Back  Index / Next 



腸、気持ちいい・・・ワケない

僕の会社では誕生月とその反対月の年に2度、健康診断がある。
僕は10月生まれなので10月に健康診断があった。
その時、希望をすれば「便潜血検査」と言うものも受けられるとの事で、せっかくだし、タダだしというワケで申し込んだ。
「便潜血検査」とは一言で言えば大腸ガンの事前検査みたいなもので、要するにウンチョスに血が混じっていないかを調べる検査の事。
とは言え、ウンチョスをマッチ箱か何かに入れて提出するのでは無く、爪楊枝みたいなものでウンチョスを5−6回刺し、ウンチョスがチョビッと付いた爪楊枝みたいなヤツをそのままケースに入れて提出します。(僕の場合は会社の診療所へ提出します)

そして何日か経ってから結果が来たワケだが、やっぱりと言うか、案の定と言うか『陽性』との判定結果で、つまり、血が混じっていたので病院へ行って精密検査を受けて来てくださいとの返事だった。
なんだか、そんな気がしていたんだ。
何故かと言うとウンチョスをすると時々、コーモンさんが少し切れる時があって、その為、検査で引っかかるかもしれないなぁと思っていた。

さて、精密検査をしてもらう病院を決めなければいけないのだが、基本的に診てもらう病院はどこでもいいのだけれど、ヘタをすると命に関わる事も考えられるので、ある程度大きく、そしてちゃんとした病院が望ましいと僕は考えた。
でも、それは一体ドコ?
分からないので、会社の診療所からオススメの病院一覧表なるものをもらい、その中で家から一番近い、刈谷総合病院へ行く事にし、早速土曜日に出かけた。
ところが、なんとマヌケな事に休診日。
ネットで調べてみると、この病院は土曜日は基本的に休診日で、月に1度くらいしか土曜日の診察は行っていない。
まったくもって、使えない病院である。

結局、日を改めて、以前、眼でお世話になった藤田保健衛生大学病院(通称、藤田学園)へ行くことにした。
ただ、この病院のデメリットは特定機能病院に指定されている為、紹介状が無い場合、初診が高くなること。
でも、他に行くべき病院も思い浮かばず、「たかが2100円くらい払ってやろう」と、大盤振る舞いの気持ちで出かけた。

藤田学園は僕が入院していた時とは随分様変わりをしていて、すごく綺麗な建物になっている。
(そういえば、入院中は工事をしていた様な気がする)
1階と2階の正面側は全面ガラス張りで、その為、外来のエリアは日中はすごく明るくなっていたり(ただし、昔ながらの所もあります)、かつては教会で、僕が入院していた頃は物置部屋だった所は現在、学園スーパーマーケットになっていたりした。

受付を済ませ、内科の診察室の前で待つこと約2時間。
前回の眼科の例もあるし、予約も紹介状も無かったので、もっと待たされるのかと思っていたが、思いのほか早く呼ばれた。
今にして思うと、眼科の場合、視力の測定やら何やらと、診察の前にやらなきゃいけない儀式が色々とあって、それで時間が掛かるのだろう。

診察室へ入ると政治家の加藤六月に似たまじめそうなオジさんが座っていて、「higanさんの担当をさせていただく野口です」と丁寧に挨拶をしてきた。
「あっ、よろしくおねがいします」と少し驚きながら僕も挨拶をした。
これまで、いろんな病院へ行ったが、こんなに丁寧に挨拶をする先生は初めてでびっくりした。
この日は診察と言うよりも検査の方法と日にちを決める。
野口先生によると検査には一般的にバリウムを腸に入れてレントゲンで摂る方法と、お尻から内視鏡を入れて診る方法の2種類があるそうだ。
しかし、バリウムで診ても、はっきり分からなければ、結局は内視鏡で診る事になり、2度手間になるから、最初から内視鏡で診た方が良いと言うことで、そうしてもらう事にした。
その結果、検査日は12月6日と決定。
いよいよ、僕はオシリの穴を洗って待っている事となったのだ。

