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おらぁ、東京さ行ぐだぁ的闘病記C
   〜骨転移編 I〜



■治療方針の決定
2017年 7月23日〜24日
事前検討
前回(7/12)の通院で副腎とリンパ節に転移が見つかり、今後の治療方針を決めるに当たり手術については泌尿器科、抗がん剤については皮膚科で話を聞く事になった。
しかし、手ブラで行って聞くべ事を聞きそびれるとダメなので、事前にまとめておく必要があると思い考えてみた。

(1)治療目的
まずは治療する目的である。
単に「長生きしたい」とか「死にたくない」という漠然としたものでは無く、もっと明確な『生きる目的』の様なものが必要だと考えた。
当然、簡単には出てくるものではなく、自分の心と対話をすることでしか出てこない。
そして僕は『家具を製作する』を治療の目的とした。

(2)質問事項の整理
次に治療方法の外科手術と抗がん剤について、それぞれの質問事項をまとめた。
尚、一般的にがんの治療方法として「放射線」もあるが、脈絡膜悪性黒色腫には効きが悪く、実際のところ過去に行ったが効かなかった経験があるので今回は除いている。

外科手術についてはそもそも行う意味があるのかが重要なポイントとなる。
今回転移が見つかったのは2か所だが、今後もっと見つかるかもしれない。
ならば見つかる度に手術で取るのかと言えば、答えはきっとNOだろう。
それでは身体への負担が大きく、本来の目的である『家具を製作する』が出来なくなってしまうのではないかと思ったのだ。

外科手術を選択する可能性が低いとなると治療は抗がん剤を行っていく事になるのではと推測した。
(この時点ではまだ各科の医師の話を聞く前です)
抗がん剤についてネットで調べてみると色々と出てくる。
抗がん剤は大きく分けて「化学療法」「ホルモン療法」「分子標的薬」の3種類があるらしい。
一番参考になったのは『国立がん研究センター がん情報サービス』というサイト。
特に「薬物療法(抗がん剤治療)を受ける前に、聞いておきたいこと」という質問事項をまとめたものがあり、これらは参考になった。
また、ショッキングだったのは
通常「抗がん剤が効く」という場合、「がんは治らないが寿命が延びる」、あるいは「寿命は延びないけれども、がんが小さくなって苦痛が軽減される」といった効果を表現しているのが現状です』
という箇所。
抗がん剤が効くと癌細胞は無くってしまうと思っていたがそうでは無いらしい。
これは「がんと共に生きていく」という事なのだろう。
厳しい話だが、こういった事も受け入れていかなくてはいけない。

(3)病院の選定
抗がん剤を行うとなった時、どこの病院で行うかという問題もある。
国立がん研究センターで行うか、地元の病院で行うかだ。
これまでお世話になって来た国立がん研究センターで行うのが一番安心だが、通院の場合は経済的に厳しい。
また副作用が重い場合は果たして体力的に通院出来るだろうかという心配点もある。
入院する場合でもその行き帰りの体力が心配だ。
国立がんセンターの場合は片道3時間以上かかるので、副作用でヘロヘロになった状態では厳しいだろうから、その場合は地元の病院となる。
これらを決める要因として「入院or通院」、副作用の程度が「重いor軽い」でマトリックスを作ってみた。



副作用の程度
重い 軽い
投与方法 入院 地元の病院 国立がんセンター
通院 地元の病院 地元の病院

地元の病院で抗がん剤を行う事になった場合はどこの病院でしてもらうかだ。
国立がんセンターで先生に「どこにしましょう」と聞いている様な受け身ではダメ。
重要な事は人まかせにしないで、自分で決める事が大事だ。
(もちろん分からない事は先生に聞くが、最終決定は自分)
これもネットで調べ、候補として4つの病院をピックアップし検討した。


病院 検討 結果
愛知県がんセンター 眼科に常駐の医師不在、また皮膚科もH27年まで常駐医師が不在。
以上の事から頼りない印象。
×
名古屋医療センター がん専門の病院。
家から少し遠い。
第2候補
藤田保健衛生大学病院 家から近いが個人的に病院の印象が悪い。 ×
名古屋大学附属病院 がん専門の病院では無いが、名古屋医療センターよりも腫瘍手術(皮膚科)の件数が多い。
家から少し遠い。(名古屋医療センターより近い)
第1候補

