今年の12月24日には、私はクリスマスケーキを作ろうと思う。
お台場で私の愛車でゴッドファーザーの旋律を奏でる歳でもあるまいし、
ましてやパチスロ屋で1856枚獲得し、
『6枚余りますが・・・』とサンタの格好をしたバイトの女の子に遠い目で
「ん・・・そこのバウムクーヘン?」
と頬を赤らめるほど、シャイな歳でもあるまい。
かといって、誰が訪ねるでもない私の部屋を微にいり細にいり掃除をするのも
ここ数年で飽きたとあれば、少しは建設的な一日を送りたいと思うのである。
そういえば昨年のクリスマスは
マスターグレードの『グフ』というプラモの作成に勤しんでいた。
サーフェーサーを噴き、銀色の塗料で塗り上げ、ブルメタの塗料を噴くうちに
なんだかシンナーの効果で言われもないいい気分になって
夢見心地で眠りについたような記憶がある。
今年は輪をかけて大人なクリスマスの過ごし方をする。
杓子定規に寒空に震えて恋人を待つ、少し頭の温かい方々に向けて
ちょっと贅沢なプレゼントを用意してあげよう。
さて、今回作るケーキは、チョコレートケーキで行こう。
ふんわりとしてやわらかで、それでいてスタバでで出てくるような
しっとりとした食感のパンケーキから作成する。
当然、甘さは控えめだ。大人なのだから。
レンジをオーブンモードにし、パンケーキを焼く際には
ちょっと暖めたティーカップに、紅茶を注ぎ、
マディソン郡の橋を読みながら、完成を待つ。
続いてホイップ。
キーンと冷やしたボールに、ヨード卵の白身を落とし、
一心不乱にかき回せる。機械は使わない。
ノルウェーの雲のように官能的な膨らみを見せるホイップを
左官屋でのバイトで鍛えたこの器用な腕で、
慎重にかつ大胆に、パンケーキをコーティングしていく。
当然、パンケーキの層と層との間には
会社の帰りに買った千疋屋のイチゴをスライスしたものを
食べるものにはわからないであろうが、芸術的にトッピングし、
切り分けた時に、アクセントとして使うオレンジソースには
贅沢なリキュールをベースに使うつもりだ。
そうして出来上がったケーキに仕上げとして、
贅沢に削ったホワイトチョコレートを、50cmほど高い位置から
パラパラと優しく降り注がせる。
大地の優しさを讃えるような深い土壌の上に、降り注ぐ真っ白なささめ雪・・・
飾らない。それでいて魅惑的な黒と白とのコンストラスト。
さあ、食べてごらん。おいしいコーヒーも炒れたから。
・・・どう?甘さ控えめで、それでいて優しい甘さがあるだろ?
砂糖はあまり使っていないよ。素材の持つ甘さを最大限、引き出しただけさ。
それは、ちょっとした魔法をかけたんだ。
隠し味って、魔法をね。
・・・塩?ロマンティックじゃないなあ、君も。
それは俺の涙
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