Back  Index / Next  

おらぁ、東京さ行ぐだぁ的闘病記
   〜番外編N〜



ちょっと変わった世界
2005年9月4〜5日


■9月 4日(日)
「電車男」以来、ちょっとしたオタクブームなわけで、アキバ(=秋葉原)が注目を集めているようです。
オタク以外でも、筑波までの直通電車「つくばエクスプレス」が開通したり、駅前に「ダイビル」と言う新しいビルができたりして一段と活気に沸いているらしい。
「らしい」、と言うのはこれまでの状況を知らないし、知る必要もないのだけれど、注目を集めているのであれば好奇心旺盛な僕としては行かなくてはならない。
アキバが何故、オタクの街になったのかと言うと、『趣都の誕生 萌える年アキハバラ』の著者、森川嘉一郎氏によれば、そもそも’90年くらいまでは「家電の街」だったそうだ。
外国人が日本のお土産にと秋葉原の家電街でウォークマンやラジカセを買っているところをテレビ等で見た事がある人も多いと思う。
その後、郊外に家電の量販店が出来、そちらへお客を取られてしまった秋葉原はパソコンに特化した街へ変わっていた。
パソコンといってもWindowsが出る前の事で、当時パソコンに興味がある人というのはプロを除けば極一部のマニアだけだった。
つまり、これがアキバでのオタクの発生である。
もっとも、最近ではパソコンオタクだけではなく、アニメやフィギュアオタクもこの街に集まるようになっている。
これはどうやら、パソコンオタクの人たちはそちらの方面にも嗜好があったようだ。
ちなみに、「オタク」の語源はコミケという漫画同人誌のマーケット(コミックマーケット)に集まる人たちが相手の事を「あなた」「君」という分かりに「お宅」と言う事から付けられた。
「お宅の所はどうですか」
「お宅も同じジャンルに興味があるんですね」
といった具合にだ。
今ではコミケに集まる人たちだけでなく、**マニアや**フリークといった具合に、様々な同好の人をオタクと呼ぶようになった。
(例えばクラシック音楽が好きな人を「クラオタ(クラシック・オタク)」と呼ぶ)
そう言えば宅八郎は今頃何をしているのだろう。


さて、パソコンオタクでもなければ、アニメやフィギュアオタクでもない僕がアキバへ来て何をしようというのか。
実はアキバにはメイド喫茶なるものがあるそうで、調べた所では店自体は普通の喫茶店なのだが、ウエイトレスがメイドの格好をしているのだ。
メイドとは大きな屋敷で働いている女の人の事で、分かりやすく言えばお手伝いさんの事。
そしてこの場合、若くてかわいい女の子である事が条件である。
(決して「家政婦は見た」の市原悦子を思い浮かべてはいけない。)
フィギュアオタクでは無い僕でも、生身の女性であれば大いに興味がある。


ネットで事前に調べた中では「Good Rock」と言う店は料理にこだわっていると言う事だったので、まずはその店を目指した。
アキバのメインストリートである電気街(中央通り)は大勢の人で賑わっていて、「ああ、こいつらは皆、オタクなんだな」と思うと、自分自身が普通人である事が少し場違いな感じがした。
「Good Rock」は秋葉原の駅から電気街へ出て左手に見える「肉の万世」と言う大きな看板を掲げているビルの近くにある。(「ZOID」というバーの看板が目印)


余談だが、このビルと中央通りを挟んで反対側には「交通博物館」があり、D-51や初代新幹線が展示されている。

「電車男」というハンドルネームはここから来ているのだろうか。

閑話休題。
「Good Rock」はネットでの説明通り分かりにくい場所にあったが、運良く僕は比較的すぐに見つける事ができた。
しかし案内板には開店時間が17:30と書かれていてはあきらめざるを得なかった。
次に向かったのは「JAM」という店。
この店は「Good Rock」とは逆方向にある。
ちょっと離れているが、時々変なニオイのする街を抜けてひたすら歩くしかない。