抗がん剤の副作用がどの程度出るか分からないので、家からの距離も案外重要になるだろう。
よって、第1候補は名古屋大学附属病院とした。

(4)「何もしない」
治療方法では無いが世間的には「何もしない」という選択肢があるらしい。
ネットで調べると「がんより怖い抗がん剤」などといった文言が出てくるが、僕はこう言った事には懐疑的である。
そもそも、何もしなかった結果、がんが進行したら「やっておけば良かった」と思うに違いない。
もちろん抗がん剤の副作用が重く、QOLが著しく低下して家具の製作が続けられなくなる事も考えられるが、その時は抗がん剤を止める事を検討すればよい。
家具の製作を続ける為に抗がん剤を行うのであるから答えは明確である。

これらまとめた物を印刷して持っていき、診察の際にこれを見ながら先生に聞こうと思う。


治療方法 質問
外科手術 副腎の腫瘍切除 ・どの様な手術か
・やる意味は有るか
・後遺症、デメリットは
・保険適用?
・入院期間はどれくらいですか
・術後、工房は続けられますか
・どれくらいで工房を再開できますか

リンパ節の腫瘍切除 ・手術は可能か
・どの様な手術か
・やる意味は有るか
・後遺症、デメリットは
・保険適用?
・入院期間はどれくらいですか
・術後、工房は続けられますか
・どれくらいで工房を再開できますか

抗がん剤 ・どの様な薬ですか
  (化学療法・分子標的薬・ホルモン療法)
・どの様な効果がありますか
・治療はどのような方法で行われますか
  (のみ薬、注射、点滴など)
・薬の投与期間はどれくらいですか
・薬が効かなかった場合はどうしますか
・後遺症、デメリット、副作用は
・薬が効く可能性はどれくらいですか
・治療の効果はいつ、どのようにして調べますか
・効果はどれくらい期待できますか
・延命は可能ですか
・費用はどれくらいですか (保険適用?)
・投与は入院して行いますか
・治療後、工房は続けられますか
・抗がん剤の後、体力はどれくらいで回復しますか
・どれくらいで家具製作を再開できますか


7月23日(日)
まあ、こんな状況なので上京するからと言って寄席などに行ったりする気分では無い。
けれど映画は別腹である。
公開されたばかりの『ボン・ボヤージュ 〜家族旅行は大暴走〜』というフランスのドタバタコメディーが面白そうなので有楽町の映画館で見てきた。
  
<あらすじ>
整形外科医のトム一家は新車で夏休みのバカンスへ出かける。
しかし、最新機能を満載したはずのトム自慢の新車はオートクルーズ機能が故障しており、制御不能に。
高速道路を時速160キロで暴走し、無能な警察官や能天気なカーディーラー、そして後部座席に潜んでいたある人物らを巻き込み、一家を乗せた車内はパニックに陥る。(映画.comより)


車のオートクルーズ機能が壊れて暴走を始めたが、それ以外にも色々な所や登場人物たちの「そんなバカな」という問題が発生する可笑しさと、この先どうなっていくのだろうかというハラハラ感がごちゃ混ぜになった面白い映画だった。


7月24日(月)
最初の皮膚科は9時半からで、ビジネスホテルで軽く朝食をとった後、病院の2階へ上がる。
皮膚科の高橋先生は温厚そうな方で、先日のPET−CTの画像を確認しながら、副腎やリンパ節以外にも背中の皮下や腰骨辺りにも腫瘍の反応が出ていると説明してくれた。
背中は退院後1ヵ月後くらいから出っ張りの様な物が出来ていて、てっきり腰椎を固定したボルトだろうと思っていたので、今月初めに慶応大学病院での診察の際に渡辺先生に聞いたら「そうでは無い」との事だった。
それでは一体なんだろうと思っていたが、腫瘍だったのか・・・。
抗がん剤での治療について、まずは抗がん剤の種類について以下の様に説明を受けた。


薬の種類 説明 効果
化学療法 脈絡膜悪性黒色腫に有効な薬は無い ×
ホルモン療法 ×
分子標的薬 標的療法薬 細胞のBRAF遺伝子が変異して出来た腫瘍の場合に効果が期待できるが、脈絡膜悪性黒色腫の患者でBRAF遺伝子に異常がある人はほとんどいない。 ×
免疫療法薬 「オプジーボ」「キイトルーダー」と言う薬があるが、脈絡膜悪性黒色腫に効く確率は10%以下で、副作用は7〜8割の人には出ない。
また、「ヤーボイ」と言う別のタイプの薬もあるが、こちらは更に効く確率が低く、副作用が出る確率は「オプジーボ」の2倍くらい高い。

