中国鉄道の旅 14 北京北8:53〜7173次〜沙城12:47(硬座7元)
沙城13:58〜1627次〜張家口南15:24(硬座5.5元)
張家口17:10〜4440次〜北京西21:16(硬座17元)
今まで南の路線を出してきましたが、今回は首都北京のお膝元。某口の悪い友人をして、「ちょっとローカル」じゃなくて「かなりローカル」だと言わしめたこのシリーズ、今回もなかなかローカルな旅ですが、でも、これなら比較的やりやすいです。北京での1日の休暇にいかがでしょうか。まあ、これ全部だと一般の方には乗車時間が長すぎるかもしれませんが(笑)、八達嶺往復に列車を使うくらいは、どなたにもおすすめできます。
趣のある北京北駅。国鉄マーク上の駅名表示、わかりますか?
久々の鉄道の旅は北京でも一番目立たないターミナル、北京北駅から。ロケーションは悪くない。地下鉄西直門駅からすぐ。でも、もともとひっそりしていたところに新交通システム導入工事の影響も入り、この4月から優等列車が二往復南駅へ移動。わずかな普通列車が出発する寂しい状態となっている。でもあの有名な八達嶺長城への列車はここから乗車なのだ。今時列車で長城を見に行く人も少ないだろうけど。でもいいものです。
8:53硬座ばかり7両編成の列車は出発。最初は北京郊外。でも20km先の沙河まで行けば、すっかり田舎の景色だ。こうして見ると、メトロ北京は北京市の中のほんの一部だと言うことが判る。列車は昌平区へ。あれ、ここ、この間まで昌平県だったと思ったが、都市化へ向けて進行中なのだろうか。うとうとするうちに南口着。乗客が一気に入れ替わる。立ち客がいない程度の程よい乗車率。ここで今までの華北平原から急に目の前に山が現れる。脇を走る高速道路と共に谷へ分け入っていくと延慶県へ入る。最初に見えてくるのは最近急開発された居庸関長城。休日だけあってかなり込んでいるようだ。そして11:05スイッチバック駅の青龍橋駅。次の八達嶺駅との間で長城の下をトンネルで抜ける。この路線、すっかり脇役の地位に落ちてしまったが、本来北京から内蒙古、さらにはモンゴル、ロシアへと向かう大幹線だったのだ。長距離列車が次々と帰路に通る豊沙線へ移った今でも、週1便のモスクワ行き国際特急と、同じく週1便のウランバートル行き国際特急はこの京包線を抜ける。長城に見送られて北京を出る、この演出、続いて欲しいものだ。さて、ピクニック客を降ろした7173列車、10分以上の早着で康庄へ到着。ここが北京市最後の駅となるが、康西草原という名所があるらしい。北京市に草原、一体いかなる草原なのだろうか。辺りは再び平原に戻り、一面のトウモロコシ畑だ。右窓には大きなダム湖、官庁水庫が見えてくる。次の東花園からは河北省張家口市に入る。前に座った沙城のにいちゃんと話す。北京に近いと言うのに恐ろしく訛っていて聞き取りが難しいが、北京で働いていて4ヶ月ぶりの帰郷だそうだ。官庁水庫に架けられた鉄橋を渡ると狼山。そして右窓から「中国の新幹線」と言われた大秦線が近づいてくる。確かに高架複線電化で見た目は新幹線。ただし日本と違って貨物輸送の大動脈。こちら京包線は歴史は古いが単線非電化地平路線。力の差は歴然。だから優等列車に逃げられたのだろうけれど、旅情を感じるには最高の路線である。土木駅を出ると、12:47終点の沙城。マイナーな街だが、実は長城銘柄のワインの産地。駅前は古いイメージだが、その先の町並みは立派な地方都市だった。先ほどの兄ちゃんと別れ、狭い切符売り場の行列に並ぶ。
沙城駅
1627次列車と乗車券
