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今更、「尾道三部作」&「新尾道三部作」の旅 (前編)

「尾道三部作」とは大林宣彦監督による『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の事で、更に『ふたり』『あした』『あの、夏の日・とんでろ じいちゃん』を「新尾道三部作」と呼ばれている。
しかし、一番新しい『あの、夏の日〜』でも公開から既に12年経っていて、一番最初の『転校生』に至っては、29年も経っている。
あれから街は変わっているのだろうか、ちょっと気になるので行ってきた。

まずは「尾道三部作」から。

※ほぼ映画のストーリーに沿って紹介していきますが、実際に訪れた順番ではありません。。



【転校生】1982年作品

<ストーリー>
勉強よりもいたずらが大好きな中学生・斉藤一夫のクラスに斉藤一美という幼なじみの女の子が転校してきた。
ある日、一夫と一美は神社の石段を転げ落ち、これがもとで二人の身体が入れ替わってしまう。

<キャスト>
斉藤一夫・・・・尾美としのり
斉藤一美・・・・小林聡美
一夫の母・・・・樹木希林
一美の母・・・・入江若菜


■御袖神社
一夫と和子が入替わる階段のある神社
映画では社殿のある石段の一番上から一夫と和子が抱き合って山門まで転がり落ちて来るのだが、実際には山門の向こうにも石段が続いていて、そのまま転がり続けたら二人は恐らくバターになっていたと思う。


■踏切
入替わった一美(中身は一夫)が憮然と渡る(ここで、画面がモノクロからカラーに変わる)
御袖神社の山門の下に続く石段を下りていくとこの踏切に出てくるのかと思っていたが、まったく別の場所にあった。
撮影当時は無かった遮断機も、今ではちゃんとついている。
当然だろうが、尾道三部作・新尾道三部作には階段のシーンがやたらと多い。
その為、人物の動きが3次元的となり、また辺りを見下ろすシーンが多用されるといった三部作の特徴となっている。


■袴線橋
一美が自転車で一気に駆け上っていく<転校生>
実加が出張に行く父親を見送る<ふたり>

映画ではもっと大きいと思っていたが、一回り小さかった。
しかし、思った以上にスロープが急で、中身が男の一美とは言え、実際の小林聡美がよく一気に駆け上がって行ったなぁと感心する。



■文学の小道
一美がヤンキーと乱闘する
千光寺山ロ―プウエイ山頂駅から文学の小道を下っていくと大きな岩がゴロゴロと転がっている場所に出てくる。
さて、どの場所だろうかと、事前にDVDから印刷してきた物と見比べながらウロウロ・・・
当時よりも木が成長していて苦労したけど、漸く見つけたのがこれだ。
どうやら一美は志賀直哉の碑の前で乱闘したらしい。


■茶房こもん
水着を買いに行った後、一美が母親と訪れる
ロープウエイ山麓駅のチケット売り場の前に店はある。
ここはワッフルが有名らしいが、僕はワッフルを食べたことが無い。
けれど、ミーハーな僕としては注文しないワケにはいかず、アイスクリームワッフルとアイスコーヒーを頼んだ。
千光寺の山道を下ったり、登ったりして、もう汗だくなのだ。
それにしても、ワッフル旨めぇ。
こもんのワッフルだからなのか、それともワッフルそのものがそうなのかは分からないが、なんかチョー旨めぇ。

ところで、僕が座った席は映画で一美が座っていた場所。
小林聡美のオシリの温もりを想像しながら・・・なんて、そんなワケはない。
もう、日暮れまで後わずかなので、これから何処へ行こうかと事前に用意した資料を見ながら一人作戦会議だ。

映画では、一美(小林聡美)もワッフルを注文していました。


■斉藤一夫の家
斉藤一夫の家
有名な一夫を乗せたトラックを一美が追いかけるラストシーンになる直前の、引っ越しをする一夫一家を乗せたトラックが家を出発する場面。
高いところから撮影という事は分かるのだが、この尾道にはそんな場所がたくさんあってどこか全然わからなかった。
しかし、たまたま浄土寺下のバス停を降りた時に見覚えのある風景に出くわして、正にそこが一夫の家だった。

