腫瘍疾患の免疫療法をはじめとしたさまざまな治療について
樹状(DC)細胞融合細胞療法(犬)
リンパ球免疫療法(犬・猫)
ルペオールを用いた治療
がん抗原ワクチン療法
2022年2月25日更新 動画追加
院長 今本成樹
長いけど、来院前にお読みください。免疫療法をはじめとした腫瘍の治療は、簡単に語れるものではなく、
近年ペット寿命の延長化とともに、心疾患や腫瘍性疾患の増加が認められるようになりました。どれもともに楽しく生活してきたペットライフを満喫して、思いでもそこそこに積み重なったところで突如降ってくる不幸事です。何とかしてやりたい、、、と思う気持ちは、きっと皆さん同じだと思います。それにこたえる様に医学の研究者たちは日々精進しておりますが、いまだに何ともできない腫瘍というのがあるのも事実です。どんな手を尽くしても、太刀打ちできない腫瘍があるのです。だからと言ってあきらめてしまうのでは、なんだかちょっと悲しすぎます。
医療に与えられた役目は、病気を治す以外にも穏やかな死へ導くことでもあると考えております。私自身、このような考えのもとで日々の診療をやっております。 免疫療法をはじめとした腫瘍の代替療法や治療については、人分野の最新の治療法を実践している先生や、大学病院の先生などに、アドバイスを求め、適切な治療方法を実践していけたらと考えています。免疫学に精通した大学の教授の先生や、我々の世界では有名な先生などと情報交換をし、田舎にいながらも都市部と同じレベルの治療が出来るようにと考えております。
それゆえ、患者さんの写真を撮影したりすることも診察室ではあるかもしれませんが、趣味の撮影ではなく、何かの時に使うように、治療に向けた資料作成と、まだまだ未解明な部分が多い分野での今後の発展につながりますので、ご協力とご理解をよろしくお願いします。未解明な治療ゆえに、なんだか、患者さんでーデータを取って、それで学会発表や論文にすることを目的に免疫療法を実施するということはありません。我々の目指すものは、腫瘍を持った犬の治療であり、そして、飼い主さんの心配を取り除くことであるということを最優先に考えています。あまりにも目覚ましい効果があった場合には、今後の医学の発展のために学会での発表をすることもあるかとは思います。実際に、2013年の獣医再生医療学会でも、免疫療法に関しての講演をしております。2018年以降は、腫瘍治療と免疫について、獣医レーザー医療研究会で講師を務めております。また、人のレーザー医学会においても、高齢の犬の乳腺腫瘍の症例について講演をしています。 腫瘍免疫を操作することによる治療(ここでは免疫療法という書き方で統一していますが、誤解されないでください。今回登場する数種類の治療は、全て異なるメカニズムの治療です。その治療を受けるにあたって、飼い主さんが知っておいていただきたい事としては、以下のことがあげられます。 まずはきちんと説明を受けるということです。 1、ちゃんと治療できるレベルの細胞が作られているか? 細胞の作製のレベルを投与者まで理解しているか? 2、その作り出された細胞製剤が、目的の部位に到達できるのか? 3、その細胞に対して、腫瘍がすでに防御する姿勢を獲得していないか? 4、そもそも、腫瘍をきちんと排除する免疫の状態であり、そして投与した細胞もそれを腫瘍と認識できて攻撃を仕掛けるのか? これらについてきちんと検討しない状態で、ただなんとなく、効果があると思うので投与しましょう・・・。というのは非常に危険です。まだまだ、よく説明が理解できていない状態で治療は実施しません。 実際に、免疫療法を実践する中で、よく知れば知るほど、腫瘍の奥深さが見えてきます。自分の免疫細胞が常に攻撃を仕掛けるわけではないということもわかります。腫瘍は、時に、免疫を抑える物質を出してきます。そうすることで、自分の中の免疫が働けません。こういったことを知らないままに、ただ闇雲に免疫療法にひた走るのは、危険だと言えます。いつが免疫療法の使いどきなのか・・・。をきちんと見極める必要があると思います。
ただなんとなく、免疫療法に最後の望みを託すというだけでは時間とお金と、手間と命をかけるのは、きっと無駄でしょう。既に大きくなってしまっている腫瘍では、免疫ではとても対処できなくなっているケースも多々あります。
そのような状態にさせないことが一番ですが、治療方法を探すうちに、免疫を用いた治療のタイミングを逃していることもあります。
