腫瘍疾患の免疫療法について
樹状(DC)細胞融合細胞療法(犬)
リンパ球免疫療法(犬・猫)

2017119日更新

院長 今本成樹

新庄動物病院 奈良県葛城市葛木104-1 電話:0745-69-1111

長いけど、来院前にお読みください。免疫療法は、簡単に語れるものではなく、
魔法の治療でもないということをご理解いただければと思っています。
末期腫瘍を持つ犬のターミナルケア(終末期医療)についてもご相談ください。

腫瘍に対しての温熱療法と免疫療法の併用についても、参考にしてください。

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近年ペット寿命の延長化とともに、心疾患や腫瘍性疾患の増加が認められるようになりました。どれもともに楽しく生活してきたペットライフを満喫して、思いでもそこそこに積み重なったところで突如降ってくる不幸事です。何とかしてやりたい、、、と思う気持ちは、きっと皆さん同じだと思います。それにこたえる様に医学の研究者たちは日々精進しておりますが、いまだに何ともできない腫瘍というのがあるのも事実です。どんな手を尽くしても、太刀打ちできない腫瘍があるのです。だからと言ってあきらめてしまうのでは、なんだかちょっと悲しすぎます。医療に与えられた役目は、病気を治す以外にも穏やかな死へ導くことでもあると考えております。私自身、このような考えのもとで日々の診療をやっております。

腫瘍性疾患のセカンドオピニオンや、相談につきましては、ほとんどの症例で 院長が直接行う ことになっています。初診の方は、一度、院長のいる日をご確認のうえ来院してください。

また、これらの治療に対しては、人分野の最新の治療法を実践している先生や、大学病院の先生などに、アドバイスを求め、適切な治療方法を実践していけたらと考えています。免疫学に精通した大学の教授の先生や、我々の世界では有名な先生などと情報交換をし、田舎にいながらも都市部と同じレベルの治療が出来るようにと考えております。それゆえ、患者さんの写真を撮影したりすることも診察室ではあるかもしれませんが、趣味の撮影ではなく、何かの時に使うように、治療に向けた資料作成と、まだまだ未解明な部分が多い分野での今後の発展につながりますので、ご協力とご理解をよろしくお願いします。未解明な治療ゆえに、なんだか、患者さんでーデータを取って、それで学会発表や論文にすることを目的に免疫療法を実施するということはありません。我々の目指すものは、腫瘍を持った犬の治療であり、そして、飼い主さんの心配を取り除くことであるということを最優先に考えています。あまりにも目覚ましい効果があった場合には、今後の医学の発展のために学会での発表をすることもあるかとは思います。実際に、2013年の獣医再生医療学会でも、免疫療法に関しての講演をしております。

腫瘍免疫を操作することによる治療(ここでは免疫療法という書き方で統一していますが、誤解されないでください。今回登場する数種類の治療は、全て異なるメカニズムの治療です。その治療を受けるにあたって、飼い主さんが知っておいていただきたい事としては、以下のことがあげられます。

まずはきちんと説明を受けるということです。

1、ちゃんと治療できるレベルの細胞が作られているか? 細胞の作製のレベルを投与者まで理解しているか?

2、その作り出された細胞製剤が、目的の部位に到達できるのか?

3、その細胞に対して、腫瘍がすでに防御する姿勢を獲得していないか?

4、そもそも、腫瘍をきちんと排除する免疫の状態であり、そして投与した細胞もそれを腫瘍と認識できて攻撃を仕掛けるのか?

これらについてきちんと検討しない状態で、ただなんとなく、効果があると思うので投与しましょう・・・。というのは非常に危険です。まだまだ、よく説明が理解できていない状態で治療は実施しません。

実際に、免疫療法を実践する中で、よく知れば知るほど、腫瘍の奥深さが見えてきます。自分の免疫細胞が常に攻撃を仕掛けるわけではないということもわかります。腫瘍は、時に、免疫を抑える物質を出してきます。そうすることで、自分の中の免疫が働けません。こういったことを知らないままに、ただ闇雲に免疫療法にひた走るのは、危険だと言えます。いつが免疫療法の使いどきなのか・・・。をきちんと見極める必要があると思います。ただなんとなく、免疫療法に最後の望みを託すというだけでは時間とお金と、手間と命をかけるのは、きっと無駄でしょう。

