悪島くん
携帯に電話があった。 室井さんからだった。 メールを見ると、すぐ消去した。 だって、まずいだろ?
何か事件が起きてさ、 俺が死んじゃって、この携帯見られたら。 自他ともに認める「湾岸署で一番
天国に近い男」だからさ。オレ。
そのものズバリで 「会いたい」 じゃ、まずいって。
俺は、すぐ携帯にメールを送る。
「今日家に行きます」
多分室井さんも即消去してるだろう。 眉間に皺寄せてさ。
まぁ、別にいいのさ。そんなこと。・・・あぁ、何かタバコ吸いたくなってきちゃったな。
署の自販機でコーヒー買って、そこで一服してたら新城さんがやってきた。 あれ?なんか大きな
事件あったっけ? 取り敢えず、立ち上がって明るく挨拶。
「どーも。今日は、何かあったんすか?」
我ながらマヌケな挨拶だが、新城さんが俺に抱いてるイメージ通りじゃない? 礼儀知らずの問題
児・青島俊作っての。あはは。 この年で問題児も何もないってのにねぇ。
新城さんは立ち上がってコーヒー片手の俺をまじまじ見てる。 俺は小首を傾げて「何ですか?」
のポーズ。 新城さんは、懐から何かを取り出した。 あれ?携帯? それって・・・。
「室井さんの携帯だ」
新城さんは、何とも言いがたい顔をしていたね。 俺はしばらくポカンとして考え込んでた。えーと、
つまり・・・・。
「君と室井さんは、とても仲良しのようだな」
仲良し、を強調したな。このオデコ。
でもってここは、笑うところかな。
「えーと、ってことは、さっきのメール新城さん?」
「そうだ」
やっぱり、笑うところだ。 俺は声を上げて笑った。新城さんは、室井さんみたいに眉間にしわを寄せ
てこちらを睨んでる。 なんで?
「えー、室井さんの携帯でしょ?どうして新城さんが持ってるの?」
もうタメ口だ。いいや。何でも。
「・・・廊下でぶつかって。2人で携帯を取り落としたときに・・・間違えた。同じ機種で色も同じだった
から」
「はぁ・・・。それで何で俺にメールを?」
「受信箱の中に君からのメールがたくさん残ってた。送信箱には君宛のメールもな」
新城さんは、俺をじっと見ている。 真意を問いただそうって目。
それにしても。 もし、目の前に室井さんがいたら、「クソッタレ!」とケツ蹴っ飛ばしてやりたいね。
迂闊すぎて涙も出ない。
まぁ、いいや。 それではお望み通り、料理されてあげましょうか。室井さんには悪いけどね。
「新城さんのお考えの通りです。あとはご自由にご想像ください」
過去に送ったメールや、もらったメールには、正に恋人同士!てなもんもある。 これで新城さんが、
「ただのメル友」とか思ってたら、官僚の人材不足を大いに嘆いてあげよう。
しばらくして口を開いた新城さんの言葉には、ちょっとびっくりした。
「・・・・君は、上に昇る者だったら、誰でもいいんだろう」
新城さん? てっきり、罵倒されるかと思ってた俺は拍子抜けだ。
「・・・・・・」
俺が新城さんに無言で視線を合わせると、ふ、とかわされた。 ・・・・どうしようかな、と思う。
でも思索しながらも体が動いてた。本能だね、これはもう。
「・・・・あ、おしま・・・」
俺はそっと新城さんにキスをした。誘うように。乗って来い!・・・・ほら、来た! 新城さんから、
深いキスを仕掛けられる。結構巧いじゃない。
「・・・ん」
甘い声。俺の。 優しく離れていく唇。名残惜しげに。
「誰でもいいわけじゃ、ないんです。・・・俺たち所轄のこと、理解してくれてる人で、上に行く人が
いいんです」
「じゃあ、室井さんじゃなくてもいいのか?・・・・私でも」
俺の手前勝手な言い分に、何の疑問ももたないのかな。この人。ホントに東大出? そう思いつつ、
そっと抱きしめた。ぎゅっと抱き返される。 それが、答えなんですよ、とボディランゲージ。 その時、
新城さんの胸で携帯が震えた。室井さんからだろうな。全く無粋なことで。 俺は、とん、と新城さん
の胸を軽く押した。
「ほら、もう行ってください。・・・室井さんには内緒にしましょうね」
ウインク一つ。
「ああ・・・・・」
名残惜しげに、熱のこもった目で俺を見る新城さん。でも今日はもうだめ。バイバイ。
新城さんの背中を見送りながら、俺の口角は皮肉っぽく吊り上る。 さぁ、ゲームを始めよう。
正にそんな心境。 俺の体でよければいくらだって提供してやる。でも駒を操作するのは俺。
ゲームマスターは俺だ。
俺のことをわかったような顔をしてるやつら。 悪いけど、俺の中にあんたらの居場所なんか
ないよ。
あんたらが俺をどうにかしたいと思ってようが、俺の知ったこっちゃない。
空き缶をゴミ箱に放り投げた。入る所を見ないで、踵をかえす。 まっすぐ前を見据えて、歩き始
めた。 軽い缶の音が心地良く耳に響く。
これが俺のやり方。 多分変わらない。これからも。
めけめけ様より頂きました♪
恋愛は騙す方が悪いのか騙される方が悪いのか…。
可愛い顔して、室井さんと新城さんを手玉にとる青島君がカッコイイです!
憎たらしいんだけど憎めない、性悪猫みたいな青島君に惚れました(笑)
ホントに素敵なものを有難うございました♪
また是非次もお願いしま〜〜す!!(これこれ)
めけめけ様への御感想はこちらへ♪