そのようなことが疑われる場合には、免疫療法を希望されても実施しないこともあります。 だからこそ、きちんとした手順で、理解を得て、互いに話し合いながら進めていくことが重要となります。そこで、、、、治療の基本から話を進めていきます。 腫瘍の治療は基本的には、一番大切なのが診断です。 腫瘍と戦う方法としては、 1、手術 初回の手術で完全に取り去り全滅させるのが理想 2、抗ガン剤 特定の腫瘍に対しては、大きな効果を示す武器となります。 3、放射線療法 緩和療法などでよく大学病院などを紹介しております。 基本はこの3本の柱です。 そこに加わるのが、 4、免疫療法 (この言葉については、多くの誤解があるので免疫療法というのは、免疫全般を用いた治療の総称として、ここでは用いております。この免疫療法という表現は正しいわけではありませんので、ご理解ください。) です。 当院では、2006年から院内の施設で、細胞の培養を実施しております。 まだなにか出来るかもしれない! に対して、最後の選択肢となれたらと思います。ただ、よほどの「初期がん」でもない限り、最初に選択すべき治療法ではないと考えております。末期の腫瘍に対して、免疫に関連した治療を実施したところで、想像されているほどの成果がない場合も多数あります。そしてまだまだ研究途上の分野でもあり、様々な研究が実施されています。
単純に免疫療法という表現だけでは、ひとくくりにしてはいけないと考えています。実際、末期の腫瘍の状態でもあるにもかかわらず、非常に状態もよく最後まで元気に過ごせたというようなことも確認できております。腫瘍の大きさは小さくはならないというケースでも、食欲も元気もある状態であったといった事も経験しています。中には、腫瘍が消失した例もあります。 その中でも、免疫を用いた治療として、もっとも今、期待されているのが、「樹状細胞を用いた治療」です。この治療は、あとで説明しますが、時間とお金と、そしてスケジュール管理が大変です。年間20例を超える犬が免疫療法(活性化リンパ球療法や樹状細胞療法、インターフェロン療法や免疫向上のためのサプリメントの投与など)を受けています。効果としては、どの治療法でも目覚ましい効果が得られた経験があるので、どれか一つを選んでくださいと質問されたら困ります。それなら、全部やりますか?ということになり、本当にこれは治療費が大変です。全部は無理だけど、、、というのがきっと多くの方の本音だと思います。高価な細胞培養を用いた治療をやらなくても、、、というのも本音かもしれません。 ただ、そこまでやらなくても緩和療法的な免疫療法の一種としては、キノコ類を使ったサプリメントによる免疫向上、インターフェロンガンマを用いた抗腫瘍療法もあります。(ページ最後に治療例掲載・転載はおやめ下さい。) 実際に、キノコ類を用いたり、民間療法を用いた事により、体の免疫状態が上昇した例もあります。しかし、それが科学的に説明がつくレベルで議論されたり、多くの方が納得するようなデータとしてまとめられた例はないというのが現状です。
藁にもすがりつく思いで、ネット上などで検索してあれやこれやと検索して、それを試してみたけど、効果がなかったというのもよくある話です。こういった様々な治療に対しても、我々は一定の理解を示しておりますので、どうぞ遠慮なく相談いただければと思います。 ご来院いただきました上で、相談していただければ、いちばんご家庭の方針に沿える方法を検討いたします。お気軽に相談してください。電話での相談は、診療の妨げとなることがありますので、お控えください。 では、タイトルにあるような樹状細胞融合免疫療法と、リンパ球療法について、簡単に説明いたします。 まずは、樹状細胞融合免疫療法ですが、すでに人のほうでは、著しい効果が一部では、認められています。犬のほうでも徐々にその効果が認められております。今までは、手のほどこしようがなかった腫瘍に対しても、少しでも効果があれば・・・という治療法です。人の分野では、摘出不可能な脳腫瘍などに効果を示した例や手術不可能な症例に対して腫瘍の縮小効果も含めて確認されています。