そしてついに、検査日。
事前に言われた通り、前日は消化の良いものを食べ、夜9時以降は絶食である。
当然、朝メシなし。
少々、オシリが気になりつつも病院へ向かう。
一応、検査は13時からの予定になっていたが、これはあくまでも仮の時間で、実際には9時までに病院へ行き、下剤を飲んで、腸がキレイになった人から順番に検査を受けていく。

総合受付の無愛想なオバさんに内視鏡センターの場所を聞き、3階へ上がる。
内視鏡センターは何だかスゴイ匂いがする。
酸っぱいというか、乗り物酔いをした時に胃から昇ってくるあの匂いに似ている。
内視鏡センターだから、きっと、胃カメラの時の患者さんがオエ、オエとしたあの匂いがあたりを漂っているのだろう。
内視鏡センターで受付を済ませると、既に4人程の人がイスに腰掛けて既に待っていた。

しばらくすると看護婦さんに次々に名前を呼ばれ、ペットボトルの並んだ机の前に座っていく。
僕以外はみんな60歳以上のオジさん達だ。(あれっ?ひょっとして僕もオジさん?)
看護婦さんの説明によると、僕達のそれぞれの目の前にある500mlペットボトル4本の中に入っているミネラルウォーターの様なものが下剤で、これを1時間半から2時間の間に全部のみ干さなくては行けないそうだ。
しかも、この下剤は腸を刺激して便を出すタイプではないので、各自で歩き回って腸を刺激させなければならない。
そして、もよおしてきたら、すかさずトイレに入って下さいとの事。
時々、間に合わない人がいる様で、あらかじめトイレの場所を確認しておく必要があるとの貴重なアドバイスも頂いた。(うん、これは重要な事だ)
そして6回目のトイレ以降は内視鏡センターの中のトイレを使用し、出した物を看護婦さんにチェックしてもらう。
僕が入院していた時は浣腸され、看護婦さんと一緒にトイレへ入り気張っていたが、こちらの方が随分と気が楽だ。
この下剤はマズイので飲みやすくする為に、氷も用意されている。
僕以外の人は皆、氷を入れて飲んでいたが、僕は入れずにコップへ注ぎ、ゆっくりと飲んだ。
氷を入れなかったの僕の座った場所が氷から遠かった為と、それから冷たいと腸の動きがニブルのではと思ったから(これは医学的に正しいかどうかは分かりません)。
味は確かにマズイのだが、それよりもツンとするニオイには閉口する。
250mlくらいを飲んで、まずは散歩に出かける。
どの程度の下剤の強さなのか分からないので、看護婦さんに言われた通り、まずはトイレの場所を確認し、いざとなったら駆け込める様に心の準備をしながら、病院の建物内をウロウロする。

内視鏡センターのある3階は僕が入院していた眼科の病棟がある。
病棟の中までは入らなかったが、廊下から覗いた感じでは中は昔のままの様だ。
けれど、僕が見た限りでは見覚えのある人は一人もいなかった。
廊下にある2つ並んだ緑色の公衆電話は昔のままだ。
ここから友達や会社へ毎日電話していたんだと思うと、懐かしくて思わず受話器に触れてみた。
あの頃はこの電話だけが、宙ぶらりんだった僕の心の唯一の慰めだった。

散歩に出かけて直ぐに、オシリが「ヒクッ」とし始めたので、慌ててトイレを駆け込んだ。
あの下剤の威力がどれ程のものなのか、まだ計りかねているので、念のため用心しておく。
案の定、あまり出なかったがかなり水っぽい便であった。

1時間半から2時間で2リットルの下剤を飲まなくてはいけないので、ざっと計算すると15分で500ccづつ飲む事になる。
しかし、トイレで用をたしていると15分というのは長い様で、実は結構短いのだ。
トイレを早めに切り上げると、あとからチョロチョロと漏れてくるのではと心配になるので、カラッポになるまで、座っている事になる。
そういった中、下剤を飲む為に、いちいち内視鏡センターへ戻っていると時間のロスになるので、ペットボトルを持ち歩く事にした。
これなら、時間の節約になるし、なによりあのマズイ下剤を250cc、一気に飲まなくてもいいのが助かる。