だからこそ、きちんとした手順で、理解を得て、互いに話し合いながら進めていくことが重要となります。そこで、、、、治療の基本から話を進めていきます。

腫瘍の治療は基本的には、一番大切なのが診断です。
初回には多くの検査が必要となります。診断に際して最も必要となるのが、病理検査です。病理検査は専門医の診断を仰ぐことになります。また、病理診断のために様々な処置が必要となることもあります。一番大切なことは、腫瘍を理解して治療するということです。そして、敵がわかれば最も効率的な戦いをするのが望ましいです。

腫瘍と戦う方法としては、

1、手術   初回の手術で完全に取り去り全滅させるのが理想

2、抗ガン剤  特定の腫瘍に対しては、大きな効果を示す武器となります。

3、放射線療法  緩和療法などでよく大学病院などを紹介しております。

基本はこの3本の柱です。

そこに加わるのが、

4、免疫療法 (この言葉については、多くの誤解があるので免疫療法というのは、免疫全般を用いた治療の総称として、ここでは用いております。この免疫療法という表現は正しいわけではありませんので、ご理解ください。)

です。当院では、2006年からスタートしておりましたが、設備面などの事情もあり、いったん中断してましたが201210月より再開しております。院内の施設で、細胞の培養を実施しております。

まだなにか出来るかもしれない!  に対して、最後の選択肢となれたらと思います。ただ、よほどの「初期がん」でもない限り、最初に選択すべき治療法ではないと考えております。末期の腫瘍に対して、免疫に関連した治療を実施したところで、想像されているほどの成果がない場合も多数あります。そしてまだまだ研究途上の分野でもあり、様々な研究が実施されています。単純に免疫療法という表現だけでは、ひとくくりにしてはいけないと考えています。実際、末期の腫瘍の状態でもあるにもかかわらず、非常に状態もよく最後まで元気に過ごせたというようなことも確認できております。腫瘍の大きさは小さくはならないというケースでも、食欲も元気もある状態であったといった事も経験しています。中には、腫瘍が消失した例もあります。 

その中でも、免疫を用いた治療として、もっとも今、期待されているのが、「樹状細胞を用いた治療」です。この治療は、あとで説明しますが、時間とお金と、そしてスケジュール管理が大変です。年間20例を超える犬が免疫療法(活性化リンパ球療法や樹状細胞療法、インターフェロン療法や免疫向上のためのサプリメントの投与など)を受けています。効果としては、どの治療法でも目覚ましい効果が得られた経験があるので、どれか一つを選んでくださいと質問されたら困ります。それなら、全部やりますか?ということになり、本当にこれは治療費が大変です。全部は無理だけど、、、というのがきっと多くの方の本音だと思います。高価な細胞培養を用いた治療をやらなくても、、、というのも本音かもしれません。

ただ、そこまでやらなくても緩和療法的な免疫療法の一種としては、キノコ類を使ったサプリメントによる免疫向上、インターフェロンガンマを用いた抗腫瘍療法もあります。(ページ最後に治療例掲載・転載はおやめ下さい。) 実際に、キノコ類を用いたり、民間療法を用いた事により、体の免疫状態が上昇した例もあります。しかし、それが科学的に説明がつくレベルで議論されたり、多くの方が納得するようなデータとしてまとめられた例はないというのが現状です。藁にもすがりつく思いで、ネット上などで検索してあれやこれやと検索して、それを試してみたけど、効果がなかったというのもよくある話です。こういった様々な治療に対しても、我々は一定の理解を示しておりますので、どうぞ遠慮なく相談いただければと思います。

ご来院いただきました上で、相談していただければ、いちばんご家庭の方針に沿える方法を検討いたします。お気軽に相談してください。電話での相談は、診療の妨げとなることがありますので、お控えください。

では、タイトルにあるような樹状細胞融合免疫療法と、リンパ球療法について、簡単に説明いたします。 

まずは、樹状細胞融合免疫療法ですが、すでに人のほうでは、著しい効果が一部では、認められています。犬のほうでも徐々にその効果が認められております。今までは、手のほどこしようがなかった腫瘍に対しても、少しでも効果があれば・・・という治療法です。人の分野では、摘出不可能な脳腫瘍などに効果を示した例や手術不可能な症例に対して腫瘍の縮小効果も含めて確認されています。その他様々な腫瘍に対して、腫瘍の縮小効果も認められ、近年、動物医療の領域でも、応用されるようになってきました。「樹状細胞融合」という、聞きなれない言葉ですけど、それについてから説明していきます。