その他様々な腫瘍に対して、腫瘍の縮小効果も認められ、近年、動物医療の領域でも、応用されるようになってきました。「樹状細胞融合」という、聞きなれない言葉ですけど、それについてから説明していきます。 癌治療においては、癌の組織の外科的な治療や化学療法(抗癌剤)が主体となり、そこに放射線療法が加わり三大治療と呼ばれています。この三大治療では、莫大な症例数の蓄積がありますので、今後の治療効果についても詳しくお話しすることができます。そして、最近ではそこに、免疫学治療が入ってきました。最近10年余り腫瘍学において、癌抗原というものの考え方が明らかとされてきました。これらの抗原に対して何らかの作用を及ぼさせる、それらを逆にうまく利用するということをおこなうことで、
癌細胞に、優先的に、死んでもらおうという方法であります。正確な表現ではありませんが、腫瘍のみに対して攻撃を仕掛けるという面では、従来の方法よりもはるかに理論的には、優れていますし、副作用も少ないのです。
ただ、免疫を強制的に動かしますので、投与後に一時的な発熱などは存在します。この副作用は一定期間が経過すると、良くなりますが、免疫療法は自己細胞を用いるので、抗がん剤ほど副作用はないというのは事実ですけど、免疫を動かすことによる副作用はあるということをご理解ください。また、外科治療で完治が目指せる可能性が高い場合には、外科手術をおすすめすることがあります。その際に、高齢だから麻酔のリスクがあるとお考えかもしれませんが、腫瘍を放置するリスクと比較してみてください。
悪性腫瘍を放置すれば、悪化の一途です。手術が可能なタイミングで来院された場合には、麻酔のリスクと引き替えに大きな効果を得られる外科手術をおすすめすることもあります。その際に出てくる「麻酔に耐えられるでしょうか?」と言うことですが、今の時代の動物の麻酔はかなり進化しましたので、平成の初期の動物医療の記述にあるような高齢だから麻酔がかけられないということはかなりなくなってきました。実際に、15歳のラブラドールであっても、18歳のビーグルであっても腫瘍切除のために麻酔をかけて切除しています。また、場所によっては鎮静と局所麻酔とレーザー機器を用いての切除で日帰りで対処できることもあります。 さて、話を戻します。まず、樹状細胞に対して、患者さんの癌細胞の特徴を認識させる為に、腫瘍の細胞との融合を試みます。この融合は、人工的に行うことになります。したがって、この治療を受けるに当たっては、手術というのが一つの過程に組み込まれます。手術を行い、癌を摘出し、そして、その中から癌細胞を抜き出します。さらに、本人の血液のなかから、免疫細胞を取り出し、それを用いて治療を行うという完全なオーダーメイド療法で、
本当に、その患者さんのためだけに行える治療法です。効果としてはすばらしく、研究の過程では、マウスを使った実験で脳腫瘍の40%を消し去ったというデータもります。犬においての治療成績はいまだまとまっていないのが現状で、今後大規模なデータが出てくれば、この治療は、どれくらい有効なのかという事がいずれわかってくると思います。しかし、マウスでの研究成果がそのまま犬に使えるか?というと、そんなことはありません。実験的に作り上げた腫瘍のデータが、そのまま効果に直結した数字にあるかというとそうでもありません。まだまだ発展途上の治療です。しかし、大きな可能性は秘めていると思います。 ここで少し、この治療のデメリットもお話しておきます。 まずは、手術を行って、腫瘍細胞を摘出して、さらに、それを樹状細胞融合の製剤として完成するまでに、おおむね二週間の期間を必要とします。二週間の間は、この治療を受けるのを待つことになります。動物保険の適応はされません。従って、全てが、飼い主さんの負担となってしまいます。完全なる本人のオリジナルの細胞からの作成ということで、多くの人が関わって出来上がるのがこの治療です。投与期間は、初期は二週間に一度となっております。
治療費の目安として、初回は、検査費用(免疫療法は、この時には実施しません。初回は、血を抜くだけです。)のみです。その後、細胞培養に2週間前かかります。したがって、その2週間の生存が危うい患者さんでは、この治療は適応外と考えていただいて結構です。費用については、この時にお話しいたします。 同時に、最初に説明しましたが、この樹状細胞が本当に腫瘍を認識できるのか?が大きな問題となります。実際に、目に見える病変では、その場所に直接打ちこんだりもします。ただし、培養できる細胞の数や、その樹状細胞が腫瘍を認識して、リンパ節にその情報を伝えて、直接の攻撃部隊を送り込むことになるのですが、