何度かトイレに行っている内に、徐々に下剤の威力も分かってきて、少々の「ヒクッ」くらいでは動じなくなってくる。
(それと比例して、オシリも痛くなってくるのだが)
6度目のトイレ以降は内視鏡センターのトイレで行い、便(と言っても、殆ど水だけど)を看護婦さんにチェックをしてもらうが中々OKが出ない。
他の人も「もう、何も出ん」と言っていた。
結局、8回目でやっと看護婦さんのOKをもらい、いよいよ検査だ。
更衣室で着ている物を全て脱ぎ、検査着に着替え、下は紙のパンツに履き替える。
紙のパンツには穴が空いていて、この穴から内視鏡を入れる様だ。

しばらくすると名前を呼ばれ検査室へ入る。
そこには若い検査技師(と言うのでしょうか)の男性がいて、
「higanさんですね。私は神谷といいます。本日は野口先生の依頼によりhiagnさんの内視鏡検査を行います」と言い、僕は彼に言われるがまま診察台に横になる。
「まずは内視鏡を入れ易くする為に、オシリにクリームを塗ります」と言い、神谷さんはクリームを僕のコーモンさんにヌリヌリしたかと思うと、指がニュルッと入ってきた。
男の人にケツに指を入れられてビックリである(女の人でもビックリだけど)。
続いて、ついに内視鏡が入ってくる。
中の様子はテレビモニターで僕も見る事が出来る。
腸は洗濯機のホースの様に蛇腹になっている。
初めて見る自分の腸の中に、「ナルホド」と思うより他なかった。

ずんずんと内視鏡が入っていくのだが、それにつれてトンドンとお腹が苦しくなってくる。
空気を入れて腸を膨らませながら内視鏡を入れているので、お腹が張ってくるのだ。
丁度、カエルのオシリにストローか何か突っ込んで膨らませた様な、あんな感じだと言えば少し誇張し過ぎかもしれないが、イメージがし易いかも知れない。
お腹が張って苦しいのが更に進むと、今度は痛くなってくる。
正に「苦痛」である。
お腹の中から何かに押されている感じである。
妊婦さんが「あっ、今、蹴った」と言う感じとはこうったものなのだろうか。
それとも、エイリアンがお腹から出てくる時の感じとはこんななのだろうか。
どちらも違うかもしれないが、とにかく初めての感覚である。

脂汗を流しながら僕が「イタイ、イタイ」と言っても、きっと他の患者さんからも散々言われているのだろう、神谷さんは慣れたもので、「大丈夫ですよ」と意に介さない様子。
そのうち、ブ――っとオナラ(お腹には便が無いので臭くない)が出ると、嘘の様にスーッと楽になった。
行き止まりになっていた空気が、開放されたワケだ。
しかし、そんな安らぎも束の間で、またすぐにあの苦痛がやってくる。

そんな事を繰り返しているうちに、いわゆる盲腸の入り口に到着。
本日の検査の最終地点であり、出発点だ。
(決して、オシリから入れた内視鏡を口から出すのでは無い)
検査はここから内視鏡を抜きながら、「帰り道」で行われる。
モニターを見ながら神谷さんが「一般には盲腸と言われていますが、正式には虫垂と言います」と説明をしてくれた。
テレビモニターでは大きさはよく分からないが、きっと大豆くらいの大きさと思われる穴が開いているのが見える。
内視鏡を抜きつつ所どころ確認しながら、神谷さんは「異常はありませんね」と言い、合わせて腸についても色々と説明してくれる。
しかし、苦痛と格闘している今の僕にとって、そんな話しはどうでも良い事で、サッサと済ませてくれと心の中で叫んでいた。
内視鏡も直腸のあたりまで来ると、ようやく検査も終わりで、あの苦しさも無い。
念のため、痔ロウなどのチェックもして終了。
今日の検査の結果、異常なしとのことであった。
診察台の上で横になりながら僕は、大腸ガンなどの心配がなかったからなのか、それともあの苦痛から解き放たれた虚脱感からなのか、とにかくホッとしていた。

あとから看護婦さんに聞いた話しによると、僕の検査は早く終わったそうで、普通ならもっとなの苦痛が長かったのかと思うとぞっとしつつ、病院を後にした。

2004.12.11


 Back  Index / Next