中国鉄道の旅23 広州東9:50〜T801次〜九龍11:20(特等230香港ドル)
久々に乗る列車は、押しも押されもせぬ中国ご自慢の看板列車、新時速。時速200kmで飛ばし、現状、アジアでは日本の新幹線に次ぐスピードらしい。「ローカル線の旅」というコンセプトからはどんどん外れていくが、お許しいただくことにして、今回は「看板列車の旅」。
この列車(広州〜香港直行)の切符は特殊なようで、専用窓口で購入、切符の形式も一般の国内列車とは異なっていて、広深鉄路のマークと香港のKCRのマークが並んで入っているかわりに、国鉄マークは入っていない。そして、運賃が大陸基準で見るとべらぼうに高い(笑)。特に一日2往復の「新時速」列車は一等の上の特等のみという豪華編成なので更に高い。
広州東駅での出境手続きは、羅湖での大混雑を考えればとてもスムーズ。この列車の最大のセールスポイントはどうやらここにあるようだ。駅構内にはきちんと「鉄路免税店」完備されている。発車20分前にホームへの扉が開く。待ち遠しかった対面の瞬間。確かに銀色のボディは中国らしからぬスマートさで、車高も押さえているように見える。車内は「特等」ということか当然2列+2列の横4列。ただ、前向きの座席、後ろ向きの座席、さらにボックスになっている座席(真ん中に木のテーブルあり)と様々に固定されている。ちょっと納得いかないのが、窓の間隔が広く、座席によっては窓側ならぬ壁側になってしまうこと。この辺りの設計はイマイチのような気がする。もっとも車内の雰囲気もビジネスマンが多く、新聞を読んだりノートパソコンを打ったりなので、窓なぞ関係ないということなのだろうか。まず出発してすぐにコーヒーを売りに来る。次にオシボリサービスと朝食用麺の販売。時間帯のせいか売れ行きは今ひとつの模様。こんなものだろうと思っていると、その後無料のドリンクを配りにきた。水かオレンジジュースの選択。
車窓に関しては、僕の席が思い切り壁際席になってしまったため、今ひとつ。ただ、この路線は都市近郊の風景が続く路線だと思っていたら、深セン手前で家並みが途切れる場所もあった。今回初めて乗る区間は、深セン駅から羅湖駅までの境界越え区間。快走してきたT801列車は深センが近づくと速度を極端に落とし、ゆっくりと深セン駅を通過。そして境界の橋を越えてKCRへ乗り入れる。ここからは前後にKCRの電車が走っているためか、小田急ロマンスカーのようにゆっくりと走る。停車しないのは立派だが、少しまだるっこしい。でも、大陸から座席に座ったまま、香港の高層住宅群の中に突き進んでいくというのは不思議な感覚。定刻を少し過ぎた11時27分に九龍(香港式に言うとホンハム)駅へ到着した。こちらの入境検査は、乗客が一斉に並ぶことになるため、広州の出境よりはスローリーだったが、それでも羅湖と比べればやはり物の数ではない。列車で1時間半。この距離にいまだに航空便があることが不思議といえば不思議だ。昨年末、飛行機の乗り継ぎの関係でこの便を使ったことはあるが、広州〜香港のみの乗客でも航空便を使うのだろうか。
九龍駅を出ると駅前に「法輪功好」と書かれた垂れ幕が。ギョッとして見ると、どうやら中央政府が法輪功をいかに不当に抑圧しているかということを訴えているらしい。どちらの言い分が正しいのかは、僕には判断の仕様が無いが、一国二制度を如実に見る思いがする。大都市であるはずの広州に居ても、日帰りででも出てきたくなる香港。香港の凋落が言われて久しいが、それでも一国二制度が維持されているうちは、香港の空気は大陸在住者にとっては新鮮に感じる。実際の経済力では上海が大いに台頭してきても、やはり香港は香港なのだろう。