腫瘍の数があまりにも膨大であると、戦力不足ということになり、治療効果が目に見えないこともあります。当院での実例として、腫瘍に対して樹状細胞療法を行ったにもかかわらず、結局は大規模な摘出手術を実施した例もあります。
摘出した腫瘍を検査しましたが、きちんと免疫細胞が腫瘍を攻撃していました。攻撃していたにもかかわらず、戦力不足であったのではないかと考えています。 したがって、この治療を実施するに先立って、腫瘍の縮小、腫瘍細胞数の減少のために外科手術を行うことが多くなると思います。腫瘍自体を取りだすということで、 腫瘍細胞を摘出しないで、たんに樹状細胞を増やして腫瘍に打ちこむことで、腫瘍を認識させる方法もありますが、それで樹状細胞が腫瘍を認識して体の免疫に攻撃指令を出すかというと、その確率は、100%ではありません。 実際に、これらの治療法を行った際に効果があったか、なかったかというのを判断するのは病理検査がメインとなります。もしくは、腫瘍が消え去ったか。。。
そこに腫瘍細胞があるのか、ないのか…。です。見た目が治ったように見えるからというだけで、治療を中断すると、その間に腫瘍細胞が防御手段を身につけて再び大きくなり始める可能性もありますので、腫瘍を攻撃し続ける際には、徹底した攻撃が必要となります。 治療の途中で、突然、腫瘍が増大することもあります。 そういったものに対してもきちんとした対処を実施させていただきます。 さて、 次に、リンパ球免疫療法についてです。(これ単独のもは、2013年4月より導入しております。犬と猫で可能となっております。院内で細胞培養を実施したものを、投与前に顕微鏡下でその細胞を確認して、投与しております。) これは、癌を攻撃するリンパ球を体外で増殖させて、患者さん自身へ戻すという方法です。自己リンパ球活性化療法と呼ばれます。この治療も患者さん自身の細胞を用い、その患者さんに投与するオーダーメイドの治療法です。
人の方ではすでに多くの臨床例が得られております。癌患者さんの生活の質を高めるということに役に立っています。リンパ球を活性化させて、体に戻すことで、それらのリンパ球が引き起こす様々な作用により、症状が改善することが期待されます。 ただ。そのリンパ球は、本当に今の腫瘍と戦うのに必要とされているリンパ球ですか?ただなんとなく増やして戻していませんか?ということは常に投与者として考えていることです。
そして、点滴に混ぜて体内に戻すのですか?腫瘍を攻撃するのであれば、局所に打ちこんだらどうですか?など、、、考えて投与していかないといけません。これには、経験や知識なども当然必要となります。 この治療は、血液を抜くだけでできますので、非常に患者さんへの負担が少ないです。しかし、これもリンパ球を増殖させていくまでに10日ほどの期間が必要です。癌細胞を攻撃すると言っても、全滅させる可能性は、かなり少ないといえますので、どうしようもない場合の救済の一つとして、最後まで生活の質を保つという面の治療法として期待されています。保険適応外の治療法となっております。投与期間は、二週間に一度です。治癒することがほとんどないので、ほぼ生涯続けることになります。一回当たりの細胞培養(樹状細胞・リンパ球それぞれ)の費用は、4万円(税別)です。事前の検査費用などが別途必要となります。 何かできればと思い、このような治療法も導入することにいたしました。 インターフェロンガンマでの治療例 初期腫瘍であれば、通院のみで良好に維持できる腫瘍もあります。血液を抜く必要もありません。このような症例があると、体の免疫力のすごさを実感できますね。ただし、この2年での成績で言うと、インターフェロン単独で劇的な効果を示した例は5%程度です。一時的に効果を認めた症例は20%程度です。人でも、インターフェロンを用いての腫瘍治療では、20%程度との論文があります。末期症例では、症状の緩和につながることもあります。外科手術やたの治療との併用も可能ですので、当院では積極的に実施しています。 一番上の写真 診断時の鼻の中に出来た扁平上皮癌 (犬) 主訴:鼻血 内視鏡で検査を実施し、一部切除して病理検査に出したところで「扁平上皮癌」の診断 高齢ということもあり、手術は消極的だったために免疫療法としての 中央の写真 インターフェロンγ 5回投与後の内視鏡写真 一番下の写真 インターフェロン投与しながら2ヵ月間、病変は維持できている。 現在も週に2回の注射のみで維持できていた。 この症例は、2014年に獣医学誌にその報告が掲載されました。
