勝負師
俺の趣味のひとつに「麻雀」がある。
中学時代にその魅力の虜になったわけだが、
既に高校時代には最早「勝負師」さながらの
「ヒリついた」勝負に興じることとなった。
金?そんなもんはない。
高校生なんだから。
金よりもたちの悪い、「人間の尊厳」をかけての勝負が、
とある足立区の友人宅で行われることになった。
麻雀を覚えたての友人、テルイチが序盤の罰ゲームを淡々とこなすことになる。
初回の罰ゲームを実行しにコンビニに向かうテルイチ。
レジで勤務に勤しむ、女子大生とおぼしき女性に
「Don’t」(編注:当時の高校生のバイブルとも言えるエロ本)のレジを頼む。
まあ、そういった軽い内容だ。
真っ赤な顔をしながらも、テルイチは任務を遂行して、賭場に帰ってきた。
風俗情報誌を購入する。
コンドームを購入する。
女物の下着を購入する。
すべてテルイチが実行した。
今であれば、ある意味イジメだったのかも知れない。
しかし、その次に与えられるテルイチへの試練からすれば、軽いものだ。
次の指示を聞いたとき、テルイチは「ムリだ!」と叫んだ。
それでも彼はやるしかなかった。勝負に負けたのだから・・・
コンビニに向かうテルイチ。
もう既に怪訝な表情をしている女子大生に対し、
彼はこんにゃくを差し出し、
「暖めてもらえますか?・・・人肌に。」
しかし、しかしである。
妙にオドオドした高校生が赤い顔して「オナニーの道具」を買いに来ている・・・
事情を察したのか、母性本能をくすぐられたのか・・・真意は不明だが、
「お箸もお付けしましょうか?」
・・・と優しく微笑んでくれたそうである。
「テルイチ、淡い恋の目覚めの巻」である。
「絶対に俺に気があるよ!」と息巻くテルイチの幸せそうな笑顔に
ふと暖かい気持ちになっている俺がいた・・・
人間万事塞翁が馬だなあ、なんて。
・・・が、しかし、
「油断」・・・それは勝負師にとってダムに空いた小さな穴。
売人(バイニン)どもがその俺の穴を見逃すはずもなかった・・・
その半チャンは、油断を突かれた俺の負けとなり、罰ゲームである。
これまでで一番過酷な罰ゲームだ・・・
でも見てろよ、テルイチ!
罰ゲームを恥ずかしながらやってんじゃねーよ。
見てろよ!俺の”漢”を!この”散り様”を!
コンビニに入り、お姉さんの前で、まくし立てた・・・
すいません。タンポンってどこにありますか?
すいません。何に使うんですか?
どーやって使うんですか。
ねえ、教えてよお・・・
・ ・ ・
店長お〜と叫びながら、お姉さんは逃げた。
当然、俺も逃げた。
悪いな、テルイチ。
君の恋は半チャン一回分の時間で終わったようだ・・・
俺?俺のことは気にスンナ・・・
・・・慣れてるから。
あ〜あ。
(2001/6/20)