ヤマギワソフトのビルと東京三菱銀行の間の細い道を入ると「ドウダァ、ドウダァ」と言いながら中国人と思われる二人の男が道行く人に紙を配っている。
恐らくその紙は海賊版ソフトのリストなのだろう。
僕は中国男に用は無い。
二人の男の間を突き抜けてズンズン歩いていくと・・・・あらら? この細い道も突き抜けてしまった。
来た道を引き返して漸く(ようやく)、「JAM」の看板を見つける事ができた。
それには開店時間が12:00と書かれている。現在時刻は11:30。
ムムム、このままここで待っているのも時間のムダだし、この後の予定も詰まっている。
さりとて、他のメイド喫茶の場所も分からない。
実はもう一軒、ガシャポン館の6階にある「Cure Maid cafe」もピックアップしていたのだが、肝心のガシャポン館の場所が分からない。
涙を飲んで、メイド喫茶体験は次回に持ち越す事にした。


メイド喫茶での食事を断念した僕は、アキバの外れと言うよりも末広町にある「パスタ・デ・ココ」に向かった。
ここは、CoCo壱番屋という名古屋のカレーチェーン店が展開しているスパゲティの店で、名古屋生まれのあんかけスパがウリ。
わざわざ東京まで来て、名古屋の物を食べなくてもよさそうなものだが、最近は名古屋めしブームでもあるし、ここはひとつ、ブームに乗ってみようとの事だ。
ちなみに“あんかけ”といっても餡子が載っている訳ではないからご注意を。
“あんかけうどん”というのが関西にはあるけれど、あれのスパゲティ版と思って頂ければよい。
スパイシーでとろみのあるソースが、僕は割りと好きだ。
店は銀座線末広駅のすぐそばにある。
小さな店で、先客もカップルが一組だけで、あまり流行ってはなさそうだ。
名古屋めしブームと言ってもあんかけスパは対象外なのだろうか。


以前、デーモン小暮が「天むす」や「ひつまぶし」発祥の他である名古屋の独特の「あんかけスパ」がどうして一般ウケしないのかについて語っているテレビ番組を見た事がある。
彼の意見ではこういった食べ物のブームは女性が作るものだが、あんかけスパはあんとの絡みを持たせる為、スパは太麺を使用している。
その為、ボリームが多くなり、女性には食べきれないから、ブームには今一歩という事らしい。
んー、なるほど、一理あるな。


この店にはあんかけスパ以外に“名古屋ピザ”も有るが、当の名古屋では見たことも聞いたことも無い。
八丁味噌でも載っているのだろうか。
そのうち、味噌ラーメンの事を「名古屋ラーメン」と言い出しそうな勢いだ。


食事を済ませ、パスタ・デ・ココを出ると次に向かうは本日のメイン・イベントの歌舞伎座(東銀座)である。
今月の演目の中に「2005年版東海道中膝栗毛」がある。
有名な芝居で喜劇でもあるし、それに「2005年版」とあれば今年限りだから、是非見てみたい。
そう思った人が僕以外にも大勢いた様で、まだ前の演目も始まっていないというのに、かなりの人が並んでいた。
そのうえ、風が通らない奥まった所で並んでいるものだから、暑いったらない。
ポロシャツは汗まみれだし、汗拭き用のハンドタオルは既にその用を為していない。
こんな事なら扇子を持って来るんだった。


後悔しつつ1時間半ほど待ってやっと中へ入ることが出来た。
今にして思えば、「膝栗毛」の前の演目から入っていれば冷房の効いた劇場内へ入れたんだ。
あまりの暑さに脳ミソが回っていなかった様だ(いいえ、普段から回っていません)。


一幕見席に座り、一息。
人気の演目なので、立ち見の人も多くいたが、ラッキーにも僕は座る事が出来た。
芝居はこれまでに見たものとは違い、セリフが現代の言葉に近いので比較的何を言っているのかが分かり、かなり楽しむ事が出来た

〜「2005年版東海道中膝栗毛」のあらすじ〜
富くじが当たり、京見物をしようと日本橋を旅立った弥次郎兵衛(富十郎)と喜多八(吉右衛門)。箱根山中では、雲助に襲われたのを退治して、幡随院長兵衛に間違われたり、岡崎では、ズバリ言う巫女に散々不吉なことを言われたり。大井川をタライで渡り損ねて「海中かっぽれ」を踊ったところで嵐に襲われ、流れ着いたのは、なんと愛知万博会場。

