いくつもの愛をかさねて

Scene12.〜間〜

 

移りゆく季節の間

流れゆく時の間

変わらぬ者達

変わり行く者達

未来へと進む者

過去に捕らわれる者

来るべき未来を知りながら

過去と未来との間に立つ者

人と人との間

そこには何があるのだろう。

時間

距離

そして

人と人を隔てる間

人と人とを繋ぐ間

人との間

間を持つ人達

それが

人間。

Scene 12―A

 あれからいくつかの時間が流れ、冷たい風に春の香りが混ざるころ。

 俺は古巣の派出所に戻ってきた。

 3ヶ月ぶりの古巣。

 当たり前だが、そこは何も変わらぬままで。

 人も町も優しく俺を迎えてくれた。

 目まぐるしく過ぎた3ヶ月とは違い、穏やかな時間がゆっくりと流れて行く。

 微笑む笑顔が優しくて。

 交わす挨拶の言葉すら穏やかで。

 俺の疲れた心を少しずつ癒してくれる。

 小春日の下の優しい時間。

 そして…。

 

 昼間人々を優しく包み込んでいた太陽が消える頃。

 胸ポケットに入っている携帯が鳴り響く。

 数コールの後、途絶える電波。

 相手は。

 …あの男。

 何も言わない。なんのメッセージもない。

 表示された番号だけが、相手の素性を俺に示すだけ。

 そして俺はそれに逆らえない…。

 

 冷たい月の下で、肌を重ねる日々。

 何も感じない。何も思わない。

 頭の片隅で、慣らされた身体が鳴いているの聞いている。

 霞んだ視界の中で誰かの体が揺れるのをぼんやりと眺めている。

 何も…感じない。

 だって、心がここに無いから。

 痛みも悲しみも喜びも、全てを感じる心はあの人の元に置いてきたから。

 あの夜。

 全てをあの人の腕の中に。…もう二度と逢うこと無いあの人の元に。

 

 ―室井さん。

  

 想い出の中だけで逢うことを許された人。

 俺達所轄の者達の為に、高みを目指し昇り続ける人。

 あなたが上に行けば行くほど、俺達の理想に近付き…俺達の距離は離れて行く。

 遠ざかるあの人。

 ただ心だけがあの人の元に置き去りになったまま。…二度と受け取る事の無い心だけが。

  

 …室井さん。

  

 揺さぶられ続ける身体の中で、音の無い誰かの声があなたを呼び続けている。

 あなたは…今…何処に居るのですか…。

 そして俺は…。

 

 

Scene 12―M

 君は今…なにをしている?

 輝く月に誘われる様に窓を開ける。

 入りこんだ冷たい夜気を身体に感じながら、あいつの事を考える。

 あの夜。

 流されるままに彼を手に入れた夜。

 あの夜もこんな月夜だった…。

 自分に触れた彼の体温に溺れ、あいつを組み伏せて、欲望のまままに全てを奪った。

 狂おしいほど熱い夜だった。

 熱い夜が去り、気が付いた時には、彼の姿は無かった。

 彼は何も言わなかった。

 自分を組み伏せた男を罵る事も、組み伏せられた自分を嘆く事もなく。

 ただ静かに姿を消した。

 そして再びその姿を見たとき。

 彼は、笑った。

―俺…頑張れます。同じ気持ちの人が上にいてくれるんですから。

―大丈夫ですよ。…一からやり直せますから。

 そう言って綺麗に微笑んでいた彼。

 あいつはどうしてあんな風に綺麗に微笑む事が出来るのだろう…。

 自分を汚した相手に向って…。

 

 青島…。

 

 あれから彼に会ってはいない。連絡もとっていない。

 再び青島に会った時、どうすれば良いか判らなかった。

 自分がこんなに臆病だとは思わなかった…。

 青島にも逢わず、声も聞かず、どうする事も出来きないまま、ただ過ぎて行く時間の中で。

 私は彼の言葉だけをばねにひたすら上を目指す。

―あんたは上にいろ。

 ただそれだけを支えにひたすら上に昇って行く。

 それが、あいつとの約束。俺達の理想…。

 

―今度の移動で、警備部に行ってもらう事になった。…判るね?これは昇進だ。

 局長からその言葉を聞いた時、一瞬自分の耳を疑った。 

 査問委員会で訓告を受けた自分が警備部に移動する。些細な事が命取りになるキャリアの世界に

おいて、これは異例の事だった。

 驚いてまともな返事も返せない自分に、局長は笑って言った。

―全く君は素晴らしい部下を持ったものだ。

 あれはどう言う意味だったのだろうか?

 粘りつくような不快な笑顔と言葉が、心の底にずっとわだかまったまま。

 不安が消えない。

 だがこれで、あいつとの約束へ一歩近付く事が出来た。

 これから何が起こるのか先の事は判らない。

 だが、今は前を見て歩き続けるだけだ。

 約束の為。

 そして理想の為に。

 いつか、すべてが落ち着いたら。その時こそあいつに会いに行こう。

 約束を果たしたその時に。

 胸をはって。

 それまでは…。

 

 青島。君は今なにをしている?

 俺は、一歩先に行く…。

 

 

 流れる時間が二人の距離を開いていく。

 置き去りに去れた心が泣いている。

 すれ違った心の距離は。

 未だに遠く…。

 

To be continude

再びお久しぶりのSー12です。

今回折返し地点(やっとかい・汗)ですので、

ちょっとインターバル。

サブタイトルもそのまんま「間〜あいだ〜」です。

捻りもなんにもねーや(笑)

これから歳末・秋スペにオリジナル絡んだ話しが続く予定!

さぁ!これからが大変だぞーっ!!

一体いつになったら青島君に幸せが訪れるやら(-_-;)