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ムットーニ・再び


闘病記にも書いたのだが、ムットーニの個展が名古屋でも開催される。
渋谷パルコやDVDでの感動ですっかりムットーニに惚れてしまった僕は先の土曜日(10/1)に出かけた。

受付を済ませ、中に入ると渋谷で見た事のある作品達が僕を迎えてくれる。
最初に入ったコーナの『楽士』という作品の前でどこかで見かけた事のある小柄な男がスタッフにあれこれと指示をしていた。
その男こそがムットーニ(武藤政彦)本人だった。
渋谷で購入したDVDではムットーニ自身が作品のあれこれを説明していたので、顔を覚えていたのだ。
いきなりの本人登場で、ワクワク感はいやがうえにも盛り上がってくるが、かと言ってこの先何か良いことが起こる保証は何もない。

個展は前日の金曜日から開催していて、僕が行ったのは2日目だったのだが、展示されている作品の幾つかはまだ調整中で動いていなかったり、傍らに工具箱が置かれていたりした。
本来、個展という発表会であれば、平凡なサラリーマンの感覚で言えば内容はともかく、格好だけはつくようなまとめ方し、調整中などはあってはならない事なのだが、相手は芸術家である。
納得するまでは、あっちをいじり、こっちをいじり、既に個展が開催されていようがお構いなしである。
自分が納得し、最高の状態を見てもらおうと言う、そんな妥協をしない姿勢が良い作品への道なのだろう。

さて、今日の目的は前回の渋谷での個展ではタイミングが合わず見る事ができなかった『猫街』とお気に入りの『摩天楼2000』をもう一度見ることだ。
どの作品も、のべつ動いているわけではない。
だいたい10〜20分間隔で動いているので、タイミングが合わないと見ることができない。
『猫街』は萩原朔太郎の同名の小説をモチーフに、ロバート少年が猫街に迷い込んでしまうという内容。
ムットーニらしい不思議な世界観を表現した作品だ。
DVDではこの屋根の中に複雑な仕掛けが組み込まれているとムットーニが説明していた。


『猫街』 (ムットーニ・オフィシャルHPより)

『猫街』を見た後は『摩天楼2000』なのだが、中々タイミングが合わず、その度に別の作品をチラリと覗いては「動き出したかな?」と思って『摩天楼2000』の前に行くのだが動いておらず、ガッカリしては又ほかの作品を覗くといった事を何度も繰り返し、「ひょっとしたら、今日は未だ調整中カモ」と、ちょっと諦めながらも、ようやく見られる様になるまでに40分以上もかかってしまった。
始まって暫くするとムットーニがやってきて、「ボリュームを上げましょう」と言い、作品の手前にある蓋を外し、中に入っているCDウォークマンのボリュームをいじり始めた。
「僕はこの作品が一番好きなんですよ」と言うとムットーニは『摩天楼2000』について説明を始めた。
難しい話だったが、「形ある物はいつかは滅び、朽ちて無くなってしまい、記憶だけが未来にのこる」と言う事らしい。
彼の話によれば、この摩天楼はアメリカ同時多発テロで崩壊したWTC(国際貿易センタービル)をイメージしているそうだ。
確かに今では無くなってしまい、ジャンボジェット機が突っ込むニュース映像と共に記憶にしか残っていない。

この作品を作っていた頃は1999年(テロは2001年9月11日)だと思われるので、まさか本当に無くなってしまうとは彼自信も思わなかっただろう。

『摩天楼2000』 (ムットーニ・オフィシャルHPより)
2005. 10. 7


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