弥次郎兵衛 富十郎
喜多八 吉右衛門
尾張万博守 梅玉
巫女細木妙珍 歌江
投げ節お藤 福助
老僕忠助 東蔵
これも「2005年版」ならではなんだろう。
年寄りの侍従が気付けにバイアグラを飲み、それを見ていたスリが「使い方、間違ってんじゃねぇか」と言ったあたりから、これはこれまでに見た歌舞伎とは随分ちがうなと感じた。
岡崎の場面では敵討ちに狙われている侍が「どうすれば逃げられるか」と占い師に聞くのだが、その占い師の髪型がメッシュの入った短髪で遠目では細木数子ソックリで、尚且つ、「ズバリ言うわよ」と言う声もソックリだったものだから、舞台から遠い一幕見席からは本物なのか見分けが付かず、あわててチラシを見て出演者の確認する人が何人もいた。
冷静に考えると歌舞伎は男がやるものだから、女である細木数子が出てくるわけはないのだが、僕も「細木数子も若い頃は銀座でクラブのママをやっていたと聞くから、ひよっとしたらその時のコネで・・・」なんて思ったりもした。


最後には東海道とは関係のない、万博会場の場面になり(万博会場は名古屋ではありません)、弥次さんと喜多さんが、モリゾーとキッコロのぬいぐるみに入って出てくる。
そしてみんなで一本締めをするラストシーンでは弥次さん役の富十郎がセリフを忘れてしまい、場内は爆笑の渦の中、幕となりました。
なんだか、グダグダであるが、面白い芝居だった。


歌舞伎座を出ると一目散にホテルへ向かう。
とにかくシャワーが浴びたい。
フロントで受付けをし、204号室のカギをもらうと2階へ駆け上がる。
部屋に入ると既に冷房が掛かっていて、一瞬、スッと身体が軽くなったような感覚になる。
別世界の様だ。
クーラーを発明した人に感謝しつつ、汗まみれの衣類を脱ぎ捨ててユニットバスへ飛び込みシャワーを浴びる。
これまでの全身にまとわり付いていたモヤモヤ感がシャワーの雫と共に流れ落ち、そして配水口へと流れていく。
すきっりしたらなんだか生き返ったようだ。
それでも、今回も歩き回ったり、あるいは歌舞伎座で立ちっぱなしの為、足はダルダルだ。
僕は夕食に出かけるまでの間、ベッドで暫しの休息を取った。



■9月 5日(月)

7時半に起床。
今日はMRIの検査があるので朝食抜きだ。
簡単に身支度を済ませ、まだ少し魚の生臭さの残った築地の街の中、病院へ向かう。
病院で受付を済ませた後は、検査までに少し時間があるので椅子に腰掛けて本を読む。
昨日、教文館で買った「奇妙におかしい話」(選:阿刀田高)が面白くて既に半分くらい読んでしまい、もったいないので、チビチビと読んでいる。
MRIの検査は8時半から。
少し早めに検査室へ向かう。
今日は眼と肝臓のMRI検査なので検査着に着替える。
まずは腹部のMRIから行う。
鼻には酸素を送るためのチューブを着けた様は、端から見るときっと僕は重病人に見えるだろう。
検査技師の指示に従い、息を吸ったり止めたりとなかなか苦しい検査だ。
それに検査の機械は相変わらずピコピコ、カンカン、ギコギコうるさい。
にもかかわらず、検査の終盤では眠ってしまう僕もなかなかのつわものだ。