癌治療においては、癌の組織の外科的な治療や化学療法(抗癌剤)が主体となり、そこに放射線療法が加わり三大治療と呼ばれています。最近ではそこに、免疫学治療です。最近10年余り腫瘍学において、癌抗原というものの考え方が明らかとされてきました。これらの抗原に対して何らかの作用を及ぼさせる、それらを逆にうまく利用するということをおこなうことで、癌細胞に、優先的に、死んでもらおうという方法であります。正確な表現ではありませんが、腫瘍のみに対して攻撃を仕掛けるという面では、従来の方法よりもはるかに理論的には、優れていますし、副作用も少ないのです。ただ、免疫を強制的に動かしますので、投与後に一時的な発熱などは存在します。この副作用は一定期間が経過すると、良くなりますが、免疫療法は自己細胞を用いるので、抗がん剤ほど副作用はないというのは事実ですけど、免疫を動かすことによる副作用はあるということをご理解ください。

さて、話を戻します。まず、樹状細胞に対して、患者さんの癌細胞の特徴を認識させる為に、腫瘍の細胞との融合を試みます。この融合は、人工的に行うことになります。したがって、この治療を受けるに当たっては、手術というのが一つの過程に組み込まれます。手術を行い、癌を摘出し、そして、その中から癌細胞を抜き出します。さらに、本人の血液のなかから、免疫細胞を取り出し、それを用いて治療を行うという完全なオーダーメイド療法で、本当に、その患者さんのためだけに行える治療法です。効果としてはすばらしく、研究の過程では、マウスを使った実験で脳腫瘍の40%を消し去ったというデータもります。犬においての治療成績はいまだまとまっていないのが現状で、今後大規模なデータが出てくれば、この治療は、どれくらい有効なのかという事がいずれわかってくると思います。しかし、マウスでの研究成果がそのまま犬に使えるか?というと、そんなことはありません。実験的に作り上げた腫瘍のデータが、そのまま効果に直結した数字にあるかというとそうでもありません。まだまだ発展途上の治療です。しかし、大きな可能性は秘めていると思います。

ここで少し、この治療のデメリットもお話しておきます。

まずは、手術を行って、腫瘍細胞を摘出して、さらに、それを樹状細胞融合の製剤として完成するまでに、おおむね二週間の期間を必要とします。二週間の間は、この治療を受けるのを待つことになります。動物保険の適応はされません。従って、全てが、飼い主さんの負担となってしまいます。完全なる本人のオリジナルの細胞からの作成ということで、多くの人が関わって出来上がるのがこの治療です。投与期間は、初期は二週間に一度となっております。治療費の目安として、初回は、検査費用(免疫療法は、この時には実施しません。初回は、血を抜くだけです。)のみです。その後、細胞培養に2週間前かかります。したがって、その2週間の生存が危うい患者さんでは、この治療は適応外と考えていただいて結構です。費用については、この時にお話しいたします。

同時に、最初に説明しましたが、この樹状細胞が本当に腫瘍を認識できるのか?が大きな問題となります。実際に、目に見える病変では、その場所に直接打ちこんだりもします。ただし、培養できる細胞の数や、その樹状細胞が腫瘍を認識して、リンパ節にその情報を伝えて、直接の攻撃部隊を送り込むことになるのですが、腫瘍の数があまりにも膨大であると、戦力不足ということになり、治療効果が目に見えないこともあります。当院での実例として、腫瘍に対して樹状細胞療法を行ったにもかかわらず、結局は大規模な摘出手術を実施した例もあります。摘出した腫瘍を検査しましたが、きちんと免疫細胞が腫瘍を攻撃していました。攻撃していたにもかかわらず、戦力不足であったのではないかと考えています。

したがって、この治療を実施するに先立って、腫瘍の縮小、腫瘍細胞数の減少のために外科手術を行うことが多くなると思います。腫瘍自体を取りだすということで、
より免疫細胞が腫瘍を認識できるようになる方法も考慮しております。

腫瘍細胞を摘出しないで、たんに樹状細胞を増やして腫瘍に打ちこむことで、腫瘍を認識させる方法もありますが、それで樹状細胞が腫瘍を認識して体の免疫に攻撃指令を出すかというと、その確率は、100%ではありません。
ただ、きちんと認識すれば、腫瘍を攻撃してくれます。攻撃したからといって、腫瘍が小さくなるわけでもありません。効果が出る確率は、20%程度だと考えています。また、マウスで効果があるという論文通りの方法を用いても、犬では同じようなデータは得られません。犬には犬のデータが適応されるべきで、これにはまだデータの蓄積については時間がかかりそうです。