魔法の治療でもないということをご理解いただければと思っています。動画の方も見ていただければと思います。
末期腫瘍を持つ犬のターミナルケア(終末期医療)についてもご相談ください。
町の獣医師は、実は多くの末期の腫瘍に遭遇しています。そんな時代になりました。犬における腫瘍は、人間と同様に発生が多く、治療も困難な腫瘍もあります。
我々としたら、治せる治療があるなら、それを飼い主さんにお勧めします。そういった考えで読んでいただければと思います。
また一方で、どこか怪しい宣伝文句に惑わされる感じで免疫療法を治療の第一選択とされる飼い主さんが多いのも現状です。三大療法(外科手術・抗がん剤・放射線療法)で治療できる可能性が高い場合には迷わずに
その治療を提示させていただきます。治せるチャンスを逃したくないからです。こうやって腫瘍の三大療法以外の治療をやっていると最初からそちらの代替医療を選択される方の来院もあります。
体に優しい免疫治療という宣伝文句がインターネット上にたくさん書かれていることも事実です。そして、その治療をやって効果がある症例もあるのも事実です。だからと言って、今目の前にいる子に対してその治療が効果を示すかと聞かれたら、正直わかりません。
それは三大治療を行う場合でもそうです。そういった中で最も治癒率が高い治療、もしくは処置を実施するうえで効果が高い治療法を選択するのが我々のやるべきことだと考えています。したがって、ただ何となく免疫療法をやりたいとか細胞治療をやってみたいということであれば、治療に関しての説明がご希望に沿うことができない場合もあると思います。
そうなってしまうのは、やはりできる限り効果的なことをやってあげたいという気持ちからです。
腫瘍性疾患のセカンドオピニオンや、相談につきましては、ほとんどの症例で 院長が直接行う ことになっています。初診の方は、一度、院長のいる日をご確認のうえ来院してください。また、ここに書いてある内容を一度は目を通していただきたいと思います。
初回には多くの検査が必要となります。診断に際して最も必要となるのが、病理検査です。病理検査は専門医の診断を仰ぐことになります。また、病理診断のために様々な処置が必要となることもあります。一番大切なことは、腫瘍を理解して治療するということです。そして、敵がわかれば最も効率的な戦いをするのが望ましいです。
より免疫細胞が腫瘍を認識できるようになる方法も考慮しております。
ただ、きちんと認識すれば、腫瘍を攻撃してくれます。攻撃したからといって、腫瘍が小さくなるわけでもありません。効果が出る確率は、20%程度だと考えています。また、マウスで効果があるという論文通りの方法を用いても、犬では同じようなデータは得られません。犬には犬のデータが適応されるべきで、これにはまだデータの蓄積については時間がかかりそうです。
腫瘍細胞が、免疫細胞からの攻撃に対して、防御機構を身につけた状態です。こういった細胞を電子顕微鏡で見ると、通常細胞よりも厚い鎧のような細胞の膜を身にまとっていることがあります。
こうなると、手を出せない・・・・。のです。常に考えながら、患者さんの状態を見ながらの治療となります。そして、時には免疫療法だって、副作用は出ます。
実際には、嘔吐や全身的な震えが投与後6時間以内に発症しております。免疫を一気に動かす方法にもなりますので、このような副作用が出る子がいます。
インターフェロンγによる治療を選択
ルペオールを用いた治療
近年日本では、ルペオールという物質を腫瘍の増殖を抑制する効果があることが認められました。日本の獣医学分野でも10年以上前からルペオールの投与を実施している治療も見受けられます。単独で爆発的な効果があるとは言い切れませんが、他の治療法との併用で効果が出ることが期待されています。
ルペオールを用いた腫瘍の研究では、腫瘍の増殖を抑制したという結果は出ています。ここで重要なのは『抑制』という表現であり、腫瘍を『縮小』させたわけではありません。
こういった治療は単独で実施するのではなく、他の治療法と併用することが望ましいと考えています。そもそも劇的な効果が出るとしたら、もうすでに世界中に広まってると思いませんか?