検査が終わると次は眼科なのだが、その前に売店で食料調達。
おにぎりとお茶を買い、軽くお腹を満たしてく。


眼科ではいつもの木村先生によるいつもの検査を行った後は、待合室で1時間弱待つ。

鈴木先生に呼ばれ視察室へ入る。
前回、左眼がモヤが掛かったように白っぽくなり、見え辛くなったので予定日ではなかったのだが、病院へ来て診察を受けた。
結果は出血していて、暫くすると血液が分解され、また元に戻るとの事で、はたしてその通りだったのだが、出血を繰り返す様になった。
どこから出血しているのかは見えないのだが、腫瘍からではなさそうなので暫くは様子を見ましょうということになった。
それと、簡易型の超音波検査器が入ったとのことで、写真を撮っておくことになった。
MRIでも断面写真を撮る事が出来るのだが、決まった方向からしか出来ない。
ところが、こいつであればどの方向からも撮ることが出来る。
もちろん、解像度はイマイチだが、大きさが変わっていないかを見ていくのであれば、これでも十分なのだ。
今日のMRIの結果は鈴木先生のパソコンでも見ることが出来る。
先生の見たところでは変化は無いでしょうとの事。
ただ、正確な判定では無いので、21日に電話で確認する事になった。
眼科の次の放射線治療科の伊藤先生の診察を受けて今日の予定は終了。
次回は3ヶ月後の12月5日。
その頃はもう、街にはクリスマスツリーが飾られていることだろう。
汗まみれになった昨日からは考えると随分と先の事の様に思えるが、たった3ヶ月先の事だ。


MRIの後におにぎりを一つ食べただけだから腹ペコだ。
昼メシを食うところはもう決めている。
「矢場とん」だ。
名古屋で「みそかつ」で有名な店で、今年の春、東銀座に支店がオープンしている。
「みそかつ」と言っても「とんかつ」の上に味噌がそのまま乗っているわけではない。
当然、ちゃんと味付けされた「みそだれ」を掛けて食べるのだ。
場所は東銀座の晴海通りの交番から入ったところ、ちょうど「ナイル・レストラン」の裏辺りにある。
実は昨日のうちに場所 は確認済みだ。
病院を後にした僕は足早に「矢場とん」へ向かったのだが、あれ?なんてこった、店が閉まっているぞ。
どうやら月曜日が定休日らしい。
昨日、教文館でグルメ関係の本で確認した時は「いまのとところ定休日なし」と書いてあったのだが、それはオープンして間もない時の情報なのだろう。
開いていないものは仕方が無いが、お腹の方はすっかり「とんかつモード」になってしまっているので、代わりに煉瓦亭でポークカツレツを食べた。


腹が膨れたら、次に向かうは渋谷のパルコpart3。
今ここで、ムットーニ展が開催されている。
実はムットーニとは何なのか、という事もあまり知らない。
テレビ東京系で放送されている「たけしの誰でもビカソ」の告知でチラリと見ただけなのだが、何だか良さそうな感じだったので、せっかくだし行こうと考えたのだ。


渋谷はこれまでに何回か来ているのだが、道はクネクネ曲がっているし、起伏は激しいし、実に歩き辛い街だ。
江戸時代には多分、このあたりは江戸では無かったと思う。
名前から推測すると、本当に谷だったのかもしれない。


パルコpart3の7階に上がり入場料600円を払い、中へ入る。
明かりを落とした中、紙粘土か何かで作られた人形が機械仕掛けで音楽などに合わせて動くだけなのだが、独特の雰囲気があり、それは場末のキャバレーだったり、又は少しオカルトっぽかったりする。
いづれにしても、ボキャブラリーが貧困な僕には上手く表現出来ないのだが、パンフレットには「機械仕掛けの迷宮博物館」と書かれていて、正にそんな感じだ。
中でも僕が気に入ったのは「摩天楼2000」という作品で、ラブソングのBGMの中、夜の公園のベンチに腰掛けたカップルの後ろには摩天楼がそびえ立っていて、それが次第に左右に割れ、幻の様な光だけの摩天楼が現れる。
「ああ、なんてロマンチックなんじゃあ~」と、まったりしていたらトイレに行きたくなったので、グッズコーナーでDVDを購入して続きは家で見ることにした。




だいたいこんな感じです
(ムットーニ・オフィシャルHPより)

後日、ムットーニのオフィシャルHPを見てみたら、名古屋でも個展が行われると告知があった。
だったら、わざわざ渋谷で見に行かなくても良かったのかもしれないが、名古屋でも見られると思えば僕はラッキーだ。


PS.
21日に電話で検査結果を聞くはずだったが、すっかり忘れてしまい、翌22日に電話をして聞いたところ、肝臓や眼には変化は見られずとの事で、まずはメデタシ。
ただ、「ちゃんと予約した日に電話をして下さい」と叱られてしまった。
まったくもって、申し訳ありませんでした。


2005.9.25記

 Back   Index / Next