実際に、これらの治療法を行った際に効果があったか、なかったかというのを判断するのは病理検査がメインとなります。もしくは、腫瘍が消え去ったか。。。そこに腫瘍細胞があるのか、ないのか…。です。見た目が治ったように見えるからというだけで、治療を中断すると、その間に腫瘍細胞が防御手段を身につけて再び大きくなり始める可能性もありますので、腫瘍を攻撃し続ける際には、徹底した攻撃が必要となります。

治療の途中で、突然、腫瘍が増大することもあります。
腫瘍細胞が、免疫細胞からの攻撃に対して、防御機構を身につけた状態です。こういった細胞を電子顕微鏡で見ると、通常細胞よりも厚い鎧のような細胞の膜を身にまとっていることがあります。
こうなると、手を出せない・・・・。のです。常に考えながら、患者さんの状態を見ながらの治療となります。そして、時には免疫療法だって、副作用は出ます。
実際には、嘔吐や全身的な震えが投与後6時間以内に発症しております。免疫を一気に動かす方法にもなりますので、このような副作用が出る子がいます。

そういったものに対してもきちんとした対処を実施させていただきます。

 

さて、

次に、リンパ球免疫療法についてです。(これ単独のもは、20134月より導入しております。犬と猫で可能となっております。院内で細胞培養を実施したものを、投与前に顕微鏡下でその細胞を確認して、投与しております。)

これは、癌を攻撃するリンパ球を体外で増殖させて、患者さん自身へ戻すという方法です。自己リンパ球活性化療法と呼ばれます。この治療も患者さん自身の細胞を用い、その患者さんに投与するオーダーメイドの治療法です。人の方ではすでに多くの臨床例が得られております。癌患者さんの生活の質を高めるということに役に立っています。リンパ球を活性化させて、体に戻すことで、それらのリンパ球が引き起こす様々な作用により、症状が改善することが期待されます。

ただ。そのリンパ球は、本当に今の腫瘍と戦うのに必要とされているリンパ球ですか?ただなんとなく増やして戻していませんか?ということは常に投与者として考えていることです。そして、点滴に混ぜて体内に戻すのですか?腫瘍を攻撃するのであれば、局所に打ちこんだらどうですか?など、、、考えて投与していかないといけません。これには、経験や知識なども当然必要となります。

この治療は、血液を抜くだけでできますので、非常に患者さんへの負担が少ないです。しかし、これもリンパ球を増殖させていくまでに10日ほどの期間が必要です。癌細胞を攻撃すると言っても、全滅させる可能性は、かなり少ないといえますので、どうしようもない場合の救済の一つとして、最後まで生活の質を保つという面の治療法として期待されています。保険適応外の治療法となっております。投与期間は、二週間に一度です。治癒することがほとんどないので、ほぼ生涯続けることになります。一回当たりの細胞培養(樹状細胞・リンパ球それぞれ)の費用は、4万円(税別)です。事前の検査費用などが別途必要となります。

何かできればと思い、このような治療法も導入することにいたしました。
大学の先生や、腫瘍免疫療法専門の先生、時には、人のほうのドクターのアドバイスを頂きながら少しでも、生活の質を高める一つの手段となればいいと考えています。

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インターフェロンガンマでの治療例    初期腫瘍であれば、通院のみで良好に維持できる腫瘍もあります。血液を抜く必要もありません。このような症例があると、体の免疫力のすごさを実感できますね。ただし、この2年での成績で言うと、インターフェロン単独で劇的な効果を示した例は5%程度です。一時的に効果を認めた症例は20%程度です。人でも、インターフェロンを用いての腫瘍治療では、20%程度との論文があります。末期症例では、症状の緩和につながることもあります。

一番上の写真

診断時の鼻の中に出来た扁平上皮癌 ()   主訴:鼻血

内視鏡で検査を実施し、一部切除して病理検査に出したところで「扁平上皮癌」の診断

高齢ということもあり、手術は消極的だったために免疫療法としての
インターフェロンγによる治療を選択

 

中央の写真 

インターフェロンγ 5回投与後の内視鏡写真

 

 

一番下の写真

インターフェロン投与しながら2ヵ月間、病変は維持できている。

現在も週に2回の注射のみで維持できていた。

 

この症例は、2014年に獣医学誌にその報告が掲載されました。