(U) 外部照射
リニアック照射,陽子線照射,重粒子照射
目標とする腫瘍部に選択的かつ均等に照射できる。
良好に視機能を保持して治癒させることが出来る。
放射線白内障,網膜症及び緑内障を惹起されることがある。
小児の眼内腫瘍の放射線外部照射により眼窩骨・歯の発育が障害されることがある。
眼球摘出が必要な症例であっても、腫瘍を小さくする為、及び手術中に腫瘍が拡散される可能性を低くする為に放射線照射が行われる場合がある。
患部が視神経乳頭に近い場合、視神経障害は免れず、視機能の温存は困難な場合が多い。
尚、陽子線及び重粒子照射による治療は健康保険、高額療養費制度による助成等を受ける事が出来ない為、300万円前後の費用が掛かる。
但し、診察、検査、入院費等の通常の治療と共通の部分については健康保険の適用が可能。(つまり、『300万円前後+通常の医療費』が掛かると言うこと)
 
(V)副作用
放射線治療により次の様な副作用が起こる場合がある。
・疲れやすい
・食欲が無くなる
・皮膚異常(日焼けしたように赤くなり、乾燥しかゆくなる)
・貧血、白血球減少、血小板減少
・頭痛
・耳痛
・めまい
・脱毛
・吐き気
・嘔吐
 
C局所切除術(local surgical excision)
この方法は議論があり、技術的に難しく、腫瘍が拡散する結果となりうる。
しかし、かなり選ばれた(限定された)症例に対しては考慮される。
 
D眼球摘出(enucleation)
眼球摘出が依然として眼内腫瘍に対する重要な治療法ではあるが、
腫瘍の播種や転移性が促進される可能性があるのではないかとの疑問の声もある。
 
E化学療法(抗ガン剤など)と免疫療法
化学療法と免疫療法は眼内悪性黒色腫の第一選択の治療法としては行われない。
しかし、眼から離れた臓器への転移性黒色腫の縮小に利用されている。

【僕の場合 −抗ガン剤−】
僕は予防目的で抗ガン剤を受けました。(詳細は闘病記で確認して下さい)
<抗がん剤治療の説明>
・ 抗がん剤はDAV(ダカルバジン、ニドラン、オンコビン)という薬を使う
・ 副作用で骨髄抑制が起こり、白血球、赤血球、血小板が減少する
・ 白血球の減少 : バイキンに感染し易くなる
・ 赤血球の減少 : 貧血
・ 血小板の減少 : 血が止まりづらくなる
・ DAVの前に吐き気止めの点滴も行う
・ 吐き気止めには身体を活性化させる成分が入っている為、夜、寝付きが悪くなる場合がある
・ オンコビンには便秘になる成分が入っている
・ 5日間連続で行う
・ 処置後、2日置きに採血を行い、骨髄抑制の回復具合を確認する
・ これを1クールとして、3クール行う。(通常、がんの進行具合に合わせてクール数を決めるが、予防目的であれば3クールで良いだろうとの事)
・ クールの間隔は1ヶ月くらい空ける

治療法の違いによる生命予後に大きな差が見られない事が明らかになるにつれ、最近では各種温存療法に対する期待が高まっている。

Index (1)眼の構造 (2)脈絡膜悪性黒色腫とは
(3)診断 (5)治療後 (6)参考文献