杉並番外地



ご存知だろうか?「網走番外地」というシリーズ映画を。



この映画における漢、高倉健の魅力は間違えなく”我慢の美学”である。


我慢に我慢を重ね、最後に爆発させるその姿に、

当時の”漢”達は感動したに違いない。



・・・



我慢・・・

生来、根性のない俺は我慢したという記憶はあまり無い。

しかしそういうシュチエーションは突如として訪れるもので・・・



そう。俺の場合は避けがたい自然現状、







便意であった。






・・・






それは真冬。

スーツに堅気離れしたコートを羽織って、仕事である「探偵」の調査に乗り出す俺。



その案件は「杉並区の高級住宅の張り込み」というものであった。



なるほど閑静な住宅街である。

こんな静かな町でも、事件は起こる。

やりきれない世の中だぜ・・・とハードボイルドを気取るのもつかの間、





人生最大の便意は静かに忍び寄ってきた。





・・・フン。こんな便意ぐらい、何度も経験済みさ・・・





と、たかをくくってブラック・コーヒーを啜ったのがいけなかったようだ。



奴は鬼のような勢いで、俺の下腹部を攻撃してきた。



・・・



俺でだってそれなりに人生経験を有する社会人である。

ウンチがしたくなったら、公園を探すとか、パチンコ屋のトイレを探すとか、

それぐらいの人生の世知は備えている。





しかし、だ。



なんて街なんだ!杉並区!

そのあたりにはパチンコ屋どころか、コンビニすらない!




閑静過ぎる住宅街なのである。









じゃあ、公園はどうだ?



脂汗をかきながら、そのあたりを徘徊する俺。







あるんですよ。公園はあるんですよ。

野球をやれちゃうような巨大な公園は。




だけどトイレは見当たらないし、第一あったとしても

その公園を横断するほどの体力は、既にない。












「まだやれる。」「もう限界だ。」という問答を何度も繰り返し、

・・・もう、恥も外聞もない。



・・・民家でトイレを借りよう・・・と決意。






手当たり次第に民家のチャイムを押すも、

怪しいコート姿で、かつ下腹部を抑えながら脂汗をかいている男に耳を貸す住人はいない。



腹を拳銃で打たれて、死ぬ直前のチンピラを演じる陣内孝則。

そのものだった。そのときの俺は。









高級そうなマンションの駐車場の隣のかなり深い植木繁みを見た時、

俺は最終手段にでる決意を固めた・・・


















野糞である・・・








幸か不幸か、道路からは完全な死角を作り出しているこのスペース。

ただ高い塀ごしの民家の2階からは、もしかしたらみられてしまうリスクを有してはいるが、

そんなリスクを考慮にいれるほど、事態は余裕を有してはいない。











さあ、第1回 野糞大会の開催である。




目もさめるような大放出を終え、余韻に浸っていると・・・

まあ、悪いことは重なるもんで。







なんと俺の見上げる民家の2階の窓がさ〜っと開いたのである。

オバサンが洗濯物を持って現れたのだが、俺の存在を確認すると約10秒ぐらいフリーズ






その10秒間。

間違えて両親のSEXを目の当たりにしてしまった少女のような表情を、俺は生涯忘れることはできないだろう・・・





・ ・ ・





みなさん。

気をつけたほうがいいですよ。

閑静な住宅街ではトイレを探すことは非常に困難です。



気をつけないと、世界に誇るビックシティ、トーキョーの特別区



東京23区内で「野グソ」をするハメになります。



みなさんがそんな思いをしないために、

私は過去の経験を恥を忍んで、告白した次第なんです。








あっ、でももう時効でしょ。













なんせ一年も前の話なんですから・・・

(2001/7/15)


もしかして・・・ヒいてる?