中国鉄道の旅 第11回 南寧〜防城港 (821次普客 183km 4時間12元(硬座))
以前の時刻表にはのっていたのだが、現在の全国版時刻表に、この路線はのっていない。でも、柳州鉄路局管内の時刻表にはのっている。全国版時刻表に載っていないローカル線が、まだまだたくさんあるのかもしれない。防城港市は広西の海岸沿いの新興都市である。ここに以前勤めていた会社が中日合弁の工場をつくっており、駐在の方がたまたま私の入社当時同じ事務所におられた方だった為、遊びに行ったというわけである。まあ、ここは鉄道の話。裏話は無関係である。
…しかし今ではその駐在員とは私、という世にも奇妙なめぐり合わせ。人生、わからないものです。
それはともかく、この路線は私の現住所にもっとも近い鉄路です。現に事務所の裏を朝8時過ぎと夕方5時過ぎに毎日この列車、通ります。しかしあれ以来乗っていないです。そろそろ乗りたいこの頃ではあります。
この路線も広西地方鉄路の管轄。現在の列車番号は8521次普客。管内だけの列車のためか、相変わらず全国時刻表には載っていません。しかし、列車で4時間車なら1時間半、本当にもう少し気合を入れて走らないものでしょうか。
南寧駅の切符売り場で例によって行列に並んでいると、これまた例によって怪しい人が寄ってくる。どこまで行くのかと聞かれるので、「防城港」というと、列車はもう満席だからバスにしろという。いつものダフ屋かと思ったら、今日はバス会社の回し者か。列車に乗ることは私の主要な目的のひとつだし、第一普通列車に満席などあるわけは無いので無視していると、バスのほうが便利だという。そんなことは始めからわかっている。一日1本、4時間かかる列車と比べて、バスは無数に走っている。おまけに怪しい客引きから買わなくても、バスターミナルへ行けば2時間で防城港まで行く快適な高速バスがある。余計なおせっかいである。実際切符は苦も無く手に入った。この切符、普通列車の癖にしっかりと座席指定が入っている。さすが南寧は違うと感心したが、乗ってみると完全な自由席だった。だいたい号車番号などついていないので、自分の席がどこなのか知る術もない。でも、乗客は全員座れているようだった。13:05定刻にのろのろと出発。15分かかって最初の停車駅南寧南に到着すると、早速かなりの乗客が降りていった。これは不思議な現象。市内バスは無いのだろうか?陽気はぽかぽか、車内は込んでいないし、列車の速度も速くないので風もそよ風。のどかないい気分である。乗客もあちこちでお昼寝。窓の外にはバナナの木、さとうきび畑、水牛。これはかなりおすすめの(だれに?)ローカル線である。14:31、少し大きな駅である(名前は忘れてしまった。ごめんなさい)。眠りをさますかのようにバナナ売りのおばちゃん達が窓の下に集まってくる。乗客が猛然と買うのがおもしろく、私もつい1房買ってしまう。9本ついていて1元。なかなかうまい。14:50、前の席の兄ちゃんが下車。このあと、今までだんまりを決め込んでいたスピーカーが突然起き出して、車内放送が始まった。空席の多くなった車内に、歌謡曲、リチャードクレイダーマンのピアノ曲、漫才と、脈絡も無く放送が流れるのがおもしろい。その日の気分ではうるさいとおもうこともあるが、今日はなんだか気分にぴったりのBGMとなっている。16時、「次は欽州です。10分間停車します。大きな駅で下車客も多いので、荷物に気をつけてください。」とアナウンスが入る。実際大きな駅で、ここで防城港へいく「南防線」と北海へいく「欽北線」が分岐する。乗車客が多く、一気に満席となる。実はこの列車、末端区間の欽州〜防城港が、重要区間なのかもしれない。次の茅嶺の手前で広い河口(ひょっとすると湾かもしれない)を鉄橋でわたる。いままで山の中を走ってきたのだが、急に海岸らしくなった。そのあとは再び丘の間を縫うようにして、防城、防城港と進む。広い構内を持つ防城港駅には、定刻着であった。