北の国から’03 〜 風俗 〜 


プロローグ


父さん・・・



やっぱり札幌は風俗のメッカだと言っても、

中にいる女の子にはいろんなタイプがいるわけで。



だから

今までカワイイ女の子ばっかりだったからといって、

これから先もずっとカワイイ女の子ばっかとは限らないわけで・・・



第一夜 〜 仕事 〜


札幌で仕事、というのも、去年から数えると、もう相当数にのぼる。

やれ仙台だやれ名古屋だ、または京都大阪、時には岡山広島だとか

この札幌の仕事が終わったら、今度は福岡の仕事が待っている。



「一体何の仕事をしてるの?」と、

俺に若干の興味がある人間なら気になるところだろうが

ま、
あんまり興味がないらしく、今まで聞かれた事はない。



自分ではそれほど責任のある仕事だとは思っていないが

多分、これを読んでいる人は大抵知っているとある会社の日本全国の拠点、

それを全部、とあるシステムに入れ替える、という仕事をしている。



何故会社がそんな仕事を時給ナンボで俺にやらせているのかは、

まったくもって甚だ疑問なのではあるが、それにより俺の雇用は確保されていて

なにより遣り甲斐を感じることが出来るので、現状は満足である。



しかし現場に立ちあっていると込み上げるあの感覚。

もしここで俺が
気狂いピエロのように配線をブチブチ切り出したら・・・

間違えなく弊社も御社もとんでもない金額の損害を被る事になり、

そんなことを考えると、なんだか
股間がムズムズしてくる。



いかなるスタンスで仕事をするとか、仕事に対する心構えとか、

それは人それぞれなんだろうが、俺の場合の仕事マインドの盛り上げ方は

多分、人とは違うのだろうが、まあ、そういうことで

自分が起こし得る最悪の事態を呼ぶ行動の

そのまったく正反対の事をするスタンスなのである。



言われたことを淡々とこなすよりは、それなりに自分で考えて行動できる。

例えば自分がヤられてイヤなことは、人にはしない。

自分がされて嬉しいことは、人にしてあげる。

このスタンスなら、大抵のことは上手くいく。

当然、仕事上でのことのみであるのだが。



不思議とストレスは感じない。

人のためにやっている気遣いは、自分の意思であり、

誰かのために仕事をしているのではなく、仕事とは自分が喰うためであり

つまるところ、仕事とは自分のためなのだ。



そんな風にカッコいいまま終わりたいところなのだが、残念ながら

多分、俺がストレスが溜まらないのは、ストレスの蓄積量以上に

ストレスの発散の機会が多いからなのだろう。



ストレス発散の機会?とりわけ俺の場合は
パチスロ風俗なのだが





札幌はそのいずれにおいても聖地である。





ストレスなんて、溜まるわけがないだろう。

宿泊費だって会社の金だし。ナハハ。



・・・ということで

会社の金で泊まる『ホテルニューオータニ』で

コンビニで買ったマンガを読みながら

パチスロと風俗に想いを馳せて、夜が更ける。



第二夜 〜 パチスロ 〜


実は到着の日も、業務終了後、スーツ姿のままパチスロ屋に赴く。



去年の夏も札幌に長期滞在していたのだが、その時に通ったホール。

駅前の等価交換のタワー型のホールで、よくよく見渡すと

まあ俺しか出ていないのだが、結局、
俺は必ず出ている。

要は、相性のいい店、ということなのだ。



去年の夏は、『アラジン』が俺の中でブームが起こっており、

当然のようにアラジンを打っていた。

今でもキッチリ覚えているが、
アラチャン130連チャンをブチかまして

生涯タイ記録の14,000枚を成し遂げたのも、このホールである。



何の根拠もなく空いている
アントニオ猪木の台に腰をかけ、

初めの千円札を投入して出てきたコインを下皿に移しながら盤面を見あげると

何故か中段ベルハズレのチャンス目が鎮座しており、

そして当然のように6ゲーム後にBIGが揃う。



小一時間の間にBIGが5回。

(こりゃBIGだけで勝っちゃうな)と思う暇なく闘魂チャンスに突入し

継続50回を3回もカマして、当たり前のように5時間程度で8,800枚。



最近、札幌でパチスロをすると、その帰り道は何故か

20万円以上持っていることが多く、物騒この上ない。



本当に物騒で仕方がないので、
風俗で使ってしまおうと思う。



でもなあ・・・



せいぜい遣ったところで3〜5万円程度なんだよなあ・・・

物騒、物騒・・・



あ〜キミキミ。



ここで銀行に走り、普通貯金に入金してしまう男であったなら、

なにもこの歳になって、
弟に貯蓄残高を抜かれる男になってはいない。



・・・なんでもアイツ、
20万ぐらい溜まったって言ってたからなあ。



第三夜 〜 風俗(ソープ) 〜


パチスロでそこまで勝てるなら、

ま、店に苦手意識がない、というか、または相性がいい店、ということもあるが

間違えなく運気は良い状態で、あえてツキを変えることもないのである。



が、人生とはホントに難しいもので、

別にツキを変えなくてもいい時に限って、

ま、それはパチスロで好調な時期を指すのだが、そういう時には財布が暖かく

じゃあ風俗にでも行ってしまおうか、という気分になる。



今回も、まさにこの展開であった。



せっかく札幌に来たのだから・・・と、自分で自分の背中を押した感は否めない。

しかし、本来であれば勢いで風俗にいくタイプでなく、

”細心大胆”・・・入念なチェックの後に風俗に顔を出す俺としては、

今回はいささか衝動的であった。そんな感も否めない。



雪が止んだ夜空を見上げながら、テクテクとススキノに向かい歩を進める。



そして以前、しばしば顔を出した風俗情報を扱う店舗(MANZOKU)に向かう。





「ねえ、このソープはすぐ入れるの?」


「少々お待ち下さい・・・えっと、ここは1時間待ちですね。」





上記のやり取りを概ね
5回ぐらい繰り返したところで、

根性の足りない俺、ちょっと疲れてきた。



俺は今すぐヤりたいんだよっつ!と。





「じゃ、一番待ち時間の少ないソープで・・・」





この時点でこの勝負、8割方負けである。

迎えに来た
東野英心のようなオヤジに案内されたその店で

いきなり二人のババア(京歌子似、和泉雅子似)に遭遇。



!!!





