9月4日、土曜日。
池袋の新文芸座にて石井輝男監督の『恐怖奇形人間』(1969)を
期待に胸を膨らませて観にいったのである。
結論から最初に言えば、自分の想像は裏切られた。
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい・・・・・・
常に心の中でツッコみまくり、壮絶なラストまで突っ走るのだが、
江戸川乱歩の『パノラマ島奇談』『孤島の鬼』を基にしてんだから、と
自分の頭の中の想像と、こうあって欲しい、という期待をはるかに凌駕。
そんな想像を裏切られて、とんでもなく面白い映画だった、と。
そもそも「内容がヤバすぎる」ということでビデオ・DVD化すらしてない映画。
当然、乱歩マニアである私でも、ブラウン管でみることの出来なかった映画。
そんな映画に200席ある新文芸座の中が、立ち見を通り越して
通路での座り見まで排出するという、伝説の映画である。
さて、良識に支えられるHPであれば、映画の筋に触れる可能性のある
内容については”ネタバレ”として、他のページで紹介するべきであるが、
私には良識はないので、このまま内容について触れさせて頂く。
まず映画のタイトルの時点でツッコみが入る。
「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」
なんで”全集”なんじゃ!こらっつ!と
タイトルの時点でツッコめる映画は少ない。
が、しかし、映画を見進めていると、その疑問(?)が氷解する。
『パノラマ島奇談』『孤島の鬼』がベースになっているが、劇中には
『人間椅子』『蜘蛛男』『屋根裏の散歩者』『蟲』の原作が入り混じる。
映画はいきなり精神病院から始まる。
その描写の時点でヤバすぎるのであるが、そこから脱出した主人公、
人見広助(『パノラマ島奇談』)が出会う女性、初代(『孤島の鬼』)。
彼女の歌う子守歌から彼の出生に関係するのは裏日本のどこかである、
ということに気づくのであるが、次の瞬間には初代は何者かに殺されるという
「何だこの展開の早さは!」的なテンポで物語が進む。
で、必殺のラストまで、予断を許さないまま物語は続き、
(まあ、ツッコみの予断だが)
思わず唖然としてしまうラストでは館内から拍手が巻き起こる始末。
以前、自由が丘の単館で放映されたときにはなんと
スタンディングオベーションが巻き起こったらしいが、
最近の映画で拍手でさえ起こることは、めずらしいと思う。
私の記憶を辿っても、スタンディングオベーションが起こったのは
唯一『ダイ・ハード』のみ。それほど珍しいのである。
んまあスタンディング・マスターベーションは日常茶飯事なのだが。
とにかく、いろんな意味で、あらゆる角度でとんでもない映画だったが、
その中でも出色なのは小池朝雄氏。
普通に執事として登場してきて、イヤにクセのない役どころだなあと思ったら
とんでもない。ラスト4分の3あたりのところでしょうもないほど激烈。
蜘蛛男、変態女装加虐者の演技は凄いの一言。
人間椅子に入って彼の表情は、とても精神がまともな人とは思えない。
なあ、誰が彼をコロンボの声に採用しようと思ったの?というぐらい、
その後の彼の俳優生命が絶たれなかったことが不思議な感じである。
残念ながら、あれほどヤバめな映画がビデオ・DVD化するとは
到底思えないので、皆様方はこの日記を読んだ後、
地団駄を踏むしかないのでしょうが、
ええ。私は貴重なひと時を過ごさせていただきました。とさ。
|