左の写真でトラックが止まっている所が一夫の家。
ごらんの通り、随分道巾が広がっていましたが、松岡酒店が目印となって見つける事ができました。

■市役所前の道
ラストシーンで一夫を乗せたトラックを一美が追いかける
映画はモノクロの場面なので、周りの様子があまり鮮明ではないが、随分あたりは変わっている様子。
尾道は寺が多くあり、その為、お墓作る石材店が多くあった様だが、今は随分減ってしまっている。
映画の中でも、この市役所前の道にも何軒かの看板を確認できたが、現在では1軒が残っているだけだった。


市役所前の通りにはこの「大村石材店」しか残っていませんでした。
通りには建物が沢山立って、すっかり様子が変わっていました。



【時をかける少女】1983年作品
<ストーリー>
放課後、理科実験室の掃除当番で残っていた和子は、隣の準備室の物音に様子を見に行くと、床に落ちたフラスコから白い煙、そして強烈なラベンダーの香り……。
気を失った彼女は、それ以来、不思議な出来事が身の回りで起きる様になる


<キャスト>
芳山和子・・・・原田知世
深町一夫・・・・高柳良一
堀川吾朗・・・・尾美としのり
和子の母・・・・入江若菜


■長江小学校
和子と吾郎の通う高校
長江小学校を映画で使用したという事はネットで調べていたので、長江小学校を目指したが、これがダメだった。
映画に出てくるアングルで見ようとすると、も少し下った「スミレハウス」を目指していくと良い。
尾道の学校は解放的で、門も開いているけれど(名古屋では必ず閉じています)、僕はやっぱり部外者なので遠慮しつつ、それでも一歩だけはOKという勝手なルールで写真を撮ってきた。
校舎は映画の時そのままで、よしよしだ。

映画では桜が咲いていて、とても奇麗でしたが、現在では朽ち果てていて見る影もありません。
ちなみに、映画ではコンクリートの門がありますが、これは撮影用で置いたそうです。

『時をかける少女』のロケ地は尾道から更にJRで30分ほど西へ行った、竹原という所にある。
ここは安芸の小京都と呼ばれていて、昔ながらの町並みが保存され、とても綺麗な街だ。(但し、駅前はどうやら飲み屋街の様だった)



■普明閣
和子の通学路
尾道は坂の町として有名だが、竹原は平らなので楽チン。
だけど、この普明閣は階段を登っていかなくてはならず、ひと頑張りが必要。
まず、その階段に続く道が映画より悪い。
映画では石畳だった気がしたのだが、今回来てみると土の道。
あれ?アスファルトでもないの?って感じ。
ともかく、石の階段を上り、西方寺を素通りして普明閣へ行く。
普明閣には見覚えのある灯篭が二つ並んでいて、そうそう、あったあったと、一人悦に入ってみたりして。
京都の清水寺を参考したここの観音堂に上がると竹原の街が一望でき、爽やかな風がまた心地よい。
ここから見える西方寺から上がってくる階段は、吾郎の家でボヤがあった時に和子が駆け下りて行ったシーンのアングルだ。
和子がカラコロと下駄を鳴らして降りていく映画のシーンと、今現在僕が見ている風景が頭の中でシンクロする。
なんだか、ロケ地めぐりと言うのは、時を経た目撃者の様な気分になる。


右の写真で煙の出ているところが、本当に堀川醸造所(吾朗の家)のある所。
映画にしては、珍しく位置関係が正確だ。
但し、左手に和子の家がある設定だが、実際はお墓である。


■堀川醸造所
吾郎の家(醤油の醸造所
元々なのだろう、映画でも実際の今も醸造所で、『堀川』とい名前も同じ。
また、驚いた事に隣が「ほりかわ」と言うお好み焼き屋があった。
映画では隣までは映ってはいなかったと思うから、当時からあったのかどうかは分からない。