お昼休みが終わり、窓口が開く。でも開いたのは一つのみ、というわけでいかにも中国らしい窓口争奪戦が始まる。人民も人民ならば、こういう理不尽をする国鉄も国鉄ではある。予定していた1627次が駅時刻表に出ておらずどうしようと思っているうちに先に購入を終えたおばさんが出てきた。手にした切符を覗き見すると、1627次と書いてある。そこで僕も購入作戦を開始。そこの横入り予備軍団、どきなさい。横入りしないまでも、前のほうの人にお金を渡して購入を頼むやつもいるし、油断も隙もない。でもどうにか20分並んで購入終了、列車はまだ来ていない。この1627次、南昌から大同までの長距離列車なのだが、4月に登場したばかり。でも3ヶ月もたつのに駅に掲示が無いのは問題あり。そういう理由かどうか、途中乗車にもかかわらずともかく座れた。沙城13:58定刻発。すぐにまるで地形模型のようなごつごつした山々を見ながら進むようになる。なかなか面白い景色ではある。沙城から先は複線電化となり、ほぼ3分毎に貨物列車とすれ違う。貨物列車牽引は大きな電気機関車だが客車牽引はディーゼル機関車と言うのも面白い。そして貨物列車が旅客列車を追い抜いていく。まさに貨物が主、旅客は従なのだ。下花園、宣化、そして張家口南に15:24着。張家口南〜張家口は本線から北に飛び出した盲腸線。大同など先へ進む列車は張家口へは行かないので、ここで下車。やたらと大きな駅舎だがホームはわずか1面半。でも貨物側線は多く、貨車で埋まっていた。駅前からバスで町の中心へ移動。北へむかうにつれ、長城の伸びる尾根が近づいてくる。
市街中心部にある張家口駅と近代建築の張家口南駅
町の中心の張家口駅はこじんまりした建物。懸念していた帰りの4440次の切符はすぐに入手できた。北京西まで214km17元。明日日本へ一時帰国なのだが、きっと日本の運賃の高さに、最初度肝を抜かれることだろう。時刻表にのっている張家口駅発の列車はわずか5便、でも駅の掲示板にはそれ以外に4往復の近距離普通列車が記されていた。やはり全国版時刻表を鵜呑みにしてはいけない。全国時刻表では17:26のこの列車、17:10に発車時刻が変更になっていた。発車20分前に改札が開いたが、そこにいるのは「北京西〜成都」の看板をつけた列車のみ。成都行き列車がここまでアルバイト(間合い利用)で来ているらしい。後ろ半分の寝台車は空で走らせている。北京においてくれば良いのにと思うが、置き場所が無いのかそういう細かい運用が苦手なのか。ともかく出発。裏町のそのまた裏路地のような線路を抜けてすぐに本線に合流した。ここで18分停車、以後は時刻表どおりの時刻で運転された。そして停車中にまたまた貨物に抜かれる。往路の引き返しで、沙城まではうつらうつらと過ごす。来るときに気になった山々が夕日に映え、オレンジ色に輝いている。西部劇みたいだ。沙城からは今度は南へ下る。大秦線ほど立派ではないが、こちらも複線電化、ただし、これから先渓谷の地形が厳しいところを抜けるため、2本の線路は川の両岸に分かれたりからまったり、トンネルがともかく多いのが欠点だが、なかなか風光明媚な路線ではある。この列車、18:52に沙城を出ると北京郊外の豊台まで2時間ノンストップとなる。人家もまれ、上下線の駅も軒並み離れているということで、この路線が生活路線と言うよりも北京と北西部を結ぶことに全力を尽くして敷かれたことがよくわかる。それでも「官庁」までは例のダム湖の岸を行くが、いよいよその先でダムを超えて渓谷区間に入る。地勢は厳しいものの下る一方で、その意味でも長編成列車を走らせるには、峠越えの京包線よりも有利なことは理解できる。渓谷の向こう側を走る対向列車などを眺めるうちに日が暮れてきた。沿河城で再び北京市内へ戻る、とはいっても風景は全然市内ではない。更に進むこと1時間、すっかり暗くなった車窓に突然ネオンサインと立派な道路が飛び込んでくると三家店駅通過。このあたりからようやく北京の市街地がはじまる。20:57、豊台着。次は終点の北京西。北京西は南部、西部への長距離優等列車ばかりが発着する豪華な駅。この列車のような短距離列車は少ない。ともかく「アジア一」の大駅舎の迎える北京西駅に21:11、定刻より5分早く到着した。
中国国鉄も電化工事に邁進中