高橋先生によれば、そもそも悪性黒色腫はがんの中でも一番抗がん剤の効かない病気で、効く可能性のある「オプジーボ」や「キイトルーダー」を皮膚がんの患者に使用した時の効く確率は30%弱で、脈絡膜悪性黒色腫の患者に使用した時はそれが10%以下という厳しい値になってしまうとの事。
しかし、脈絡膜悪性黒色腫用の薬が無いのでこれらに頼るしかない。

以上の事から抗がん剤で行う場合は「オプジーボ」または「キイトルーダー」で、これらが効かなかった場合は「ヤーボイ」を使用する事になるだろうとの事。
また、保険適用されるとの事なので一安心。
抗がん剤の投与は通院で行われ、「オプジーボ」の場合では中13日(1サイクル14日)を繰り返していく。
と言う事は地元の病院という事になるので、第1候補の名古屋大学附属病院(名大病院)を紹介してもらう事にした。
名大病院から国立がんセンターへ時々医師が来ているそうで、情報の共有などでも安心だ。
そして効果があれば工房を続けていく事も可能ということだ。

皮膚科に続いて泌尿器科の込山先生から外科手術について説明を受けた。
僕としては外科手術で対応する事はあり得ないと思っているのだが、一応先生に聞いておこうと思った。
まずは「手術する事について意味はあるか」という質問。
込山先生の説明では「それは皮膚科の先生が判断する事で、手術が必要となればこちら(泌尿器科)はその外注として対応する事になる」との事。
先ほどの皮膚科の高橋先生の診察でも同様の質問をしたが、僕の場合は見つかっているもの以外にも転移している可能性があるので、個々の腫瘍に対して治療をするのでは無く、抗がん剤を使って全身療法を優先させるべきとの回答だった。
つまり外科手術は行わないで抗がん剤だけで治療していくという事。
込山先生にはもう一つ、「副腎とはどんな機能があるのか」を聞いた。
ネットで調べたのだが、よく分からなかったのだ。
込山先生曰く、「ザックリした言い方をすれば、身体の微調整を行う為、ホルモンを出している臓器」との事で、左右の腎臓の上に一つずつあり、一方を取ってももう一つあれば問題ないとの事。

次は主治医の眼科の鈴木先生の診察。
鈴木先生には皮膚科と泌尿器科での診察結果について話をし、今後は名大病院で抗がん剤を行ってもらう事を報告した。
鈴木先生にはこれまで国立がんセンターで行ってきた肝臓のMRI検査は今後どうするのかを聞いたところ、治療と検査を別々の病院で行うのは効率が悪いので(確かにそうだ)、名大病院で検査も行ってもらうようにして下さいとの事だった。

皮膚科の高橋先生から鈴木先生の診察の後にまた来てくださいと言われていたので、再度皮膚科へ行き、「オプジーボ」などの分子標的薬を投与した場合の副作用について説明を受けた。
(説明の内容は先の表の通り)
副作用が出る確率は思ったよりも低いが、重篤な副作用がでる場合もあると説明を受け、冊子も貰った。


次に名大病院へ紹介してもらう様にお願いしたが、(何だかややこしくて)要するに、最初に名大病院へFAXする診療申込書は眼科の鈴木先生の所で書いてもらい、僕が名大病院へ行く際に持っていく紹介状と検査画像のCD-ROMは皮膚科の高橋先生の所で用意するとの事。
但し、CD-ROMはすぐには用意ができないので、一週間後に紹介状と共に受取りにくる事になった。

そういった事で、再度眼科へ行き診療申込書を鈴木先生に書いてもらった。
今後の検査なども名大病院で行う事になると、今日が鈴木先生の最後の診察という事になる。
鈴木先生には前任の金子先生が国立がんセンターを定年退職されてからなので、もう10年以上お世話になった事になる。
「長い間お世話になりました」とお礼を述べて診察室を後にした。

診療申込書を名大病院へFAXしてもらうのは8階にある『患者サポート研究開発センター』という聞きなれない所へ依頼するとの事。
帰宅後、国立がんセンターのホームページで調べたところ、去年の9月に出来た部署で、国立がんセンターに通院又は入院している人およびその家族の様々な事(例えば「看護の事」や「仕事と治療の両立」など)について相談を受けてくれるらしい。
それにしても、部署のネーミングと実態が合っていな様な気がするのだが・・・。
15分ほど待っていると「FAXは送信しました。先方にも届いた事を確認しました」との事で、本日は終了。
あとは名大病院からいつ行けばよいかの電話が掛かってくるのを待つだけだ。

抗がん剤で治療を行っていく事にしたものの、薬が効く確率が10%以下という厳しい数字だが、今はその10%以下の中に入れるように祈るのみである。

2017. 7. 28

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