堀川醸造所は古いままの建物が残っていて、この竹原の町並みにマッチしている。

■タイル小道
ボヤ騒ぎの後、和子が通る小道
恐らく、尾道のロケ地で一番有名な場所なのではと思う。
最初は個人が始めたタイルによる装飾なのだが、映画をきっかけに沢山の人が訪れるようになり、タイルも増えていったそうだ。
しかし、あまりにも沢山の人が来るようになった為、それらを全部撤去して元の状態に戻したという事らしい。
だからなのか、タイル小道の入り口には大林宣彦によるこんな言葉が記されていた。
尾道は静かで穏やかな、人びとの暮らしの町です。
観光の"光"とは、その暮らしで生まれた智慧の意です。
尾道の光を訪ねて下さる旅人には、どうかその
穏やかさを学んで良き旅の土産にして欲しい。
ゆっくり、ゆっくり、お行儀良く、この町を旅して下さい、
うわが、ぼくの映画を愛して下さる方への
 心からのお願いです。             大林宣彦

上の写真は両方共、私有地の部分。
だから、写真はその外(公道)から撮ってきました。


■胡堂(えびすどう)
瓦が崩れ落ちてきて、和子と吾郎が危機一髪
見た感じ、映画と雰囲気がちょっと違うと思ったら、映画では閉じていた扉が開いていた。
瓦も補修をした跡が見える。(もちろん、映画でのシーンでは瓦が落ちて来るものの、引きのシーンでは瓦にダメージは無い・・・当然である)


■日の出時計店
和子が時計の針が飛んでくる幻想をする
当時はどうだったのかは分からないが、28年後の今は民家になっていた。
ただ、原田知世の後ろに見えていた「たばこ」の看板は新しい物に変わっていたが、今もタバコ屋が残っている。


■艮(うしとら)神社
タイムリープをして和子が訪れた場所
こもんを出ると目の前にあったので、折角だから寄ってみたが、まぁ、大きな楠(県の天然記念物)があるくらいで、普通の神社だった。
神社につき物の狛犬もぶっ壊れていて、それをコンクリートで不細工に修繕されていた。
県の天然記念物の隣がこれじゃぁなぁ・・・。




【さびしんぼう】1985年作品

<ストーリー>
ヒロキはひそかに恋心を抱いている美少女に"さびしんぼう"という名をつけて、いつも遠くから眺めていた。
そんなヒロキの前に、突然現れた道化姿の女の子。
彼女も自分のことを"さびしんぼう"と名乗る。
ヒロキは煙たがったが、道化の"さびしんぼう"は度々現れて、騒動を起こすのだった。
そんな折、ついにあの美少女と話をする機会がやってくる……。

<キャスト>
井上ヒロキ・・・・尾美としのり

橘小百合、さびしんぼう、ヒロキの妻・・・・富田靖子(三役)
ヒロキの父・・・・小林稔侍
ヒロキの母・・・・藤田弓子


■竜王山入口
映画の冒頭でヒロキが小百合の高校と自分の家(西願寺)を眺めていた場所
最近ではインターネットで事前に色々と調べる事が出来る様になっていて、とても便利だ。
それにGoogleマップでは細い路地までちゃんと載っているので、今回の旅ではこれを印刷して一杯つなぎ合わせ、一つのMyマップを作り、それを幾つも持ってきている。

祇園橋のバス停からMyマップを頼りに、自転車がやっと通れるくらいの細い路地を抜けたりしながら、日比崎中学校(映画では小百合が通っていた明海女子高校)の脇を抜けて、更にズンズンと急な坂道を登って行く。
もう殆ど登山だ。
雨の為、アスファルトの地面が滑るので行くのを諦めかけた時に、漸く竜王山の入り口に辿り着いた。
映画の冒頭でヒロキはフィルムの入っていないカメラ(望遠レンズが高かったのでフィルムまで買えなかった)で小百合の高校と自分の家(西願寺)を眺めていた場所だ。
映画ではここから、小百合が音楽室でビアノを弾く様子も見ることが出来ていたが、26年後の現在では木々が成長して校舎が見えるが精一杯だった。

右の写真で、奥が西願寺で手前の白い建物が小百合が通っていた明海女子高校(実際は日比崎中学校)

