中国鉄道の旅 第1回 小平陽〜来賓(834次普客 39km/54分/2元)
広西壮族自治区来賓県小平陽鎮、私は1998年4月から2000年3月までこの町に住んでいました。なかなか気合の入った田舎町でしたが、私にとっては中国原体験とも言えるもので、いろいろお世話になった街です。以下の文章は、この街へ住み着いてすぐのころ、友人向け通信に乗せたものです。
中国列車の旅は、ここからスタートです。ちなみに2000年10月の時刻改正で、この列車は8534次列車に変更になっていますが、健在です。
第1回は小平陽に敬意を表して、というよりもこれしか書けないので、小平陽を出発します。
834次普客は、始発駅黎塘から小平陽、来賓を通って、柳州まで、135kmを約3時間かけて走破する普通列車です。この間、特急列車の停車駅は柳州のみ、急行列車でも柳州、来賓、黎塘の3駅しか停まらないので、その他の12駅にとっては貴重な上り列車(何しろ1日1本の普通列車なので)です。黎塘発は7:30、小平陽が8:06、来賓は9:00、終点柳州には10:33に到着します。田舎のローカル列車ということで、蒸気を期待したのですが、南方は石炭が少ないせいか、一人前のディーゼル機関車(急行列車と同じ)の牽引でした。運行時間はほぼ正確で、小平陽来賓間39kmを1時間弱で走破するのはこの辺りの交通機関としてはかなり立派です。
毎朝8時が近づくと、閑散とした小平陽駅がにわかに活気付きます。特に休日は、ホームが人でいっぱいになります。小平陽のどこにこれほどの人が住んでいるのか解りませんが。普通列車の扉は、駅に着いてもすぐに開きません。今まで4回ほど乗っていて、毎回焦るのですが、降りる人が内側から開けるか、車掌が気まぐれに開けないと、扉が開かないのです。まあ、大概はどこかが開くようですが。しかし忙しい中国人は、それを待っていられません。開いている窓から荷物を押し込み、自分もよじ登って乗ってしまいます。中国の客車の壁には出っ張りが突いており、これがはしご代わりだったのかと納得させられるのですが、ホームは低く車両は大きいため、僕は試したことはありません。
開いた扉から車内に入ると、まず座れます。乗客も少なくはないと思うのですが、7両編成のこの列車、当地には余裕の編成なのでしょう。…となると、なぜ危険を冒してまで窓から乗る人がいるのか、疑問は残りますが。古ぼけた車内を時々車内販売が回ります。結構旅情を感じます。
来賓までは、途中「古夢」「平塘」「良江」の3つの駅に停車します。特に「古夢」駅は道も集落も見えないようなところにぽつんと立っており、私のお気に入り。ただ、1999年開通の高速道路がやや目障りですが。車窓には田畑が広がり、所々に岩山が立ちます。この岩山、はっきりいって桂林など目じゃないほど素晴らしい。お勧めの車窓風景です。乗客の大きな荷物の中身も様々、鶏が楽しげに(うるさい!)歌ったり、頭陀袋の中身はどうやら蛇だったり…。
一昨日乗ったときには、大豆畑(1作目)が早くも黄色くなっており、黄と緑との対比がきれいでした。車窓最大の見せ場は、来賓到着直前の紅水江の鉄橋でしょう。この辺りは大きな川が少なく、農村の問題点の一つとなっていますが、紅水江は例外的な大河で、来賓にとっては母なる大河です。渓谷と呼ぶには川幅が広いですが、石灰岩をかなり深く削りながら流れており、来賓が厚いカルスト台地の上にできた町であることを示しています。
さて、県政府所在地来賓ですが、小平陽から出てくると大都市に見えます。駅を出たところに三輪タクシーがわんさといるので、町の中はどこに行くにも便利です。料金は1人1元です。もっとも、歩く気になればどこでも歩いていける程度の街ですが…