床屋の話である。
床屋とか美容院とかが、最も自分が造形的に”イケてない”と
痛感する場所なのである。そりゃ自分の造詣に自身がある者は
行くたんびにいい気分になったりするだろうが、私なんかは単に
「髪の毛が鬱陶しいか、そうでないか」ぐらいしか、髪を切ろうと
思うことはないのである。
あ、そうそう。
高校生の頃、大失恋の際、思い切って髪の毛を短髪に刈り上げた
ことがあったのだが、その頃である。
「宮川大輔」というありがたいアダ名がついたのは。
それ以来、私は短髪にはしてないのである。
で、床屋、というか、近所の美容室に行くわけである。
そこの若き主は気のいい兄ちゃんで、いつも私の小難しい注文に
(やれ、さっぱりしたいけど短くしたくない、とかその類)
嫌な顔一つせず、なんとか一生懸命頑張ってくれるのだが、
いかんせんベースがベースである。
こざっぱりとした好青年モードを目指してくれたつもりが
店を出る頃には、こじゃれた斉藤清六のようになった私を
申し訳なさそうに見送ってくれるのである。
今日も席に着くなり
「あの〜あれ、大河に出てる・・・タッキー?あんな感じで」
と、気のいいアンちゃんを途方にくれさせても良かったのだが
あまりにも気の毒なので、注文の仕方を考えてみる。
自分では甘いマスクだと思っているので、ジャニーズ系を挙げること、
そりゃやぶさかではないのであるが、タッキーを始めとして、
やれキムタクやら長瀬やらを挙げるのは、いささか自分知らずの感。
TOKIOの松岡のように…と言ったら、間違えなく大輔へ逆戻りだ。
そこで、3枚目の線も狙って、という意味で
「すいません。今日はTOKIOのリーダーみたいな感じで」
と、気の利いたところをチョイスしてみた。
ま、せっかく伸ばした髪の毛の一部は伸ばしておきたいし、
といっても前髪は鬱陶しくて仕方がないので、
リーダーのリーゼントを下ろした感じが丁度いいかな、と思ったのだ。
「リーダーっすか・・・」
自身のないように、ハサミを持ち出す主。
おいおい、わかってると思うが
ドリフターズのリーダーじゃねーぞ
ましてやオピニオン・リーダーと呼ばれるあの
大前研一でもない!
(大前研一みたいに・・・って床屋で言った剛の者はいるのだろうか?)
・・・ともあれ、主は主の仕事をこなし、
私のイメージした感じで髪形は整ったわけだが、
私のイメージした容姿でないのは、そりゃベースの問題である。
今なお後ろ髪は美容室に行ったとは思えないほど長く、
中学時代なら「もう一度行って来い!」と担任にビンタをくらいそうだが
まあ、私もいい大人ですから。
2週間に1回美容室に行くブサイクちゃんに比べれば、
そんな彼女よりはお得感があるだろう。
とにかく、短いのはダメなのである。
宮川大輔がどうのこうのというより、
単発(短髪)は北斗の拳だけで十分なのだから。
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