「や〜ねお兄さん、私が相手じゃないのよ」



当たり前である。彼女達にお相手願うなら、

いかに俺といっても、
いくばくかの金銭を請求する権利があるだろう。





「ね〜ね〜お兄さん。500円ちょーだい!」



???





「や〜ねお兄さん、消費税よぉ。中の女の子に1万4,000円払ってね」





こうやって文章にしてみれば、至極当然の流れではあるのだが、

その場に遭遇した俺にとっては、漠然とした違和感の連続であった。



漠然としてではなく、ハッキリとした違和感を味わったのはその5分後、

カーテンを開いて、さあ今日の女の子とご対面!という瞬間である。



今までススキノは風俗の聖地として疑わず、

フラリと入ったソープではムッチリとした男好きする女性が登場したり、

天気予報を聞くような軽いタッチで電話をしたデリヘルから来た女性は

なんと一色沙英をもっとカワイクしたような20歳だったり・・・



そんな私のススキノライフに決定的な違和感を与えた目の前の女性は

頭蓋骨を包む肉皮膚の造詣はあまり気にしない俺にあっても

対面した瞬間(うわあ・・・)という表情をしてしまったに違いないほど

表情や体形とか、
全身で精一杯不幸を表現しているような、

そんな女性だった。





お前はブサイクなおしんかっつ!!



そう叫ばなかったのは、かろうじて残っている俺の良心と、

一瞬見せた俺の困惑した表情に(ごめんなさいね・・・)って感じでうつむいた

そんな女の子の寂しい表情からだった。



しかし、あんまり不幸そうな出で立ちで、

かえって俄然ファイトが沸いてくるところあたりが、俺が俺である所以。



だって、その女の子、



胸の上に
焼きゴテの跡がついてんだよ。

無理やり作った笑顔が、黒澤明の”赤ひげ”に出てくるあの女の子のように

メチャクチャ引きつってんだよ。





俺が心地いい空間を提供しなくてどーすんの?






俺が長い年月をかけて編み出した、あの
『チンチン腹話術』の進化系である

『チンチン衛星中継』(俺の相手をした風俗嬢以外に披露できないのが残念)





「ほうら。アメリカのボブさんもご機嫌ですねえ」



とかやってやっと本音ベースの笑顔を引き出すことに成功するも、

その笑った彼女の口元から見えた、その歯が、





欠けとる・・・





・・・



そんなこんなで、その女の子は

俺のチンチンを横を向きながら、遠い目をしていじり続けている。

(いつまでこの時間が続くんだろう・・・)

そう思いながら黙ってると、その時間は
なんと10分間も続く。

埒が開かないので、一転して攻めに転ずることにした。



よくもまあ攻めに転じようと思ったものだが、

しつこいようだが、俺が俺である所以。



真摯な攻めが、どうやら効を奏したようで、彼女はボソッと

搾り出すように話だした。





「私ね・・・私ね・・・」



「ん?どうしたの?」



「私ね。アソコだけは自信があるんだ・・・」



「わあ、ホント?」



「うん。前にね、お客さんに”搾り取られるみたいだ”って誉められた・・・」



「へえ。楽しみだなあ・・・」



・・・



エピローグ


搾り取られたのは、どうやら俺の『運気』だったようだ・・・



札幌の最終日、パチスロ屋に赴き、当たり前のように席に着き、

最初の千円を投入して出てきたコインを掴んだその時から約3時間、



何もあたりません。



5万円分打っても、何も当たりません。






・・・



負け勝負でせっかくの札幌を終了してしまうのは、

あまりに勿体無く感じたので、ここは5万円どころで損切り。



あとは名物でも食って、少しなりとも出張らしさを演出する方がいいだろう。





俺のセレクトは
ジンギスカン。



カウンターの前のオバサンが、

「ジンギスカンは何人前にしますか?」と聞いてくる。



「そうですね・・・一人前ってどのぐらいあるんですか?」と聞いてみる。





「そうねえ。大体、一人前だと・・・





一人前ぐらいあるわねえ」





・・・



もう
会話すらできないほど疲れが来ているのだと自分に言い聞かし、

「とりあえず5人前で」と搾り出すようにオバサンに告げた後、

もくもくとジンギスカンを食べ続けた。





本当に疲れてたんだろう。



帰りに乗った飛行機で爆睡をかまし、

いつ離陸したか、また、いつ着陸したかの記憶がない。



ここまで寝つきがいいのは、

のび太君とこの時の俺以外はいないだろうと思った。






・・・父さん



僕がこの仕事をしている以上、また札幌に行く機会はあるわけで・・・

そして

また札幌に行ったとしても、また同じ事をしている可能性が高いわけで・・・



・・・父さん



でも自分は、こんな札幌が大好きなわけで・・・


                                 (2003/2/25)




さあ、来週のこの時間は福岡ですよ〜。んがんぐ。