現段階で、がんを一発で消し去る魔法の治療は存在しません。一方で、時に効果的な代替療法により、劇的な効果が見られることがあります。これらはうまく宣伝文句に使われます。
こういった宣伝文句に希望を見出してしまう感情は理解できます。私が、このルペオールを使用するケースは、口腔内のメラノーマや切除不能な部分にできている腫瘍などです。
こういったケースでは治療法は限られており、予後も悪いです。そんな中で、何かできることがあるかもしれないといった場合には使います。その他のケースとしては、腫瘍の切除はやったものの、転移や再発が怖いといったケースです。
このような場合でもルペオールを投与することは実施の価値はある可能性があります。
がん抗原ワクチンを用いた治療
院内で摘出した腫瘍細胞を用いて、腫瘍から特定のたんぱく質を取り出しそれを接種することで腫瘍に対しての免疫を高めることが期待されます。
腫瘍に対しての免疫療法はおおむね反応率は20〜30%程度ですが、今後より効率的に免疫を誘導できるようになるかもしれません。また、同時に、精巣細胞には腫瘍に対しての免疫を刺激する抗原が存在していることが人や犬では分かっています。
こういった免疫を刺激するがん抗原を接種することで腫瘍への免疫を高める効果が期待されています。投与に関しては同時に人でもがんの患者さんに用いられる『丸山ワクチン』の投与も同時に実施しています。
自己腫瘍細胞を用いたがんワクチン作成は、ホルマリンに使った検体でも作成が可能です。インターフェロンとの併用でより高い効果が出ているということもあるようです。2022年1月より、院内にてがん抗原ワクチンの作成が可能となっています。
自分の腫瘍細胞から、がん抗原ワクチンを作成するには約半日が必要です。腫瘍の量にもよるのでたくさんの腫瘍細胞があればたくさん作成できます。
しかし、これらの治療は理論的には納得いくものですが、まだまだ研究段階といった側面もあります。大学なのでも研究が行われていますが、大きな成果を見せている症例もあれば、
同じ免疫を用いた治療にもかかわらず効果が認められない症例も存在しています。少しでも効果が高まるように様々な工夫をして投与しています。
きっと、ここを読んでくださっている飼い主さんは、本当にお困りだと思いますので、少しでも有益な情報に対しては、『藁にもすがる思い』だと思います。
だからこれ正直に話したいと思いますが、
『100%効果を示すなら、我々は治療の第一選択として治療の提案をします。』
しかし、現段階では、特定の腫瘍に対しては、抗がん剤や外科治療の方がより完治や、無症状期間が長いといったことが明白です。免疫療法や、体に負担の少ない治療というものが
効果が低く見えるのは、もうどうしようもない末期状態になってからやってしまっているからかもしれません。免疫を用いた治療は、抗がん剤なども含めて様々な治療と併用可能なものがありますので、
併用療法が望ましいと私は考えています。しかし、がん抗原ワクチンを作成するにはがん細胞が必要になることがほとんどです。したがって、外科治療をする必要があります。
手術は避けたいといった症例では、適応外となることがあります。がん細胞がたくさんあれば、何回分も作成できます。逆に少量であれば、1,2回分しか作成できないといったこともあります。
これらの腫瘍からのがん抗原を接種してより効率よく働かせるには、自分の免疫細胞である樹状細胞の培養を行い
がん抗原ワクチンと同時に接種することも有効ではないかと考えています。がん抗原ワクチンと同時にアジュバンドといった免疫効果を高める物質も院内調整して投与します。
今までに様々な免疫治療を実施してきました。こういったたくさんの経験に支えられて、より効果的な治療法の提案ができるとも考えています。
詳しくは、診察時にお話をさせていただきます。ご予約の上ご来院ください。電話でのお問い合わせはご遠慮ください。初診での来院は、時間がかかりますので、時間に余裕を見てご来院ください。
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