足元の悪い中、ここまで登ってくるのは大変だったけれど、この先にある祠を目指すには更なる困難な道が待ち受けていようとは、神ならぬ身の僕は知る由もなかった。

■西願寺
ヒロキの家
西願寺に来たのはロケ地めぐりの他にもう一つワケがある。
「転校生」から「ふたり」までの尾道三部作などの美術デザインを務めた薩谷和夫氏の墓があるのだ。
彼は尾道三部作に携わっているうちに尾道が大好きになり、「尾道に墓を作って、死んだら尾道で眠るんだ」と言って、東京の人なのにお墓を西願寺に移し、その後彼自身が亡くなった後に、その言葉とおりに尾道の街が眺められるここで眠っている。
「茶房こもん」には薩谷氏が描いた絵ハガキが売られていた。


この石段を上がると西願寺である。
石の街らしく、門は石で出来ている。

左のオジサンが「転校生」で英語の教師役を熱演する薩谷和夫氏。
薩谷氏のお墓には大林監督からの言葉が添えられている。

■尾道北高校
ヒロキが通う高校(映画では西高)
映画の中の学校でのシーンは校舎の中がほとんどなので、あまり印象的なシーンはない。
勝手に校舎の中に立ち入って見てくるという訳にもいかないので、外から覗いてきた。
校舎の窓枠に沿って、"北"の文字が書かれていて、苦笑いするしかない。
ちなみに、この北高は大林監督の母校で、『沈黙の艦隊』の作者のかわぐちかいじ氏の出身校でもある。


"北"と言う字には笑ったが、その周りの黒い所が何故、"中"なんだろう。

■竜王山
ヒロキとマコトが尾道の街を眺めていた祠[ほこら]
竜王山入口から更に坂道を登って祠を目指す
が、しかし!
舗装された道はこの竜王山の入り口までで、この先は土の道で、益々険しくなってくる。
マジで登山だ。
山道の木と木の間に蜘蛛の巣が張っていると言う事は、暫く人が通っていない事を示しているので、ここで遭難したら助からないかもしれない。
足元が悪いのに加え、薄暗いし(写真よりももっと暗かった)、お墓みたいなのも有るし、なんだかオドロオドロしいのです。

そんな困難を乗り越えて漸く辿り着きました。
祠に登ろうとしたけれど、雨で石垣が滑って登れない。
無理をして足でもくじいたら、マジで遭難するハメになるので、ここは勇気ある撤退をした。

尾美としのりが居る所が地面から2mくらいの高さ。
ここからヒロキの悪友役の砂川真吾は前方宙返りで飛び降りるのだ。
ジャパン・アクション・クラブ、すげぇ。

■商店街
一美<転校生>、小百合<さびしんぼう>が自転車で通っていく
シャッター通りという言葉がいたる所からで聞こえてくる昨今だが、尾道の商店街は活気がある。
それは、近くに大型ショッピングセンターが無いからなのかもしれない。
しかし、商店街(いくつかの商店街が集まっている様子)をブラブラと歩いて感じたのは、「妙齢なご婦人(これを正しいニホンゴでババァと言う)向け」の店が多いという事。
僕の様なナウいヤングはどこで服を買っているのだろうか。



■福本渡船
小百合が通学で使っていた渡船
尾道とその向かいにある向島との間の海は「尾道水道」と呼ばれていて、その名の通り、海というよりも見た目は川と言った方が正しだろう。


■西願寺下
小百合が自転車のチェーンを直していた場所
西願寺下の坂道を下っていくと、見覚えのある石碑(?)のある所に出てきた。
ヒロキが下校する自転車に乗った小百合と初めてすれ違った場所で、その後、自転車のチェーンが外れて困っている小百合に出会う場所。
僕も暫くここに居たが、誰ともすれ違わなかった。
映画の時には石碑には木の屋根が付いていたが、無くなっていた。


この辺りは映画の撮影当時の面影を残しているものの、
ヒロキと小百合たちの対面の家は無くなっていた。
二人の居る後ろの坂道を上っていくと西願寺がある。



後編は「新尾道三部作」とオマケです。

2011.10. 9

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