ライバル


1999年。高崎の勤務から、東京の営業に配置換えとなった。

3人の同期が同じ部署に配属されることになった。

ある意味では研修の延長であった新人時代に別れを告げ、
営業の激戦区である東京で、新しい社会人生活が始まる。

3人は歓迎会の催される日の夕方、
九段下の武道館の前で、「お互い力を合わせて頑張ろう。」
・・・と、堅い握手を交わした。







しかし、東京での営業は考えるほど簡単なものではなかった・・・
外回りと上司からの叱咤の日々・・・

先輩が帰ってからも、社内に残って残務をする日々が続く。

でも自分だけがつらいわけじゃない。
同期だって同じような思いをしてるのだ。

見てみると、ほらアイツだって残ってさっせとDMの作成に勤しんでいる・・・
マイペースなように見えるアイツだって、本当は頑張り屋だ。

アイツ。そういえば自分が落ち込んでるとき、励ましてくれたなあ。

You can do it!!

・・・なんてな。わざわざ英語でなんて、意外とキザな奴だ。




ライバル・・・
社会に出ればそう呼べる奴の一人や二人、自然にできるものだと思っていた。
でも意外とできないのが現実だった。
そもそも、アイツは俺のことをライバルとは思ってないだろう。
でもアイツの笑顔が、俺は好きだ。
力にはなれないかも知れない。でも何か困っているならば、
何でも言ってくれよ。気分転換ぐらいにはなるぜ。







その日、アイツは上司にこっぴどくヤラれていた。
ほとんどインネンを吹っかけられているようなものだ。
それでもアイツは黙々と机に向かい、
淡々と作業を続けている。

ほとんどの同僚が帰り、それでもアイツは黙々と机に向かっている。
周りに人がいない開放感からか、
何かを口に出して反芻している。

多分セールストークの練習をしてるんだろう・・・
アイツはそういう前向きな奴なんだ。
あんまり根を詰めるなよ。
傍からみれば、ナンかぶつぶつ言ってるのって、あんまりみっともいいもんじゃないよ。



俺は奴に気分転換でコーヒーにでも誘おうと思った。
俺が近づいても、まだブツブツ言っている。
すごい集中力だなあ、と思いつつも、何を言ってるか気になった・・・














「片平なぎさはいつもどんなオナニーしとるんやろうなあ・・・」







・・・君。いつもそんなこと考えてたの?




彼はその3ヵ月後会社を、辞めた・・・

(2001/6/18)


そこの君の話だよ、君の。